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第四章
7.百家くんのお部屋拝見
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その日は何故か夕食まで百家くん家で食べる事になった。
時雨さんが後で車で家に送ってくれるというけど、最初は家族以外の人たちと夕ご飯を食べるなんて難易度が高いので断った。でも私の家に電話して母に百家くんちでご飯を食べる事の了解を取ってあると言われたのだ。そこまで言われて断るのは難しい。
だから夕食まで二人でゆっくり話をしなさいと言われた。着付けを習うのに時間をとられたので、百家くんと話をする時間が無くなった事を、お家の方々が気にして配慮してくれたみたいだ。
他人の家族と食事を共にするのはめっちゃ緊張する・・・。
百家家は日本家屋だったけど、意外にも百家くんの部屋は雑誌にでも出てきそうなおしゃれな今どきの部屋だった。勝手に座敷の日本間だろうと想像していたけど違った。
二階に上がり通された部屋はフローリングで広く、入り口を入ると右手が勉強部屋で、左手が寝室という造りだ。ベッドの置いてある寝室と勉強部屋は今どきの半透明の仕切りをスライドさせると仕切る事が出来るようになっていて、今は仕切られている。そのスライドの仕切りは全て壁に収納できる仕様らしい。
ベッドや袖机の上の照明がぼんやりと見えたし、壁にウォークインクローゼットが収納されているという。百家くんの為に伯父さん夫婦がリフォームしてくれたそうだ。
勉強部屋の方は壁一面に本棚が括りつけになっていて、天文関係の本や神職関係の本、伝説や昔話といった本も並んでいた。かなりの蔵書量だと思った。
シンプルな勉強机は大人用の広めな物だ。床にはアイボリーの絨毯が敷かれ、絨毯の上にローテーブルとソファが鎮座し、テーブルの上には銀色のノートPCが置かれている。百家くんにソファーに座るように促された。
家具は全て白木調で目に優しい。全体的に白っぽい空間だった。
百家くんは大きなクッション座布団を寝室側から取って来て、テーブルを挟んで私の反対側にそれを敷いて、自分が座った。
「後で、本棚の本見ていい?」
「おう。気になるのあれば貸してやるよ」
「ありがとう!」
めちゃくちゃ嬉しかった。見たことない本がたくさんあった。是非、この本棚を開拓させてください。
その後、尾根山くんの話になった。
百家くんが尾根山くんの近況を面白おかしく教えてくれる。
鯉北高校とは、今住んでいるM市のM駅から新幹線の駅がある終点のH市に向かう終点に近い場所にある男子高校だ。中心地からは少し外れており山を切り崩して作られた町なので狭くて古い中心地に抜ける道に、古い商店街がある住宅地になるらしい。
M駅で朝六時前の始発に乗り、学校で授業を受け、帰りは夕方学校を出て電車に乗ると十九時半位にはこちらに戻って来るらしい。クラブに入るともっと遅くなり夜九時以降になってしまうので入っていないそうだ。帰って夕食を食べ宿題を済ませるだけで大変だという。
しかも学校の最寄り駅から学校は遠く、小山の上に校舎が聳え立っているそうで急斜面を登校しなくてはならないとのこと。男子生徒の健脚でも最低でも20分は到着に要するらしい。
けれど帰りは下り坂なので電車に間に合わせるために爆走すれば、十五分でJRの駅に着くそうだ。
鯉北高校は中高一貫校だけども高校からも入学出来る。H市近隣のお金持ちの子息が通う事で有名だけど、残念ながら全体的な生徒の頭の出来では市内4校ランクからは落ちるのだ。そしてそこに通う子供たちは『歩くATM』と呼ばれていて、石を投げると医者の子供に当たると噂らしい。
もちろん、尾根山くんの様に両親共働きの普通の家の子も多く通っているけどお金持ち校なので学校施設が充実していてとにかく綺麗なんだそうだ。
