フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件

遊馬友仁

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第4章~オレの幼なじみがこんなに素直なわけがない~第6話

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「リッちゃん! 先生がキチンと注意するから、劇の練習のときは、がんばっているお友だちを応援しましょう!」 

 中浜先生のするどい声が、ぼくたちの座るステージ前の観覧席に飛ぶ。
 しかし、注意を受けた当の本人は、
 
「え~! だって、エリちゃんは、昨日えらそうにケンタにダメ出ししてたのに、自分も出来てない方が悪いと思いま~す」

と先生に反論までする始末で、まったく悪びれるようすがない。

 そんな、リッちゃんの態度を目にしながら、ぼくは、前の日の彼女の言葉を思い返していた。

「劇の練習がうまくいかないときがあったら、ムネリンは、『みんな、がんばってるんだから』って言って、助けてあげて?」

「他の子が、酷いことを言ったら、『そんなこと言っちゃダメだよ?』って注意してね」

 彼女が口にしていたことをもう一度、頭の中で整理したぼくは、自分を奮い立たせるように、口を開く。

「リッちゃん、そんなこと言っちゃダメだよ!」

 普段は、あまり自分から意見を言わないタイプのぼくが前の日に続いて、口を開いたので、中浜先生をはじめ、ゾウ組の教室にいた全員が、おどろいて、こちらを見つめるのがわかった。

 みんなから集まる視線に緊張を覚えながらも、ぼくは、勇気を振り絞って続けて言葉を発した。
 
「みんな、がんばって劇の練習をしてるんだから!」

 前の日と同じように、ぼくの発言に同調した中浜先生は、パンパンと場を引き締める。

「そう! ムネシゲくんの言うとおり! みんなも、エリちゃんとケンタくんを応援しましょう!」

 先生の言葉につられるように、他の園児たちが、

「エリちゃん、がんばれ~!」

「ケンタくん、がんばって~!」

と、声をかけ始めた。約一名をのぞいて、ゾウ組の子どもたちにとって、先生の言葉には、それだけの影響力があったようだ。
 
 その声に押されるように、劇の前半のパートを務める二人は、なんとか、白いケモノと黒いケモノの彼らの出番を演じきった。
 
 続いて、ぼくとリッちゃんの出番である後半のパートの練習に移る。

 ・

 ・

 ・

 村を襲った黒いケモノをやっつけたことで、村人や狩人は、白いケモノの家に遊びに来るようになりました。
 人間の友だちが出来た白いケモノは毎日毎日、遊び続け、楽しく暮らすことができました。

「人間たちは、優しいなあ。仲良くなれて、ほんとうに良かった」

 人間たちと仲良くなれた白いケモノは、嬉しく思いました。

 けれども、白いケモノには、気になることがありました。
 一番の友だちだった黒いケモノが、一度も遊びに来ないのです。

 いま、村人や狩人と仲良く暮らせているのは、黒いケモノのおかげです。

「人間たちとは仲良くなれたけど、また、クロ君と話したいな」
 
 そう思った白いケモノは、村人や狩人と仲良く出来ていることを伝えようと、黒いケモノの家をたずねることにしました。

 白いケモノが、山のずっと奥にある黒いケモノの家をたずねると、家の戸は固くしまっています。
 戸の横には、手紙が貼ってありました。

 ・

 ・

 ・

 物語は、ここから、いよいよクライマックスに突入する。

 本来は、家の戸に貼り出されている黒いケモノの手紙を、独白というカタチで、役を演じるリッちゃんが読み上げるのだ。

 舞台の端の方で、スッと立ち上がったリッちゃんは、大きく深呼吸をすると、一気に劇中のセリフを語り始めた。

 ・

 ・

 ・

 シロくんへ

 ニンゲンたちとは いつまでも なかよく まじめにつきあって たのしく へいわにくらしてください
 ぼくはしばらく キミにはおめにかかりません

 このままキミとつきあいをつづければ ニンゲンがキミをうたがうことがあるかもしれません
 うすきみワルくおもうかもしれません

 それは ぼくにとってもツマラナイ

 そう かんがえて ぼくはこれから とおくに でかけることにしました
 ながいながい おでかけに なるかもしれません

 それでも ぼくは どこにいても キミのことをわすれません
 
 どこかで また あうひがあるかもしれません

 さようなら シロくん
 からだを だいじにしてください

 いつまでも キミのともだち
 クロ

 ・

 ・

 ・

 リッちゃんが担当するセリフを語り終えると、ぼくをはじめとする他の園児たちだけでなく、中浜先生までもが、すぐに口を開けないでいた。ほうけたように、黒いケモノの役を演じる園児の演技に魅入られていたのだ。

 どれくらいの時間、みんなが口を開くことができなかったのか、正確なところはわからないけれど……。

 ハッとしたように我に返った先生が、大きな音で拍手をすると、みんなも、それにつられるように手を叩いて、リッちゃんの演技を称賛する。

「リッちゃん、スゴいわね! どこで、それだけ練習してきたの? お母さんたちにも見てもらったのかな? 偉いわ」

 中浜先生は、そう言って、迫真の独白で黒いケモノを演じてみせた園児を褒め称える。
 それでも、リッちゃん自身は、そのことに、さして興味を示さず、

「みんなと一緒にナニかをするのは、最後だから……真剣にやろうと思ってるだけ」

と、淡々とした冷静な口調で返答していた。
 
「そう! リッちゃんの言うとおり、今度の劇は、保育園の最後の行事だから、みんな、がんばりましょう!」

 先生の言葉に、みんなは、一斉に「は~い」と応える。

 そんななか、堂々と黒いケモノの役を演じてみせた女の子だけが、淋しげな表情を見せているのが印象的だった。
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