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第三百九十五話 DEAD OR ALIVE
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とある日の昼、わしはリビングにいた。リビングにいるのはわしとホウリ、そして久しく会っていなかったラッカがおる。
「久しぶりじゃな、ラッカ」
「……魔王様、これはどういう事ニャ?」
「何の事じゃ?」
「私が椅子に縛られてる理由に決まってるニャ!」
ラッカは椅子に座らされていて、ロープでグルグル巻きにされている。ホウリが縛ったから抜け出すことは不可能。出来たとしてもわしが逃がさんがな。
「魔王様が特別報酬をくれるって言ったからウキウキで来たのに!」
「あれは嘘じゃ」
「そんニャ!?」
「そんな事よりも、今日呼んだ理由を説明するぞ」
「嫌な予感しかしないニャ」
ラッカが自身を縛っている縄を見てため息を吐く。
「別に難しいことをして貰おうとは思っておらんぞ」
「ただ味見をして貰おうと思ってな」
「味見?」
ホウリは誰が見ても安心させるような、聖人のような笑顔を浮かべる。
「ミエルの料理の味見をな」
「ミエルの……料理?」
ラッカはホウリの言葉を咀嚼し、嚥下し、消化する。そして、台所に続く扉に目を向けた。
台所への扉から心なしか、黒いモヤが漏れているように感じた。全てを理解した瞬間、ラッカは暴れた。
「嫌だあああああ!まだ死にたくなあああああい!」
「おいおい、偉い暴れようだな?」
「ミエルの料理を食べさせられるって聞いて暴れない方がおかしいニャ!」
「だろうな。だから縛ってるんだ」
「分かってて聞いたのかニャ!?」
『シャー!』とラッカが歯を見せつつ威嚇してくる。じゃが、わしとホウリ相手に威嚇は何も意味をなさない。今のラッカは拾いたての子猫と変わらんな。
ラッカは身を何度も捩って拘束から逃れようとする。
「私じゃなくて魔王様が食べれば良いニャ!」
「わしもミエルの毒には勝てん。お主も見たじゃろ?」
「そういえばそうだったニャ」
初めてわしらと会った日の事を思い出して、ラッカが渋い顔をする。
「魔王様でも勝てない毒を私に食べさせるニャ?殺す気かニャ?」
「大丈夫だろ。ラッカが死にそうになったらフランに何とかしてもらう」
「出来るのかニャ?」
「1%くらいなら、なんとかなるぞ?」
「99%は何とかならないニャ!?やっぱり帰らせて欲しいニャ!」
「ほっほっほ、ダメ」
「ニャアアアアアア!誰か助けてええええええ!」
ラッカが大声で外に助けを求める。じゃが、わしのスキルで家の中からの衝撃や音は外部に漏れることは無い。
「ふっふっふ、お嬢ちゃん、叫んでも誰も助けてくれねぇぜ?」
「観念して、わしらの言う事を聞くんじゃな」
「なんで悪い人に寄せたのかニャ!?」
そう会話している間にも、扉から漏れている黒い霧が濃くなっている……気がする。いや、霧は幻なんじゃがな。なんだか、そんな異様な気配ということじゃ。
「これは助からんかもな」
「ちょっと!?」
「大丈夫だ。対策はしてある」
「それは本当かニャ?」
「墓の用意は済んでいる」
「死んだ後の用意はしないで欲しいニャ!?」
ラッカがまたバタバタと暴れ始める。スキルで抑えようとも思ったが、そこまでするのも可哀そうと思い留まる。
「ニャアアア!というか、なんで今更ミエルの料理を食べないといけないニャ!?」
「ミエルの料理の上達具合を確かめる為だ」
「ミエルの料理の上達具合?」
ラッカの暴れる勢いが少しだけ弱まった。こやつもミエルの料理の腕は心配しておったのじゃろうな。表情が心配そうじゃ。
「俺の特訓のお陰でミエルの料理の威力は弱まった……と思う」
「なんで明言しないのかニャ?」
「俺にも分からないんだよ。味見する訳にはいかないし、鑑定しようにもフランでも毒を鑑定できない。食べるしか確かめる術がないんだ」
「なんで私を味見役にしたニャ?」
「手ごろな生贄……協力者がラッカしかいなかったんじゃよ」
「今なにか不穏なことを言われた気がしたニャ!?」
「気のせいだぞ」
「絶対嘘ニャ!」
ラッカが再び椅子の上で暴れ始めた。これだけ暴れられると食わせるのに苦労しそうじゃ。
「どうする?スキルで動きを抑えるか?」
