255 / 454
第三部
第4章〜三大配信者 芦宮高校最大の決戦〜②
しおりを挟む
~黒田竜司の見解~
「ハァ~~~~~」
週明けの月曜日の放課後、オレは、今回の動画コンテストの活動拠点になっている放送室で、ひとり、長いため息をついていた。
授業が始める前、雑談がてらに話していた内容によると、壮馬たちは、ほとんどの取材撮影を終えて、編集作業に入るらしい。
一方、シロの方はと言えば、活動に関する具体的な進捗報告を彼女が語ったわけではないが、あの余裕のある口ぶりから察するに、動画撮影は順調に進んでいるんだろう。
いや、他のグループのことを気にしている場合ではない。
問題は、自分たちの活動のスケジュールが、押せ押せになっていることだ。
壮馬たちとの連絡会を終えた二週間前から、一日一軒の頻度でクラブを訪問して活動実態を取材し、モモカの演じる芦宮サクラに、その魅力を語らせるというルーティーンをこなしてきたのだが……。
多くの提携先を抱えたオレたちは、スケジュール調整が上手くいかず、結果として、バドミントン部の新人戦を現地取材することができない、という事態になってしまった。
そして、男女合わせて数十名の部員を要するバドミントン部が、壮馬たちとの協力関係を築いたことにより、オレが計画していた取材先のクラブを増やし、基礎票を固めて三分の一以上の得票を獲得する、という目論見は、もろくも崩れさった。
動画コンテストの投票日に諸事情で欠席する生徒のため、という名目で実施される期日前投票で、提携したクラブの部員から、なるべく多くの票を得たかったのだが、そのプランは、計画どおりに行かなかった。
あとは、クラブに所属していない生徒が、Vtuberの芦宮サクラというキャラクターに魅力を感じて投票してくれることを期待するしかない。
だが、クラブ取材と、その後の音声収録の作業に忙殺されていたオレたちは、とてもではないが、シロたちのグループのような頻度で、活動をアピールする動画やメッセージを投稿することは出来なかった。
タブレットPCで、Googleカレンダーを確認し、今週末まで、びっしりと詰まったクラブ訪問のスケジュール表をながめながら、
(残りの日程で、取材と動画編集の完了まで到達できるだろうか……)
と、再び、ため息をつくと、
コンコン
小さく放送室のドアがノックされ、
「くろセンパイ、お疲れさまです」
と、モモカが入室してきた。
普段は、クラブ活動が始まる放課後に、生き生きとした表情を見せる下級生も、土日も休みなく続いた連日の取材活動で、どこか疲労の色が見えるのは、オレの気のせいではないだろう。
「おつかれ、モモカ……今日はサッカー部の取材日だが……早速、出られるか?」
「大丈夫です! これくらいで、疲れてなんていられませんよ」
笑顔を見せる彼女の気丈さに、
(うん、オレも負けていられないな……)
と、気合いを入れなおし、ふたりでグラウンドに向かう。
サッカー部員たちが練習を始めたばかりのグラウンドに到着すると、部長の香川先輩と、オレと同じ学年の堂安が出迎えてくれた。
「おう、黒田! ようやく来てくれたか! 待ってたぞ!」
上級生の言葉に、恐縮しながら、
「すいません……スケジュールが立て込んで、取材に来るのが遅くなってしまって」
そう返答すると、
「まあ、オレたちは、しばらく試合もないし、気にしなくて良いけどな」
と、香川部長は笑顔を見せてくれる。
さらに、部長に応じるように語る堂安は、モモカに視線を向けながら、
「黒田はともかく、可愛い一年の女子に取材してもらえるなら、ウチは、いつだって大歓迎ッスよ」
豪快に笑う。
(オマエは、先月シロに告白を断られたばかりなのに、ずい分と立ち直りが早いな……)
自分のことは棚に上げながら、心のなかで同級生にツッコミを入れるが、当のモモカは、慣れたようすで、
「ありがとうございます! 香川先輩、堂安先輩、今日は、よろしくお願いします」
と、丁寧に対応をしている。
中学生のときは、男子に対しても、気に入らないことがあると、結構トゲのある対応をすることが多かったような気がするのだが、その頃に比べると、モモカの性格もかなり丸くなったように感じる。
「ところで、Vtuberの取材って、ナニをするんだ? もしかして、オレらもゲームのキャラみたいになるのか?」
最終的な取材交渉を行ったときには不在だった堂安が、当然のように疑問を呈する。
「それには、このキャラクターを見てもらうのが早いかも……」
オレは、取材用に利用しているタブレットPCを起動して、動画サイトをアクセスする。
さらに、中部地方の大学生が制作したというサッカークラブの公式Vtuberが語るクラブや学校紹介の映像を取材相手のふたりに見てもらう。
「なるほど……こんな感じなのか。結構、面白そうッスね」
堂安の言葉に、香川部長も、笑顔でうなずく。
