魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第四十二話 勝ち取りたい!

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───エンチャント───
エンチャントとは装備品やアイテム等に特殊な効果を付与するスキルである。エンチャントで消費するMPはアイテムの品質やエンチャントの種類によって異なり、付与するアイテムの品質が高かったり、強力な効果のエンチャントの場合はMPの消費が多くなる。また、エンチャントを使える人間は貴重なため、付与師という仕事もある。なお、エンチャントには時間がかかるので注意。また、呪いもエンチャントのひとつである────Maoupediaより抜粋






☆   ☆   ☆   ☆





 砂浜に線を引いて30m先に真っ赤な旗を立てる。


「ビーチフラッグのルールを説明する。先に旗を取った奴が勝ち、以上」
「あれ?それだけですか?」
「ああ、これだけだ」


 驚いているロワにミエルが説明する。


「細かいルールがないという事は何でもありという事だ」
「その通り、妨害や武器の使用もありだ。ただし、フランはスキルと武器禁止に加えて、3人よりも300m離れた所から始めてもらう」


 目を爛々と輝かせているフランに釘を刺す。
 

「……ちっ」
「何度も言うがお前は強すぎる。これ以降の勝負も縛りはあるからな。分かったらさっさと位置に付け。あの青の旗のところだ」
「……分かった」


 渋々だが遠くの青色の旗の元へと向かうフラン。その間に3人、特にロワは真剣な表情で話し合っている。流石にさっきの勝負でフランに勝つには一筋縄でいかない事が分かったんだろう。


「言い忘れていたが、ちゃんとうつ伏せで顎は地面に付けとけよー!」


 フランにも聞こえるように叫ぶ。
 全員が伏せたことを確認し勝負開始の宣言を叫ぶ。


「それじゃ、ビーチフラグ開始!(ピー!)」



 ホイッスルの音が砂浜に響くとミエルとノエルが旗へと全速力で走り出した。だが、ロワは立ち上がると弓を取り出してフランへと矢を引絞る。
 その様子を見ていたフランは物凄い速度で迫ってきながらニヤリと笑う。


「ほう、ロワがわしの足止めをするのか。よかろう、全力でかかってこい!」
「勝負ですフランさん!」


 ロワはフランの眉間に向かって矢を放つ。フランは避けようとせず、迫ってきた矢を軽々と受け止める。


「甘いわ!矢の一本程度でわしを止められると思うで───」


 フランの言葉の途中で矢が赤く発光し突然爆発した。わざとフランに矢を受け止めさせて至近距離で爆発させただと?割とえげつないな。
 え、『お前も似たようなことしていた。しかも2回も』だって?記憶にございません。
 爆発の黒い煙がフランを包む中、ロワは呟く。


「『イクスアロー』、射た矢が数秒後に爆発するエンチャントです。普通の人であれば決着が付くでしょうが、相手はフランさんです。まだまだ、行きますよ!」


 ロワは黒煙に向かって続けざまに矢を放つ。
 ロワの予想通り、フランは両手に矢をつかみながら黒煙から飛び出してきた。


「かなり、やる。じゃが、わしを足止めするにはいたら───ぶべらっ!」


 かっこよく決めた後に盛大にこけたフランを見ていたロワはニヤリと笑う。


「『マッドショット』、矢が刺さった地面の泥化させるエンチャントです。勝つことはできませんが、足止めには十分です」


 矢を放った時にマッドショットを数本、地面に射ていたか。爆発もマッドショットを射るのを隠すためか。やるな。
 フランとロワの小競り合いをしり目にミエルとノエルを見てみるが、まだ旗へたどり着いていない。どちらも敏捷性が低い。ノエルの魔装は激しい動きをしている間は使えないし、たどり着くまで時間がかかるな。
 フランは立ち上がるとまた向かってくる。だが、フランの速度が遅くなっている。マッドショットとかの妨害を警戒しているんだろう。思ったよりもマッドショットが効いてるな。


「この調子だったらフランさんがたどり着く前にミエルさんかノエルちゃんが旗を取る筈です」


 走りにくそうなフランを見てロワは胸をなでおろす。ロワは油断する癖がなければ強くなるだと思うがな。見た所フランはまだ本気出してないみたいだしな。
走りにくそうなフランを見てロワは胸をなでおろす。ロワは油断する癖がなければ強くなるだと思うんだがな。見た所フランはまだ本気出してないみたいだし、力を抜くのは早いと思う。
 俺の見立て通り、フランの目が怪しく光り走る速度が上がる。


「速度を上げた!?だけど、速度を上げたら泥に引っかかりやすく……」


 ロワの言葉通りフランは物凄い速度のまま転ぶ。だが、フランは転んだ勢いのまま一回転するとそのまま走り続ける。


「はっ!転ぶと分かっておったらいくらでも対処できるわい!」
「速さが落ちないどころか上がっている!?つ、次の手は……」


 ロワがアワアワしている内にフランがロワに接近する。


「しまっ──」
「遅い!」
「ぐはっ!」


 腹を殴られて崩れ落ちるロワ。そんなロワを見下しながらフランは話す。


「お主は詰めが甘い。相手が予想外の行動をとった時に慌てふためくのはお主の悪い癖じゃ」
「…………」
「ロワ?」
「甘いのはフランさんですよ」
「なに?」


 フランの訝しげにロワに視線を向けると、ロワが旗の方角を指さしていた。
 旗の方角へと視線を向けると、今にも旗を取りそうなノエルがいた。


「貰ったぁぁぁぁ!」


 ミエルが叫びながら旗に飛びつく。いくらフランでもノエルより先にたどり着くことは出来ないだろう。ただし、フラン以外なら可能だ。
 ミエルが旗を掴もうとしている中で、後ろを走っていたミエルが異変に気が付く。


