魔力ゼロの無能オメガのはずが嫁ぎ先の氷狼騎士団長に執着溺愛されて逃げられません!

松原硝子

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第六章 解呪と試練

<8>ライバル出現!?

「おまえたち、まだ番になってないんだな」
翌朝、朝食の席でアリルが不思議そうな顔で尋ねてきた。

「神様ってそんなことまでわかるんですね」
俺の言葉にアリルが頷く。

「ああ。俺たちの目には人間には見えない色んな情報が見えるんだよ」
「俺、まだヒートがきてなくて。20歳になったし、そろそろだとは思うんですけど」

オメガは20歳の誕生日を迎えてから1年以内に初めてのヒートがくることが多い。
今年20歳を迎えた俺も、そう遠くないうちにヒートを迎えるはず。
そう思っていたのだが。

「おまえ、アイツに何かされたろ」
アリルが何かを見極めるような瞳で俺のことをじっと見る。

「アイツ?」
「アヴァロン……狼神のことだ」
「そういえば、なにか力を分けて下さるとおっしゃっていました」
「力ねえ……いいんだか悪いんだか」

アリルは何とも言えない表情で顎を擦った。
「どういう事です? エリス様に何か良くない影響があるのですか」

レヴィが厳しい口調でアリルに詰め寄る。アリルは露骨に嫌そうな顔になった。
「俺にキレるなよ。良くない影響っていうか……コイツが真実の愛に出逢わないとヒートはこない術がかかってる」

「……は」
レヴィの手からナイフとフォークが滑り落ち、皿にぶつかる。
激しい音にアリルが顔を顰めた。

「まあでも良いんじゃねーの? おまえら愛し合ってんだろ。だったらこんな術かかっててもそのうちくるだろ」

「……そう、ですね」
レヴィはそれ以上、何も言わなかった。俺はレヴィの目を見ることができない。
俺はレヴィを、レヴィと同じ意味で好きなのかどうかわからないから。

急に静かになった俺たちにアリルは少し焦った様子を見せる。
「悪ぃ。俺、もしかして余計なこと言った?」

「いえ。そんなことはありませんよ。ですが仕事が少し残っているので、先に失礼させていただきますね。お二人はどうぞゆっくりなさっていてください。ランチには僕も戻ります」

完璧な笑みを張り付けたレヴィは静かに立ち上がって部屋を出ていった。
「なんかアイツ、キレてる?」

足音が遠ざかったのを確認したアリルが話しかけてくる。
「いえ、そんなことはないと思いますけど。ああ見えてレヴィは多忙ですから」

「ふーん。ならいいけど……ところで俺たちにもバース性あるって知ってたか」
「そうなのですか!?」

驚いた。神々にもバース性があるというのは初めて聞いた話だ。
「あるんだよ。だから男神と男神でも結ばれるし子どもが生まれることだって普通なんだよ。ちなみに俺、どっちだと思う?」

「アルファ、でしょうか」
「当たり! ついでに教えてやるとアヴァロンもアルファだ」
「そうでしょうね」

二人に通じる圧倒的なまでの強者のオーラ。これがアルファでないはずがない。
「それで、おまえはオメガなんだろ?」

「……そうですが」
その瞬間、向かいに座っていたはずのアリルがふっと消え、レヴィの座っていた隣の席に移動してくる。

「ひっ!!」
驚きすぎて情けない悲鳴が喉から漏れた。

アリルは美しい笑みを浮かべて俺の首筋に手を伸ばす。
「な、なんですか?」

項をそっと撫でられて、背筋がゾクゾクする。だが相手は神だ。跳ねのけることもできず、至って平静を装うことしかできない。

「可愛いよな、おまえ。まっすぐで一生懸命で誠実で。見た目も可愛いけど、魂も強くで綺麗だし」
「ありがとう、ございます……」

「俺はナシ派だったんだけど、おまえならアリかもな」
「なんの話でしょう……?」

アリルは顔をぐっと近づけると俺の目をじっと見る。相変わらず片手は俺の項に触れたままだ。

「神と人間。実は番になった例がないわけじゃないんだぜ」
「そう、ですか……」

「まだヒートがきてないならさ、俺がおまえの真実の愛ってこともあるかもしれねえぞ」
驚きすぎて、はくはくと口を開閉させることしかできない。

そんな俺を見てアリルは目を細めると、もう片方の手で俺の右手を取り甲にキスを落とした。

(レヴィ! 頼む早く戻って来てくれ!!)
心の中で絶叫しつつも、顔だけは必死で笑顔を保つ。
ああ、せっかくレヴィの呪いを解呪できたというのに。これから面倒なことになってしまいそうな空気を感じて、俺は頭を抱えたくなった。
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