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第2章〜ふられたての女ほど おとしやすいものはないんだってね〜⑪
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上坂部葉月や生徒会の先輩たちと、ひばりヶ丘学院・演劇部の観劇に出掛けてから、2日後の月曜日のこと――――――。
教室に入ると、先週までとは、また少しクラスの雰囲気が変わっていることに気づいた。
週末までは、まるで何かに遠慮するように、後方の席の久々知大成と会話をすることを極力避けていた上坂部だったが……今日は、二週前に行われたカラオケに参加する前までと同じように、男子と女子が混じった幼なじみのグループと談笑している。
さらに、オレが意識して彼女を見るようになったからだろうか、心なしか、上坂部の雰囲気が変わったような気がする。
窓際の席で、笑顔で会話を交わしている委員長と副委員長の様子をそれとなく観察していると、一週間前、オレを空き教室に連れ込んだ女子生徒が、こちらの席にやってきた。
「立花、いま、ちょっと良い?」
大島睦月は、そう言って、席を外すことをうながす。
彼女に誘われるまま教室を出て、先週、上坂部が交際を申し込まれた、人気の少ない昇降階段のところまで来ると、大島は、ゆっくりと切り出した。
「立花、お疲れさま。今日の葉月の様子を見ると、アナタに頼んでおいたことは、上手く行ってるみたいね」
「まあ、なんとか、上坂部と二人で話す時間を作ることが出来たからな。あと、あいつを説得するときに、大島の名前を出したけど、それは構わなかったんだよな?」
「そうね、アナタがその方が説得力があると判断したのなら、別に問題ないわ」
オレの問いかけに、彼女は穏やかな表情でうなずく。そして、続けて、こんなことをたずねてきた。
「ところで、葉月は、見た目からも変わろうとしているみたいだけど……アナタ、あのコに何か言ったの?」
「いや、オレは、上坂部が置かれた状況と似たようなシチュエーションについて、相談に乗っている動画を見つけたから、そのことを伝えただけだ。それより、今日は、上坂部の雰囲気が、いつもと違うような気がしたけど、やっぱりそうなのか?」
オレが、そう答えると、大島は軽く微笑みながら、キッパリと言い切る。
「まあ、アナタにナチュラルメイクのノウハウなんて、あるわけないし、それも当然と言ったところかしら。でも、葉月の意識をあそこまで変えられるなんて、その動画のアドバイザーは、よっぽど優秀だったのね」
「そうだぞ! オレがオススメしたのは、白草四葉ちゃんのお悩み相談だからな!」
オレが、ドヤ顔で返答すると、クラスメートは、あきれた様子でつぶやく。
「どうして、アナタが、自慢気に語っているのか、意味がわからないんだけど……」
いや、実際に上坂部が、四葉ちゃんの話したことに影響を受けたのなら、オレも、それなりの役割を果たした、と言えるんじゃないのか……? そう反論しようとしたが、ここで、自分の功績を語ろうとしても意味がないことなので、黙っておくことにした。
そんな、こちらの様子には構うことなく、大島は言葉を続ける。
「葉月の気持ち……というか、覚悟が決まったのなら、もう私たちに出来ることは無いかも知れないけど……立花、アナタはこのあと、どうするつもり?」
「たしかに、ここで一区切りにしておく方が良いかも知れないとは思うが……一学期の間にしておきたいことがあるんだ」
「あら、そうなのね……だけど、来週からは、期末テストも始まるのに、これからナニをしようって言うの?」
「あぁ、期末試験が終わったあと、ちょっとしたイベントがあるからな。そこに、上坂部と久々知を一緒に誘えないかと考えているんだ」
オレが言い終わると、大島は、「ふ~ん」とつぶやいたあと、何事かを考えながら返答する。
「そう言うことなら、私にも出来ることがあれば、協力させてもらうわ。アナタには、先週、色々と動いてもらったからね」
彼女の返答に、「そうか……助かる」と答えたあと、オレは気になっていることを聞いてみた。
「でも、どうして、大島は上坂部のことについて、ここまで協力してくれるんだ?」
これまで、クラスメートとほとんど関わりを持ってこなかったオレが言うのもナンなのだが、大島睦月も、あまり積極的にクラスの連中と交流を持つタイプではない。彼女は、同じ吹奏楽部の浜小春と、二人で一緒に行動することが多く、クラスの誰とでも別け隔てなく話す、上坂部と久々知のクラス委員コンビが、大島たちとクラスメートのコミュニケーションを取り持っているのが現状だ。
オレの問いに、大島は、また少しだけ表情を緩めて答える。
「一年のときに、小春がクラスで孤立しかけてたことがあったんだけど……葉月は、そのことを気にかけて、クラスのみんなとの仲を取り持ってくれたんだ。だから、なにかあれば、彼女のチカラになりたくて……」
そうだったのか……。
さすがは、クラス委員気質というか、上坂部葉月らしいエピソードではある。
