魔力ゼロの無能オメガのはずが嫁ぎ先の氷狼騎士団長に執着溺愛されて逃げられません!

松原硝子

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第七章 真実の愛

<19>打ち明ける

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「あー傑作だった! 何回思い出しても笑っちゃうな」
帰宅してもレヴィはずっと笑い続けている。

あの後、借金だらけの実情を晒されてしまった両親と兄たちは悪態を吐きながらやっとのことで母を起こして自室に消えた。
叔父上が代わりにパーティーのホスト役を務めてくれたおかげで、その後はなんとか予定どおりに終えることができたのだ。
プリシラは叔父上に連れられて、今夜はエヴァンズ公爵家に身を寄せることになった。状況によっては、しばらく叔父上のもとで暮らすことになるかもしれない。
(でもよかった。その方があの子のためにずっといい)
あの様子だと、プリシラは両親から手をあげられたこともあったのかもしれない。
兄上たちは自分自身のことしか興味がない人たちだし、誰も守ってくれない中でつらい思いをしていたのだろうか。
そう思うと、胸が痛くなる。
たしかに両親は実の親だが、今日の様子をみてはっきりと彼らはもう取り返しのつかないところまでいってしまったのだとはっきりわかった。
豪華な宝石や衣装、高価な家具や調度品などを求める際限のない欲望のために人の心を失ってしまったのかもしれない。

パーティーの後、叔父上は父上に自己破産を進めると話していた。
爵位を取り上げられるようなことにはならないはずだが、屋敷や宝石など金に換えられるものはすべて借金の担保として没収されることになるらしい。
両親と兄たちはラムズデール家の領地の端にある別荘――ほとんど使用しておらず、とても小さい――で生活することになるだろうとのことだった。
「あれだけ浪費できるってある意味才能だと思うけどさ、身の丈にあった生活を覚えないとね」
レヴィは肩を竦めて鼻を鳴らす様子に思わず苦笑してしまう。
「それにしてもひどい奴らだったな。あ、ごめん、それでもきみにとっては実の親よね」
「いや……どうなんだろうな。俺、魔力診断でなぜかほぼゼロって結果が出てさ。それ以来ずっと親子として接してこなかったから、特になにも感じないな。それより、今日は本当にありがとな」
笑いかけるとレヴィはなぜか顔を少し赤らめてそっぽを向いた。
「別にー。ああいうバカな奴らのことが嫌いなだけだし」
「正直、スカッとしたし。ちゃんと理解してくれるかは微妙だけど、長い目でみたらあの人たちにとってもこうなったのはいいことだと思う」
「どうだか。人間はそんなに簡単に変われないよ。まあ、痛い目みて多少は響いてほしいけど」
「そうかもな。でもどうして俺たちのために動いてくれたんだ?」
純粋な疑問として投げかけたのだが、レヴィはなぜか下を向いてフリーズしている。
「レヴィ?」
呼びかけても返事がない。どこか具合が悪いのだろうか。
しばらくの沈黙の後、小さな声でレヴィが呟いた。
「よく、わからないんだ。でもエヴァンズ公爵の屋敷でラムズデール公爵たちに会ったとき、きみのことを悪く言われて例え実の親だろうと、どうしようもなく腹が立った」
レヴィはゆっくりと顔を上げて、俺のすぐ前に立った。
「ひどいことたくさん言ってごめん。きみのことを誤解してた。ろくに自分の目で見ることもしないで、文字だけの報告書を読んできみのことをわかった気になってた。本当に、ごめん」
レヴィは真剣な瞳でそう告げると頭を下げた。
「い、いいよ! そんなこと。全然気にしてないから。だから顔上げてくれよ」
俺はレヴィの両肩に手をかけて半ば強引に顔を上げさせる。
「許して、くれるの?」
「許すもなにも……記憶失ってんだから仕方ないだろ。それに腹が立つっていうより、おまえと話したり、くだらないことで笑ったりできなくて寂しかった」
レヴィはまた黙ってしまう。真顔で表情が読み取れない。
(やべ。謝ってくれたからってちょっと調子乗ったかな)
「はは、なんてな。冗談だよ! でも全然謝るようなことじゃ――」
次の瞬間、視界が白と水色で埋めつくされる。
一瞬何が起きたのかわからなかったが、背中に回された腕の感触でレヴィに抱きしめられたのだと気がついた。
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