「そうだろ? サッカークラブに公式Vtuberが居るなら、オレたちの学校にそういうキャラクターが居ても良いんじゃないかと思うんだよ」
実は、体育会系の部員たちには、このテのキャラクターは、受けが良くないんじゃないかという不安もあったのだが、どうやら、そんな心配は必要なかったらしい。
サッカー部の練習風景を動画で撮影しながら、部の活動や特長について、香川部長と中心選手の堂安に答えてもらい、取材はスムーズに進む。
こうして、この日の自分たちの活動が順調におわったことに安心しつつ、オレとモモカは、残りの取材に対して、気持ちを新たにするのだった。
「ハァ~~~~~」
週明けの月曜日の放課後、オレは、今回の動画コンテストの活動拠点になっている放送室で、ひとり、長いため息をついていた。
授業が始める前、雑談がてらに話していた内容によると、壮馬たちは、ほとんどの取材撮影を終えて、編集作業に入るらしい。
一方、シロの方はと言えば、活動に関する具体的な進捗報告を彼女が語ったわけではないが、あの余裕のある口ぶりから察するに、動画撮影は順調に進んでいるんだろう。
いや、他のグループのことを気にしている場合ではない。
問題は、自分たちの活動のスケジュールが、押せ押せになっていることだ。
壮馬たちとの連絡会を終えた二週間前から、一日一軒の頻度でクラブを訪問して活動実態を取材し、モモカの演じる芦宮サクラに、その魅力を語らせるというルーティーンをこなしてきたのだが……。
多くの提携先を抱えたオレたちは、スケジュール調整が上手くいかず、結果として、バドミントン部の新人戦を現地取材することができない、という事態になってしまった。
そして、男女合わせて数十名の部員を要するバドミントン部が、壮馬たちとの協力関係を築いたことにより、オレが計画していた取材先のクラブを増やし、基礎票を固めて三分の一以上の得票を獲得する、という目論見は、もろくも崩れさった。
動画コンテストの投票日に諸事情で欠席する生徒のため、という名目で実施される期日前投票で、提携したクラブの部員から、なるべく多くの票を得たかったのだが、そのプランは、計画どおりに行かなかった。
あとは、クラブに所属していない生徒が、Vtuberの芦宮サクラというキャラクターに魅力を感じて投票してくれることを期待するしかない。
だが、クラブ取材と、その後の音声収録の作業に忙殺されていたオレたちは、とてもではないが、シロたちのグループのような頻度で、活動をアピールする動画やメッセージを投稿することは出来なかった。
タブレットPCで、Googleカレンダーを確認し、今週末まで、びっしりと詰まったクラブ訪問のスケジュール表をながめながら、
(残りの日程で、取材と動画編集の完了まで到達できるだろうか……)
と、再び、ため息をつくと、
コンコン
小さく放送室のドアがノックされ、
「くろセンパイ、お疲れさまです」
と、モモカが入室してきた。
普段は、クラブ活動が始まる放課後に、生き生きとした表情を見せる下級生も、土日も休みなく続いた連日の取材活動で、どこか疲労の色が見えるのは、オレの気のせいではないだろう。
「おつかれ、モモカ……今日はサッカー部の取材日だが……早速、出られるか?」
「大丈夫です! これくらいで、疲れてなんていられませんよ」
笑顔を見せる彼女の気丈さに、
(うん、オレも負けていられないな……)
と、気合いを入れなおし、ふたりでグラウンドに向かう。
サッカー部員たちが練習を始めたばかりのグラウンドに到着すると、部長の香川先輩と、オレと同じ学年の堂安が出迎えてくれた。
「おう、黒田! ようやく来てくれたか! 待ってたぞ!」
上級生の言葉に、恐縮しながら、
「すいません……スケジュールが立て込んで、取材に来るのが遅くなってしまって」
そう返答すると、
「まあ、オレたちは、しばらく試合もないし、気にしなくて良いけどな」
と、香川部長は笑顔を見せてくれる。
さらに、部長に応じるように語る堂安は、モモカに視線を向けながら、
「黒田はともかく、可愛い一年の女子に取材してもらえるなら、ウチは、いつだって大歓迎ッスよ」
豪快に笑う。
(オマエは、先月シロに告白を断られたばかりなのに、ずい分と立ち直りが早いな……)
自分のことは棚に上げながら、心のなかで同級生にツッコミを入れるが、当のモモカは、慣れたようすで、
「ありがとうございます! 香川先輩、堂安先輩、今日は、よろしくお願いします」
と、丁寧に対応をしている。
中学生のときは、男子に対しても、気に入らないことがあると、結構トゲのある対応をすることが多かったような気がするのだが、その頃に比べると、モモカの性格もかなり丸くなったように感じる。
「ところで、Vtuberの取材って、ナニをするんだ? もしかして、オレらもゲームのキャラみたいになるのか?」
最終的な取材交渉を行ったときには不在だった堂安が、当然のように疑問を呈する。
「それには、このキャラクターを見てもらうのが早いかも……」
