81 / 85
第七章 真実の愛
<20>何度でも恋をする
しおりを挟む
「な、なに」
なんとか絞り出した声は動揺と緊張で震えてしまう。
ものすごい速さで胸を打つ鼓動に気がつかれたくなくて、軽く両手で胸を押してみるが、逆にさらに強い力で抱き込まれた。
「許してくれてありがとう……」
「だ、だからそれはいいって言っただろ」
顔を胸板に押し付けるように抱かれているせいで、どんな顔をしているか見ることができない。
「別邸できみを見た時、とても驚いたんだ。気難しいオーウェンや領地の皆と打ち解けて、その上領民たちのために新しい名産を作ろうとして……今思うと、あの時以来、きみのことばかり考えるようになっていたのかもしれない」
「……え」
「きみの相手をするのが面倒で、強制的に別邸に追いやったのは僕なのにね。それでも、自分が置かれた場所をより良い場所にしようと努力するきみがキラキラして見えた。オーウェンたちにきみのことを褒められると、勝手に誇らしい気持ちになってた」
「レヴィ……」
「きみが実家でどんな目に遭っていたのか、エヴァンズ公爵が詳しく話してくれたんだ。そんなつらい思いをしていたなんて微塵も感じさせずに、いつも明るくて元気で、楽しそうなきみのことを思うと胸が苦しくなるような、切なくなるような……言いようのない気持ちになるんだ。あんなに失礼でひどい態度を取った僕が言っていいことじゃない。わかっているけど、僕はもう抑えられないんだ」
そこまで言うとレヴィはゆっくりと体を離し、視線を合わせた。
「勝手な男でごめん。でも……僕はきみのことを好きになってしまったんだ……好きだ、エリス。きみのことが大好きだ」
驚きすぎて言葉が出てこない。
だが心の奥底からあふれ出てくる気持ちはきっと――。
俺は何度も深呼吸をして息を整える。
「俺、はずっと誰かに恋する気持ちがわからなかったんだ。だから好きって言われてもどう返していいか困ってた。でもレヴィが記憶を失って、前みたいに話したりできなくなってから……ものすごく寂しくて、つらかった。このまま俺たち、離婚するのかもなって考えると、胸がすごく痛くなった……これって多分、俺もレヴィのことが……す、好きってことだよな……?」
さっきまで緊張と不安が揺らめいていたアクアマリンの瞳は、今は蕩けそうに甘い。
レヴィは首を縦に振ると、再び俺を抱きしめた。
「好きだよ、エリス。きみのこと……愛してる」
見上げた先のアクアマリンが少しずつ近づいてくると同時に顎に親指がかけられて、俺は静かに目を閉じた。
唇が触れ合った瞬間、パリンと何かが割れるような音が響く。
反射的に目を開くと、視界いっぱいにレヴィの美しい顔が広がった。
だが眉は顰められ、とてもつらそうな表情をしている。
「申し訳ございません。エリス様……すべてを思い出しました」
「レ、ヴィ……?」
「はい。なんでしょう」
「レヴィ……」
俺を見つめる優しい瞳。レヴィの記憶が戻ったのだと確認する。
気がつくと両目から自然に涙が溢れていた。
「エリス様!? どうなさったのです? どこか痛むのですか」
「違う、違うんだ。嬉しくて」
「……え?」
「今までごめん。こんなことになるまで気づかなくて本当バカだよな……レヴィのことが好きだ。大好きだ。だからもう二度と俺のこと忘れたりすんな……っ! ずっと、俺の側にいて――」
言い終わる前に、再び強く抱きしめられる。
「はい。二度とエリス様のことを忘れません。ずっとお側にいます……」
レヴィの声も震えている気がした。
しばらくすると肩のあたりがじんわりと温かくなる。
すぐにレヴィも泣いているのだと気がついた。
「エリス様……好きです、あなたのことが。記憶をなくしても、僕はやっぱりまたあなたに恋をしました。きっと何度記憶を失っても、生まれ変わったとしても、僕はあなただけを愛し続けます……!」
「俺も……ずっとおまえのことだけが、好き」
互いに濡れた瞳で見つめ合い、どちらからともなく唇が重なる。
俺たちは泣きながら、何度も何度もキスをした。
なんとか絞り出した声は動揺と緊張で震えてしまう。
ものすごい速さで胸を打つ鼓動に気がつかれたくなくて、軽く両手で胸を押してみるが、逆にさらに強い力で抱き込まれた。
「許してくれてありがとう……」
「だ、だからそれはいいって言っただろ」
顔を胸板に押し付けるように抱かれているせいで、どんな顔をしているか見ることができない。