その高校に通うのには今いるM市からJR一本でG線に乗り片道二時間かけて登校しなければならない。私がお母さんとここに来るのに乗った単線だ。ゆったりとした旅行気分で弁当を食べたり景色を見たりしながら乗っている分には楽しいけど、朝六時頃の電車に乗ってガタンゴトンと揺られて行かなければならないのは大変だ。学校に着く頃にはぎゅ-ぎゅ-のすし詰め状態なのだそう。
聞いた所によると、車両は古く、夏は扇風機が回っていたりする。そして、ほとんどの駅が鄙びた改札すらない駅なので、ICOCAも使えない。車掌はいないので乗り降りは自分で扉を開け閉めするボタンを押さなくてはならないという作法がある。
開かない扉の前に立っていても電車の扉は絶対開かないので注意が必要だという。一時間に一本しか走行しない為、乗れなかったら最悪だ。
単線というのは線路が一本だけの線路で、列車の運行数の少ない田舎に多く見られる寂しい線路で、時間帯によっては離合の為の駅待ち時間などがあり、車両も一両だけでまるでバスが線路の上を走っている様に見える。つまり大赤字路線らしい。お願いだから廃線にならないでくれと願うばかりだ。
そんな寂しいJRのG線だけど朝の通勤時だけ、車両が二両に増えるらしい(朗報)。
だが鹿やイノシシが飛び出て来たのを轢いてしまうと、タイムテーブル関係なく獣様のご遺体をどけて処理するまで長らく待たされる事になる。
これは日暮れ以降に多い。なお、大雨や雪にもG線は弱くよく止まる。
G線が使えない場合、残るは高速バスしか交通手段が無くなり、料金も跳ね上がるのでなくてはならない大切な電車なのだ。
そんな交通事情やなんやかやで盛り上がったあと、やっと尾根山くんの相談事の話になった。
「えーっと尾根山の友達の爺さんがやってる古物商の話だ。学校近くの古びた商店街の並びで殆ど趣味で骨董店を営んでるらしいんだが・・・最近、骨董品を買ってくれないかと客が持って来た物を引き取ってから怪異が起こるらしい」
「・・・」
やっぱり面倒ごとだった。
時雨さんが後で車で家に送ってくれるというけど、最初は家族以外の人たちと夕ご飯を食べるなんて難易度が高いので断った。でも私の家に電話して母に百家くんちでご飯を食べる事の了解を取ってあると言われたのだ。そこまで言われて断るのは難しい。
だから夕食まで二人でゆっくり話をしなさいと言われた。着付けを習うのに時間をとられたので、百家くんと話をする時間が無くなった事を、お家の方々が気にして配慮してくれたみたいだ。
他人の家族と食事を共にするのはめっちゃ緊張する・・・。
百家家は日本家屋だったけど、意外にも百家くんの部屋は雑誌にでも出てきそうなおしゃれな今どきの部屋だった。勝手に座敷の日本間だろうと想像していたけど違った。
二階に上がり通された部屋はフローリングで広く、入り口を入ると右手が勉強部屋で、左手が寝室という造りだ。ベッドの置いてある寝室と勉強部屋は今どきの半透明の仕切りをスライドさせると仕切る事が出来るようになっていて、今は仕切られている。そのスライドの仕切りは全て壁に収納できる仕様らしい。
ベッドや袖机の上の照明がぼんやりと見えたし、壁にウォークインクローゼットが収納されているという。百家くんの為に伯父さん夫婦がリフォームしてくれたそうだ。
勉強部屋の方は壁一面に本棚が括りつけになっていて、天文関係の本や神職関係の本、伝説や昔話といった本も並んでいた。かなりの蔵書量だと思った。
シンプルな勉強机は大人用の広めな物だ。床にはアイボリーの絨毯が敷かれ、絨毯の上にローテーブルとソファが鎮座し、テーブルの上には銀色のノートPCが置かれている。百家くんにソファーに座るように促された。
家具は全て白木調で目に優しい。全体的に白っぽい空間だった。
百家くんは大きなクッション座布団を寝室側から取って来て、テーブルを挟んで私の反対側にそれを敷いて、自分が座った。