「今は好きなだけ暴れさせよう。恐怖を感じている時に動きを無理に抑えると、ストレスが半端なく掛かる」
「それもそうか」
わしのスキルは全身を結界のような壁で覆って動きを封じる。意識だけはしっかりしておるから、動けんのは余計に苦しいじゃろうな。
「ニャアアアアア!」
「じゃが、どうする?このままだと食わせられんぞ?」
「なんとかなるんじゃないか?」
「お主にしては珍しく無策か」
「偶にはこういうのも良いだろ。フランもいるんだし」
「そう言われると悪い気はせんのう」
わしの事を信頼しきっているのか、それとも本当は策があるのか。もしくは策など必要ないと思っておるのかもしれんのう。
「ダレカタスケテー!」
「ちょっと待ってろ。介錯してやるわい」
「ニャアアアアア!」
「更にストレスを与えてどうする」
ラッカの暴れる勢いが更に強くなっていく。余程ミエルの料理が怖いんじゃろう。気持ちは分かるがな。
そんな事を考えておると、キッチンの扉が開いた。
「出来たぞ!」
ミエルが満面の笑みで平皿を持ってくる。そんなミエルを見て、ラッカは動きを止めた。額には大粒の汗が浮ぶ。死ぬほどの恐怖を受けた時、人は動きを止めるらしいのう。
「どうぞ、ご賞味あれ」
ラッカの前に平皿が置かれる。平皿の中には、ミエルと初めて会った時のように毒々しい色のスープが入っていた。
「フラン」
「分かっておる」
わしはスープを鑑定してみる。しかし、毒が入っているという情報は得られなかった。
「鑑定では毒は検出できなかった」
「それって毒が入っていないって意味じゃないニャ?」
「ああ。全盛期のミエルの料理も毒は検出されなかった。あくまでも毒が入っているか確定しないって思っておけ」
「ニャア……」
いざ実物を目の前にすると、更に恐怖が強くなったようじゃ。ラッカは顔を引きつらせたまま動かない。
「私特性の激ウマスープだ!ホウリの指導を思い出しながら作ったから、前よりも美味しくなっているぞ!」
「前のは美味いとか不味いではなく、死ぬか生きるかじゃろうが」
「今回はどうだろうな」
このスープには前のような迫力は無い。毒が弱まったか、迫力を感じきれないほどの毒に進化したのか。それは食べてみてのお楽しみじゃな。
「よし、ナッシュ食え」
「嫌ニャ!」
「魔王命令じゃ」
「嫌ニャ!死ぬくらいなら魔王軍やめるニャ!」
「大丈夫だろ。フランがいるんだし」
ホウリの言葉にわしは頷く。もしもの時のために、ノエルも2階に待機しておるし、何とかなるじゃろう。
「それに、ミエルも成長している。親友のお前がミエルを信じないでどうする」
「ニャァ……それを言われると弱いニャ……」
ラッカは観念したのか、天井を見上げて全身の力を抜いた。もう逃げないと判断したのか、ホウリはラッカを縛っていた縄を解いた。
両手が自由になったラッカはスプーンを手に取る。
「……本当に何かあれば助けてくれるかニャ?」
「大げさだな。ただの食事だろう?」
「ミエルは自分の料理を客観的に見た方が良いニャ」
「兵器を作っておいて、自覚が無いのは厄介だな」
「悪意がある方がまだマシじゃな」
「私だって泣くんだぞ?」
3人からの口撃を受けて、ミエルが半泣きになる。自業自得じゃから同情はせんがな。
「何かあれば俺達で助ける。だから、安心してくれ」
「何を言われても安心できないニャ」
ため息を吐きつつ、ラッカはスプーンでスープを掬う。異臭を醸し出すスープを、意を決して口に入れるラッカ。
「…………!?」
「どうだ?」
「す、凄いニャ!」
スープを口に入れたラッカは満面の笑みになる。
「ちゃんと不味いニャ!」
「それは……褒めているのか?」
「褒めてるに決まっているニャ!死なずに不味いなんて感想が出てくるなんて……成長したんだニャァ……」
「それは褒めているのか?貶しているのか?」
「勿論褒めているニャ!」
「わしらも食べて良いか?」
「勿論ニャ」
わしとホウリも各々のスプーンでスープを味わう。えぐみ、臭み、不味みが口の中に広がる。そして何故かドロッとした触感がある。
「……すごい!不味いぞ!」
「本当だ!こりゃあ不味い!」
「なんで不味くて嬉しそうなんだ」
普通に不味い!その事実がわしらの心を明るくする。
「やった!不味いぞ!」
「よくやったなミエル!ちゃんと不味いぞ!」
「ニャ!死ぬほど不味いけど死なないニャ!ミエルも成長したニャ!」
「貴様ら!褒めてないだろう!」
「「「褒めてるに決まっている(ニャ)!」」」