「別邸できみを見た時、とても驚いたんだ。気難しいオーウェンや領地の皆と打ち解けて、その上領民たちのために新しい名産を作ろうとして……今思うと、あの時以来、きみのことばかり考えるようになっていたのかもしれない」
「……え」
「きみの相手をするのが面倒で、強制的に別邸に追いやったのは僕なのにね。それでも、自分が置かれた場所をより良い場所にしようと努力するきみがキラキラして見えた。オーウェンたちにきみのことを褒められると、勝手に誇らしい気持ちになってた」
「レヴィ……」
「きみが実家でどんな目に遭っていたのか、エヴァンズ公爵が詳しく話してくれたんだ。そんなつらい思いをしていたなんて微塵も感じさせずに、いつも明るくて元気で、楽しそうなきみのことを思うと胸が苦しくなるような、切なくなるような……言いようのない気持ちになるんだ。あんなに失礼でひどい態度を取った僕が言っていいことじゃない。わかっているけど、僕はもう抑えられないんだ」
そこまで言うとレヴィはゆっくりと体を離し、視線を合わせた。
「勝手な男でごめん。でも……僕はきみのことを好きになってしまったんだ……好きだ、エリス。きみのことが大好きだ」
驚きすぎて言葉が出てこない。
だが心の奥底からあふれ出てくる気持ちはきっと――。
俺は何度も深呼吸をして息を整える。
「俺、はずっと誰かに恋する気持ちがわからなかったんだ。だから好きって言われてもどう返していいか困ってた。でもレヴィが記憶を失って、前みたいに話したりできなくなってから……ものすごく寂しくて、つらかった。このまま俺たち、離婚するのかもなって考えると、胸がすごく痛くなった……これって多分、俺もレヴィのことが……す、好きってことだよな……?」
さっきまで緊張と不安が揺らめいていたアクアマリンの瞳は、今は蕩けそうに甘い。
レヴィは首を縦に振ると、再び俺を抱きしめた。
「好きだよ、エリス。きみのこと……愛してる」
見上げた先のアクアマリンが少しずつ近づいてくると同時に顎に親指がかけられて、俺は静かに目を閉じた。
唇が触れ合った瞬間、パリンと何かが割れるような音が響く。
反射的に目を開くと、視界いっぱいにレヴィの美しい顔が広がった。
だが眉は顰められ、とてもつらそうな表情をしている。
「申し訳ございません。エリス様……すべてを思い出しました」
「レ、ヴィ……?」
「はい。なんでしょう」
「レヴィ……」
俺を見つめる優しい瞳。レヴィの記憶が戻ったのだと確認する。
気がつくと両目から自然に涙が溢れていた。
「エリス様!? どうなさったのです? どこか痛むのですか」
「違う、違うんだ。嬉しくて」
「……え?」
「今までごめん。こんなことになるまで気づかなくて本当バカだよな……レヴィのことが好きだ。大好きだ。だからもう二度と俺のこと忘れたりすんな……っ! ずっと、俺の側にいて――」
言い終わる前に、再び強く抱きしめられる。
「はい。二度とエリス様のことを忘れません。ずっとお側にいます……」
レヴィの声も震えている気がした。
しばらくすると肩のあたりがじんわりと温かくなる。
すぐにレヴィも泣いているのだと気がついた。
「エリス様……好きです、あなたのことが。記憶をなくしても、僕はやっぱりまたあなたに恋をしました。きっと何度記憶を失っても、生まれ変わったとしても、僕はあなただけを愛し続けます……!」
「俺も……ずっとおまえのことだけが、好き」
互いに濡れた瞳で見つめ合い、どちらからともなく唇が重なる。
俺たちは泣きながら、何度も何度もキスをした。
1,191
あなたにおすすめの小説
冷酷無慈悲なラスボス王子はモブの従者を逃がさない
北川晶
BL
冷徹王子に殺されるモブ従者の子供時代に転生したので、死亡回避に奔走するけど、なんでか婚約者になって執着溺愛王子から逃げられない話。
ノワールは四歳のときに乙女ゲーム『花びらを恋の数だけ抱きしめて』の世界に転生したと気づいた。自分の役どころは冷酷無慈悲なラスボス王子ネロディアスの従者。従者になってしまうと十八歳でラスボス王子に殺される運命だ。
四歳である今はまだ従者ではない。
死亡回避のためネロディアスにみつからぬようにしていたが、なぜかうまくいかないし、その上婚約することにもなってしまった??
十八歳で死にたくないので、婚約も従者もごめんです。だけど家の事情で断れない。
こうなったら婚約も従者契約も撤回するよう王子を説得しよう!