「後ろから何かが飛んで来て……ってロワ!?」


 後ろのから凄い勢いでロワが飛んで来ていた。


「ミエルさぁぁぁん!受け止めてくださぁぁぁい!」
「プ、プロフェクションガード!ヘビーウェ───」


 ミエルがスキルを発動しきる前にロワが直撃する。


「くぅ……ぐわぁ!」
「うわぁ!」


 ロワを受け止めきれず後ろへ吹き飛び、旗を取ろうとしていたミエルを巻き込む。


「秘技、ロワ手裏剣!」
「勝手に秘技にしないでください!」


 吹き飛ばされながらロワがツッコむ。
 3人が砂浜に仲良く倒れこんでいる間にフランが勢いよく迫ってくる。


「はっはっは!今度こそわしの勝──(ゴチン!)」


 全力疾走していたフランの頭から鈍い音が鳴り、そのまま後ろへと倒れこむ。そして、赤く腫れた額を擦りながら立ち上がる。


「いてて、何が起こった?」
「『べリアアロー』、刺さった矢の間に強力な結界を張るエンチャントです。投げられた瞬間に射っておきました」
「味な真似を。じゃが、無駄じゃ!」


 拳を握りしめ結界を殴り飛ばすとガラスが割れる音と共に結界が割れる。キラキラと結界が散らばる後ろでフランがニヤリと笑う。


「もう少し耐久力を上げるんじゃな」
「やっぱり、少ししか足止め出来ませんでしたか」
「だが、体制を整える時間は稼げた。完全に無駄じゃなかったぞ」
「そうじゃ、わしをここまで足止め出来たんじゃ。もっと誇って良いのだぞ?」
「ありがとうございます。ですが」


 立ち上がったロワはフランに向かって弓を引絞る。


「その言葉は僕たちが勝ってから聞かせて貰いたいですね」
「……ぷっ、あはははは!これは良い!」


 ロワの言葉にフランは手を叩きながら大きく笑う。


「まだわしに勝つつもりか?この状況で?」


 フランと他3人は旗を挟む形で位置しており、距離はほぼ同じだ。普通だったらフランに勝つことはできないだろう。だが、ロワは自信満々に笑って答える。


「ええ、僕たちが勝ちますよ」
「面白い、ならばやってみせよ!」


 フランの言葉と同時にロワは矢を放ちミエル、ノエル、フランの3人は旗へ向かって走り出す。矢はフランの眉間に向かって一直線に飛んでいく。


「二度同じ手は通用せんわ!」


 フランは片手で飛んできた矢をたたき折る。


「エンチャントは矢が破壊されると発動しない。これでお主らの企みは終わりじゃ!」


 フランは速度を緩めず旗へと迫る。


「貰った!」
「……今です!」
「おっけー、『魔装』!」
「了解、うおぉぉぉ!」


 ロワから合図が出るとミエルは大剣で砂を打ち上げ、ノエルは魔装を使って砂を蹴り上げられ、砂がフランへと降り注ぐ。


「目暗ましか。じゃが、旗の位置は大体分かっておるわ!」


 見えないながらも旗のあったところへ手を伸ばすと、細長い物が手に当たる。


「取った!」


 フランが勢いよくそれを引き抜くと空へと天高く掲げる。


「勝ったッ、第2回戦完!」


 あいつ気が付いてないのか?勝ち誇っているフランに俺は声を掛ける。


「フラーン!」
「なんじゃー?」
「手に持っているものをよく見てみろー!」


  フランは不思議そうな顔をしながら手に持っていた物に視線を向ける。


「……な!?これは矢!?」
「カシャの木で出来た矢です。通常の矢よりも太く、耐久性が高い矢です」

 
 フランが戸惑っている間に旗を持ったロワが現れる。


「ロワ!?いつの間に旗を!?」
「『ワープアロー』、矢が刺さった瞬間に矢と自分のいる位置を入れ替えるエンチャントです」
「なるほど、砂での目暗ましは矢を旗に誤認させる事が目的だったか。わしが誤認している間にワープアローで接近し旗を奪取したわけじゃな?」
「はい!その通りです!」
「文字通り一本取られたわけじゃな。見事じゃ」


 フランが悔しそうにしながらロワに矢を返す。


「油断したわい。まさかロワがこんなにやるとは思わなかったわい」
「僕なんてまだまだですよ。ミエルさんやノエルちゃんの力のお蔭で勝てましたし、作戦だってミエルさんが考えてくれましたし」
「ロワ、それは違うぞ」


 ミエルはまっすぐロワを見据えて話す。


「投げ飛ばされたときにロワは作戦になかった結界を即座に張った。その間に私たちは体制を立て直せた。それに指示を的確にこなせるのも実力がある証拠だ」
「うんうん、ロワお兄ちゃんカッコよかったよ!」
「そういうことだ。もっと誇っていいんだぜ?」
「ホウリさん?いつからいたんですか?」
「フランが勝ち誇っているところから。ま、そういうことで──」


 俺はロワの手を取って高々と上げる。


「第二回戦、勝者ロワ!」

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