魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第三百九十六話 ゑゑ!?

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(キーンコーンカーンコーン)
「それでは、本日のホームルームは終わりです」
「やったー!」


 ノエルが万歳三唱で喜んでいると、横の席のサルミちゃんがため息を吐いた。あ、またやっちゃった。
 大人しく座ると、ナマク先生が口を開いた。


「あと、オカルト研究クラブの皆さんは放課後に生徒会室に集合してください」
「え?生徒会室?」


 ノエルとサルミちゃんが首を傾げていると、ナマク先生が教室から出ていった。


「私達が生徒会室に?」
「何があるんだろうね?」


 荷物を鞄に詰めていると、他の皆もやってきた。


『なんで生徒会室なんかに呼ばれたんだ?』
「またノエルが何かしたの?」
「むう、なんでノエルなのさ」
「あんたが一番なにかしそうだからよ」
「そんなこと無いよ?」


 ちょっと体育の授業に剣を折ったり、探検中に異世界に行ったりするだけだもん。


「ここで話してても仕方ないよ。皆で生徒会室行こ?」
「そうだね」


 皆で教室から出て生徒会室に向かう。生徒会室は部室がある棟の3階にある。奥の方にあるから、なんだからラスボスがいそうってノエルは思ってる。
 そんなラスボスの部屋の前に、ノエル達オカルト研究クラブのメンバーは立っていた。


「……なんだかドキドキするね?」
『普段は来ないからな』


 木の扉に『生徒会室』と簡素な札が掛かっている。それだけなのに妙な威圧感がある。


「……ノエル、あんたが開けなさいよ」
「ええ!?ノエルが!?」
「あんたなら怖いものなんて無いでしょ」
「ノエルだって怖いものあるよ?」
「何よ」
「怒ったホウリお兄ちゃん」
『あれは誰でも怖いだろう』


 皆でやんややんや言っていると、コアコちゃんが緊張した様子で扉の前に立った。


「コアコ?」
「私が部長なんだから、私が開けるね?」
「無理しないで良いんだよ?」
「そうよ。ノエルにやらせればいいのよ」
「むう、なんでノエルなのさ」


 口を尖らせてサルミちゃんに抗議していると、コアコちゃんがドアノブを捻った。


「失礼します」


 コアコちゃんの後に続いて、皆で生徒会室の中に入る。
 生徒会室は意外にも質素だった。壁には資料が入っている本棚があるだけ。部屋の中央にはコの字の形に長テーブルが並べられている。
 そして、その一番奥にその人は座っていた。


「初めまして。俺はキューブ。6年2組に所属している生徒会長だ」


 キューブ先輩は茶色い髪をした男の人だった。目は鋭くキリっとしていて、なんだか威圧感がある。ホウリお兄ちゃんの雰囲気と似てるかな。
 コアコちゃんが一歩前に出て頭を下げる。


「こ、コアコです。オカルト研究クラブのリーダーです」
「ノエルです」
「サルミです」
「パンプです」
『マカダです』


 皆でお辞儀すると、キューブ先輩は脇からファイルを取り出した。


「なぜ君たちが呼ばれたか分かるか?」
「いえ……」


 コアコちゃんが首を振ると、キューブ先輩がファイルから紙を取り出す。


「全てのクラブはどのような活動をしているのか、生徒会に報告する必要がある」
「報告?」
「報告が無いと、そのクラブがただのお遊びクラブの可能性があるからだ。クラブに相応しいと判断ができない場合は、そのクラブを廃部にする場合もある」
「廃部!?───むぐっ!?」


 ノエルが目を見開くと、後ろから口をふさがれた。


「あんたが話すと話が進まないのよ。ちょっと黙ってなさい」


 反論しようとするけど、本当に話が進まなさそうだから大人しくする。すると、サルミちゃんはノエルの口から手を離した。


「例えば、運動部であれば大会への出場や、大会での試合内容を報告してもらう。1回も勝てなかったとしても、普段の努力が感じられた報告であれば廃部にはならない」
「勝たなくても良いんですね」
「文化部はどうするんです?」
「放送部は毎日校内放送をしているから、報告の必要は無い」


 ちゃんと活動しているかを確認したいんだから、毎日活動している放送部は報告の必要がない。納得だ。


「問題はその他の文化部についてだ」
「その他の文化部?」
「その他の文化部は、定期的に報告書を提出してもらっている。直近の活動記録をこの報告書に書いて提出するように取り決めている」


 そう言って、クラブ活動記録と書かれた紙をノエル達に見せてくる。


「この活動記録を見て、そのクラブの処遇を決める。と言っても、判断は予算についてがほとんどで、廃部にすることはほとんどない」
「そうですか」


 良かった。話の流れからオカルト研究クラブが廃部になるのかと思った。
 ノエルは安心して胸を撫でおろす。けど、キューブ先輩の目が更に鋭くなった。


「だが、それは報告書を提出した場合に限る」
「え?」
「端的に言おう。オカルト研究クラブの報告書は提出されていない。速やかに提出しないとオカルト研究クラブを廃部にする」
「ええ!?」


 ノエルは思わず大声を出す。けど、今度はサルミちゃんに口をふさがれる事は無かった。サルミちゃんも、皆も驚きすぎて口を開けている。


「ちょ、ちょっと待ちなさい!いくらなんでも急すぎるわよ!?」
「2カ月も待ったんだぞ?何が急なんだ?」
「え?2カ月?報告書のことなんて知らなかったんだけど?」
「…………」


