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第四章
魔術師団その後
しおりを挟む魔術師団長とエミリアンのちょっとした手合わせは、実のところ魔術師団の連中は皆、ガッツリ隠れて見ていた。
小柄な少年にも見える男装の少女が、師団長をグルグル回しにした時には歓声が湧いた。皆、喜んだ。
とても面白い余興だったし。加えて、すごい速度で水技を繰り出した少女に感嘆の声が上がった。
ふつう、技を構築して繰り出すまでには少し時間がかかるものだ、もともと手合わせするつもりで用意していた技ではないはずなので、彼女は只者ではないなという見解だった。
魔術師団長は確かに魔力は多いし戦えばそれなりの戦力もになるが、人の上に立つ者としては、あんな感じなので人望がない。筆頭がいるから師団長でいられると言った感じだ。
筆頭の言うがまま動いていれば良いのだ。筆頭自身にとっては使い勝手が良いだろう、筆頭にはイエスマンなのだから。
なので今回は、師団長がやられて皆、大喝采だったというわけ。それもどうかって思うよね。
そして、翌日エミリアンが魔術師団に訪れると、師団長がやってきてエミリアンに対して平身低頭であやまってきたのだが、その謝る基準って言うのが嫌なのだ。
「力ある貴女様に対し失礼な態度を取ってしまい大変反省しております、今後は、私目の事はカルドとお呼び下さい」
つまりは、反省っていうより、自分より強い魔力を持つ者に対し、魔力の弱い自分がとった態度が失礼だったと言うわけで、根底にこの考えがある限り、私が何かを言っても無駄って事。
その判断基準は魔力が自分より強いか弱いかなんだから。でも魔法の文化のある国の魔術師の考え方は大なり小なりそう言う考えの人物が居ると言う事になる。
でも、人の考え方って言うのは直ぐに変えられるわけではないから、様子を見てその度に軌道修正していくしかないのかも知れない。
人の上に立つ人と言うのは責任があるから大変だ。アレン様、がんばって下さいね。
それにしても、魔術の勉強と言うのも興味があるけれど、出来る事からやるなら役に立つ事からやりたいと思う。ついでにお金になるならもっといい。
と言う事で、城内にある病院で治癒師のバイトと言うのに興味を引かれる。だが、問題がある。
先日の毒騒ぎで捕まった者はいるが、肝心のベルダ国王の王弟、もと、プラトリア公爵と言う人物はまだ捕まっていないのだ。全く安心出来ない。
王城内の病院で働きたいとシャルルに言うと、では一緒に見学に行って見ましょうと言われ、城の中を覚える事も必要なので、歩いて移動する。
「エミリアン様は治癒魔法はどなたに師事されたのですか?」
「魔法は、誰かに教わったりした事はないの。自分で少しずつ試して来た事の積み重ねかな」
「そうなのですか、あの水魔法も見たことがありませんでした。本当にすばらしかったです」
「そう、ありがとう。でも私、この世界のはみ出し者だからね、だから人と違う事が出来るのかもしれないって思う…」
実際、魔法に関しては自分の魔法の力がどの程度人と比べてどれだけ凄いのかなんて分からないのだ。ノーマ子爵家では軟禁されて育ったし、魔法の力は水魔法以外隠していた。力も強いという事は見せていなかったし、その後は庶民の中で暮らしたので、魔法は人前で使った事がないのだから。
その私が今は王城の中に居るなんてね。不思議な物だ。いいのかどうかは別として。
身体強化の力も誰かに言った事もない。今まで自分の身を護る為だけに使ってきた。
前世の記憶があっても今世では非力な子供の身体で、力の使い方さえわからない時に身体強化の力を知った。
目や耳を強化するのも、家の中で身を護る為だった。
身体強化のお陰で暴力をうけても、たいして辛くなかった。
水は何時でも出せるし、全てがギフトだったと言ってもいい。
過酷な子供時代はあれで乗り切れたのだ。正に、神様からのギフトだ。
あの自分の事だけを考え、のほほんと生きていた前世の時と比べるとかなりのハードモードだけれど、今は守るべき者も出来た。
何も後悔はない、全力で切り開いてきた未来だ。
そして、身体強化は今も使っている。地下から妙な音が近づいて来る。少し前を行く、シャルルに叫んだ。
「シャルル来て!」叫んで手を伸ばすとシャルルも手を伸ばしてきた、突然、地盤に穴が開きエミリアンとシャルルを飲み込もうとした。
シャルルの手を掴み、そのまま身体強化の力を使い大きな彼の身体を上に放り投げる。そのままその勢いを利用して自分も跳ね上がり、シャルルの腕を掴むと、水龍を生み出しその背にシャルルと共に飛び乗った。
まさに自分がアニメで見た水龍そのものだ。シャルルは驚いたものの、さすがの身体能力の高さで落ち着いてエミリアンの後ろに座っている。
「土使いです、何処か近くに潜んでいるはずです、こんな事を王城で起こすなどと考えられない!」
もちろんエミリアンは『目』を使い探している。
「いた!」
樹の根本に這いつくばっているので指さす。
土使いは相手に空に昇られたら何も手が出せない、最も空まで土塚でも飛ばせる程の力があれば別だが、先ほどの地殻変動で殆どの魔力を使っているだろう」
シャルルが強風を起こし逃げられないように足止めしている。
バリ!バリバリバリ!ドッカーーーーーーン!!!
金のメイスを取り出したエミリアンは雷を落としてやった。前に使ったような小さな雷ではなく樹木が裂ける程の奴だ。
落雷を樹に落とすと、土を操り二人を土中に埋めようとした人物は吹っ飛び、ゴロゴロと転がって泡を吹いて白目を剥いていた。
その後、エミリアンはゆっくりと水龍を地面に降ろし、消し去る。水龍綺麗、我ながら感動。
大きな声では言えないが、頭の中には○と○の○隠しが浮かんでいたのだった。好きだったから何度も見たよなあ。
なんか腹減った。中華街に行きたくなった。お肉食べたい・・・
その日は突然の地震と落雷、外には見たこともない蛇のような巨大な魔物と、大騒ぎになった。
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