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第六章 解呪と試練
<7>涙と謝罪
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どれくらい時間がたったのだろう。やっと解放された時には息苦しさで頭が朦朧としていた。
レヴィの目からはすでに怒りの炎が消えている。
俺と目が合った瞬間ハッとしたような表情になった。
「……エリス様!?」
レヴィは素早く俺の上から身体をどけると、優しく抱き起こしてくれる。
「申し訳ございません……僕は――」
「いい。大丈夫だ。それより悪いが水を持ってきてくれるか?」
レヴィは無言で頷くと魔法で水差しとゴブレットをベッドまで運ぶ。
「どうぞ」
水がなみなみと注がれたゴブレットを一気に飲み干す。体中に水分が行き渡り生き返ったような心地になる。
「もっとお飲みになりますか?」
「いや大丈夫だ、ありがとな」
レヴィは落ち着かない様子でこっちに視線を寄越す。
アクアマリンの瞳には不安や動揺の色が浮かんでいる。やがてレヴィは項垂れて小さく呟いた。
「エリス様……本当に……ごめんなさい」
「いいって。まあ、ちょっとはびっくりしたけど」
「ごめんなさい」
「いいから。大丈夫だって、怒ってねえよ。それより、どうしてこんな風になったんだ?」
「……言っても僕のこと嫌いにならないでくれますか?」
「はあ?」
「嫌いにならないでくれますか? 言ってくださらないと不安でお話しできません」
「大丈夫だ! 何があってもおまえのこと嫌いになることなんてないから! どんことこい!」
「エリス様……っ!」
胸を拳でドンと叩いて見せる。突然、感極まった声を出したレヴィに抱きしめられた。
「っおい! なんだよいきなり!」
「すみません……あまりにも嬉しくて、つい……このままお話ししても良いでしょうか」
「うん、構わないぞ」
「ありがとうございます」
レヴィは大きく息を吸った。
「……嫉妬、です。月の神に嫉妬してしまいました」
嫉妬する要素などあっただろうか。アリルとの会話を思い出していると、レヴィがぽつぽつと続きを話し始める。
「一人で寂しかったでしょうとか、可愛いとか。エリス様はあのクソガ……いえ、神におっしゃっていたでしょう」
「ああ、そういえば言ったな」
それのどこに嫉妬をするのだろうかと考えていると、俺を抱き締める手に少し力が籠る。
「心が狭いと思われるかもしれませんが、僕以外の人間、いや動物も嫌だな……僕以外のすべての無機物有機物、生命体に可愛いって言わないでいただきたいです。……それに、一人で寂しかったのは僕も同じです。アラン様が亡くなってしまわれてから、ずっとずっと、僕は一人でした……寂しかったです」
「レヴィ……」
前世、最後に見たレヴィの泣き顔を思い出すして、胸がぎゅっと痛くなる。
「1日だってあなたのことを忘れた日はなかったのに……勝手なのはわかっています。でもエリス様が慈愛に満ちた瞳で月の神に優しくしているところを見たら、嫉妬で目の前が真っ赤になってしまいました」
だらりと下げたままだった両腕をレヴィの広い背中に回す。
「ごめんな。寂しい思いさせて。おまえがどんな想いであの後生きてきたか、もっとちゃんと考えるべきだった」
「……っ」
レヴィは黙っているが、少しずつ肩のあたりが温かく湿っていくのを感じる。泣いているのだとすぐにわかった。
「今日だって……ひとりで勝手にブロンプトン山まで行ってしまわれて…屋敷に帰って来たとき、心臓が止まるかと思いました……っ」
「ごめん。もうしないから、絶対に」
山に入るまえ、レヴィが口にした言葉を思い出す。
「どんなに魔法が強くても、人は簡単に命を落としてしまうんです」