そういうことであれば、余計に、健気な副委員長を応援したくなるという気持ちが湧いてくる。
そう考えたオレは、週末にピッコリシアターで行われた舞台を観劇したメンバーのことを思い返しながら、市内の神社で開催される初夏のイベントに想いを馳せていた。
教室に入ると、先週までとは、また少しクラスの雰囲気が変わっていることに気づいた。
週末までは、まるで何かに遠慮するように、後方の席の久々知大成と会話をすることを極力避けていた上坂部だったが……今日は、二週前に行われたカラオケに参加する前までと同じように、男子と女子が混じった幼なじみのグループと談笑している。
さらに、オレが意識して彼女を見るようになったからだろうか、心なしか、上坂部の雰囲気が変わったような気がする。
窓際の席で、笑顔で会話を交わしている委員長と副委員長の様子をそれとなく観察していると、一週間前、オレを空き教室に連れ込んだ女子生徒が、こちらの席にやってきた。
「立花、いま、ちょっと良い?」
大島睦月は、そう言って、席を外すことをうながす。
彼女に誘われるまま教室を出て、先週、上坂部が交際を申し込まれた、人気の少ない昇降階段のところまで来ると、大島は、ゆっくりと切り出した。
「立花、お疲れさま。今日の葉月の様子を見ると、アナタに頼んでおいたことは、上手く行ってるみたいね」
「まあ、なんとか、上坂部と二人で話す時間を作ることが出来たからな。あと、あいつを説得するときに、大島の名前を出したけど、それは構わなかったんだよな?」
「そうね、アナタがその方が説得力があると判断したのなら、別に問題ないわ」
オレの問いかけに、彼女は穏やかな表情でうなずく。そして、続けて、こんなことをたずねてきた。
「ところで、葉月は、見た目からも変わろうとしているみたいだけど……アナタ、あのコに何か言ったの?」
「いや、オレは、上坂部が置かれた状況と似たようなシチュエーションについて、相談に乗っている動画を見つけたから、そのことを伝えただけだ。それより、今日は、上坂部の雰囲気が、いつもと違うような気がしたけど、やっぱりそうなのか?」
オレが、そう答えると、大島は軽く微笑みながら、キッパリと言い切る。
「まあ、アナタにナチュラルメイクのノウハウなんて、あるわけないし、それも当然と言ったところかしら。でも、葉月の意識をあそこまで変えられるなんて、その動画のアドバイザーは、よっぽど優秀だったのね」
「そうだぞ! オレがオススメしたのは、白草四葉ちゃんのお悩み相談だからな!」
オレが、ドヤ顔で返答すると、クラスメートは、あきれた様子でつぶやく。
「どうして、アナタが、自慢気に語っているのか、意味がわからないんだけど……」
いや、実際に上坂部が、四葉ちゃんの話したことに影響を受けたのなら、オレも、それなりの役割を果たした、と言えるんじゃないのか……? そう反論しようとしたが、ここで、自分の功績を語ろうとしても意味がないことなので、黙っておくことにした。
そんな、こちらの様子には構うことなく、大島は言葉を続ける。
「葉月の気持ち……というか、覚悟が決まったのなら、もう私たちに出来ることは無いかも知れないけど……立花、アナタはこのあと、どうするつもり?」
「たしかに、ここで一区切りにしておく方が良いかも知れないとは思うが……一学期の間にしておきたいことがあるんだ」
「あら、そうなのね……だけど、来週からは、期末テストも始まるのに、これからナニをしようって言うの?」
「あぁ、期末試験が終わったあと、ちょっとしたイベントがあるからな。そこに、上坂部と久々知を一緒に誘えないかと考えているんだ」
オレが言い終わると、大島は、「ふ~ん」とつぶやいたあと、何事かを考えながら返答する。
「そう言うことなら、私にも出来ることがあれば、協力させてもらうわ。アナタには、先週、色々と動いてもらったからね」
彼女の返答に、「そうか……助かる」と答えたあと、オレは気になっていることを聞いてみた。
「でも、どうして、大島は上坂部のことについて、ここまで協力してくれるんだ?」
これまで、クラスメートとほとんど関わりを持ってこなかったオレが言うのもナンなのだが、大島睦月も、あまり積極的にクラスの連中と交流を持つタイプではない。彼女は、同じ吹奏楽部の浜小春と、二人で一緒に行動することが多く、クラスの誰とでも別け隔てなく話す、上坂部と久々知のクラス委員コンビが、大島たちとクラスメートのコミュニケーションを取り持っているのが現状だ。
オレの問いに、大島は、また少しだけ表情を緩めて答える。
「一年のときに、小春がクラスで孤立しかけてたことがあったんだけど……葉月は、そのことを気にかけて、クラスのみんなとの仲を取り持ってくれたんだ。だから、なにかあれば、彼女のチカラになりたくて……」
そうだったのか……。
さすがは、クラス委員気質というか、上坂部葉月らしいエピソードではある。
そういうことであれば、余計に、健気な副委員長を応援したくなるという気持ちが湧いてくる。
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