わしらの迫力に押されて、ミエルは顔をひきつらせた。
こうして、わしらは世界一不味いスープを楽しんだのじゃった。
「久しぶりじゃな、ラッカ」
「……魔王様、これはどういう事ニャ?」
「何の事じゃ?」
「私が椅子に縛られてる理由に決まってるニャ!」
ラッカは椅子に座らされていて、ロープでグルグル巻きにされている。ホウリが縛ったから抜け出すことは不可能。出来たとしてもわしが逃がさんがな。
「魔王様が特別報酬をくれるって言ったからウキウキで来たのに!」
「あれは嘘じゃ」
「そんニャ!?」
「そんな事よりも、今日呼んだ理由を説明するぞ」
「嫌な予感しかしないニャ」
ラッカが自身を縛っている縄を見てため息を吐く。
「別に難しいことをして貰おうとは思っておらんぞ」
「ただ味見をして貰おうと思ってな」
「味見?」
ホウリは誰が見ても安心させるような、聖人のような笑顔を浮かべる。
「ミエルの料理の味見をな」
「ミエルの……料理?」
ラッカはホウリの言葉を咀嚼し、嚥下し、消化する。そして、台所に続く扉に目を向けた。
台所への扉から心なしか、黒いモヤが漏れているように感じた。全てを理解した瞬間、ラッカは暴れた。
「嫌だあああああ!まだ死にたくなあああああい!」
「おいおい、偉い暴れようだな?」
「ミエルの料理を食べさせられるって聞いて暴れない方がおかしいニャ!」
「だろうな。だから縛ってるんだ」
「分かってて聞いたのかニャ!?」
『シャー!』とラッカが歯を見せつつ威嚇してくる。じゃが、わしとホウリ相手に威嚇は何も意味をなさない。今のラッカは拾いたての子猫と変わらんな。
ラッカは身を何度も捩って拘束から逃れようとする。
「私じゃなくて魔王様が食べれば良いニャ!」
「わしもミエルの毒には勝てん。お主も見たじゃろ?」
「そういえばそうだったニャ」
初めてわしらと会った日の事を思い出して、ラッカが渋い顔をする。
「魔王様でも勝てない毒を私に食べさせるニャ?殺す気かニャ?」
「大丈夫だろ。ラッカが死にそうになったらフランに何とかしてもらう」
「出来るのかニャ?」
「1%くらいなら、なんとかなるぞ?」
「99%は何とかならないニャ!?やっぱり帰らせて欲しいニャ!」
「ほっほっほ、ダメ」
「ニャアアアアアア!誰か助けてええええええ!」
ラッカが大声で外に助けを求める。じゃが、わしのスキルで家の中からの衝撃や音は外部に漏れることは無い。
「ふっふっふ、お嬢ちゃん、叫んでも誰も助けてくれねぇぜ?」
「観念して、わしらの言う事を聞くんじゃな」
「なんで悪い人に寄せたのかニャ!?」
そう会話している間にも、扉から漏れている黒い霧が濃くなっている……気がする。いや、霧は幻なんじゃがな。なんだか、そんな異様な気配ということじゃ。
「これは助からんかもな」
「ちょっと!?」
「大丈夫だ。対策はしてある」
「それは本当かニャ?」
「墓の用意は済んでいる」
「死んだ後の用意はしないで欲しいニャ!?」
ラッカがまたバタバタと暴れ始める。スキルで抑えようとも思ったが、そこまでするのも可哀そうと思い留まる。
「ニャアアア!というか、なんで今更ミエルの料理を食べないといけないニャ!?」
「ミエルの料理の上達具合を確かめる為だ」
「ミエルの料理の上達具合?」
ラッカの暴れる勢いが少しだけ弱まった。こやつもミエルの料理の腕は心配しておったのじゃろうな。表情が心配そうじゃ。
「俺の特訓のお陰でミエルの料理の威力は弱まった……と思う」
「なんで明言しないのかニャ?」
「俺にも分からないんだよ。味見する訳にはいかないし、鑑定しようにもフランでも毒を鑑定できない。食べるしか確かめる術がないんだ」
「なんで私を味見役にしたニャ?」
「手ごろな生贄……協力者がラッカしかいなかったんじゃよ」
「今なにか不穏なことを言われた気がしたニャ!?」
「気のせいだぞ」
「絶対嘘ニャ!」
ラッカが再び椅子の上で暴れ始めた。これだけ暴れられると食わせるのに苦労しそうじゃ。
「どうする?スキルで動きを抑えるか?」
「今は好きなだけ暴れさせよう。恐怖を感じている時に動きを無理に抑えると、ストレスが半端なく掛かる」
「それもそうか」
わしのスキルは全身を結界のような壁で覆って動きを封じる。意識だけはしっかりしておるから、動けんのは余計に苦しいじゃろうな。
「ニャアアアアア!」
