異世界からきた青年医師に恋する剣士の こじらせ片想い〜紫になるまで〜

素麺えす

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⑪幼なじみ

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 ジゼ達の家に寝泊まりしている為、ほとんど戻っていないロティルの自宅のある町。親類にあたる年配の男性に家の鍵を預けてあり、掃除だけはたまにしてもらっている。
 海辺の町を出てから、それほど急がない速度で別の土地へ赴き、薬草を数カ所で買い付け。可能な納品は済ませ9日間経過し、本日で出発してから10日目。家に寄って近場で採取をしたら、治療院へ戻る予定だ。


 半年ぶりくらいの帰宅。必要な家具や物は揃っているが、生活感は ほとんどなく、棚には薬草の瓶がぎっしりと詰めてある。あまり普通とは呼べない異質な部屋であった。

「着替えの補充と。院に置かせてもらう分、増やそうかな⋯⋯向こうにいる時間が圧倒的に多いし、これからは もっと増えるかも⋯⋯」

 口元を押さえたロティルの脳裏にカヤミの顔が過ぎる。


「ロティルカレア! 帰ってたんだ!」

 弾んだ大きな声で自身の名を呼ばれる。淡い緑の髪でセミロングの女性が玄関先に立っていた。ロティルのマントと似ているフード付きの服で袖は無い。それをチューブトップの上に羽織り、短いスカートを履いている。

「レラフィナ」
 
 レラフィナは幼なじみで10歳くらいから知っている。年齢はロティルより3つ下で19歳になる。

「おかえりなさいっ! 半年ぶりじゃない!?」
「そうだっけ? そんなに経ってたか」

 側に来てロティルの腕に迷いなく触れ、キラキラとした瞳で幼なじみの久しぶりの帰還を大いに喜んでいる。 

「そうよ、だって前はピメルの花の時期だったし、私が忘れる訳⋯⋯
き 今日はゆっくりするんでしょ!? もし良かったらゴハン作ってあげるから」

 頬を赤く染めながら、チラチラと上目遣いでロティルの方へ視線を送り続けているレラフィナ。

「あー⋯⋯ゴメンな。このあとすぐに行くんだ。家には荷物取りに来ただけだから」
「⋯⋯っ そ そっか、忙しいのね! 仕方ないよね⋯⋯」
「⋯⋯ピメルの花の時期⋯⋯ あ、そうだ! その時、しまっておいたラグドの実が確か棚に⋯⋯」 

 沈んだ顔をしているレラフィナに気がついているのかいないのか、それには目もくれず、ロティルは何かを思い出して棚のある部屋へ行き、探し物を始めた。
 む
「あった!」

 探し始めてすぐに、発見した歓喜の声をあげる。そうして満足そうにレラフィナがいる部屋へと戻って来た。

「ありがとな、思い出させてくれて! これで見せてあげられる⋯⋯」
「あ、うん。良かった」

 お礼を言うロティルの笑顔に昼間の日差しが当たり、より一層輝いているように見える。
 感謝された事を喜びたいが、耳に入った独り言と、やけに嬉しそうな表情にレラフィナの胸はざわついていた。


それを渡したい誰かがいるんだ?
考え過ぎかな
贈り物で薬草なんて普通はあげないか
治療院に持って行くだけだとは思う
でも それだけで あんな顔⋯⋯


 幼い頃から側にいたロティルに恋心を伝えよう思った事は幾度となくあった。が、いざとなると勇気が出ずに断念してしまう。
 恋人がいるような話も噂すらも聞いたことはなかったので、焦る必要もないかと現状に甘んじていた。彼の隣にいつも居て、一番近い存在なのは自分なのだ、と。
 しかし⋯⋯ロティルに自分の知らない何かが起きている。


「よし! じゃあもう行くから、閉めるよ」
「うん⋯⋯」
 
 ロティルから促され、2人で外に出ると玄関に鍵を掛ける。

「鍵返したら、そのまま出発するから。それじゃあ」
「⋯⋯いってらっしゃい」

 声が小さく届かなかったのか、ロティルはレラフィナの方を振り返らなかった。名残惜しそうな様子も一切なくあっさりと町を出て行く。嵐のように来て嵐のように去って行く、それを体現したようだとレラフィナは思う。

「早く戻りたいところは私のいるところじゃなくて
別の⋯⋯」
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