【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて

ゆうぎり

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40 ハンスと王太子

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 クラーラがナディオに綺麗なカーテシーをした後、俺に振り向いた。
 今にも泣き出しそうな顔をしているが、必死に涙をこらえている。
 そんな姿のクラーラは保護欲をそそった。

「他の奴に見せたくないな」

 俺の小さな呟きに同意したバートが退出を即す。

「ふざけるな、お前は俺の言う事を聞いていればいいんだクラーラ」

 そんな罵倒が後ろから聞こえるが、俺達は無視した。
 クラーラは、涙を零さず微笑む事に必死でうるさいナディオを気にもしていない。

 いつも喚くばかりのナディオの声を、スルーするすべを身につけているのだろう。
 そう思うとクラーラのこれ迄の事が切なく感じた。


「はい、そこの殿下。ご自分が言ったのですから、目障りなこいつらを牢にちゃっちゃと入れてしまって下さい」

 俺達は閉じた扉のところ迄優雅に歩いていった。
 会場を退出前にくるりと振り返り、バートが成り行きを伺っていた殿下に一声かけた。

 警備の増員は済ませているのだから、後は殿下の号令待ちなのだろう。
 下準備は手配したが全て任されても困るとでも言う様に、呆れを含んだ声だった。
 俺もバートと同意見だ。

「殿下、後片付けは頼みましたよ。さあクラーラ、マーナ。侍従に頼んで着替えを屋敷から取り寄せてある。ここは殿下に任せて、一旦退出しようか」

 クラーラとマーナを気にかけながら、殿下へ一旦いとまの意志を伝える。

「せっかくの王太子の夜会パーティなのだから、これから楽しく盛り上げてくれるだろう」
「自信があって、あの愚か者達を入れたと思われるしな」

 この場での主催は殿下で、この痴れ者達を招いたのも殿下なのだ。
 当然今回の趣旨に合わせた招待客を楽しませるのも、殿下の役目だろう。

 そんなバートとの会話に殿下は呆然としている。

「殿下、クラーラとマーナの体調次第でそのまま帰宅か再度夜会に参列か判断致します」
「頑張ってこの場を切り盛りして下さい」
「手腕期待しております、殿下」

 俺とバートで更に殿下に追い討ちをかけた。
 遠くて詳しい表情までは見えなかったが、ナディオとクラリスが慌てふためいている。
 本当に会場に王太子がいる事がわかったのだろうが、今更遅い。


「あぁ、皆様。今宵は愚かな者の末路を楽しんで頂けたと思いますが、くれぐれも他言無用でお願いしますよ。では殿下、一旦御前失礼します」

「ま、待てハンス、バート、この場を楽しくとか……」

 無理と続くであろう言葉は無情にも扉に阻まれて、俺達には聞こえなかった。




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