捨てた騎士と拾った魔術師

吉野屋

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第四章

皇太子妃殿下のお茶会

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 お茶会は和やかに進んでいた。

 最初に好きなお茶の種類を聞かれたが、やはり、ここは紅茶で有名なベルダ産のバーバラだろう。
ミルクはセルディア産のガイス牛のミルクを、なんて…ああ、なんて、こういうのめんどうくさい。


 基本お茶会は次回から、パスと言う事にして頂きたい。カタニーから付け焼刃で、お茶会のマナーを聞いたが、初めての参加者はまずは好みのお茶の種類やそれに入れるミルク等を聞かれるらしい。


 だいたいは、前世のアフタヌーンティーのマナーと似たようなものだろうか、前世、イギリスでは必ずアフタヌーンティーの時、最初に食べるのは、ケーキスタンドの下段のサンドイッチで、それはきゅうりのサンドイッチを用意するだとか、聞いたような気がするが、その時はキュウリがない季節には昔はどうしていたのだろうかとか思ったのを覚えている。

 あっちの世界は時代と共に野菜も季節感がうすれ、なんでもいつでも食べられる世界に変わって行ったがここでは違う、それに代わるのがこの世界では前世ピンチョスと呼ばれていた串で刺されたオープンサンドイッチの小さい奴みたいな物だ。


 名前はルガトと呼ばれているが、まあ食べやすいし、中に挟む物に決まった定義はないようだ。
種類も豊富だし、楽しめる。

 お茶も、何杯おかわりしてもべつに構わないらしいし、トイレ事情も普通に西洋トイレ風で魔石が仕込んであり、水が流れる。貴族はトイレの水を流す位の魔力は持っていると言う前提なので、これは庶民の暮らしでは、むずかしい。庶民はいわゆるぽっちゃんトイレと言う事になる。


 ドレスはコルセットを閉めなくても良く、柔らかい素材のパニエがスカート部分に使われている位なので、脱着が楽だし、座るのも普通に一人で座れるので良い。だからトイレも自分で入れる。(トイレはとても広い、小部屋という感じ)


 中世の前世の世界の様に、ガチガチのドレス文化で壺をトイレにしていなくて心底良かったと思う。
だから、きつい香水を付ける文化もない。


 お茶会用にティーガウンと呼ばれるもっと楽なドレスの型を着ても良いらしく、子供を産んだ女性などは好んで着るようになってきているのだそうだ。そういうのがゆるい世界っていいなと思う。ストレスは少ない方がいいよね。


 本日のお茶会は、他の高位貴族のお嬢様方も招かれ、8人参加していた。
そう言えば、アレン様から本日身に付けている装飾品には身を守る為の魔法がエンチャントされていると言われた。

 お茶会も中盤にさしかかり、皆さま様々なお話をして下さる。興味深い話もあればゴシップ系の話も出る。そのうち紅茶の飲みすぎか中途で化粧室へ行く者が入れ替わり立ち代わりとなり、化粧室も近場にいくつも用意されているので、連れションならぬ、ご一緒に状態で、別に行きたくもないのにしつこく化粧室に誘われ、席を立つこととなった。

 「エミリアン様は、確かハッサ様の遠縁になられるのですよね」
 
 「そうですね、ハッサ公爵家の傍系のハッサ家で、ゼルダ地方になります」

 「まあ、とても遠い領地ですわね、なにか有名な特産物等はございますの?」

 「これといったものではございませんが、ブドウと小麦が多く採れます」

 「まあ、そうですの、ではワインなどもありますのね」

 この、ご令嬢は、クルド侯爵家の令嬢で、はじめから食いつき気味で根ほり葉ほり聞いてきて、コバンザメのようにまとわりついてくる感があり、正直うざかった。

 それに、化粧室にもしつこく誘ってくるし、他の意図があるとしか思えないんだよね。

 だから、まあ気を付けていた訳だけど、化粧室の行きかえりもこれと言ったイベントもなかった。

 お茶の席に戻ると新しいお茶がメイドによって運ばれてきていた。

 「もう戻って来られると思い、メイドにたのんでおりましたのよ」

 と隣の席のファウンズ伯爵令嬢から言われた。

 「まあ、お気遣いありがとうございます」
 
 とりあえず、お礼を言ってそのお茶を一口含むとめっちゃ嫌な味がして、すぐにナフキンを口に当て吐き出した。
 
急に眩暈がしたが、ネックレスとイヤリングの宝石が突然眩く輝き、色が水色から紫色に変化し、直後、眩暈が治った。

 その様を見ていた皇太子妃殿下が、素早く室内に居た侍従に目配せをすると、部屋のドアが開きに兵士が突然十名入って来た。

 ご令嬢方は、驚いて立ち上がったが、隣にいたファウンズ伯爵令嬢は何故か部屋から走り出ようとした。

 それを兵士に止められ、慌てて手足を振り回して暴れている。

「今、お茶に毒が使われました。ここにいらっしゃる皆様のボディーチェックをさせて頂きます」


 妃殿下の声に皆騒然とする。

 なんか、クルド侯爵令嬢もきょどってる。そうですよね、あなたグルでしたよね。物的証拠はなくとも状況証拠ってやつもあるんですよ。

 まあ、私は被害者だし、もう帰ってもいいんですかね?皇太子妃殿下は事が起こるの待ってました?待ってましたよね。

 いつの間にか、皇太子殿下と筆頭魔術師様まで部屋に居た。

 アレン様は、すぐに傍までやって来て「大丈夫か?」とか言うので、「大丈夫じゃないです」と言うと突然横抱きにされ、部屋から連れ出された。

 いやもう、本当は大丈夫ですけど、念のため自分に自分で治癒魔法かけましたし。

別室のソファーに連れて行かれ、座らされて、身に付けている装身具の色合いを見て、眉を寄せている。

 「色が真紫に変わっている。これは猛毒を使っているな直ぐに吐き出して良かった」

 「自分で治癒魔法かけましたし、もう大丈夫ですから。クルド侯爵令嬢もグルでしたよ。捕まえて下さいね」

 「わかっている。どちらの家もすでに兵を送り屋敷を調べている」

 「相手は呪術師と言ってましたけど、そっちの方は大丈夫なんですか?」
 
 「すでに、呪術返しを受けて強い呪術は使えないはずだ。使えば命が削られるからな」

 「今日はお前はもう、連れて帰る。あまり顔色が良くない」

 一応心配もしてくれていたようだ。でも抱っこは嫌だやめてくれ。

 
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