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第一章
治癒魔法
しおりを挟むミリアムは、途中で情報収集しながら時には寄り道して、色んな物を見聞きしながら王都に向かった。
バングル領のケレスの街で魔道具屋に案内してくれたガルパンさんが、王都に行くなら知り合いが店をやっているので何かあればそこに行って見ると良いと言ってくれて、紙にガルパンさんの名前と店の名前を書いて渡してくれた。
とりあえずは王都に着いたらそこに行くつもりだ。あと商業ギルドにも行こうと思ってる。
冒険者ギルドに顔を出すのは王都に慣れて知り合いが出来てからでも良いと思っている。
ノーマ子爵家の方は追っ手もなさそうだ。たぶん見当違いで未だに領内をしらみつぶしに探している事だろう。ご苦労さん。
だいたい子爵家の令嬢が庶民にまぎれて移動しているなんて考えも付かないはずだ。怒り狂っているだろうと思われるが、いい気味だ。
旅の途中で寄ったファルキアの街でも商業ギルドに立ち寄り、服飾小物を少し売ったのだが、帰り際にその時、たまたまそこに来ていた商人の一人が倒れて大騒ぎになった。
「お父さん、お父さんしっかりして!」
娘さんが一緒にいるようだ。慌てて倒れたおじさんを揺すっている。だめだめ揺すっちゃだめだよ。
「おい、誰か医者か治癒師を呼べ!お嬢さんどうしました?何か症状はありましたか?」
ギルドの職員が走り寄って来る。
「急に呂律が回らなくなって、字も書けなくなったらしくて、そしたら急に倒れたんです」
ん、それって脳梗塞じゃないかな?命に係わる病気だ。と成り行きをみていたミリアムは思った。助けられるのに助けなかったら後で後悔するだろうから
「私は治癒魔法が使えます、診させてもらっても?」
直ぐに傍に行き、声をかける。小柄な私は子供に思われる様なので、一応お伺いを立ててみる。
「おっおねがいします!」
なるほど、そんな事言ってる場合じゃないと分かっていらっしゃる。娘さんはすがりつくように言った。
「たぶん脳梗塞だと思います」
「脳梗塞!!」
娘さんは、卒倒しそうな顔で叫んだ。
ああ、そうかこの世界じゃ脳梗塞って言ったら、ほとんど死病だった、テヘ。
そう思ったがそんな事考えてる余裕などない、頭に手を当てて探る。やはり、脳内のある一部だけエネルギーが滞り、そこに血液が流れていないのが分かる。
早くしないと直ぐに脳組織が死滅する。ゆっくりと脳の血管のつまった部分を溶かし、血管を広げるイメージで治療する。血栓を閉じる治療もした。
それは、前世の知識があってすぐに対処し治療出来るもので、そうでなければ魔法治療でも時間がかり間に合わないか、半身不随などになる病気だ。
その間、たった7~8分だったが、ミリアムはかなりの魔力を使った。よどんでドロドロの血液を少し浄化したのだが、これは大変な作業だった。雷を落とすよりも何十倍もきつい。
額から玉のような汗を滲ませ、もう大丈夫と思える程度まで回復させる。するとそれまで意識のなかったおじさんが目を覚ました。
「お父さん!良かった、気が付いたのね!治癒師様、有難うございました!有難うございました!!」
ボロボロと涙を流しながら床に頭を付け娘さんがお礼を言うので困った。
「あのですね、一応治療はしましたが、このままではダメですよ、薬師にドロドロの血をサラサラにする薬を出してもらい、毎日水を最低でも2リットル。そして油物、糖質のあるものは控えて、運動もしないとダメです、こういうのは生活習慣のせいでなる事が多いので、まず原因を無くさないとまたなってしまいますよ」
と言い聞かせた。そして、ちゃんと民間の医者にもかかり、定期的に診てもらう事と追加した。
そのおじさんはとても大きな商会の会長だったようで娘さんだけでなく商業ギルドの職員にも物凄くお礼を言われた、とりあえず疲れたので帰る事を伝え、宿を教えて欲しいと言われたので教えて、宿に帰り休んでいると、今度は宿のご主人が呼びに来た。
あの娘さんと商業ギルドの職員と一緒に何故か冒険者ギルドの職員も来ていて、宿の応接室で挨拶された。
まずは娘さんからはお礼を商業ギルドを通し、大金貨20枚をカードに入れさせてもらったと言う話と、商業ギルドの人が、『あれだけの治癒師としての魔力があるのに、冒険者ギルドに登録がなかったので、登録を頼みに来た』と言うのだ。
(※大金貨20枚と言うと2000万円になる)
治癒師はその魔力を持っている者が少なく、大きな街でも、一人二人居れば良い方だ。
ただ、そのため治療を受けるのはとてもお金がかかり、需要があるのは、ほぼ貴族と言う事になる。
「申し訳ないんですが、治癒師としての仕事をするかどうかと聞かれると、今の所その気がないんです。だから登録するつもりはありません」
その後かなり食い下がられたが、はっきり断ったので、すごすご帰って行った。
稼ぎが良くても、貴族に囲われたりするのはゴメンだしね。その憂慮があるからしないよ。
それに、もし治癒師になりたくなったら王都で登録すれば良い事だし。
そして、今度は娘さんから、もし王都に来ることがあればちゃんとお礼をしたいので店に来てくださいと、住所と名前を書いた紙をもらった。
『 プレストン商会//アリス・プレストン 』
さて、あと一息で王都に着くので、ガルパンさんから貰ったメモを取り出す。
『 銀の小鳩亭 』とても美味しい無国籍料理の店だとガルパンさんが言っていた。
昼過ぎに王都に到着予定なので、そこでお昼を頂くのも良いかもしれない。
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