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第七章 真実の愛
<17>レヴィの悪だくみ③
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中に入ると、すでにたくさんの貴族や子どもたちが思い思い楽しんでいる。
今日はダンスパーティなので、まずはこの広間で軽食や酒を楽しむ。
どっしりと重そうなレースの刺繍がふんだんにほどこされたテーブルクロスの上には金色のトレイが並んでいる。
ビスケットやサンドウィッチ各種、それにアイスクリームやフルーツにワインやシャンパン、子どもたち用にはフレッシュなジュースや紅茶もあるようだ。
部屋の中央には大きなピンク色の3段重ねの大きなケーキが鎮座していた。
てっぺんには亜麻色のウェーブがかかった長い髪をピンク色のリボンでまとめた、薄紫色のドレスを着た少女の砂糖菓子が飾られている。
(プリシラにそっくりだな)
お転婆で少し泣き虫の妹を思い出して少し笑ったのと同時に、腰のあたりにドンッと何か衝撃を感じた。
「うわ!?」
持っていたフルートグラスを落としそうになって焦る。
「エリスお兄様!! 会いたかった!!」
「プリシラ!!」
変わらない悪戯っ子の笑顔が可愛くて、俺は妹を抱き上げてぎゅっと抱きしめた。
「お兄様とはもう会えないって言われていたの。だから本当に嬉しい」
プリシラは俺の首にしがみつく。
「俺ももう会えないと思ってた。元気そうで本当に良かった。毎日楽しいか? 体調は悪くないか? もう俺がいないんだから、あんまりお転婆するなよ」
「はーい」
「こら、はーいじゃなくてはいだろ?」
「は、いー」
「プリシラ、ふざけすぎだぞ」
「はいー」
相変わらず茶目っ気たっぷりの妹に吹き出してしまう。笑いすぎて落としてはいけないので、注意深く妹を床に降ろした。
「ねえお兄様の旦那様は?」
プリシラがきょろきょろとあたりを見回す。
「ああ、こいつ……じゃなくてこの人」
なぜか黙って側で俺たちを眺めていたレヴィを紹介する。
レヴィは膝を曲げてプリシラと視線を合わせて微笑んだ。
「初めまして、ミス・ラムズデール。僕はあなたのお兄様の夫で、ベリンガム帝国のレヴィ・ヴァンダービルトと申します」
大人のように対応されて嬉しいのか、プリシラは得意げに貴族の子女らしい挨拶を返す。
「お目にかかれて光栄ですわ、ヴァンダービルト公爵。わたくし、プリシラ・ラムズデールと申します」
「ミス・ラムズデール、お誕生日おめでとうございます。僕からお祝いの品をお送りしても?」
「まあ嬉しいわ!」
レヴィがパチンと指を鳴らすと、白いリボンをかけた水色の箱が現れた。
「わあ! なにかしら? あけてもいいの?」
プリシラは興奮でいつも調子に戻っている。レヴィは頷くと箱を手渡した。
「すごく綺麗!! 初めてみたわ!!」
プリシラは箱を両手で大事そうに持ってうっとりと眺めている。
プレゼントはライラックの花を精巧に模したブローチとイヤリングのセットだった。
薄紫の花部分はアメジストで作られ、花芯はダイヤだろうか。ブローチの茎の部分はエメラルドで出来ているようだ。
「いくらしたんだよ」
小声でレヴィに話しかけるが、華麗にスルーされてしまった。
「ありがとう、ヴァンダービルト公爵様」
「いいえ。喜んで頂けて何よりです」
前世の弟みたいな存在と今世の妹が仲良くしている様子を見ているだけで癒される気がする。
尊さを一人噛みしめていると、前方からものすごい勢いで両親と兄たちが駆け寄ってきた。
「まあああ!! ヴァンダービルト公爵!! 来てくださったのね! ああ今日もなんて素敵なのかしら」
母が甲高い声で叫ぶように話しかけてくる。
「まあまあ!! プリシラにプレゼントまで!! いったい何を――」
