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1 クラーラの日常
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薄暗く、日があまり差し込まない部屋で私は一人書き物をしていた。調べては書きそして計算。繰り返す作業は慣れてはいても面白いものではない。
「クラーラ……おいクラーラ。まだその様な物に時間をかけているのか。相変わらず鈍臭いなお前は。もっとテキパキと仕上げないか」
怒鳴りつけるナディオ様の声が聞こえた。
「もう少しで終わりますからお待ちください」
私は格闘している帳簿から目を離さず、ナディオ様に答えた。
「遅い」
「あっ」
無情にも後少しで終わる帳簿を取りあけられた私は、泣きそうな顔になってしまった。
「鬱陶しい顔をするな」
「もう少しで終わりましたのに……」
「言い訳だけは一人前だな」
この帳簿はヘインズ子爵家のタウンハウスの帳簿。将来継ぐ予定のナディオ様に与えられた練習を兼ねた仕事。
私は使途不明金が多いのが気になり、調べていると遅くなっていた。
「ふん、陰鬱な顔をこちらに向けるな。俺まで暗くなりそうだ。そろそろクラリスが来るんだ。帰ってくれ」
そう言った後、ナディオ様は私を裏口から帰らせた。それは何時ものこと。
子爵家の正面には馬車が停り、そこから綺麗な女性が降り立った。
クラリス・バラント男爵令嬢。
綺麗な金髪がナディオ様とお揃いで、並んでいると美男美女でお似合いと言われる方。
最初は親戚縁者だと思った。
ナディオ様が一足早く夜会デビューされた時、同じ歳のクラリス嬢がパートナーを務め踊られたから。
本来、夜会のパートナーには婚約者を連れる。
婚約者がいて同伴が難しい場合は親戚縁者に頼む。
お互いに婚約者がいない場合でも格式が低い個人的な夜会以外親戚縁者に頼む。
だから普通に親戚縁者だと思った。
私は、知り合いのお茶会で二人が幼馴染みだと知らされた。
その話を聞いてどれだけショックだったことか。
ついナディオ様を責めてしまった。
それがいけなかったのだろう。
その後もナディオ様とクラリス嬢は夜会に参加し続けた。
そして翌年の夜会デビューでは、ナディオ様はエスコートはしてくれた。でもそれだけ。
「恥知らずな君にはこれで充分だよね」
そのままダンスも踊らず放置され、ナディオ様はクラリス嬢の元へ行った。
デビュー時、婚約者とのダンスもなく放置された私はいい笑い者だろう。
今では、クラリス嬢がナディオ様の婚約者だと勘違いしている方もいる。二人でずっと夜会に参加して、今日も行くのだろう。
私との夜会の参加はデビュー以来ない。
私はクラーラ・バンデルン。やり手のバンデルン侯爵の冴えない娘。
「クラーラ……おいクラーラ。まだその様な物に時間をかけているのか。相変わらず鈍臭いなお前は。もっとテキパキと仕上げないか」
怒鳴りつけるナディオ様の声が聞こえた。
「もう少しで終わりますからお待ちください」
私は格闘している帳簿から目を離さず、ナディオ様に答えた。
「遅い」
「あっ」
無情にも後少しで終わる帳簿を取りあけられた私は、泣きそうな顔になってしまった。
「鬱陶しい顔をするな」
「もう少しで終わりましたのに……」
「言い訳だけは一人前だな」
この帳簿はヘインズ子爵家のタウンハウスの帳簿。将来継ぐ予定のナディオ様に与えられた練習を兼ねた仕事。
私は使途不明金が多いのが気になり、調べていると遅くなっていた。
「ふん、陰鬱な顔をこちらに向けるな。俺まで暗くなりそうだ。そろそろクラリスが来るんだ。帰ってくれ」
そう言った後、ナディオ様は私を裏口から帰らせた。それは何時ものこと。
子爵家の正面には馬車が停り、そこから綺麗な女性が降り立った。
クラリス・バラント男爵令嬢。
綺麗な金髪がナディオ様とお揃いで、並んでいると美男美女でお似合いと言われる方。
最初は親戚縁者だと思った。
ナディオ様が一足早く夜会デビューされた時、同じ歳のクラリス嬢がパートナーを務め踊られたから。
本来、夜会のパートナーには婚約者を連れる。
婚約者がいて同伴が難しい場合は親戚縁者に頼む。
お互いに婚約者がいない場合でも格式が低い個人的な夜会以外親戚縁者に頼む。
だから普通に親戚縁者だと思った。
私は、知り合いのお茶会で二人が幼馴染みだと知らされた。
その話を聞いてどれだけショックだったことか。
ついナディオ様を責めてしまった。
それがいけなかったのだろう。
その後もナディオ様とクラリス嬢は夜会に参加し続けた。
そして翌年の夜会デビューでは、ナディオ様はエスコートはしてくれた。でもそれだけ。
「恥知らずな君にはこれで充分だよね」
そのままダンスも踊らず放置され、ナディオ様はクラリス嬢の元へ行った。
デビュー時、婚約者とのダンスもなく放置された私はいい笑い者だろう。
今では、クラリス嬢がナディオ様の婚約者だと勘違いしている方もいる。二人でずっと夜会に参加して、今日も行くのだろう。
私との夜会の参加はデビュー以来ない。
私はクラーラ・バンデルン。やり手のバンデルン侯爵の冴えない娘。
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