「じゃが、どうする?このままだと食わせられんぞ?」
「なんとかなるんじゃないか?」
「お主にしては珍しく無策か」
「偶にはこういうのも良いだろ。フランもいるんだし」
「そう言われると悪い気はせんのう」
わしの事を信頼しきっているのか、それとも本当は策があるのか。もしくは策など必要ないと思っておるのかもしれんのう。
「ダレカタスケテー!」
「ちょっと待ってろ。介錯してやるわい」
「ニャアアアアア!」
「更にストレスを与えてどうする」
ラッカの暴れる勢いが更に強くなっていく。余程ミエルの料理が怖いんじゃろう。気持ちは分かるがな。
そんな事を考えておると、キッチンの扉が開いた。
「出来たぞ!」
ミエルが満面の笑みで平皿を持ってくる。そんなミエルを見て、ラッカは動きを止めた。額には大粒の汗が浮ぶ。死ぬほどの恐怖を受けた時、人は動きを止めるらしいのう。
「どうぞ、ご賞味あれ」
ラッカの前に平皿が置かれる。平皿の中には、ミエルと初めて会った時のように毒々しい色のスープが入っていた。
「フラン」
「分かっておる」
わしはスープを鑑定してみる。しかし、毒が入っているという情報は得られなかった。
「鑑定では毒は検出できなかった」
「それって毒が入っていないって意味じゃないニャ?」
「ああ。全盛期のミエルの料理も毒は検出されなかった。あくまでも毒が入っているか確定しないって思っておけ」
「ニャア……」
いざ実物を目の前にすると、更に恐怖が強くなったようじゃ。ラッカは顔を引きつらせたまま動かない。
「私特性の激ウマスープだ!ホウリの指導を思い出しながら作ったから、前よりも美味しくなっているぞ!」
「前のは美味いとか不味いではなく、死ぬか生きるかじゃろうが」
「今回はどうだろうな」
このスープには前のような迫力は無い。毒が弱まったか、迫力を感じきれないほどの毒に進化したのか。それは食べてみてのお楽しみじゃな。
「よし、ナッシュ食え」
「嫌ニャ!」
「魔王命令じゃ」
「嫌ニャ!死ぬくらいなら魔王軍やめるニャ!」
「大丈夫だろ。フランがいるんだし」
ホウリの言葉にわしは頷く。もしもの時のために、ノエルも2階に待機しておるし、何とかなるじゃろう。
「それに、ミエルも成長している。親友のお前がミエルを信じないでどうする」
「ニャァ……それを言われると弱いニャ……」
ラッカは観念したのか、天井を見上げて全身の力を抜いた。もう逃げないと判断したのか、ホウリはラッカを縛っていた縄を解いた。
両手が自由になったラッカはスプーンを手に取る。
「……本当に何かあれば助けてくれるかニャ?」
「大げさだな。ただの食事だろう?」
「ミエルは自分の料理を客観的に見た方が良いニャ」
「兵器を作っておいて、自覚が無いのは厄介だな」
「悪意がある方がまだマシじゃな」
「私だって泣くんだぞ?」
3人からの口撃を受けて、ミエルが半泣きになる。自業自得じゃから同情はせんがな。
「何かあれば俺達で助ける。だから、安心してくれ」
「何を言われても安心できないニャ」
ため息を吐きつつ、ラッカはスプーンでスープを掬う。異臭を醸し出すスープを、意を決して口に入れるラッカ。
「…………!?」
「どうだ?」
「す、凄いニャ!」
スープを口に入れたラッカは満面の笑みになる。
「ちゃんと不味いニャ!」
「それは……褒めているのか?」
「褒めてるに決まっているニャ!死なずに不味いなんて感想が出てくるなんて……成長したんだニャァ……」
「それは褒めているのか?貶しているのか?」
「勿論褒めているニャ!」
「わしらも食べて良いか?」
「勿論ニャ」
わしとホウリも各々のスプーンでスープを味わう。えぐみ、臭み、不味みが口の中に広がる。そして何故かドロッとした触感がある。
「……すごい!不味いぞ!」
「本当だ!こりゃあ不味い!」
「なんで不味くて嬉しそうなんだ」
普通に不味い!その事実がわしらの心を明るくする。
「やった!不味いぞ!」
「よくやったなミエル!ちゃんと不味いぞ!」
「ニャ!死ぬほど不味いけど死なないニャ!ミエルも成長したニャ!」
「貴様ら!褒めてないだろう!」
「「「褒めてるに決まっている(ニャ)!」」」
わしらの迫力に押されて、ミエルは顔をひきつらせた。
こうして、わしらは世界一不味いスープを楽しんだのじゃった。
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