オレは、取材用に利用しているタブレットPCを起動して、動画サイトをアクセスする。
さらに、中部地方の大学生が制作したというサッカークラブの公式Vtuberが語るクラブや学校紹介の映像を取材相手のふたりに見てもらう。
「なるほど……こんな感じなのか。結構、面白そうッスね」
堂安の言葉に、香川部長も、笑顔でうなずく。
「そうだろ? サッカークラブに公式Vtuberが居るなら、オレたちの学校にそういうキャラクターが居ても良いんじゃないかと思うんだよ」
実は、体育会系の部員たちには、このテのキャラクターは、受けが良くないんじゃないかという不安もあったのだが、どうやら、そんな心配は必要なかったらしい。
サッカー部の練習風景を動画で撮影しながら、部の活動や特長について、香川部長と中心選手の堂安に答えてもらい、取材はスムーズに進む。
こうして、この日の自分たちの活動が順調におわったことに安心しつつ、オレとモモカは、残りの取材に対して、気持ちを新たにするのだった。
0
あなたにおすすめの小説
フラレたばかりのダメヒロインを応援したら修羅場が発生してしまった件
遊馬友仁
青春
校内ぼっちの立花宗重は、クラス委員の上坂部葉月が幼馴染にフラれる場面を目撃してしまう。さらに、葉月の恋敵である転校生・名和リッカの思惑を知った宗重は、葉月に想いを諦めるな、と助言し、叔母のワカ姉やクラスメートの大島睦月たちの協力を得ながら、葉月と幼馴染との仲を取りもつべく行動しはじめる。
一方、宗重と葉月の行動に気付いたリッカは、「私から彼を奪えるもの奪ってみれば?」と、挑発してきた!
宗重の前では、態度を豹変させる転校生の真意は、はたして―――!?
※本作は、2024年に投稿した『負けヒロインに花束を』を大幅にリニューアルした作品です。
美人生徒会長は、俺の料理の虜です!~二人きりで過ごす美味しい時間~
root-M
青春
高校一年生の三ツ瀬豪は、入学早々ぼっちになってしまい、昼休みは空き教室で一人寂しく弁当を食べる日々を過ごしていた。
そんなある日、豪の前に目を見張るほどの美人生徒が現れる。彼女は、生徒会長の巴あきら。豪のぼっちを察したあきらは、「一緒に昼食を食べよう」と豪を生徒会室へ誘う。
すると、あきらは豪の手作り弁当に強い興味を示し、卵焼きを食べたことで豪の料理にハマってしまう。一方の豪も、自分の料理を絶賛してもらえたことが嬉しくて仕方ない。
それから二人は、毎日生徒会室でお昼ご飯を食べながら、互いのことを語り合い、ゆっくり親交を深めていく。家庭の味に飢えているあきらは、豪の作るおかずを実に幸せそうに食べてくれるのだった。
やがて、あきらの要求はどんどん過激(?)になっていく。「わたしにもお弁当を作って欲しい」「お弁当以外の料理も食べてみたい」「ゴウくんのおうちに行ってもいい?」
美人生徒会長の頼み、断れるわけがない!
でも、この生徒会、なにかちょっとおかしいような……。
※時代設定は2018年頃。お米も卵も今よりずっと安価です。
※他のサイトにも投稿しています。
イラスト:siroma様
ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜
遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった!
木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。
「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」
そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
負けヒロインに花束を!
遊馬友仁
キャラ文芸
クラス内で空気的存在を自負する立花宗重(たちばなむねしげ)は、行きつけの喫茶店で、クラス委員の上坂部葉月(かみさかべはづき)が、同じくクラス委員ので彼女の幼なじみでもある久々知大成(くくちたいせい)にフラれている場面を目撃する。
葉月の打ち明け話を聞いた宗重は、後日、彼女と大成、その交際相手である名和立夏(めいわりっか)とのカラオケに参加することになってしまう。
その場で、立夏の思惑を知ってしまった宗重は、葉月に彼女の想いを諦めるな、と助言して、大成との仲を取りもとうと行動しはじめるが・・・。
【完結】イケメンが邪魔して本命に告白できません
竹柏凪紗
青春
高校の入学式、芸能コースに通うアイドルでイケメンの如月風磨が普通科で目立たない最上碧衣の教室にやってきた。女子たちがキャーキャー騒ぐなか、風磨は碧衣の肩を抱き寄せ「お前、今日から俺の女な」と宣言する。その真意とウソつきたちによって複雑になっていく2人の結末とは──
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる