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⑩見送り
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次の日、窓の外では東の空が白み始めた早朝。ロティルはフード付きの暗緑色のマントを纏い身支度を終えると荷物を担ぎ、部屋を出る準備を終えた。ベッドの布団も綺麗に畳み整えてある。
問屋を見に行って 足りないのは買い足して あと納品と⋯⋯それから家にも寄っておくか
カヤミに 今日出発するって言ってなかったな
「よし、行こ。 ま、すぐ戻るけどね⋯⋯」
ロティルは自分自身に声掛けをし、病み上がりの身体に気合いを入れる。部屋をそっと出て極力、音を出さないように慎重にドアを閉めた。
すると薄暗い廊下の照明の中、隣の部屋のドアがゆっくりと開いていく。白っぽい影が視界に入り、心臓が大きく跳ね上がる。
現れたのは紺色の長袖シャツに白いズボン姿のカヤミ。恐らく寝間着なのだろう。シャツはサイズが合っていないのか首元の開きが大きく、鎖骨が少し見え隠れしている。サラリとした青髪をかき上げながら、時間を考え控えめな声で話しかけてきた。
「⋯⋯出発するんですか」
「カヤミ⋯⋯! 焦った⋯⋯っ そ うだけど⋯⋯どうして」
「ポーラが昨日言ってたから」
「あ、だから知って でも、こんな時間に⋯⋯
俺がうるさくて、また起きちゃった⋯⋯ !?」
以前、ホウキを倒した音で起こしてしまった。また同じような事をしでかしたのかとロティルは懸念する。なだめるような穏やかな声でカヤミはそれを否定した。
「⋯⋯違いますよ。朝早いらしいって聞いたから。いつもこんな時間に出てるんですか」
「⋯⋯うん⋯⋯何となくね。 え、じゃあ⋯⋯もしかして見送り?」
「まぁ、結果的には。 あと」
カヤミが小さなガラスの容器を差し出す。中身は折られた薄茶色の小さな包み紙が数個。ロティルは見慣れているので何かは、すぐに理解した。
「⋯⋯粉薬」
「俺より薬草に詳しい人だから現地調達も出来るし、意味はないかもしれないけど⋯⋯その、左腕の傷用の化膿止めです。一応、あれば安心だから」
「俺に⋯⋯?」
気後れして遠慮がちな態度で、口ごもり気味に説明するカヤミ。細い首筋やうなじ辺りを触って落ち着きがない。顔は無表情を装っているが、控えめな照明の中でも分かるくらいには紅潮している。
だが、顔の赤さはロティルの方が圧倒的だった。自身の髪色と近いくらいの一目でわかる赤面。
わざわざ 俺の為に?
あ⋯⋯また 初めて見る顔をしてる
まさかの見送りをしてくれた上に、この気遣いをされ、喜ばない訳がない。
「どうしよう、泣きそうかも。俺、涙腺強くないんだけど」
「流石に、それは大袈裟⋯⋯」
「だって感激するでしょ ⋯⋯こんな」
「⋯⋯ 俺は、あくまで傷の心配をしてるだけなんで」
相変わらずな態度のカヤミだが、ロティルの喜びようが想像を上回って、どう反応したら良いのかわからなくて困った表情をしている。
「それでもいいよ。理由は何でも、俺が嬉しいことに変わりはない。ものすごく嬉しい⋯⋯! ありがとう」
「⋯⋯嬉しいって何回言って⋯⋯そういうの よくサラッと言いますよね、いつも」
「本当じゃなきゃ、俺は言えないから」
喜びに溢れた満面の笑みでお礼を言うロティルに、冷めたような捻くれた意見のカヤミ。真っ直ぐ見られるのが苦手で戸惑い、どうしても視線をそらしてしまう。
「⋯⋯っ 確かに嘘は上手くなさそうですね」
「はははっ うん、それ よく言われる!」
皮肉めいた言葉にも、困り眉の笑顔で楽しそうに声を出してロティルは笑う。受け取った薬の容器を頬を緩ませながら、しばらく眺めたあと、腰に付けたポーチに大切にしまった。
「ありがと⋯⋯ お守りにして必要になったらちゃんと使う。今回は10日で帰ってくる予定だけど」
「気をつけて。特に体調を」
「了解。また10日後。じゃあ行くね」
ロティルが背中を向けた後、カヤミがその後ろ姿に向かって言う。
「⋯⋯いってらっしゃい」
「! ⋯⋯行ってきます!」
ロティルは振り返るとまた笑顔で返し、手を振った。カヤミは穏やかな視線だが、まだ笑ってはいない。
問屋を見に行って 足りないのは買い足して あと納品と⋯⋯それから家にも寄っておくか
カヤミに 今日出発するって言ってなかったな
「よし、行こ。 ま、すぐ戻るけどね⋯⋯」
ロティルは自分自身に声掛けをし、病み上がりの身体に気合いを入れる。部屋をそっと出て極力、音を出さないように慎重にドアを閉めた。
すると薄暗い廊下の照明の中、隣の部屋のドアがゆっくりと開いていく。白っぽい影が視界に入り、心臓が大きく跳ね上がる。
現れたのは紺色の長袖シャツに白いズボン姿のカヤミ。恐らく寝間着なのだろう。シャツはサイズが合っていないのか首元の開きが大きく、鎖骨が少し見え隠れしている。サラリとした青髪をかき上げながら、時間を考え控えめな声で話しかけてきた。
「⋯⋯出発するんですか」
「カヤミ⋯⋯! 焦った⋯⋯っ そ うだけど⋯⋯どうして」
「ポーラが昨日言ってたから」
「あ、だから知って でも、こんな時間に⋯⋯
俺がうるさくて、また起きちゃった⋯⋯ !?」
以前、ホウキを倒した音で起こしてしまった。また同じような事をしでかしたのかとロティルは懸念する。なだめるような穏やかな声でカヤミはそれを否定した。
「⋯⋯違いますよ。朝早いらしいって聞いたから。いつもこんな時間に出てるんですか」
「⋯⋯うん⋯⋯何となくね。 え、じゃあ⋯⋯もしかして見送り?」
「まぁ、結果的には。 あと」
カヤミが小さなガラスの容器を差し出す。中身は折られた薄茶色の小さな包み紙が数個。ロティルは見慣れているので何かは、すぐに理解した。
「⋯⋯粉薬」
「俺より薬草に詳しい人だから現地調達も出来るし、意味はないかもしれないけど⋯⋯その、左腕の傷用の化膿止めです。一応、あれば安心だから」
「俺に⋯⋯?」
気後れして遠慮がちな態度で、口ごもり気味に説明するカヤミ。細い首筋やうなじ辺りを触って落ち着きがない。顔は無表情を装っているが、控えめな照明の中でも分かるくらいには紅潮している。
だが、顔の赤さはロティルの方が圧倒的だった。自身の髪色と近いくらいの一目でわかる赤面。
わざわざ 俺の為に?
あ⋯⋯また 初めて見る顔をしてる
まさかの見送りをしてくれた上に、この気遣いをされ、喜ばない訳がない。
「どうしよう、泣きそうかも。俺、涙腺強くないんだけど」
「流石に、それは大袈裟⋯⋯」
「だって感激するでしょ ⋯⋯こんな」
「⋯⋯ 俺は、あくまで傷の心配をしてるだけなんで」
相変わらずな態度のカヤミだが、ロティルの喜びようが想像を上回って、どう反応したら良いのかわからなくて困った表情をしている。
「それでもいいよ。理由は何でも、俺が嬉しいことに変わりはない。ものすごく嬉しい⋯⋯! ありがとう」
「⋯⋯嬉しいって何回言って⋯⋯そういうの よくサラッと言いますよね、いつも」
「本当じゃなきゃ、俺は言えないから」
喜びに溢れた満面の笑みでお礼を言うロティルに、冷めたような捻くれた意見のカヤミ。真っ直ぐ見られるのが苦手で戸惑い、どうしても視線をそらしてしまう。
「⋯⋯っ 確かに嘘は上手くなさそうですね」
「はははっ うん、それ よく言われる!」
皮肉めいた言葉にも、困り眉の笑顔で楽しそうに声を出してロティルは笑う。受け取った薬の容器を頬を緩ませながら、しばらく眺めたあと、腰に付けたポーチに大切にしまった。
「ありがと⋯⋯ お守りにして必要になったらちゃんと使う。今回は10日で帰ってくる予定だけど」
「気をつけて。特に体調を」
「了解。また10日後。じゃあ行くね」
ロティルが背中を向けた後、カヤミがその後ろ姿に向かって言う。
「⋯⋯いってらっしゃい」
「! ⋯⋯行ってきます!」
ロティルは振り返るとまた笑顔で返し、手を振った。カヤミは穏やかな視線だが、まだ笑ってはいない。
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