プリシラの手にしている箱を見た母は目と口を限界まで見開いた。
次の瞬間、娘の手から箱をひったくるようにして取り上げる。
「返してよお母さま! 私がもらったのよ!!」
「ええ。よくわかってますよ。でもあなたに持たせていたら壊したりなくしたりしちゃうかもしれないでしょう? だからこれはお母さまがいったん預かります」
「いやよ! 返してよ!! そういっていつもわたしがもらったものをお母さまが持っていってしまうじゃない!」
プリシラは真っ赤になって力いっぱい叫ぶ。さすがに人目が気になり始めたのか、母は娘をなだめるように頭を撫でた。
「そんなことないわ。明日、お母さまがちゃあんとあなたに返してあげますからね」
だがプリシラは母の手を振り払ってひときは大きな声で泣き叫んだ。
「うそよ! わたし知ってるんだから!! お母さまはそうやってわたしがもらったものを勝手に売っているのよ!!」
その一言で広間の視線が一気に母に集中する。
母は真っ赤な顔で全身を震わせながら、プリシラを睨みつけた。
「な、なにを言っているのかしらこの子は。マーサ! プリシラは具合が悪いみたいだわ。少し別室で休ませてちょうだい」
母に呼ばれて現れた乳母が妹を連れて行こうとするが、プリシラは踏ん張って再び大声を上げた。
「いやよ! ここにいる! プレゼントを返してもらうまで動かない!! 」
「この素敵なブローチとイヤリングも売るつもりなんだわ! お金が足りないから! この前だってエドガー叔父さまのところにお金を借りに行くって言ってたじゃないの!」
「プリシラ、それ以上バカな妄想話はやめるんだ!」
父が厳しい声で制する。
「妄想なんかじゃないわ! 本当のことよ!」
「この……ッ!!」
怒りのあまり赤を通り越して真っ青になった父がプリシラに向かって手を振り上げた。
慌てて俺がけ寄るよりも早く、誰かが父の手首を掴む。
「ラムズデール公爵。小さな子どもに手をあげるのは感心しませんね」
レヴィの甘く優しい声が静まり返った室内に響いた。
今日はダンスパーティなので、まずはこの広間で軽食や酒を楽しむ。
どっしりと重そうなレースの刺繍がふんだんにほどこされたテーブルクロスの上には金色のトレイが並んでいる。
ビスケットやサンドウィッチ各種、それにアイスクリームやフルーツにワインやシャンパン、子どもたち用にはフレッシュなジュースや紅茶もあるようだ。
部屋の中央には大きなピンク色の3段重ねの大きなケーキが鎮座していた。
てっぺんには亜麻色のウェーブがかかった長い髪をピンク色のリボンでまとめた、薄紫色のドレスを着た少女の砂糖菓子が飾られている。
(プリシラにそっくりだな)
お転婆で少し泣き虫の妹を思い出して少し笑ったのと同時に、腰のあたりにドンッと何か衝撃を感じた。
「うわ!?」
持っていたフルートグラスを落としそうになって焦る。
「エリスお兄様!! 会いたかった!!」
「プリシラ!!」
変わらない悪戯っ子の笑顔が可愛くて、俺は妹を抱き上げてぎゅっと抱きしめた。
「お兄様とはもう会えないって言われていたの。だから本当に嬉しい」
プリシラは俺の首にしがみつく。
「俺ももう会えないと思ってた。元気そうで本当に良かった。毎日楽しいか? 体調は悪くないか? もう俺がいないんだから、あんまりお転婆するなよ」
「はーい」
「こら、はーいじゃなくてはいだろ?」
「は、いー」
「プリシラ、ふざけすぎだぞ」
「はいー」
相変わらず茶目っ気たっぷりの妹に吹き出してしまう。笑いすぎて落としてはいけないので、注意深く妹を床に降ろした。
「ねえお兄様の旦那様は?」
プリシラがきょろきょろとあたりを見回す。
「ああ、こいつ……じゃなくてこの人」
なぜか黙って側で俺たちを眺めていたレヴィを紹介する。
レヴィは膝を曲げてプリシラと視線を合わせて微笑んだ。
