【完結】婚約破棄はお受けいたしましょう~踏みにじられた恋を抱えて

ゆうぎり

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39 クラーラのナディオとの決別

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 私はくるりとナディオ様に背を向け、ある物を取りに行った。
 周りからは変に思われたかもしれない。
 でも構わない。
 ナディオ様との最後の機会だから、私の出来る精一杯な事をしよう。

 ずっとただナディオ様を見ていた私が、隣にいるクラリス嬢を注視して気づいたから。
 そして思ったから……最後も私からプレゼントを渡そうと、そう思った。

 クラリス嬢の下品にギラギラと着飾ったドレスの中に、見覚えのある装飾品があった。
 その小さくても金色に輝く装飾品は、私がナディオ様の夜会デビューの記念に差し上げた物の片割れだった。

 ヘインズ子爵領で採掘された、不思議な金の光沢のある鉱石を加工した物。
 将来子爵領を担うナディオ様に相応しい様に、吟味して誂えたものだった。
 その二つ並びの装飾品をばらして作り直されていた。
 まるで金髪の二人の色をお互い纏う様に。

 思えば私はナディオ様からプレゼントを貰ったことが無い。
 いつも渡すのは私のみだった。
 だから今回も気持ちを込めて渡そう。


 私は少し離れた壁際の萎れた花を取りナディオ様の前に立った。
 周りが固唾を呑んで見守っているさまを肌で感じた。

「ナディオ様、差し上げますわ」

 萎れた花を、崩れ落ちているナディオ様の顔の前に差し出す。

「は?何だこれは?」
「私からの気持ちを込めた最後のプレゼントですわ」

 私はこれまでにない位の笑顔を頑張って作った。

「こんな枯れた物いるか!」
「そうですか……私達の関係を表す良いプレゼントだと思ったのですが……」

 恋は花と同じだと思う。
 水をやらなければ萎れ枯れていってしまうもの。

 受け取り拒否をされた可哀想な花を、私はナディオ様の膝の所に投げ捨てた。

「兄が受理した婚約破棄ですが、私も賛成致します。今までありがとうございました」

 綺麗に見える様に指の先迄意識したカーテシーをして、お兄様達に振り向く。
 私は今上手に微笑んでいるかわからないが、涙だけは零さないように頑張った。


 私はやり手のバンデルン侯爵の娘だから。
 ナディオ様と私の婚約はあくまで父の政略によるもの。
 そう周囲に印象づけなければならない。
 そしてこの様な騒動を起こした愚かな二人とは違うのだと、同列に見られないようにしなければならない。

 お兄様とバート様が何やら指示をしていた様だが、私はそれ所ではなく必死で微笑みを浮かべ会場を後にした。

 用意された部屋のバタンと閉まる扉の音と、お兄様のもういいよという優しい声で私の瞳は決壊した。
 瞬きする度に大粒となって零れ落ちる涙は止めるすべを知らず。

「お嬢様、目は擦らないでくださいませ」

 リリーの焦った声と冷たい布が心地よかった。



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