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第31話 抱いてくれ
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「シィ! やめっ……」
「四季くん、ぼく……四季くんが『好き』」
そう言って、俺のスラックスのジッパーを下ろす。発情期の俺の分身は、飛び出すようにして下着の前を押し上げてた。
俺より小柄で細いのに、Ωの発情に当てられたαのシィは、物凄い力で迫ってくる。息が荒い。
「四季くん……」
「綾人!!」
届く筈はないと知りながら、思わず俺は呼んでいた。ナベの時みたいに、助けに来てくれる気がして。
でも。すぐに絶望が口を塞ぐ。
綾人は今、華那とヤってる。来る訳がない。
それに前回は、外れの副理事長室の前のトイレだったけど、保健室は教室のすぐ隣だ。
綾人じゃなくて、他の先生か生徒が来て、Ωとバレる確率の方が遥かに高かった。
俺は、シィと格闘する。抑制剤さえ飲めれば……。
だけどシィは、俺の唇に噛み付いた。キスですらない荒っぽい本能に、シィは何もかも初めてなんじゃないかと思う。
天才子役って祭り上げられてたし、友達も居ないって言ってたし。
シィとヤっちまったら、友情の芽も摘まれるだろう。
俺は細腕の下で、必死に抗った。
合気道なんて、この密着した状況じゃ、何の役にも立たなかった。
「シィ、やめろ、シィ!」
破きかねない勢いで、スラックスのボタンが外される。
素肌の分身に、シィがむしゃぶりついてきた。
「あ・や……っ!」
心では拒んでも、発情期の身体には、目も眩(くら)むような快感だった。
マズい。太刀打ち出来ない。
「綾人……っ」
「うっ」
後ろからシィのこめかみに拳が入り、グッタリと気を失った。
「四季、大丈夫か」
綾人だった。俺は、信じられない光景に言葉が出ない。
倒れたシィを別のベッドに寝かせて、綾人は辛そうにレンズの奥の瞳を眇めた。
「抑制剤を飲め」
「う、うん」
俺はスラックスのポケットに常備している抑制剤を二錠、噛んで飲み込んだ。
普通は一錠だけど、即効性を出すには、二錠飲まないといけない。
綾人が俺に肩を貸して、すでに四時限目の始まっているシンとした廊下を歩き出す。
俺は、半ば引きずられるようにして、副理事長室に運び込まれた。
高級デスクにもたれかかって、何とか立つ。
「華那は……?」
「帰った」
「もう?」
俺は熱くなる身体の芯から気を逸らせようと、綾人と会話する。
「ヤったんじゃねぇの?」
「一分でイったら、怒って帰った。華那には十六の時から、猛者揃いの夜伽(よとぎ)相手が居るんだ。その内、早漏の俺に愛想を尽かすかもな」
違和感が芽生える。
綾人は、『私』じゃなく『俺』って言った。
でも尋ねる前に、綾人は踵を返した。
「四季。ここで抑制剤が効くまで、ゆっくり休め。俺は出て行く」
『四季』。名前を呼ばれるのは、こんなに心地良いもんだったか。
背筋がゾクリとして、首を竦めた。
「待てよ」
俺は綾人の手首を掴んだ。発情期のせいで、さして力は込められなかったけど、綾人は振り返らないまま止まって訊いた。
「何だ」
「綾人も、発情してんだろ」
「ああ。だから出て行く」
後ろから、綾人の広い背中に抱き付いて頬擦りする。
「やめろ……!」
「Ωは、初めてをレイプで奪われることが多いって、知ってるだろ。俺、初めては綾人とシてぇ」
「駄目だ。今シたら、後悔する」
「綾人が華那とヤってんの見て、発情したんだ。責任、取ってくれよ」
後ろから手を伸ばして綾人の前を握ると、カチカチに勃っていた。握ると、堪えきれない呻きが上がる。
「綾人……抱いてくれ」
「四季……!」
