魔力ゼロの無能オメガのはずが嫁ぎ先の氷狼騎士団長に執着溺愛されて逃げられません!

松原硝子

文字の大きさ
33 / 85
第三章 ベリンガム帝国の異変

<15>狼神との対面2

しおりを挟む
魔力を使えばあっという間に飛べる距離も、自力では骨が折れる。だが狼神と対面するまでは魔力を使ってはいけないという。

1時間ほど歩いたところで、狼たちはやっと歩みを止めた。ラムズデール家で朝から晩まで肉体労働を課せられていたおかげで、細身ながらも以前に負けない体力を保てていて本当に良かった。

2匹が立ち止まったのは、大きな洞窟の前だ。一見、大きくはあるが普通の洞窟に見える。だが強い結界が張り巡らされていることがわかる。

青い目の狼が振り返った。
「これから狼神がいらっしゃる」

俺は黙って頷くと、洞窟の入口を見つめた。やがて強い風が吹き、2匹が遠吠えを始める。空に浮かぶ月にかかっていた雲が勢いよく流れていく。あまりの強風に思わず目を閉じる。

やがて風がおさまり目を開けると、月の光がまるでスポットライトのように照らす中、いつの間にか巨大な赤い目の狼が俺の前に座っていた。

(これが、狼神……)
ただそこにいるだけで、恐ろしいほどのプレッシャーを感じる。まるで上から両肩を強く押されるほどの圧に、俺は膝をついた。

狼神は何も言わず俺をじっと見下ろしている。しばらくすると低くしゃがれた声が頭の中に響いてきた。

「やっと来たな……ベリンガムの子よ。今回はずいぶんと時間がかかった」
片膝を立てて深く頭を下げる。

「申し訳ございません狼神。実は一度、命を落としてしまいまして。最近になって記憶を取り戻したばかりなのです」
「そうか……だから変わった髪と目の色をしているのだな。ベリンガムの子には生まれない色だ」

「はい。今世はアイルズベリーの公爵家に生まれました」
狼神はゆっくりと首を縦に振った。

「問題ない。おまえの魂はベリンガムの子のものだからな。魂の色は何度も生まれ変わろうとも、変わらない。だが、今回のようなことは初めてだ。長く生きていると、色々なことがあるものだ……さて、無駄話はこれぐらいにして、魔力を分け与えてもらおうか」

「はい」
狼神が俺に向かって片足をかざすと、体の内側から強く力で引っ張られるのを感じる。何とも言えない気持ち悪さに顔を顰めていると、狼神が笑った気配がした。

「大丈夫だ、もうすぐ終わる」
その言葉とともに、力がおさまる。同時に俺の胸からルビー色の光る玉がいくつも出てくる。それらは空中はふわふわと浮遊しながら狼神の体の中に消えていく。

かぞえきれない程の玉が俺の身体から放出して狼神の中に取り込まれていった。ようやく玉がなくなった頃には、体がガクガクしてフェンリルで支えてやっと立っていられる状態だった。

「おまえの魔力は今までのどの子よりも心地良い……素晴らしい魔力だ。そうだ、私からもおまえに力を授けよう」

今度は狼神の口から大きな黒く光る玉が吐き出される。それは俺の胸の中に飛び込むようにして消えた。

「……ぐっ」
体の中にアランのものでもエリスのものでもない魔力が巡る。2つの魔力はなじむのが早かったが、狼神の魔力は少し強すぎる。未消化の食べ物が胃に滞留しているかのような気持ち悪さが消えるまで、額に脂汗をかきながらじっとうずくまっていた。
しおりを挟む
感想 48

あなたにおすすめの小説

冷酷無慈悲なラスボス王子はモブの従者を逃がさない

北川晶
BL
冷徹王子に殺されるモブ従者の子供時代に転生したので、死亡回避に奔走するけど、なんでか婚約者になって執着溺愛王子から逃げられない話。 ノワールは四歳のときに乙女ゲーム『花びらを恋の数だけ抱きしめて』の世界に転生したと気づいた。自分の役どころは冷酷無慈悲なラスボス王子ネロディアスの従者。従者になってしまうと十八歳でラスボス王子に殺される運命だ。 四歳である今はまだ従者ではない。 死亡回避のためネロディアスにみつからぬようにしていたが、なぜかうまくいかないし、その上婚約することにもなってしまった?? 十八歳で死にたくないので、婚約も従者もごめんです。だけど家の事情で断れない。 こうなったら婚約も従者契約も撤回するよう王子を説得しよう! そう思ったノワールはなんとか策を練るのだが、ネロディアスは撤回どころかもっと執着してきてーー!? クールで理論派、ラスボスからなんとか逃げたいモブ従者のノワールと、そんな従者を絶対逃がさない冷酷無慈悲?なラスボス王子ネロディアスの恋愛頭脳戦。

悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放

大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。 嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。 だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。 嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。 混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。 琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う―― 「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」 知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。 耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。

転生したらスパダリに囲われていました……え、違う?

米山のら
BL
王子悠里。苗字のせいで“王子さま”と呼ばれ、距離を置かれてきた、ぼっち新社会人。 ストーカーに追われ、車に轢かれ――気づけば豪奢なベッドで目を覚ましていた。 隣にいたのは、氷の騎士団長であり第二王子でもある、美しきスパダリ。 「愛してるよ、私のユリタン」 そう言って差し出されたのは、彼色の婚約指輪。 “最難関ルート”と恐れられる、甘さと狂気の狭間に立つ騎士団長。 成功すれば溺愛一直線、けれど一歩誤れば廃人コース。 怖いほどの執着と、甘すぎる愛の狭間で――悠里の新しい人生は、いったいどこへ向かうのか? ……え、違う?

のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした

こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。

助けたドS皇子がヤンデレになって俺を追いかけてきます!

夜刀神さつき
BL
医者である内藤 賢吾は、過労死した。しかし、死んだことに気がつかないまま異世界転生する。転生先で、急性虫垂炎のセドリック皇子を見つけた彼は、手術をしたくてたまらなくなる。「彼を解剖させてください」と告げ、周囲をドン引きさせる。その後、賢吾はセドリックを手術して助ける。命を助けられたセドリックは、賢吾に惹かれていく。賢吾は、セドリックの告白を断るが、セドリックは、諦めの悪いヤンデレ腹黒男だった。セドリックは、賢吾に助ける代わりに何でも言うことを聞くという約束をする。しかし、賢吾は約束を破り逃げ出し……。ほとんどコメディです。  ヤンデレ腹黒ドS皇子×頭のおかしい主人公

【Amazonベストセラー入りしました】僕の処刑はいつですか?欲しがり義弟に王位を追われ身代わりの花嫁になったら溺愛王が待っていました。

美咲アリス
BL
「国王陛下!僕は偽者の花嫁です!どうぞ、どうぞ僕を、処刑してください!!」「とりあえず、落ち着こうか?(笑)」意地悪な義母の策略で義弟の代わりに辺境国へ嫁いだオメガ王子のフウル。正直な性格のせいで嘘をつくことができずに命を捨てる覚悟で夫となる国王に真実を告げる。だが美貌の国王リオ・ナバはなぜかにっこりと微笑んだ。そしてフウルを甘々にもてなしてくれる。「きっとこれは処刑前の罠?」不幸生活が身についたフウルはビクビクしながら城で暮らすが、実は国王にはある考えがあって⋯⋯?(Amazonベストセラー入りしました。1位。1/24,2024)

異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話

深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?

処理中です...