【BL】『Ωである俺』に居場所をくれたのは、貴男が初めてのひとでした

 この世界は、αとβとΩで出来てる。
 生まれながらにエリートのαや、人口の大多数を占める『普通』のβにはさして意識するほどの事でもないだろうけど、俺たちΩにとっては、この世界はけして優しくはなかった。

 今日も寝坊した。二学期の初め、転校初日だったけど、ワクワクもドキドキも、期待に胸を膨らませる事もない。何故なら、高校三年生にして、もう七度目の転校だったから。
 
 βの両親から生まれてしまったΩの一人息子の行く末を心配して、若かった父さんと母さんは、一つの罪を犯した。
 小学校に入る時に義務付けられている血液検査日に、俺の血液と父さんの血液をすり替えるという罪を。
 従って俺は戸籍上、β籍になっている。

 あとは、一度吐(つ)いてしまった嘘がバレないよう、嘘を上塗りするばかりだった。
 俺がΩとバレそうになる度に転校を繰り返し、流れ流れていつの間にか、東京の一大エスカレーター式私立校、小鳥遊(たかなし)学園に通う事になっていた。

 今まで、俺に『好き』と言った連中は、みんなΩの発情期に当てられた奴らばかりだった。
 だから『好き』と言われて、ピンときたことはない。

 だけど。優しいキスに、心が動いて、いつの間にかそのひとを『好き』になっていた。
 学園の事実上のトップで、生まれた時から許嫁が居て、俺のことを遊びだと言い切るあいつを。
 どんなに酷いことをされても、一度愛したあのひとを、忘れることは出来なかった。

 『Ωである俺』に居場所をくれたのは、貴男が初めてのひとだったから。
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