【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて

ゆうぎり

文字の大きさ
2 / 60

1 クラーラの日常

しおりを挟む
 薄暗く、日があまり差し込まない部屋で私は一人書き物をしていた。調べては書きそして計算。繰り返す作業は慣れてはいても面白いものではない。

「クラーラ……おいクラーラ。まだその様な物に時間をかけているのか。相変わらず鈍臭いなお前は。もっとテキパキと仕上げないか」

 怒鳴りつけるナディオ様の声が聞こえた。

「もう少しで終わりますからお待ちください」

 私は格闘している帳簿から目を離さず、ナディオ様に答えた。

「遅い」
「あっ」

 無情にも後少しで終わる帳簿を取りあけられた私は、泣きそうな顔になってしまった。

「鬱陶しい顔をするな」
「もう少しで終わりましたのに……」
「言い訳だけは一人前だな」

 この帳簿はヘインズ子爵家のタウンハウスの帳簿。将来継ぐ予定のナディオ様に与えられた練習を兼ねた仕事。
 私は使途不明金が多いのが気になり、調べていると遅くなっていた。

「ふん、陰鬱な顔をこちらに向けるな。俺まで暗くなりそうだ。そろそろクラリスが来るんだ。帰ってくれ」

 そう言った後、ナディオ様は私を裏口から帰らせた。それは何時ものこと。

 子爵家の正面には馬車が停り、そこから綺麗な女性が降り立った。
 クラリス・バラント男爵令嬢。
 綺麗な金髪がナディオ様とお揃いで、並んでいると美男美女でお似合いと言われる方。


 最初は親戚縁者だと思った。
 ナディオ様が一足早く夜会デビューされた時、同じ歳のクラリス嬢がパートナーを務め踊られたから。

 本来、夜会のパートナーには婚約者を連れる。
 婚約者がいて同伴が難しい場合は親戚縁者に頼む。
 お互いに婚約者がいない場合でも格式が低い個人的な夜会以外親戚縁者に頼む。
 だから普通に親戚縁者だと思った。


 私は、知り合いのお茶会で二人が幼馴染みだと知らされた。
 その話を聞いてどれだけショックだったことか。
 ついナディオ様を責めてしまった。

 それがいけなかったのだろう。
 その後もナディオ様とクラリス嬢は夜会に参加し続けた。

 そして翌年の夜会デビューでは、ナディオ様はエスコートはしてくれた。でもそれだけ。

「恥知らずな君にはこれで充分だよね」

 そのままダンスも踊らず放置され、ナディオ様はクラリス嬢の元へ行った。
 デビュー時、婚約者とのダンスもなく放置された私はいい笑い者だろう。

 今では、クラリス嬢がナディオ様の婚約者だと勘違いしている方もいる。二人でずっと夜会に参加して、今日も行くのだろう。
 私との夜会の参加はデビュー以来ない。


 私はクラーラ・バンデルン。やり手のバンデルン侯爵の冴えない娘。


しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

【完結】どうやら私は婚約破棄されるそうです。その前に舞台から消えたいと思います

りまり
恋愛
 私の名前はアリスと言います。  伯爵家の娘ですが、今度妹ができるそうです。  母を亡くしてはや五年私も十歳になりましたし、いい加減お父様にもと思った時に後妻さんがいらっしゃったのです。  その方にも九歳になる娘がいるのですがとてもかわいいのです。  でもその方たちの名前を聞いた時ショックでした。  毎日見る夢に出てくる方だったのです。

義妹ばかりを溺愛して何もかも奪ったので縁を切らせていただきます。今さら寄生なんて許しません!

ユウ
恋愛
10歳の頃から伯爵家の嫁になるべく厳しい花嫁修業を受け。 貴族院を卒業して伯爵夫人になるべく努力をしていたアリアだったが事あるごと実娘と比べられて来た。 実の娘に勝る者はないと、嫌味を言われ。 嫁でありながら使用人のような扱いに苦しみながらも嫁として口答えをすることなく耐えて来たが限界を感じていた最中、義妹が出戻って来た。 そして告げられたのは。 「娘が帰って来るからでていってくれないかしら」 理不尽な言葉を告げられ精神的なショックを受けながらも泣く泣く家を出ることになった。 …はずだったが。 「やった!自由だ!」 夫や舅は申し訳ない顔をしていたけど、正直我儘放題の姑に我儘で自分を見下してくる義妹と縁を切りたかったので同居解消を喜んでいた。 これで解放されると心の中で両手を上げて喜んだのだが… これまで尽くして来た嫁を放り出した姑を世間は良しとせず。 生活費の負担をしていたのは息子夫婦で使用人を雇う事もできず生活が困窮するのだった。 縁を切ったはずが… 「生活費を負担してちょうだい」 「可愛い妹の為でしょ?」 手のひらを返すのだった。

