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第六章
変貌
しおりを挟む西の帝国ベストルの動向をさぐるゼノディクス側は、当代の20歳の王その名は、ガリオン・レッサンドロ・ベストーラ・ベストル の事を調べた。
15人兄妹の3番目の王子として生まれ、19歳で王位を継ぐまでに、兄弟7人の全ての命を一度に奪っている。
王の庶子である事位しか分かっていない。
この帝国で、例え自分以外の王子を全て殺したとしても、王位を簡単に継げるわけではない、それを成して尚且つ国を動かしているとすれば、彼には人を操る力があるか、側近の誰かがそのような力をもつ者なのかもしれない。
ゼノディクス王国では、バーバラの浄化用に国中のポイントに魔石を配置した事もあり、それを使って国の結界をもっと強くする計画が進み、ベストル帝国に対しての警戒は怠っていない状態だ。
そんなある日の事、アレンの持つ貴族街にあるタウンハウスの通りに金髪の男がうろついていた。これが茶色の庶民の髪ならば見とがめられていたかもしれないが、兵士の制服であれば、違和感もない。
そう、ルイスだった、あきらめ切れず一目だけでも会いたくて、ハッサ家の住所のある通りをうろついていたのだ。
けれどもやはり、無理だった。大きな屋敷を前にして彼は門に近づく事も出来なかった。
そのルイスは気づいて居なかったが、彼の後をローブを着た男が後を付けていたのだ。
諦めて、兵士寮へ戻ろうと踵を返し、路地に入った所で声をかけられた。
「お兄さん、落とし物だよ」
ふいに声をかけられ驚いたが、振り返るとローブを着た小柄な人物が少し離れた所に立っている。
「…何も私は落としていないとおもうのだが?」
「アハハ、お兄さん大事な物を全部無くしちゃったんだね、いいよ、すごくいいその身の内にあるドロドロとした執着と情念!俺の大好物だ。俺が今欲しいと思っている女がお兄さんも欲しいんだね、丁度良かったよ、ちょうどさあ、からだ失くしちゃって探してたんだよお、次のからだをさあ…」
「なっ、何だお前は」
ルイスはそこから後ろにとびすさり、逃げようと身体を反転させた。
だが、すぐそこにまたローブの男が居たのだ。その男がローブを身体から外すと、そこには黒い靄の塊が漂っている。
そして、その中にどろどろに膿んだ赤い目があった。
「やめろ、くるな!」
ルイスの身体はピクリとも動かせなかった。赤い瞳とルイスの瞳が正面から見合され、黒い靄が彼の身体を取り巻き包む。
「あぁあがあああぁぁああ”ぁぁあ”あ”あ”がぁぁがががががぁう”あぁ・・・・」
黒い靄に包まれ、路に倒れたルイスの身体は痙攣を繰り返す。ビクビクと踊る身体が治まり静かになるまでにかなりの時間を要した。その間誰もこの路地に入り込む事は無かった。
それからどれだけ時間が経ったのか、ようやく、誰も居ない道にうつ伏せに倒れていたルイスはゆっくりと起き上がった。
首を振り、何事もなかったかのように、立ち上がり動きを試すかのように腕を振り足を踏みしめる。そうして服に付いた汚れを叩いて落とす。
「…いいね、新しい体は若くて美しい。気に入った…ああ、でも彼女、おイタがすぎるんじゃないかな、僕の身体にこんな悪さしてさ、後で治して貰わなくてはね、あ・あははははははっ!」
ルイスの形をした何かは、来た道を戻り始めた。もう一度あの結界の張られたアレンの屋敷に戻るつもりだ。
「ね、ルイス、嬉しいだろ、僕は色んな事が出来るんだ。彼女さえ封じてしまえば何も怖いもの等ないのさ、でも愛してるよね、うん、僕たちは一心同体だから、君のモノは僕のモノ、ねえ、そうだもの、愛してるんだよ・・」
そして、ルイスはアレンの屋敷の正面の門まで戻り、門番に声をかけた。
「すいません、私はルイス・セス・ドルモアと言う者です。エミリアン・ガブリエル・ハッサ様にお取次ぎを願いたい」
だが、当然のごとく門前払いだ。
「申し訳ございませんが、お嬢様へのお取次ぎは全てお断りさせて頂いております。もし、御用がございますようでしたら、お嬢様に手紙で許可をお取り下さい」
「ああ、ごめんよ、そうだよね、うん、分かるよ仕事だものね、でも悪いんだけど僕も急いでいてさあ」
そう言うが早いか、ルイスが腕を突き出すような形をとると、落雷が屋敷の真上から落ちたのだ。
爆音が響き、雷が這いまわる音が凄まじい。
バリバリバリバリ!バリバリバリバリバリバリバリ!
ドームの様に屋敷を覆うアレンの結界のテッペンに落ちた落雷はまるで蛇の様に結界中を這いまわり、結界の弱い所を探す。
「あれ!、ダメだね、何て強い結界だ、じゃあもう一度、ちょっと僕でもきついなあ」
笑ってそう言いながら、ルイスはもう一度腕を突き出す、慌てて門番と衛ハッセ家の衛兵がルイスに飛びかかろうとしたが、何かの力で弾き飛ばされる。そのまま塀に激突し、皆意識を失った。
パリーン!と澄んだ音が響き、ついに、アレンの結界が崩壊した
その時、屋敷に居たエミリアンは異常をすぐに感じ取った。凶悪ななにかが近づいて来る。
アンドレアを守らなくてはならない。
先ほどからの異常な雷の音に、執事長のファーブルや侍女長のザリから絶対に旦那様が帰るまで、家から出てはいけないと言われてが、結界が破られれば何の意味もない事が分かっている。
「アンドレアをお願い!」
エミリアンは身体強化をかけ、水の魔力を纏い、歩いて玄関を出て行った。
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