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第三章 ベリンガム帝国の異変
<3>調査1
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馬車に揺られながらあらためて街並みへ目をやる。淀んだ雰囲気も様子も見間違えなどではないようだ。
以前は活気にあふれていた広場にも人はまばらでとても寂しい。
「マーケットはもうやっていないのか?」
「え?」
俺の言葉にシェーンが顔を上げた。
「以前……といっても20年近く前はこの広場ではマーケットが催されていましたが、ずいぶん前に廃止されました。エリス様は我が国のことをよくご存知なのですね」
シェーンの目に鋭い光が走る。なぜおまえがそれを知っているのか、とでも言いたげな視線から慌てて目を逸らした。
「あ、いやなんとなくそんな気がしただけだ。ほ、ほらこういう広場ってだいたいマーケットをやってるもんだろ。なあリアム?」
返事がない。横を見るとリアムは小さな寝息を立てている。
(コイツ……!)
リアムはいい奴ではあるが、肝心な時に役に立たないことも多い。車内に流れる気まずい空気をなんとかしようと口を開きかけた時、馬車がガタンと音を立てて停車した。
「到着したようです。降りましょう」
シェーンの後に続いて、リアムと共に馬車を降りる。まだ寝ぼけている様子のリアムの足を思いきり踏んでやった。
「痛っ! 何をなさるんです、エリス様!」
「おまえなあ。仮にも従者なんだから主人の前で居眠りすんなよ。シェーンが思いっきり見てたぞ」
リアムはばつの悪そうな顔で謝罪をすると俺の後を歩き出す。そんな俺たちを振り返ることもなくズンズンと歩いていくシェーンの後をついて、王立図書館の中へ入った。
ベリンガム帝国の王立図書館は、一般庶民から貴族まで幅広い身分の者が無料で利用できる。だが貴族と庶民が顔を合わせることのないように、入り口や利用できる場所には違いがあった。
今日、俺が調べようとしている王国についての資料や本は王侯貴族たちにしか閲覧の権限が付与されていない。貴族用の入り口から入って、さまざまな書籍の並ぶ部屋へと案内された。
(懐かしい……!)
貴族は魔法を使えるため、書棚が庶民のそれよりもかなり高い。梯子もかけてあるが、たいていは空中浮遊を使って高い場所に収納されている書籍を取ってくる。
俺もむかし、よくレヴィや弟たちを連れて図書館に来たものだった。皆、なぜか誰が俺の隣に座るかで揉めて、騒いでは司書に大目玉を食らっていたものだ。
こうして昔によく行った場所へくると、心の奥に眠っていた記憶が蘇ってくる。
(そういえば、ジェームズやジュードはどうしてるんだろう……それに兄上たちも)
そのうち会えることを願いながら、蔵書の棚を丹念に見ていく。
「これとこれと……あとはこのあたりかな」
5冊ほどの本を選んで椅子に腰掛ける。もちろん借りていくこともできるが、久しぶりの図書館の空気を楽しみたい。出来る限りはこの場で本を読んで過ごしたいと伝えると、シェーンは軽く頷いた。
「では私は少し席を外しますので」
シェーンは緑色の小さな石を連ねたブレスレットのようなものを渡してきた。
「なんだこれ?」
「このブレスレットには私の魔力が込められています。万が一、エリス様の身に何か起きた場合、このブレスレットが知らせてくれるのです」
シェーンはそう言って自分の右腕を突き出して見せる。そこには同じようなブレスレットがはめられている。
「何かあれば、このブレスレットが発光したり振動するようになっているのです」
「そうなのか。便利だな。わかった」
俺がブレスレットを装着するのを見届けたシェーンは閲覧室から出て行った。持参したペンとノートに時折メモをしながら、俺は書籍を読み進めることに没頭した。
以前は活気にあふれていた広場にも人はまばらでとても寂しい。
「マーケットはもうやっていないのか?」
「え?」
俺の言葉にシェーンが顔を上げた。
「以前……といっても20年近く前はこの広場ではマーケットが催されていましたが、ずいぶん前に廃止されました。エリス様は我が国のことをよくご存知なのですね」
シェーンの目に鋭い光が走る。なぜおまえがそれを知っているのか、とでも言いたげな視線から慌てて目を逸らした。
「あ、いやなんとなくそんな気がしただけだ。ほ、ほらこういう広場ってだいたいマーケットをやってるもんだろ。なあリアム?」
返事がない。横を見るとリアムは小さな寝息を立てている。
(コイツ……!)
リアムはいい奴ではあるが、肝心な時に役に立たないことも多い。車内に流れる気まずい空気をなんとかしようと口を開きかけた時、馬車がガタンと音を立てて停車した。
「到着したようです。降りましょう」
シェーンの後に続いて、リアムと共に馬車を降りる。まだ寝ぼけている様子のリアムの足を思いきり踏んでやった。
「痛っ! 何をなさるんです、エリス様!」
「おまえなあ。仮にも従者なんだから主人の前で居眠りすんなよ。シェーンが思いっきり見てたぞ」
リアムはばつの悪そうな顔で謝罪をすると俺の後を歩き出す。そんな俺たちを振り返ることもなくズンズンと歩いていくシェーンの後をついて、王立図書館の中へ入った。
ベリンガム帝国の王立図書館は、一般庶民から貴族まで幅広い身分の者が無料で利用できる。だが貴族と庶民が顔を合わせることのないように、入り口や利用できる場所には違いがあった。
今日、俺が調べようとしている王国についての資料や本は王侯貴族たちにしか閲覧の権限が付与されていない。貴族用の入り口から入って、さまざまな書籍の並ぶ部屋へと案内された。
(懐かしい……!)
貴族は魔法を使えるため、書棚が庶民のそれよりもかなり高い。梯子もかけてあるが、たいていは空中浮遊を使って高い場所に収納されている書籍を取ってくる。
俺もむかし、よくレヴィや弟たちを連れて図書館に来たものだった。皆、なぜか誰が俺の隣に座るかで揉めて、騒いでは司書に大目玉を食らっていたものだ。
こうして昔によく行った場所へくると、心の奥に眠っていた記憶が蘇ってくる。
(そういえば、ジェームズやジュードはどうしてるんだろう……それに兄上たちも)
そのうち会えることを願いながら、蔵書の棚を丹念に見ていく。
「これとこれと……あとはこのあたりかな」
5冊ほどの本を選んで椅子に腰掛ける。もちろん借りていくこともできるが、久しぶりの図書館の空気を楽しみたい。出来る限りはこの場で本を読んで過ごしたいと伝えると、シェーンは軽く頷いた。
「では私は少し席を外しますので」
シェーンは緑色の小さな石を連ねたブレスレットのようなものを渡してきた。
「なんだこれ?」
「このブレスレットには私の魔力が込められています。万が一、エリス様の身に何か起きた場合、このブレスレットが知らせてくれるのです」
シェーンはそう言って自分の右腕を突き出して見せる。そこには同じようなブレスレットがはめられている。
「何かあれば、このブレスレットが発光したり振動するようになっているのです」
「そうなのか。便利だな。わかった」
俺がブレスレットを装着するのを見届けたシェーンは閲覧室から出て行った。持参したペンとノートに時折メモをしながら、俺は書籍を読み進めることに没頭した。
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