婚約破棄されたので公爵令嬢やめます〜私を見下した殿下と元婚約者が膝をつく頃、愛を囁くのは冷酷公爵でした〜

nacat
恋愛
婚約者に裏切られ、蔑まれ、全てを失った公爵令嬢リリアナ。 「あなたのような女、誰が愛すると?」そう言い放った王太子と元友人に嘲られても、彼女は涙を見せなかった。 だが、冷たく美しい隣国の公爵セドリックと出会った瞬間、運命は静かに動き出す。 冷酷と噂された男の腕のなかで、彼女は再び自分を取り戻していく。 そして――彼女を捨てた者たちは、彼女の眩い幸福の前に膝をつく。 「これは、ざまぁを通り越して愛された令嬢の物語。」

婚約破棄した王子は年下の幼馴染を溺愛「彼女を本気で愛してる結婚したい」国王「許さん!一緒に国外追放する」

佐藤 美奈
恋愛
「僕はアンジェラと婚約破棄する!本当は幼馴染のニーナを愛しているんだ」 アンジェラ・グラール公爵令嬢とロバート・エヴァンス王子との婚約発表および、お披露目イベントが行われていたが突然のロバートの主張で会場から大きなどよめきが起きた。 「お前は何を言っているんだ!頭がおかしくなったのか?」 アンドレア国王の怒鳴り声が響いて静まった会場。その舞台で親子喧嘩が始まって収拾のつかぬ混乱ぶりは目を覆わんばかりでした。 気まずい雰囲気が漂っている中、婚約披露パーティーは早々に切り上げられることになった。アンジェラの一生一度の晴れ舞台は、婚約者のロバートに台なしにされてしまった。

本日、私の妹のことが好きな婚約者と結婚いたしました

音芽 心
恋愛
私は今日、幼い頃から大好きだった人と結婚式を挙げる。 ____私の妹のことが昔から好きな婚約者と、だ。 だから私は決めている。 この白い結婚を一年で終わらせて、彼を解放してあげることを。 彼の気持ちを直接聞いたことはないけれど……きっとその方が、彼も喜ぶだろうから。 ……これは、恋を諦めていた令嬢が、本当の幸せを掴むまでの物語。

あなたの絶望のカウントダウン

nanahi
恋愛
親同士の密約によりローラン王国の王太子に嫁いだクラウディア。 王太子は密約の内容を知らされないまま、妃のクラウディアを冷遇する。 しかも男爵令嬢ダイアナをそばに置き、面倒な公務はいつもクラウディアに押しつけていた。 ついにダイアナにそそのかされた王太子は、ある日クラウディアに離縁を突きつける。 「本当にいいのですね?」 クラウディアは暗い目で王太子に告げる。 「これからあなたの絶望のカウントダウンが始まりますわ」

最近彼氏の様子がおかしい!私を溺愛し大切にしてくれる幼馴染の彼氏が急に冷たくなった衝撃の理由。

佐藤 美奈
恋愛
ソフィア・フランチェスカ男爵令嬢はロナウド・オスバッカス子爵令息に結婚を申し込まれた。 幼馴染で恋人の二人は学園を卒業したら夫婦になる永遠の愛を誓う。超名門校のフォージャー学園に入学し恋愛と楽しい学園生活を送っていたが、学年が上がると愛する彼女の様子がおかしい事に気がつきました。 一緒に下校している時ロナウドにはソフィアが不安そうな顔をしているように見えて、心配そうな視線を向けて話しかけた。 ソフィアは彼を心配させないように無理に笑顔を作って、何でもないと答えますが本当は学園の経営者である理事長の娘アイリーン・クロフォード公爵令嬢に精神的に追い詰められていた。

とある令嬢の優雅な別れ方 〜婚約破棄されたので、笑顔で地獄へお送りいたします〜

入多麗夜
恋愛
【完結まで執筆済!】 社交界を賑わせた婚約披露の茶会。 令嬢セリーヌ・リュミエールは、婚約者から突きつけられる。 「真実の愛を見つけたんだ」 それは、信じた誠実も、築いてきた未来も踏みにじる裏切りだった。だが、彼女は微笑んだ。 愛よりも冷たく、そして美しく。 笑顔で地獄へお送りいたします――

処理中です...