「後で、本棚の本見ていい?」
「おう。気になるのあれば貸してやるよ」
「ありがとう!」
めちゃくちゃ嬉しかった。見たことない本がたくさんあった。是非、この本棚を開拓させてください。
その後、尾根山くんの話になった。
百家くんが尾根山くんの近況を面白おかしく教えてくれる。
鯉北高校とは、今住んでいるM市のM駅から新幹線の駅がある終点のH市に向かう終点に近い場所にある男子高校だ。中心地からは少し外れており山を切り崩して作られた町なので狭くて古い中心地に抜ける道に、古い商店街がある住宅地になるらしい。
M駅で朝六時前の始発に乗り、学校で授業を受け、帰りは夕方学校を出て電車に乗ると十九時半位にはこちらに戻って来るらしい。クラブに入るともっと遅くなり夜九時以降になってしまうので入っていないそうだ。帰って夕食を食べ宿題を済ませるだけで大変だという。
しかも学校の最寄り駅から学校は遠く、小山の上に校舎が聳え立っているそうで急斜面を登校しなくてはならないとのこと。男子生徒の健脚でも最低でも20分は到着に要するらしい。
けれど帰りは下り坂なので電車に間に合わせるために爆走すれば、十五分でJRの駅に着くそうだ。
鯉北高校は中高一貫校だけども高校からも入学出来る。H市近隣のお金持ちの子息が通う事で有名だけど、残念ながら全体的な生徒の頭の出来では市内4校ランクからは落ちるのだ。そしてそこに通う子供たちは『歩くATM』と呼ばれていて、石を投げると医者の子供に当たると噂らしい。
もちろん、尾根山くんの様に両親共働きの普通の家の子も多く通っているけどお金持ち校なので学校施設が充実していてとにかく綺麗なんだそうだ。
その高校に通うのには今いるM市からJR一本でG線に乗り片道二時間かけて登校しなければならない。私がお母さんとここに来るのに乗った単線だ。ゆったりとした旅行気分で弁当を食べたり景色を見たりしながら乗っている分には楽しいけど、朝六時頃の電車に乗ってガタンゴトンと揺られて行かなければならないのは大変だ。学校に着く頃にはぎゅ-ぎゅ-のすし詰め状態なのだそう。
聞いた所によると、車両は古く、夏は扇風機が回っていたりする。そして、ほとんどの駅が鄙びた改札すらない駅なので、ICOCAも使えない。車掌はいないので乗り降りは自分で扉を開け閉めするボタンを押さなくてはならないという作法がある。
開かない扉の前に立っていても電車の扉は絶対開かないので注意が必要だという。一時間に一本しか走行しない為、乗れなかったら最悪だ。
単線というのは線路が一本だけの線路で、列車の運行数の少ない田舎に多く見られる寂しい線路で、時間帯によっては離合の為の駅待ち時間などがあり、車両も一両だけでまるでバスが線路の上を走っている様に見える。つまり大赤字路線らしい。お願いだから廃線にならないでくれと願うばかりだ。
そんな寂しいJRのG線だけど朝の通勤時だけ、車両が二両に増えるらしい(朗報)。
だが鹿やイノシシが飛び出て来たのを轢いてしまうと、タイムテーブル関係なく獣様のご遺体をどけて処理するまで長らく待たされる事になる。
これは日暮れ以降に多い。なお、大雨や雪にもG線は弱くよく止まる。
G線が使えない場合、残るは高速バスしか交通手段が無くなり、料金も跳ね上がるのでなくてはならない大切な電車なのだ。
そんな交通事情やなんやかやで盛り上がったあと、やっと尾根山くんの相談事の話になった。
「えーっと尾根山の友達の爺さんがやってる古物商の話だ。学校近くの古びた商店街の並びで殆ど趣味で骨董店を営んでるらしいんだが・・・最近、骨董品を買ってくれないかと客が持って来た物を引き取ってから怪異が起こるらしい」
「・・・」
やっぱり面倒ごとだった。
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