「本当にごめんな。もうお前に心配かけるようなこと、絶対にしないから」
細かく体を震わせ、肩を濡らし続けるレヴィの背中を俺は優しく撫で続けた。
レヴィの目からはすでに怒りの炎が消えている。
俺と目が合った瞬間ハッとしたような表情になった。
「……エリス様!?」
レヴィは素早く俺の上から身体をどけると、優しく抱き起こしてくれる。
「申し訳ございません……僕は――」
「いい。大丈夫だ。それより悪いが水を持ってきてくれるか?」
レヴィは無言で頷くと魔法で水差しとゴブレットをベッドまで運ぶ。
「どうぞ」
水がなみなみと注がれたゴブレットを一気に飲み干す。体中に水分が行き渡り生き返ったような心地になる。
「もっとお飲みになりますか?」
「いや大丈夫だ、ありがとな」
レヴィは落ち着かない様子でこっちに視線を寄越す。
アクアマリンの瞳には不安や動揺の色が浮かんでいる。やがてレヴィは項垂れて小さく呟いた。
「エリス様……本当に……ごめんなさい」
「いいって。まあ、ちょっとはびっくりしたけど」
「ごめんなさい」
「いいから。大丈夫だって、怒ってねえよ。それより、どうしてこんな風になったんだ?」
「……言っても僕のこと嫌いにならないでくれますか?」
「はあ?」
「嫌いにならないでくれますか? 言ってくださらないと不安でお話しできません」
「大丈夫だ! 何があってもおまえのこと嫌いになることなんてないから! どんことこい!」
「エリス様……っ!」
胸を拳でドンと叩いて見せる。突然、感極まった声を出したレヴィに抱きしめられた。
「っおい! なんだよいきなり!」
「すみません……あまりにも嬉しくて、つい……このままお話ししても良いでしょうか」
「うん、構わないぞ」
「ありがとうございます」
レヴィは大きく息を吸った。
「……嫉妬、です。月の神に嫉妬してしまいました」
嫉妬する要素などあっただろうか。アリルとの会話を思い出していると、レヴィがぽつぽつと続きを話し始める。
「一人で寂しかったでしょうとか、可愛いとか。エリス様はあのクソガ……いえ、神におっしゃっていたでしょう」
「ああ、そういえば言ったな」
それのどこに嫉妬をするのだろうかと考えていると、俺を抱き締める手に少し力が籠る。
「心が狭いと思われるかもしれませんが、僕以外の人間、いや動物も嫌だな……僕以外のすべての無機物有機物、生命体に可愛いって言わないでいただきたいです。……それに、一人で寂しかったのは僕も同じです。アラン様が亡くなってしまわれてから、ずっとずっと、僕は一人でした……寂しかったです」
「レヴィ……」
前世、最後に見たレヴィの泣き顔を思い出すして、胸がぎゅっと痛くなる。
「1日だってあなたのことを忘れた日はなかったのに……勝手なのはわかっています。でもエリス様が慈愛に満ちた瞳で月の神に優しくしているところを見たら、嫉妬で目の前が真っ赤になってしまいました」
だらりと下げたままだった両腕をレヴィの広い背中に回す。
「ごめんな。寂しい思いさせて。おまえがどんな想いであの後生きてきたか、もっとちゃんと考えるべきだった」
「……っ」
レヴィは黙っているが、少しずつ肩のあたりが温かく湿っていくのを感じる。泣いているのだとすぐにわかった。
「今日だって……ひとりで勝手にブロンプトン山まで行ってしまわれて…屋敷に帰って来たとき、心臓が止まるかと思いました……っ」
「ごめん。もうしないから、絶対に」
山に入るまえ、レヴィが口にした言葉を思い出す。
「どんなに魔法が強くても、人は簡単に命を落としてしまうんです」
「本当にごめんな。もうお前に心配かけるようなこと、絶対にしないから」
細かく体を震わせ、肩を濡らし続けるレヴィの背中を俺は優しく撫で続けた。
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