魔力ゼロの無能オメガのはずが嫁ぎ先の氷狼騎士団長に執着溺愛されて逃げられません!

松原硝子

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第七章 真実の愛

<21>開花

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その夜、俺たちは久しぶりに同じベッドで抱きしめ合って眠った。
「寒い……」
風邪をひいたときのような寒気を感じて目が覚めた。
ベッドに入ったときと同じようにレヴィの腕の中にいるというのに、寒気が止まらない。
反対に、首から上は熱くてたまらない。
やっぱり風邪を引いてしまったのだろうか。
熱を測ろうと上体を起こしかけたのに、強い力でベッドの中に引き戻られてしまう。
「……エリス様? どこに行くのです?」
掠れた寝起きの声が色っぽい。さらに耳に熱い息がかかると、それだけで心音が爆発的に速度を上げる。気がつかれたら恥ずかしくて死んでしまいそうなので、平静を装って答えた。
「起きたのか?」
「はい……でもまだ一緒にこうしていたいです」
背中と腰に回された腕に力が込められる。
「なんか俺、ちょっと寒気がして。風邪引いたのかもしれない」
言った途端にアクアマリンの双眸がカッと見開かれた。
「風邪ですか!? 今すぐ医者を――」
だがレヴィは突然押し黙り、なんとも言えない表情で俺を見た。
「なに」
「あ……いや……」
急に顔を赤くして言い淀む様子がなんだか怪しい。
「なんだよ、急に赤くなって」
「あの、エリス様。僕が何を言っても絶対に怒らないでくれますか?」
「いいから早く言えって」
レヴィは何度か瞬きをした後、大きく息を吸い込む。
「その……エ、エリス様の象徴が、なんだかとてもお元気なようです……」
最後は蚊の鳴くような声で呟いて、レヴィはぎゅっと目を閉じた。
「は」
想像もしなかった言葉に衝撃で間抜けな声が出る。
(嘘だろ!? そんなわけ……)
掛け布団を捲って中をのぞいた俺は、頭を抱えたくなった。
明らかにナイトガウンの一部がテントを張ったように盛り上がっている。
ゆっくりと顔を上げると、赤面しているレヴィと目が合った。
「あ、はは……ほんとだな。なんでだろ、今までこんなことなかったんだけど、あはは」
笑ってごかますなんで情けない。
これ以上、密着していない方がいい気がしてレヴィの腕から抜け出そうとする。
だが、腰と背中に回された腕の力が緩むことはない。
「な、なんだよ。離せ。さすがに気まずすぎる」
だがレヴィは俺の言葉を無視して、首筋に顔を寄せてくる。
「おい、やめろ、匂いかぐなよ!」
頭をどけようとしても、レヴィは動かずスンスンと匂いを嗅いでいる。
「エリス様、なんだかすごく良い匂いがします。僕が大好きなバニラみたいな匂い……エリス様は匂いまで可愛いです。大好きです……」
「ちょ、レヴィ……っ! も、やめ…………うあっ!!」
首元で大好きと囁かれた瞬間、身体の中心で何かが熱く弾けたような感覚を覚える。
「エリス様!?」
驚いたレヴィは素早く体を離して俺の顔を覗き込む。
「申し訳ございません! 調子に乗りまし――」
レヴィが動いた瞬間、彼から桃のような爽やかな甘い香りがぶわりと放たれた。
(やば……なんだこの匂い。すごくいい匂いだ……)
俺はレヴィの匂いをもっと吸い込みたくて、首の後ろに両手を回して彼の体を胸に抱き込んだ。
「エリス様!?」
胸元から聞こえる慌てたような声に構わず、俺はレヴィの匂いをかぎつづける。
どこが一番、濃い匂いなんだろうか。
なぜかその場所をどうしても探さなければいけないという使命感が胸の中に湧き上がる。
「レヴィもいい匂い、する………もっと、かぎたい」
「エリス様もすごくいい匂いです……」
レヴィは突如、嫌がる俺の腕を無理矢理解いて、真上から顔を覗き込んでくる。
「なんで、離れるんだよ」
腕を解かれたことが無性に悲しくて、涙まで出てきた。
熱のせいだろうか。感情の制御がうまくできない。
「すみません……ですが、エリス様……もしかして今、ヒートを起こされているのかもしれないです」
瞳孔の開ききったアクアマリンの瞳には、餌を前にした獰猛な肉食獣のようなぎらついた光が煌めいていた。
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