捨てた騎士と拾った魔術師

吉野屋

文字の大きさ
24 / 43
第四章

魔術師団その後

しおりを挟む


  魔術師団長とエミリアンのちょっとした手合わせは、実のところ魔術師団の連中は皆、ガッツリ隠れて見ていた。

 小柄な少年にも見える男装の少女が、師団長をグルグル回しにした時には歓声が湧いた。皆、喜んだ。

 とても面白い余興だったし。加えて、すごい速度で水技を繰り出した少女に感嘆の声が上がった。

 ふつう、技を構築して繰り出すまでには少し時間がかかるものだ、もともと手合わせするつもりで用意していた技ではないはずなので、彼女は只者ではないなという見解だった。

 魔術師団長は確かに魔力は多いし戦えばそれなりの戦力もになるが、人の上に立つ者としては、あんな感じなので人望がない。筆頭がいるから師団長でいられると言った感じだ。

 筆頭の言うがまま動いていれば良いのだ。筆頭自身にとっては使い勝手が良いだろう、筆頭にはイエスマンなのだから。

 なので今回は、師団長がやられて皆、大喝采だったというわけ。それもどうかって思うよね。



 そして、翌日エミリアンが魔術師団に訪れると、師団長がやってきてエミリアンに対して平身低頭であやまってきたのだが、その謝る基準って言うのが嫌なのだ。

 「力ある貴女様に対し失礼な態度を取ってしまい大変反省しております、今後は、私目の事はカルドとお呼び下さい」

 つまりは、反省っていうより、自分より強い魔力を持つ者に対し、魔力の弱い自分がとった態度が失礼だったと言うわけで、根底にこの考えがある限り、私が何かを言っても無駄って事。

 その判断基準は魔力が自分より強いか弱いかなんだから。でも魔法の文化のある国の魔術師の考え方は大なり小なりそう言う考えの人物が居ると言う事になる。

 でも、人の考え方って言うのは直ぐに変えられるわけではないから、様子を見てその度に軌道修正していくしかないのかも知れない。

 人の上に立つ人と言うのは責任があるから大変だ。アレン様、がんばって下さいね。


 それにしても、魔術の勉強と言うのも興味があるけれど、出来る事からやるなら役に立つ事からやりたいと思う。ついでにお金になるならもっといい。

と言う事で、城内にある病院で治癒師のバイトと言うのに興味を引かれる。だが、問題がある。

先日の毒騒ぎで捕まった者はいるが、肝心のベルダ国王の王弟、もと、プラトリア公爵と言う人物はまだ捕まっていないのだ。全く安心出来ない。


 王城内の病院で働きたいとシャルルに言うと、では一緒に見学に行って見ましょうと言われ、城の中を覚える事も必要なので、歩いて移動する。



 「エミリアン様は治癒魔法はどなたに師事されたのですか?」
 
 「魔法は、誰かに教わったりした事はないの。自分で少しずつ試して来た事の積み重ねかな」

 「そうなのですか、あの水魔法も見たことがありませんでした。本当にすばらしかったです」

 「そう、ありがとう。でも私、この世界のはみ出し者だからね、だから人と違う事が出来るのかもしれないって思う…」

 
 実際、魔法に関しては自分の魔法の力がどの程度人と比べてどれだけ凄いのかなんて分からないのだ。ノーマ子爵家では軟禁されて育ったし、魔法の力は水魔法以外隠していた。力も強いという事は見せていなかったし、その後は庶民の中で暮らしたので、魔法は人前で使った事がないのだから。


 その私が今は王城の中に居るなんてね。不思議な物だ。いいのかどうかは別として。

 身体強化の力も誰かに言った事もない。今まで自分の身を護る為だけに使ってきた。
前世の記憶があっても今世では非力な子供の身体で、力の使い方さえわからない時に身体強化の力を知った。

 目や耳を強化するのも、家の中で身を護る為だった。

 身体強化のお陰で暴力をうけても、たいして辛くなかった。

 水は何時でも出せるし、全てがギフトだったと言ってもいい。

 過酷な子供時代はあれで乗り切れたのだ。正に、神様からのギフトだ。


 あの自分の事だけを考え、のほほんと生きていた前世の時と比べるとかなりのハードモードだけれど、今は守るべき者も出来た。

 何も後悔はない、全力で切り開いてきた未来だ。


 そして、身体強化は今も使っている。地下から妙な音が近づいて来る。少し前を行く、シャルルに叫んだ。

 「シャルル来て!」叫んで手を伸ばすとシャルルも手を伸ばしてきた、突然、地盤に穴が開きエミリアンとシャルルを飲み込もうとした。

 シャルルの手を掴み、そのまま身体強化の力を使い大きな彼の身体を上に放り投げる。そのままその勢いを利用して自分も跳ね上がり、シャルルの腕を掴むと、水龍を生み出しその背にシャルルと共に飛び乗った。


 まさに自分がアニメで見た水龍そのものだ。シャルルは驚いたものの、さすがの身体能力の高さで落ち着いてエミリアンの後ろに座っている。

 「土使いです、何処か近くに潜んでいるはずです、こんな事を王城で起こすなどと考えられない!」

 もちろんエミリアンは『目』を使い探している。

 「いた!」


 樹の根本に這いつくばっているので指さす。

 土使いは相手に空に昇られたら何も手が出せない、最も空まで土塚でも飛ばせる程の力があれば別だが、先ほどの地殻変動で殆どの魔力を使っているだろう」

 シャルルが強風を起こし逃げられないように足止めしている。

 バリ!バリバリバリ!ドッカーーーーーーン!!!


 金のメイスを取り出したエミリアンはいかづちを落としてやった。前に使ったような小さな雷ではなく樹木が裂ける程の奴だ。


 落雷を樹に落とすと、土を操り二人を土中に埋めようとした人物は吹っ飛び、ゴロゴロと転がって泡を吹いて白目を剥いていた。

 その後、エミリアンはゆっくりと水龍を地面に降ろし、消し去る。水龍綺麗、我ながら感動。

 大きな声では言えないが、頭の中には○と○の○隠しが浮かんでいたのだった。好きだったから何度も見たよなあ。

 なんか腹減った。中華街に行きたくなった。お肉食べたい・・・

 その日は突然の地震と落雷、外には見たこともない蛇のような巨大な魔物と、大騒ぎになった。
 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたのでファンシーショップ始めました。 ― 元婚約者が、お人形さんを側室にしようとして大恥をかきました ―

鷹 綾
恋愛
隣国の王子から「政略的にも個人的にも魅力を感じない」と婚約破棄された、ファンタジア王国第三女王タナー。 泣きも怒りもせず、彼女が考えたのは――「いつか王宮の庇護がなくなっても困らない生き方」だった。 まだ八歳。 それでも先を見据え、タナーは王都の片隅で小さなファンシーショップを開くことを決意する。 並ぶのは、かわいい雑貨。 そして、かわいい魔法の雑貨。 お茶を淹れてくれるクマのぬいぐるみ店員《テイデイ・バトラー》、 冷めないティーカップ、 時間になると小鳥が飛び出すアンティーク時計――。 静かに広がる評判の裏で、 かつての元婚約者は「お人形さんを側室にしようとして」赤っ恥をかくことに。 ざまぁは控えめ、日常はやさしく。 かわいいものに囲まれながら、女王は今日も穏やかにお店を開けています。 --- この文面は ✔ アルファポリス向け文字数 ✔ 女子読者に刺さるワード配置 ✔ ネタバレしすぎない ✔ ほのぼの感キープ を全部満たしています。 次は 👉 タグ案 👉 ランキング用超短縮あらすじ(100字) どちらにしますか?

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです ※表紙 AIアプリ作成

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

転生皇女セラフィナ

秋月真鳥
恋愛
公爵家のメイド・クラリッサは、幼い主君アルベルトを庇って十五歳で命を落とした。 目覚めたとき、彼女は皇女セラフィナとして生まれ変わっていた——死の、わずか翌日に。 赤ん坊の身体に十五歳の記憶を持ったまま、セラフィナは新しい人生を歩み始める。 皇帝に溺愛され、優しい母に抱かれ、兄に慈しまれる日々。 前世で冷遇されていた彼女にとって、家族の愛は眩しすぎるほどだった。 しかし、セラフィナの心は前世の主・アルベルトへの想いに揺れ続ける。 一歳のお披露目で再会した彼は、痩せ細り、クラリッサの死を今も引きずっていた。 「わたしは生涯結婚もしなければ子どもを持つこともない。わたしにはそんな幸福は許されない」 そう語るアルベルトの姿に、セラフィナは決意する。 言葉も満足に話せない。自由に動くこともできない。前世の記憶を明かすこともできない。 それでも、彼を救いたい。彼に幸せになってほしい。 転生した皇女が、小さな身体で挑む、長い長い物語が始まる。 ※ノベルアップ+、小説家になろうでも掲載しています。

【完結】愛を知らない伯爵令嬢は執着激重王太子の愛を一身に受ける。

扇 レンナ
恋愛
スパダリ系執着王太子×愛を知らない純情令嬢――婚約破棄から始まる、極上の恋 伯爵令嬢テレジアは小さな頃から両親に《次期公爵閣下の婚約者》という価値しか見出してもらえなかった。 それでもその利用価値に縋っていたテレジアだが、努力も虚しく婚約破棄を突きつけられる。 途方に暮れるテレジアを助けたのは、留学中だったはずの王太子ラインヴァルト。彼は何故かテレジアに「好きだ」と告げて、熱烈に愛してくれる。 その真意が、テレジアにはわからなくて……。 *hotランキング 最高68位ありがとうございます♡ ▼掲載先→ベリーズカフェ、エブリスタ、アルファポリス

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

『悪役令嬢は、二度目の人生で無言を貫く。~処刑回避のために黙っていただけなのに、なぜか冷徹宰相様から「君こそ運命の人だ」と溺愛さています~』

放浪人
恋愛
「もう、余計なことは喋りません(処刑されたくないので!)」 王太子の婚約者エリスは、無実の罪を着せられた際、必死に弁解しようと叫び散らした結果「見苦しい」と断罪され、処刑されてしまった。 死に戻った彼女は悟る。「口は災いの元。二度目の人生は、何があっても口を閉ざして生き延びよう」と。 しかし、断罪の場で恐怖のあまり沈黙を貫いた結果、その姿は「弁解せず耐え忍ぶ高潔な令嬢」として称賛されてしまう。 さらに、人間嫌いの冷徹宰相クラウスに「私の静寂を理解する唯一の女性」と盛大な勘違いをされ、求婚されてしまい……!? 「君の沈黙は、愛の肯定だね?」(違います、怖くて固まっているだけです!) 「この国の危機を、一目で見抜くとは」(ただ臭かったから鼻を押さえただけです!) 怯えて黙っているだけの元悪役令嬢と、彼女の沈黙を「深遠な知性」と解釈して溺愛する最強宰相。 転生ヒロインの妨害も、隣国の陰謀も、全て「無言」で解決(?)していく、すれ違いロマンティック・コメディ! 最後はちゃんと言葉で愛を伝えて、最高のハッピーエンドを迎えます。

そのご寵愛、理由が分かりません

秋月真鳥
恋愛
貧乏子爵家の長女、レイシーは刺繍で家計を支える庶民派令嬢。 幼いころから前世の夢を見ていて、その技術を活かして地道に慎ましく生きていくつもりだったのに—— 「君との婚約はなかったことに」 卒業パーティーで、婚約者が突然の裏切り! え? 政略結婚しなくていいの? ラッキー! 領地に帰ってスローライフしよう! そう思っていたのに、皇帝陛下が現れて—— 「婚約破棄されたのなら、わたしが求婚してもいいよね?」 ……は??? お金持ちどころか、国ごと背負ってる人が、なんでわたくしに!? 刺繍を褒められ、皇宮に連れて行かれ、気づけば妃教育まで始まり—— 気高く冷静な陛下が、なぜかわたくしにだけ甘い。 でもその瞳、どこか昔、夢で見た“あの少年”に似ていて……? 夢と現実が交差する、とんでもスピード婚約ラブストーリー! 理由は分からないけど——わたくし、寵愛されてます。 ※毎朝6時、夕方18時更新! ※他のサイトにも掲載しています。

処理中です...