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第三章 ベリンガム帝国の異変

<12>エリスの作戦3

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暫く思い出話に花を咲かせた後、父が首を傾げた。
「そういえば、レヴィのことはなぜ締め出したんだ? 戻ってきたことを伝えたらきっと大喜びするだろうに」

「ああ、いやそれは……」
言い淀む俺をフォローするように、弟たちが口を開く。

「レヴィのことだからどうせ開口一番に”俺はアラン様のことを愛し続けているから君のことはどうでもいい”とかなんとか言ったんだろ、今の兄上に」
「それにアイツ、もしアラン兄が自分の嫁になって戻ってきたなんて知ったら独占欲が爆発してとんでもないことになるな。嫌な予感しかしない」

「なるほど。確かにアランが死んだ後のレヴィは……なんというか……そうだな」
父は何かもごもごと口にしながらなんとも言えない表情を浮かべる。
「そうね。レヴィにはまだ言わない方がいいかしらね」
母も困ったように笑い、扇子で口元を覆った。

なんだか理由はやくわからないが、どうやら家族もレヴィには黙っていることに賛成らしい。ほっと胸を撫でおろす。

「アラン、これからも城に遊びに来てくれないか」
微笑む父に、俺も笑顔を返す。
「はい、父上! ですがその前に本題に入らせてください」
そうなのだ。俺が家族に正体を明かしたのは目的がある。それを果たさなければ意味がない。

「今日、皆に戻ってきたことを伝えた一番の理由は狼神のことです」
皆の表情が厳しく変化する。

「少し、座って話そうか」
父に促されて皆でソファに座る。父上は大きなため息を吐いて右手を額に当てた。

「さすがアランだ。もう気付いていたのだな」
「はい。嫁いできたとき、街に漂う淀みも気になりましたが、一番はレヴィの家で出された水を飲んだ時です。以前のベリンガムの水は清浄でしたから」

「そうか……おまえが逝って1年がたった頃、狼神から数百年ぶりに使者がやってきたのだ」

最初に狼神の使者がやってきた際、長兄のアレックスがまず狼神のもとへ向かったという。だが狼神は兄を見るなり「おまえではない」と追い返したそうだ。

その後すぐに二番目のルーク、マーカス、エリオットと続いたが狼神は拒絶を繰り返すだけだったという。次はまだ幼かったジェームズを向かわせる相談をしている際中、狼神から「次に誤った王子を派遣したら国を滅ぼす。何年経っても構わない。次は誤るな」という怒りに満ちた伝言が届けられた。

それによってジェームズの派遣は中止され、今に至るのだという。

「兄上たちは狼神に……?」
父上は首を振った。

「アレックスとマーカスは流行り病だ。ルークとエリオットは他国との戦で……」
「そうでしたか」

ジュードがハッとした表情でこっちを見る。
「アラン兄、もしかして狼神のところに向かうおつもりですか!?」

「おまえはむかしから勘がいいな」
頷くと、家族全員が立ち上がった。

「だめよ! せっかく戻ってきてくれたあなたをまた失うなんて!!」
母上が悲鳴に近い声を上げる。

「そうだぞアラン。このままおまえがこの国で、いつでも会える距離で暮らしてくれるだけでいい。いや、そうしなさい」

ジェームズもジュードも、両親と同じような言葉を口々に叫んでいる。俺を想ってくれる言葉は嬉しくてたまらない。けれど、このままでは皆が不幸になってしまう。

首をしっかりと左右に振って意思表示をして、再びソファに腰掛けるように促す。

「いいえ。俺は行きます。このままではこの国が滅びてしまう」
俺の言葉に家族たちは青ざめた。
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