そう思ったノワールはなんとか策を練るのだが、ネロディアスは撤回どころかもっと執着してきてーー!?
クールで理論派、ラスボスからなんとか逃げたいモブ従者のノワールと、そんな従者を絶対逃がさない冷酷無慈悲?なラスボス王子ネロディアスの恋愛頭脳戦。
悪役令嬢の兄でしたが、追放後は参謀として騎士たちに囲まれています。- 第1巻 - 婚約破棄と一族追放
大の字だい
BL
王国にその名を轟かせる名門・ブラックウッド公爵家。
嫡男レイモンドは比類なき才知と冷徹な眼差しを持つ若き天才であった。
だが妹リディアナが王太子の許嫁でありながら、王太子が心奪われたのは庶民の少女リーシャ・グレイヴェル。
嫉妬と憎悪が社交界を揺るがす愚行へと繋がり、王宮での婚約破棄、王の御前での一族追放へと至る。
混乱の只中、妹を庇おうとするレイモンドの前に立ちはだかったのは、王国騎士団副団長にしてリーシャの異母兄、ヴィンセント・グレイヴェル。
琥珀の瞳に嗜虐を宿した彼は言う――
「この才を捨てるは惜しい。ゆえに、我が手で飼い馴らそう」
知略と支配欲を秘めた騎士と、没落した宰相家の天才青年。
耽美と背徳の物語が、冷たい鎖と熱い口づけの中で幕を開ける。
転生したらスパダリに囲われていました……え、違う?
米山のら
BL
王子悠里。苗字のせいで“王子さま”と呼ばれ、距離を置かれてきた、ぼっち新社会人。
ストーカーに追われ、車に轢かれ――気づけば豪奢なベッドで目を覚ましていた。
隣にいたのは、氷の騎士団長であり第二王子でもある、美しきスパダリ。
「愛してるよ、私のユリタン」
そう言って差し出されたのは、彼色の婚約指輪。
“最難関ルート”と恐れられる、甘さと狂気の狭間に立つ騎士団長。
成功すれば溺愛一直線、けれど一歩誤れば廃人コース。
怖いほどの執着と、甘すぎる愛の狭間で――悠里の新しい人生は、いったいどこへ向かうのか?
……え、違う?
のほほんオメガは、同期アルファの執着に気付いていませんでした
こたま
BL
オメガの品川拓海(しながわ たくみ)は、現在祖母宅で祖母と飼い猫とのほほんと暮らしている社会人のオメガだ。雇用機会均等法以来門戸の開かれたオメガ枠で某企業に就職している。同期のアルファで営業の高輪響矢(たかなわ きょうや)とは彼の営業サポートとして共に働いている。同期社会人同士のオメガバース、ハッピーエンドです。両片想い、後両想い。攻の愛が重めです。
【本編完結】転生先で断罪された僕は冷酷な騎士団長に囚われる
ゆうきぼし/優輝星
BL
断罪された直後に前世の記憶がよみがえった主人公が、世界を無双するお話。
・冤罪で断罪された元侯爵子息のルーン・ヴァルトゼーレは、処刑直前に、前世が日本のゲームプログラマーだった相沢唯人(あいざわゆいと)だったことを思い出す。ルーンは魔力を持たない「ノンコード」として家族や貴族社会から虐げられてきた。実は彼の魔力は覚醒前の「コードゼロ」で、世界を書き換えるほどの潜在能力を持つが、転生前の記憶が封印されていたため発現してなかったのだ。
・間一髪のところで魔力を発動させ騎士団長に救い出される。実は騎士団長は呪われた第三王子だった。ルーンは冤罪を晴らし、騎士団長の呪いを解くために奮闘することを決める。
・惹かれあう二人。互いの魔力の相性が良いことがわかり、抱き合う事で魔力が循環し活性化されることがわかるが……。
異世界転生先でアホのふりしてたら執着された俺の話
深山恐竜
BL
俺はよくあるBL魔法学園ゲームの世界に異世界転生したらしい。よりにもよって、役どころは作中最悪の悪役令息だ。何重にも張られた没落エンドフラグをへし折る日々……なんてまっぴらごめんなので、前世のスキル(引きこもり)を最大限活用して平和を勝ち取る! ……はずだったのだが、どういうわけか俺の従者が「坊ちゃんの足すべすべ~」なんて言い出して!?
宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている
飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話
アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。
無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。
ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。
朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。
連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。
※6/20追記。
少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。
今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。
1話目はちょっと暗めですが………。
宜しかったらお付き合い下さいませ。
多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。
ストックが切れるまで、毎日更新予定です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる