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第六章 解呪と試練
<4>月の神1
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月の女神を名乗る少年はうるさそうに軽く耳をふさぐ。
「うるっせえ。でけえ声出すな。行くぞ」
少年がくいっと右手の人差し指を曲げるだけで、俺たちの体は勝手に立ち上がる。
「ここで話すのもなんだから、神殿に行く」
少年が空に向かって指笛を吹く。すぐに空からサファイヤのような瞳の白い大きな虎が2匹降りてくる。
少年は1頭にまたがると、振り向いた。
「おまえらはそっちに乗せてもらえ。フィン! そいつらの乗せてやれ」
フィンと呼ばれた白虎は俺たちの前でゆっくりと屈む。
恐る恐る雪のように白い毛並みの上に乗る。俺が前でレヴィが後ろだ。
(すごいな……白くてふわふわだ)
まるで大きな猫のようでこんな状況なのに癒される。
少年は俺たちが白虎に乗ったことを確認すると、虎に何か話しかけた。俺たちの知らない言語だ。
虎たちは滑るように静かに空を駆け上り、山の上を走るように飛んでいく。
しばらくすると山の中に透明に輝く大きな城が見えてきた。
白虎たちはゆっくりと下降して、城の前に白かに着陸する。
少年に倣って背から降りると、虎たちはどこへともなく消えていった。
「ここが俺の神殿だ。入れ」
少年が手をかざすと大きな扉が音もなく開く。用心深く少年の後に続いて城内へと足を踏み入れた。
「ついて来い」
少年は振り向かずに言い捨てて、どんどん歩いていく。おいていかれないように慌てて後を追う。
「これ全部、ガラスでできているのですね」
速足で歩きながらレヴィが小さな声で話しかけてくる。視線は前方へ向けたままだ。
「ああ、そうみたいだな」
最初は氷かとも思ったが、冷たさや寒さはまったく感じない。よほど質のいいガラスを使っているのかどこもかしこも一点の曇りもない。
ようやく少年が立ち止まったのはかなり城の奥へ進んでからだった。
「入れ」
室内もやはりすべてがガラスでできている。天井から下がる巨大なシャンデリアが煌々と輝いているせいで、昼間並みに明るい。
少年はつかつかと歩いていくと、大きな椅子に座った。
「おまえらもテキトーに座れよ」
顎で示されたガラス製のベンチに並んで腰かける。当たり前だが、ガラスなので硬い。
綺麗だけど座り心地が悪い。
「本当にあなたが月の女神なのですか?」
レヴィが訝しげに少年に視線を投げる。
「だからそうだつってんだろ! 何度も言わせんな。こう言えば信じるか? ヴァダービルトに呪いをかけたのは俺だ」
少年は意地悪そうに口の端を上げた。
「どうして伝承では女性だったはずですが」
少年の煽りには乗らずに、レヴィは真顔で言葉を続ける。その反応がつまらなかったのか、少年は不機嫌な顔になった。
「知らねえよ。俺があまりに綺麗すぎるから女って勘違いでもしたんじゃねーの? だいたい人間の伝承なんてだいぶ事実がねじ曲がってんだからよ」
まだ何か言いたげなレヴィの腕に手を置く。それだけで俺の意図が伝わったのか、レヴィは口を噤む。
「月の神様。俺たちはヴァンダービルト家にかけられた呪いを解くためにここに来ました」
「ふーん。つーかそんなの知ってるわ。来るのが遅すぎんだよ」
「では、解いてくださるのですか!?」
「そうは言ってねえ」
もちろんこっちも簡単に解呪してもらえるとは思っていない。
「何か条件があるのですね?」
月の神は微妙な表情になる。
「条件っつーか、まずは俺の話を聞いてほしい。話はそれからだ。あのクソみてえに改ざんされた伝承なんかじゃなく、本当の話を」
真剣な月の神の瞳に、俺たちは力強く返事をした。
「うるっせえ。でけえ声出すな。行くぞ」
少年がくいっと右手の人差し指を曲げるだけで、俺たちの体は勝手に立ち上がる。
「ここで話すのもなんだから、神殿に行く」
少年が空に向かって指笛を吹く。すぐに空からサファイヤのような瞳の白い大きな虎が2匹降りてくる。
少年は1頭にまたがると、振り向いた。
「おまえらはそっちに乗せてもらえ。フィン! そいつらの乗せてやれ」
フィンと呼ばれた白虎は俺たちの前でゆっくりと屈む。
恐る恐る雪のように白い毛並みの上に乗る。俺が前でレヴィが後ろだ。
(すごいな……白くてふわふわだ)
まるで大きな猫のようでこんな状況なのに癒される。
少年は俺たちが白虎に乗ったことを確認すると、虎に何か話しかけた。俺たちの知らない言語だ。
虎たちは滑るように静かに空を駆け上り、山の上を走るように飛んでいく。
しばらくすると山の中に透明に輝く大きな城が見えてきた。
白虎たちはゆっくりと下降して、城の前に白かに着陸する。
少年に倣って背から降りると、虎たちはどこへともなく消えていった。
「ここが俺の神殿だ。入れ」
少年が手をかざすと大きな扉が音もなく開く。用心深く少年の後に続いて城内へと足を踏み入れた。
「ついて来い」
少年は振り向かずに言い捨てて、どんどん歩いていく。おいていかれないように慌てて後を追う。
「これ全部、ガラスでできているのですね」
速足で歩きながらレヴィが小さな声で話しかけてくる。視線は前方へ向けたままだ。
「ああ、そうみたいだな」
最初は氷かとも思ったが、冷たさや寒さはまったく感じない。よほど質のいいガラスを使っているのかどこもかしこも一点の曇りもない。
ようやく少年が立ち止まったのはかなり城の奥へ進んでからだった。
「入れ」
室内もやはりすべてがガラスでできている。天井から下がる巨大なシャンデリアが煌々と輝いているせいで、昼間並みに明るい。
少年はつかつかと歩いていくと、大きな椅子に座った。
「おまえらもテキトーに座れよ」
顎で示されたガラス製のベンチに並んで腰かける。当たり前だが、ガラスなので硬い。
綺麗だけど座り心地が悪い。
「本当にあなたが月の女神なのですか?」
レヴィが訝しげに少年に視線を投げる。
「だからそうだつってんだろ! 何度も言わせんな。こう言えば信じるか? ヴァダービルトに呪いをかけたのは俺だ」
少年は意地悪そうに口の端を上げた。
「どうして伝承では女性だったはずですが」
少年の煽りには乗らずに、レヴィは真顔で言葉を続ける。その反応がつまらなかったのか、少年は不機嫌な顔になった。
「知らねえよ。俺があまりに綺麗すぎるから女って勘違いでもしたんじゃねーの? だいたい人間の伝承なんてだいぶ事実がねじ曲がってんだからよ」
まだ何か言いたげなレヴィの腕に手を置く。それだけで俺の意図が伝わったのか、レヴィは口を噤む。
「月の神様。俺たちはヴァンダービルト家にかけられた呪いを解くためにここに来ました」
「ふーん。つーかそんなの知ってるわ。来るのが遅すぎんだよ」
「では、解いてくださるのですか!?」
「そうは言ってねえ」
もちろんこっちも簡単に解呪してもらえるとは思っていない。
「何か条件があるのですね?」
月の神は微妙な表情になる。
「条件っつーか、まずは俺の話を聞いてほしい。話はそれからだ。あのクソみてえに改ざんされた伝承なんかじゃなく、本当の話を」
真剣な月の神の瞳に、俺たちは力強く返事をした。
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