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第18話 付き合って
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次の日、いつものように一時限目の終わりに学校に着くと、クラスメイトが口々に何か話し合っていた。
『部活』って言葉が聞こえて、手近な男子に訊く。
「何かあったのか?」
「ああ、四季。今朝アーヤが突然、『実績のない部活動の所属禁止』って言い出したんだよ」
ははぁん。早速何とかしてくれたんだな。
「つまり、幽霊部員は禁止って事か?」
「うん。一ヶ月以上活動してない部活は、過去に遡(さかのぼ)って退部だって。再入部は、事情がない限り、原則として一ヶ月後」
ナイス、綾人。これでハシユカに付きまとわれなくて済む。
「ふぅん。サンキュ」
上がってしまいそうになる口角を、頬をかくフリをして隠しながら、俺は気のない素振りで席に向かった。
「四季、おはよ!」
ハシユカが、八重歯を見せた後、拗ねたように唇を尖らせた。
可愛いのは認めるけど、押しかけ女房は、迷惑でしかない。
「昨日、一緒に帰ろうと思ってたのに、何で先に帰っちゃったの?」
人の話を聞かない奴には、直球、しかも剛速球に限る。
「迷惑だから」
だけど、やっぱりハシユカには効かなかった。
「照れなくってもいいのに」
「照れてねぇよ。察しろよ。迷惑なんだよ」
「あん、冷たい、四季。でもそんなところも素敵」
駄目だ……日本語が通じてない。
俺はさっさと背を向けて、椅子に座った。
二時限目のチャイムが鳴って、食パンメンが待ち構えていたように入ってくる。
「はい! 席に着いて! 始めるよ!」
粛々と授業が始まる。食パンメンの正義漢に、助けられる形になった。
――ツン、ツン。
だけど少しあって、背中をつつかれる感触に、俺は本当に頭を抱えた。
無視してたら、背中が叩かれる。軽く音がして、黒板にチョークを走らせていた食パンメンが、ふっと振り返った。
マズい。相手してやらねぇと、目立つ羽目になる。
再び黒板に向かう食パンメンの目を盗んで振り返ると、昨日と同じハート型に折られたメモが渡された。
無視したら、また叩かれるんだろうな。俺は溜め息をつきながら、苦労してその変形折りを開いた。
内容を読んで、スッと血の気が引いた。
『四季、アーヤと付き合ってるの?』
慌ててノートの端を破って、返事を書く。
『はあ? そんな訳ないだろ。よくそんな発想、思い浮かぶな』
またメモが返ってきた。今度は、シンプルに四つ折り。
『だって、昨日の今日でいきなり、ゆうれい部員禁止になったから』
これが、女の勘ってやつか。結論に達するのが速過ぎて、恐れおののく。
『たまたまだろ。ゆうれい部員が多すぎんだ』
『でも虫さされかと思ったけど、アーヤの部屋から出て来た四季、首にキスマークついてたし』
それを読んだ俺は咄嗟に、首に手を当ててしまった。
立て続けにメモがくる。
『へえ、そうなんだ。そう言えば、好きなタイプ、男子じゃなくて男って言ってたしね』
しまった。カマかけられた……!
『現役の生徒と副理事なんて、バレたら事件だよね。黙ってるかわり、あたしとも付き合って』
俺は口元を覆って青くなった。血の気が引いてくのが分かる。
今バラされたら、俺は退学、綾人はクビだろう。
嫌だけど、綾人以外を好きになることなんか出来ないけど、言うことをきくしかないのかもしれない。
『四季、返事は? 返事くれなきゃ、休み時間入ったらバラすよ』
俺は震える手で、ノートの切れ端にシャーペンの先を当てた。
――パキッ。
力みすぎて、芯が折れる。
『分かった』
それだけ書くのが、精一杯だった。
『部活』って言葉が聞こえて、手近な男子に訊く。
「何かあったのか?」
「ああ、四季。今朝アーヤが突然、『実績のない部活動の所属禁止』って言い出したんだよ」
ははぁん。早速何とかしてくれたんだな。
「つまり、幽霊部員は禁止って事か?」
「うん。一ヶ月以上活動してない部活は、過去に遡(さかのぼ)って退部だって。再入部は、事情がない限り、原則として一ヶ月後」
ナイス、綾人。これでハシユカに付きまとわれなくて済む。
「ふぅん。サンキュ」
上がってしまいそうになる口角を、頬をかくフリをして隠しながら、俺は気のない素振りで席に向かった。
「四季、おはよ!」
ハシユカが、八重歯を見せた後、拗ねたように唇を尖らせた。
可愛いのは認めるけど、押しかけ女房は、迷惑でしかない。
「昨日、一緒に帰ろうと思ってたのに、何で先に帰っちゃったの?」
人の話を聞かない奴には、直球、しかも剛速球に限る。
「迷惑だから」
だけど、やっぱりハシユカには効かなかった。
「照れなくってもいいのに」
「照れてねぇよ。察しろよ。迷惑なんだよ」
「あん、冷たい、四季。でもそんなところも素敵」
駄目だ……日本語が通じてない。
俺はさっさと背を向けて、椅子に座った。
二時限目のチャイムが鳴って、食パンメンが待ち構えていたように入ってくる。
「はい! 席に着いて! 始めるよ!」
粛々と授業が始まる。食パンメンの正義漢に、助けられる形になった。
――ツン、ツン。
だけど少しあって、背中をつつかれる感触に、俺は本当に頭を抱えた。
無視してたら、背中が叩かれる。軽く音がして、黒板にチョークを走らせていた食パンメンが、ふっと振り返った。
マズい。相手してやらねぇと、目立つ羽目になる。
再び黒板に向かう食パンメンの目を盗んで振り返ると、昨日と同じハート型に折られたメモが渡された。
無視したら、また叩かれるんだろうな。俺は溜め息をつきながら、苦労してその変形折りを開いた。
内容を読んで、スッと血の気が引いた。
『四季、アーヤと付き合ってるの?』
慌ててノートの端を破って、返事を書く。
『はあ? そんな訳ないだろ。よくそんな発想、思い浮かぶな』
またメモが返ってきた。今度は、シンプルに四つ折り。
『だって、昨日の今日でいきなり、ゆうれい部員禁止になったから』
これが、女の勘ってやつか。結論に達するのが速過ぎて、恐れおののく。
『たまたまだろ。ゆうれい部員が多すぎんだ』
『でも虫さされかと思ったけど、アーヤの部屋から出て来た四季、首にキスマークついてたし』
それを読んだ俺は咄嗟に、首に手を当ててしまった。
立て続けにメモがくる。
『へえ、そうなんだ。そう言えば、好きなタイプ、男子じゃなくて男って言ってたしね』
しまった。カマかけられた……!
『現役の生徒と副理事なんて、バレたら事件だよね。黙ってるかわり、あたしとも付き合って』
俺は口元を覆って青くなった。血の気が引いてくのが分かる。
今バラされたら、俺は退学、綾人はクビだろう。
嫌だけど、綾人以外を好きになることなんか出来ないけど、言うことをきくしかないのかもしれない。
『四季、返事は? 返事くれなきゃ、休み時間入ったらバラすよ』
俺は震える手で、ノートの切れ端にシャーペンの先を当てた。
――パキッ。
力みすぎて、芯が折れる。
『分かった』
それだけ書くのが、精一杯だった。
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