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第三章 ベリンガム帝国の異変
<13>エリスの作戦4
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「ベリンガムへ戻ってから狼神やこの国で起きている異変について色々と調べました。そして俺なりに仮説を立てたんです」
俺の言葉に、皆が息を呑む。
狼神に拒絶された兄たちの瞳の色は青か緑だ。ベリンガムの王家の血を継ぐ男子は、すべて黒髪しか生まれない。黒髪で、瞳の色は青、緑、そして赤の三色だ。父上の目は青で、ジェームズも緑、ジュードは青。
つまり、俺以外の直系王族の中に赤い瞳はいなかった。
「たしか先々代の国王も赤い目をしていた」
部屋に飾られている、歴代国王たちの肖像画を眺めても、赤い目を持つ王はごくわずかだ。
「俺の予想が正しければ、狼神の求めるのは赤い目を持つ王族です」
「だが今のおまえは……」
「そうです、今の俺はエリス・ラムズデールです。目の色も髪の色も違うし、そもそもベリンガムの王族でもない」
「だったら――」
言いかけたジェームズを目で制す。
「ですが、俺には記憶があります。そして、前世と同じ力も。エリスとアランは魂が同じなんです。狼神はきっと魂がわかる。逆に俺でもだめだとしたら、もう誰もいないはずです。狼神は殺したりはしない。だから大丈夫です。行かせてください」
立ち上がって頭を下げる。表情は見えないが、皆が困惑しているのがわかった。
「父上、母上。絶対に生きて帰ってきます。ジェームズ、ジュード。俺を信じてくれ。ベリンガムに来る直前に俺の記憶が戻ったのは、きっとこのためでもあったんだ。父上、俺が愛した国と国民を、どうか守らせてください」
暫くの沈黙の後、父上が深いため息を吐いた。
「顔を上げなさい、アラン」
ゆっくり顔を上げると、父上は困ったように笑っていた。
「必ず、戻るのだぞ」
「……っはい!」
熱くなる目元から込み上げてくるものをこらえるために、目の奥にぎゅっと力を込めた。
ようやく部屋に招かれたレヴィはあからさまに不機嫌になっていた。国王一家とソファに座っている俺を見るなり、腕を掴んで引っ張る。
「陛下も王妃様も王子様方も皆、忙しいんだ。どれだけご迷惑をかければ気が済むんだ、きみは。陛下、申し訳ございません」
レヴィの様子にジェームズとジュードを眉を跳ね上げる。俺はレヴィに気付かれないよう、二人に目配せをする。
「すぐに連れて帰りま――」
「いや、いいんだ。私からも彼に話があったからね」
「……話? ですか」
レヴィの動きがぴたりととまる。
「きみの妻なのに申し訳ないが、一晩エリスくんを借りてもよいだろうか? もう少し話がしたくてね。それにほら……フェンリルも彼にまとわりついて離れようとしない」
フェンリルは手を放せとでも言うように、俺の腕を掴んでいるレヴィの手を柄の部分で突ついている。
まだ何か言いたげではあったが、国王陛下の命令は絶対だ。しぶしぶと言った様子で腕を放すと、小さく「畏まりました」と呟いた。
「ありがとう。明日の昼過ぎにでも迎えに来てくれ」
「仰せの通りに」
レヴィは父上に深々と礼をした後、俺をキッと睨みつける。
「どういう事情かはわからないが、陛下にご迷惑をおかけするようなことがあったら、一生館から出さないからな――では陛下、皆様、失礼致します」
レヴィの足音が遠くへ去ったのを確認して、俺はほっと息を吐いた。
俺の言葉に、皆が息を呑む。
狼神に拒絶された兄たちの瞳の色は青か緑だ。ベリンガムの王家の血を継ぐ男子は、すべて黒髪しか生まれない。黒髪で、瞳の色は青、緑、そして赤の三色だ。父上の目は青で、ジェームズも緑、ジュードは青。
つまり、俺以外の直系王族の中に赤い瞳はいなかった。
「たしか先々代の国王も赤い目をしていた」
部屋に飾られている、歴代国王たちの肖像画を眺めても、赤い目を持つ王はごくわずかだ。
「俺の予想が正しければ、狼神の求めるのは赤い目を持つ王族です」
「だが今のおまえは……」
「そうです、今の俺はエリス・ラムズデールです。目の色も髪の色も違うし、そもそもベリンガムの王族でもない」
「だったら――」
言いかけたジェームズを目で制す。
「ですが、俺には記憶があります。そして、前世と同じ力も。エリスとアランは魂が同じなんです。狼神はきっと魂がわかる。逆に俺でもだめだとしたら、もう誰もいないはずです。狼神は殺したりはしない。だから大丈夫です。行かせてください」
立ち上がって頭を下げる。表情は見えないが、皆が困惑しているのがわかった。
「父上、母上。絶対に生きて帰ってきます。ジェームズ、ジュード。俺を信じてくれ。ベリンガムに来る直前に俺の記憶が戻ったのは、きっとこのためでもあったんだ。父上、俺が愛した国と国民を、どうか守らせてください」
暫くの沈黙の後、父上が深いため息を吐いた。
「顔を上げなさい、アラン」
ゆっくり顔を上げると、父上は困ったように笑っていた。
「必ず、戻るのだぞ」
「……っはい!」
熱くなる目元から込み上げてくるものをこらえるために、目の奥にぎゅっと力を込めた。
ようやく部屋に招かれたレヴィはあからさまに不機嫌になっていた。国王一家とソファに座っている俺を見るなり、腕を掴んで引っ張る。
「陛下も王妃様も王子様方も皆、忙しいんだ。どれだけご迷惑をかければ気が済むんだ、きみは。陛下、申し訳ございません」
レヴィの様子にジェームズとジュードを眉を跳ね上げる。俺はレヴィに気付かれないよう、二人に目配せをする。
「すぐに連れて帰りま――」
「いや、いいんだ。私からも彼に話があったからね」
「……話? ですか」
レヴィの動きがぴたりととまる。
「きみの妻なのに申し訳ないが、一晩エリスくんを借りてもよいだろうか? もう少し話がしたくてね。それにほら……フェンリルも彼にまとわりついて離れようとしない」
フェンリルは手を放せとでも言うように、俺の腕を掴んでいるレヴィの手を柄の部分で突ついている。
まだ何か言いたげではあったが、国王陛下の命令は絶対だ。しぶしぶと言った様子で腕を放すと、小さく「畏まりました」と呟いた。
「ありがとう。明日の昼過ぎにでも迎えに来てくれ」
「仰せの通りに」
レヴィは父上に深々と礼をした後、俺をキッと睨みつける。
「どういう事情かはわからないが、陛下にご迷惑をおかけするようなことがあったら、一生館から出さないからな――では陛下、皆様、失礼致します」
レヴィの足音が遠くへ去ったのを確認して、俺はほっと息を吐いた。
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