【BL】『Ωである俺』に居場所をくれたのは、貴男が初めてのひとでした

圭琴子

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第37話 初愛

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「んっ……ふ、ぁ」

 焦るように何度も角度を変えて唇を啄まれ、発情期の熱はどんどん上がってく。
 舌が深く差し込まれ、上顎の奥を舐められて、その切なさに喘ぎが漏れた。
 でも僅かに残った理性が、苦い味を拒絶する。昨日排卵した、Ωの本能かも知れなかった。

「や、綾、人。苦い……っ。煙草、やめろ」

「やめたぞ?」

「苦い」

「唇に何か、塗っていないか?」

「あ……」

 そう言えば、ポニーに薬を塗られたっけ。あれが苦かった。

「綾人、煙草、やめたのか?」

「ああ。四季との子供が出来たら、どっちみちやめるからな」

 子供。綾人との未来。家族。
 綾人は、本気で考えてくれてんだ。そう思うと、目頭がツンと熱くなった。
 昨日自分で不器用につけたボタンが、今度は弾け飛ぶ事なく、器用に次々と外されてく。
 前がはだけられると、淡い色付きを舌で転がされた。

「アッ」

 ビクン、と身体が跳ねた。
 たったそれだけの刺激で、身体中がドクンドクンと、分身を中心に脈打ち出す。
 綾人がスーツのジャケットを手早く脱いで、俺の下半身の下に敷いた。

「四季、ちょっと腰上げろ」

「……ん」

 俺の素肌がコンクリートに触れないようにしてから、綾人はスラックスを下着ごと取り去った。
 秋晴れとはいえ、風はヒンヤリしてる。
 初めてそこに触れる外気の冷たさに、俺はブルッと肩を震わせた。

「四季も、カチカチだな」

「やっ……見んな」

 言葉通り、俺の分身はとうに勃ち上がって、透明な雫をトロトロと零してる。
 恥ずかしくて、手の甲で顔を隠すと、手首を掴まれ、チュッと触れるだけのキスをされた。

「隠すな。全部、見せてくれ。俺の四季」

 呼ばれると、子宮がヒクつくのが分かる。

「孔も、もうびしょびしょだな。口を開けて待ってる」

 耳元で囁かれ、そんな恥ずかしいこと否定したいのに、ますます後ろの孔が疼くのが分かる。

「恥ずかし……っ」

「大丈夫だ。綺麗だ、四季」

 孔の周りを掠めるようになぞったあと、性急に指が何本か入ってくる。すぐに子宮口を見つけ出し、大きく緩急をつけて突かれ、拡げられた。

「あっ・それ・駄目・イくっ」

「イけ。苦しいだろう」

 片手では子宮口を、片手では分身を責められる。
 悔しいくらいの巧みさで、若い俺の雄は、あっという間に弾けた。

「は・やぁっ・んン――ッ!!」

 へそのくぼみに、白い精液が溜まる。昨日出したばかりだから、水っぽく量もそんなに多くなかった。

「んんっ」

 ヒクつく孔に、待ち侘びた綾人の灼熱が宛がわれる。ジリジリと、焦らすように時間をかけて挿入された。
 かなりの太さに、一番太い所が通る時は、じわりと痛みが走った。
 でもその後は、スムーズに挿入(はい)る。

「動いて、大丈夫か?」

 訊かれて、薄ら瞑っていた瞼を上げると、酷く余裕のないカオが目に入った。
 ワイルドな頬はセクシーに歪み、その男臭さに子宮がまた反応する。

「綾人……良いぞ、来い」

 途端、激しい突き上げがきた。
 俺は嵐に揉まれる小舟のように、揺すり上げられてガクガクと顎を上下させる。

「あ・あ・ぁんっ、綾・人っ」

「四季……四季、優しく出来なくて、すまない。限界なんだ」

「良いぞ、綾人っ、優しくなくても良い、滅茶苦茶にして……っ!」

 俺も、発情期の熱に浮かされて叫ぶ。
 愛液と腸液で潤ったナカは、ぬるぬるで熱くてキツくて、本能のまま腰を動かす度に、互いに快感の呻きを上げる。
 イったばかりの分身を扱かれると、未知の感覚が身体の芯を痺れさせた。
 
「あ・あっ・何か、クる……っ」

 戸惑って口走ると、扱く動きが速くなった。
 後ろが綾人の形に沿うようにキツく締まり上がるのと同時、前から透明な液体がプシャアと撒き散らされる。
 あれ……いつもと違う。これ、何? すっごくイイ……!
 だけどそんな思考は、ガンガンと突き上げられる過ぎる快楽に、散り散りになってしまう。

「あっあ・ひゃ・あんっ」

「四季……っ!」

 最後に綾人は、俺の尻に腰を思いっきり叩き付けた。肉と肉のぶつかり合う音が、パァンと響く。
 そしてイく瞬間抜いて、俺の薄い腹筋の上に、愛欲の証を吐き出した。

「はぁ……」

「……四季」

 耳元で呼ばれると、子宮が蠢く。
 綾人、分かっててわざと、やってんじゃないだろうな……。
 息を弾ませながら視線を合わせたら、快感に掠れた声で囁かれた。

「愛している」

「俺も……っ」

「俺も……何だ?」

 俺は今まで激しく求め合ってたのが嘘みたいに、ポンと赤くなる。

「ドS」

「またツンデレか、四季」

 残念そうに笑って、綾人は俺の涙ぼくろに口付ける。そこは、快感の涙に濡れていた。

「初めてで潮を噴くとは、感度が良いな。だが……すまなかった。発情に当てられて、酷く抱いてしまった」

「んなの……綾人と初めて出来ただけで、嬉しい」

 照れ臭かったけど、素直に口にした。
 すると、俺の分身に触れていた綾人の雄が質量を増す。

「んっ。駄目、綾人。二回もヤったら、立てなくなる」

「お前が可愛いことを言うからだ」

 昨日とは別人のように、綾人は甘やかに笑って口付けてくる。
 幸せだった。何も刺激はされてないのに、子宮がきゅんきゅんする。
 Ωとしての、最上級の悦(よろこ)びだった。
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