「初めまして、ミス・ラムズデール。僕はあなたのお兄様の夫で、ベリンガム帝国のレヴィ・ヴァンダービルトと申します」
大人のように対応されて嬉しいのか、プリシラは得意げに貴族の子女らしい挨拶を返す。
「お目にかかれて光栄ですわ、ヴァンダービルト公爵。わたくし、プリシラ・ラムズデールと申します」
「ミス・ラムズデール、お誕生日おめでとうございます。僕からお祝いの品をお送りしても?」
「まあ嬉しいわ!」
レヴィがパチンと指を鳴らすと、白いリボンをかけた水色の箱が現れた。
「わあ! なにかしら? あけてもいいの?」
プリシラは興奮でいつも調子に戻っている。レヴィは頷くと箱を手渡した。
「すごく綺麗!! 初めてみたわ!!」
プリシラは箱を両手で大事そうに持ってうっとりと眺めている。
プレゼントはライラックの花を精巧に模したブローチとイヤリングのセットだった。
薄紫の花部分はアメジストで作られ、花芯はダイヤだろうか。ブローチの茎の部分はエメラルドで出来ているようだ。
「いくらしたんだよ」
小声でレヴィに話しかけるが、華麗にスルーされてしまった。
「ありがとう、ヴァンダービルト公爵様」
「いいえ。喜んで頂けて何よりです」
前世の弟みたいな存在と今世の妹が仲良くしている様子を見ているだけで癒される気がする。
尊さを一人噛みしめていると、前方からものすごい勢いで両親と兄たちが駆け寄ってきた。
「まあああ!! ヴァンダービルト公爵!! 来てくださったのね! ああ今日もなんて素敵なのかしら」
母が甲高い声で叫ぶように話しかけてくる。
「まあまあ!! プリシラにプレゼントまで!! いったい何を――」
プリシラの手にしている箱を見た母は目と口を限界まで見開いた。
次の瞬間、娘の手から箱をひったくるようにして取り上げる。
「返してよお母さま! 私がもらったのよ!!」
「ええ。よくわかってますよ。でもあなたに持たせていたら壊したりなくしたりしちゃうかもしれないでしょう? だからこれはお母さまがいったん預かります」
「いやよ! 返してよ!! そういっていつもわたしがもらったものをお母さまが持っていってしまうじゃない!」
プリシラは真っ赤になって力いっぱい叫ぶ。さすがに人目が気になり始めたのか、母は娘をなだめるように頭を撫でた。
「そんなことないわ。明日、お母さまがちゃあんとあなたに返してあげますからね」
だがプリシラは母の手を振り払ってひときは大きな声で泣き叫んだ。
「うそよ! わたし知ってるんだから!! お母さまはそうやってわたしがもらったものを勝手に売っているのよ!!」
その一言で広間の視線が一気に母に集中する。
母は真っ赤な顔で全身を震わせながら、プリシラを睨みつけた。
「な、なにを言っているのかしらこの子は。マーサ! プリシラは具合が悪いみたいだわ。少し別室で休ませてちょうだい」
母に呼ばれて現れた乳母が妹を連れて行こうとするが、プリシラは踏ん張って再び大声を上げた。
「いやよ! ここにいる! プレゼントを返してもらうまで動かない!! 」
「この素敵なブローチとイヤリングも売るつもりなんだわ! お金が足りないから! この前だってエドガー叔父さまのところにお金を借りに行くって言ってたじゃないの!」
「プリシラ、それ以上バカな妄想話はやめるんだ!」
父が厳しい声で制する。
「妄想なんかじゃないわ! 本当のことよ!」
「この……ッ!!」
怒りのあまり赤を通り越して真っ青になった父がプリシラに向かって手を振り上げた。
慌てて俺がけ寄るよりも早く、誰かが父の手首を掴む。
「ラムズデール公爵。小さな子どもに手をあげるのは感心しませんね」
レヴィの甘く優しい声が静まり返った室内に響いた。
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