それまで紳士だった綾人は、人が変わったように俺の上半身を高級デスクに押し倒し、ブレザーの前をボタンを飛ばしてかき開いた。
「四季くん、ぼく……四季くんが『好き』」
そう言って、俺のスラックスのジッパーを下ろす。発情期の俺の分身は、飛び出すようにして下着の前を押し上げてた。
俺より小柄で細いのに、Ωの発情に当てられたαのシィは、物凄い力で迫ってくる。息が荒い。
「四季くん……」
「綾人!!」
届く筈はないと知りながら、思わず俺は呼んでいた。ナベの時みたいに、助けに来てくれる気がして。
でも。すぐに絶望が口を塞ぐ。
綾人は今、華那とヤってる。来る訳がない。
それに前回は、外れの副理事長室の前のトイレだったけど、保健室は教室のすぐ隣だ。
綾人じゃなくて、他の先生か生徒が来て、Ωとバレる確率の方が遥かに高かった。
俺は、シィと格闘する。抑制剤さえ飲めれば……。
だけどシィは、俺の唇に噛み付いた。キスですらない荒っぽい本能に、シィは何もかも初めてなんじゃないかと思う。
天才子役って祭り上げられてたし、友達も居ないって言ってたし。
シィとヤっちまったら、友情の芽も摘まれるだろう。
俺は細腕の下で、必死に抗った。
合気道なんて、この密着した状況じゃ、何の役にも立たなかった。
「シィ、やめろ、シィ!」
破きかねない勢いで、スラックスのボタンが外される。
素肌の分身に、シィがむしゃぶりついてきた。
「あ・や……っ!」
心では拒んでも、発情期の身体には、目も眩(くら)むような快感だった。
マズい。太刀打ち出来ない。
「綾人……っ」
「うっ」
後ろからシィのこめかみに拳が入り、グッタリと気を失った。
「四季、大丈夫か」
綾人だった。俺は、信じられない光景に言葉が出ない。
倒れたシィを別のベッドに寝かせて、綾人は辛そうにレンズの奥の瞳を眇めた。
「抑制剤を飲め」
「う、うん」
俺はスラックスのポケットに常備している抑制剤を二錠、噛んで飲み込んだ。
普通は一錠だけど、即効性を出すには、二錠飲まないといけない。
綾人が俺に肩を貸して、すでに四時限目の始まっているシンとした廊下を歩き出す。
俺は、半ば引きずられるようにして、副理事長室に運び込まれた。
高級デスクにもたれかかって、何とか立つ。
「華那は……?」
「帰った」
「もう?」
俺は熱くなる身体の芯から気を逸らせようと、綾人と会話する。
「ヤったんじゃねぇの?」
「一分でイったら、怒って帰った。華那には十六の時から、猛者揃いの夜伽(よとぎ)相手が居るんだ。その内、早漏の俺に愛想を尽かすかもな」
違和感が芽生える。
綾人は、『私』じゃなく『俺』って言った。
でも尋ねる前に、綾人は踵を返した。
「四季。ここで抑制剤が効くまで、ゆっくり休め。俺は出て行く」
『四季』。名前を呼ばれるのは、こんなに心地良いもんだったか。
背筋がゾクリとして、首を竦めた。
「待てよ」
俺は綾人の手首を掴んだ。発情期のせいで、さして力は込められなかったけど、綾人は振り返らないまま止まって訊いた。
「何だ」
「綾人も、発情してんだろ」
「ああ。だから出て行く」
後ろから、綾人の広い背中に抱き付いて頬擦りする。
「やめろ……!」
「Ωは、初めてをレイプで奪われることが多いって、知ってるだろ。俺、初めては綾人とシてぇ」
「駄目だ。今シたら、後悔する」
「綾人が華那とヤってんの見て、発情したんだ。責任、取ってくれよ」
後ろから手を伸ばして綾人の前を握ると、カチカチに勃っていた。握ると、堪えきれない呻きが上がる。
「綾人……抱いてくれ」
「四季……!」
それまで紳士だった綾人は、人が変わったように俺の上半身を高級デスクに押し倒し、ブレザーの前をボタンを飛ばしてかき開いた。
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