 ノエルが記憶を探っていると、コアコちゃんの顔が青くなっているのに気が付いた。


「コアコちゃん?」
「忘れてた」
「へ?」
「報告書のことすっかり忘れてた!」
「「「『ええええ!?』」」」


 コアコちゃんがしゃがんで頭を抱え込む。


「どどどどうしよう!?」
「どうしようじゃないわよ!?」
「オカルト研究クラブが無くなっちゃう!」
「ごめんなさい!」
「うーん、忘れてたのは仕方ないよ」


 ノエルはキューブ先輩の方に、向き直って手を上げる。


「あの!オカルト研究クラブは無くなっちゃうんですか?」
「まだ無くなると決まった訳じゃない。今から報告書を提出すれば、廃部にはしない」
「い、今から?」


 キューブ先輩がノエル達に手を差し出してくる。
 ノエルはコアコちゃんに視線を向けると、引きつった表情で首を横に振った。


「まだ書けて無い」
「ということは……詰み?」
「オカルト研究クラブ、もう無くなっちゃうの?」
「ちょっと待って。どうにか出来ないか考えてみるから」
『考えるって、もう無理じゃないか?』
「諦めちゃダメ。ここで諦めたらホウリお兄ちゃんに怒られちゃう」


 どうにかしてオカルト研究クラブを存続させない方法は無いかな。報告書は無いから、正攻法じゃどうしようもない。他にキューブ先輩を納得させる方法は……。


「……キューブ先輩は、オカルト研究クラブがちゃんと活動しているかを確認したいんだよね?」
「そう言ってたね」
「だったらさ、ここで研究の成果を実際に見せれば納得しないかな?」
「研究成果?」
『あれって他の人に見せて良いのか?』
「また、ホウリさんに叱られない?」
「考えてたんだけど、ホウリお兄ちゃんはオカルトのこと、他の人に言っちゃダメって言って無かったよ?」
「あれ?そうだっけ?」


 コアコちゃんがホウリお兄ちゃんから貰った本を見直す。


「……注意事項には他の人に言っちゃダメっては書いてないね?」
「だよね?」
「だとしたら、案外いい案かもね」
「けど、オカルトのことを広めるのも困るんじゃない?」
「生徒会長だし、言いふらすことはしないんじゃないの?」
「それもそうだね。それに、言いふらしたとしても信じて貰えないだろうし」
『けどよ、見せるったって何を見せるんだ?』
「うーん?」


 今から見せられるオカルト。何かあったかな?


『……あ』
「何か思いついたの?」


 質問するとマカダ君がノエルの頭をジッと見つめる。


「ん?どうしたの?」
「あ、そういうことか」
「なるほどね」
「そっか」


 他の皆も何かに気が付いたのか、ノエルの頭をジッと見つめてくる。


「え?ノエルの頭に何かついている?」
「付いているって言うよりも、これから生やしてもらうのよ」
「生やす?……あ」


 そこまで言われて、ノエルもやっと皆の言いたい事が分かった。


「にゃんこの耳を生やすってこと?」
「今見せられるオカルトは猫耳だけだからね」
「よーし、そうと決まれば」


 ノエルはキューブ先輩の方を向いて手を上げる。


「質問良いですか!」
「なんだ?」
「報告書が無いから、実際に見せてもいいですか!」
「実際に見せる?」
「報告書はちゃんと活動しているか確かめるための物なんですよね?だったら、成果を今見せても良いかなって思いました!」
「それでも良いが、オカルト研究クラブの成果を実際に見せるのか?」
「はい!」
「どうやって?」


 ノエルは後ろにいる4人を見る。皆頷いてくれたのを確認して、ノエルはキューブ先輩に近づく。


「一つお願いしたいんですけど、これから見ることは他の人には言わないでくれませんか?」
「どういう事だ?」
「あんまり人には言わないで欲しいことがあって……」
「約束はできない。事と次第によっては先生に報告することもある」
「うーん……」


 ナマク先生はともかく、他の先生に知られるのは不味いかも。けど、ここで言わないとオカルト研究クラブが無くなっちゃくかもしれない。


「分かりました。見てみて、キューブ先輩が他の人に話すか判断してください」
「ああ。それで、何を見せようとしているんだ?」
「ノエルの頭を良く見ててください」


 ノエルは頭をキューブ先輩に付きつける。そんなノエルをキューブ先輩は怪訝そうな顔で見てくる。
 そして、頭に意識を集中させてにゃんこの耳を生やした。


「……は?なんだコレ?」
「にゃんこの耳です」
「なんでこんなのが生えているんだ?」
「にゃんこの霊がノエルに取り憑いているからです!」
「そんなことが本当にあるというのか……?」


 キューブ先輩がノエルのにゃんこの耳に触ってくる。


「外付けではないみたいだな。本物だ」
「うーん、くすぐったいよ……」


 もふもふされるのも3回目だけど、まだ慣れない。
 キューブ先輩は一通りモフモフすると耳から手を離した。


「猫の霊に取り憑かれたのは本当みたいだな」
「この霊について研究してます!だから活動してます!」
「まさかの報告だな……どうしたものか……」


 キューブ先輩が顎に手を置いて考え始める。その間にノエルはにゃんこの耳を仕舞う。


「まさか、うさん臭いクラブが本当に活動しているとは思っていなかった。しかも、他の奴に言っても信じて貰え無さそうだ」
「だから他の人には言わないで欲しいかなって」
「そうだな……とりあえず、報告書は後日で良い。処遇は後日伝えるから、1週間以内に報告書だけ準備しててくれ」
「分かりました!」


 良かった。問答無用で廃部にはならなさそうだ。


「失礼します」


 ノエル達は生徒会室から出て一斉に胸を撫でおろした。


「ふー、何とかなったね」
「一時はダメかと思ったわよ」
「でもでも!これでまだまだ皆とクラブ活動が出来るんだね!」
「うん!これからもいっぱいクラブ活動しようね!」


 後日、オカルト研究クラブは存続すると正式に通達があったのだった。
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