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第四十一話 だけど涙が出ちゃう
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───スキルと性格───
長年、スキルとそれを持つ人の性格に因果関係があるのではないかという研究がされている。例を上げると、『挑発』スキルを持っていると相手の逆鱗に触れやすくなるといった感じである。研究が進むにつれ、因果関係は明らかになっていったが、スキルを持つからその性格なのか、その性格だらスキルを持っているかは定かではない。また、個人差があるため特定のスキルを持っているから確実にその性格であるという事は断定できない。─────Maoupediaより抜粋
☆ ☆ ☆ ☆
砂浜に半径5m程の円を描いて、きっちり3等分になるように線を引く。
「ルールは単純だ。自分の陣地にボールが落ちたら脱落、最後まで残っていた奴が勝ち。自分の陣地から出る、ボールに2回連続で触ると脱落。以上だ」
「確かに分かりやすくていいが、一ついいか?」
「なんだ?」
「なぜ陣地が3つだけなんだ?」
「説明しよう。ノエル、ロワ、ミエルはこっちに来てくれ」
3人を呼び寄せ陣地内にそれぞれ立たせる。すると、何かを察したミエルが顔を引きつらせる。
「もしかしてだが……
「ああ、フランの陣地は円の外すべてだ」
「やはりか」
ミエルが顔色を青くしながら頭を抱える。一方、当事者のフランはというと気にせずストレッチをしていた。
「妥当なところじゃな」
「少し軽めな気もするが、制限が多すぎても楽しくないしな」
「わかっておるではないか」
フランと会話をしながらも残りの3人の様子を観察する。
ミエルは険しい表情で腕の筋肉をほぐしている。どうやら、俺とフランの会話から一筋縄でいかない事を悟ったようだ。
ロワは微笑んだまま足を延ばしている。おそらく、警戒していたフランが簡単にたおせそうで安心しているんだろう。
ノエルはいつもと同じように笑顔で手首を曲げている。確実に俺とフランの会話を聞いていない。
全員の表情を確認した後、全員のステータスを改めて思い出す。
ノエル・カタラーナ ♀ 職業 なし
LV 9 経験値 12/290
HP 65/65
MP ∞/∞
攻撃力 9
魔法力 6899
防御力 19
魔防御 300
敏捷性 11
武器 鉄のナイフ
盾 無し
防具 無し
アクセサリー 無し
スキル セイントヒール 神の使い 魔装
ミエルは戦闘面だと一番未熟だが無限のMPと高い魔力、セイントヒールによる回復能力が優秀だ。フランを除けば世界一の治癒師だろう。
ロワ・タタン ♂ 職業 弓使い
LV18 経験値 83/950
HP 200/200
MP 5120/5120
攻撃力 72
魔法力 35
防御力 25
魔防御 12
敏捷性 42
武器 ポイントアロー
盾 無し
防具 鋼の鎧
アクセサリー 無し
スキル 狙い撃ち ピンショット 弓神 スネッグアロー アンミッスル ファストアップ 複製(矢) エンチャント(矢) MP増強
ロワは破壊力は無いが、エンチャントの矢による多様な攻撃や高い精密性が武器だ。戦闘経験は少ないが伸びしろはパーティーメンバーの中で一番だ。
ミエル・クラン ♀ 職業 騎士
LV30 経験値 2654/3650
HP 6200/6200
MP 8600/8600
攻撃力 102
魔法力 19
防御力 1506
魔防御 1506
敏捷性 13
武器 竜の大剣
盾 白銀の盾
防具 白銀の鎧
アクセサリー 無し
スキル 挑発 ヘビーウェイト 盾神 鉄壁 スラッシュ ダブルアップ プロフェクションガード MP増強
───ヘビーウェイト───
自身の体重を2倍にする
消費MP 20
───盾神───
色々と便利な盾のスキルが詰まった凄いスキル
消費MP なし
───鉄壁───
防御力と魔法防御を上げる
消費MP 防御1につき3
───ダブルアップ───
自身に受けた攻撃力、魔法力の倍の攻撃力を付与する
消費MP 2000
───プロフェクションガード───
受けたダメージを無効にする
消費MP 5000
───スラッシュ───
斬撃を飛ばす
消費MP 30
ミエルのステータスは防御面と攻撃力が高い代わりに敏捷性と魔力が低い。スキルに関しては防御だけに特化しているように見えて攻撃のも優秀だ。
防御が高い分一撃が強くないとダメージが通らないが、高すぎるとダメージ無効のスキルと倍返しのスキルにより手痛い反撃がある。遠距離攻撃も出来るし目立った隙が無い優秀な騎士だ。
フランのステータスに関しましては……、公開しても絶望するだけだし止めとこう。言える事としては全員のステータスを足しても高い能力とユニーク以外のスキルがある事ぐらいか。
正直、ハンデがあるとはいえフランは強い。全員が協力しないとフランが勝つだろうが、はたして。
「準備は良いな。それじゃ、ビーチバレー始め!(ピーッ!)」
ホイッスルを吹き鳴らしボールを円の中へ投げ入れる。ボールは空中を漂った後、ノエルの頭上へと落ちていく。
「ノエルちゃん、こっち!」
「わかった!ていっ!」
ノエルは言われるがままロワへとトスを上げる。ロワは手を引いてアタックの姿勢をとり、顔に笑みを受かべる。
「よし、行きますよ!」
「……!?、ロワ!待て!」
意図を察したミエルがロワを止めようとする。だが、
「せいやっ!」
ミエルの制止も届かず、ロワはボールを遠くへと打ち上げた。
「よし、これで僕たちの勝ちです」
価値を確信したロワは仁王立ちでボールの行方を追う。確かに普通の奴が相手ならば勝負は決まっただろう。だが、ロワは忘れていた。相手が最強の魔王ということを。
「甘いわっ!」
瞬間、遠くで轟音が鳴り響き、一つ影がボールへ向かって飛ぶ。
「フランさん!?嘘でしょ!?」
余裕だったロワの表情が一転して狼狽した物へ変わる。
「すぐに来るぞ!レシーブの体制をとれ!」
ミエルの一言で惚けていたロワはとっさにレシーブの体制を取る。
「ロワ!もっと腰を落とせ!ボースの威力に負けるぞ!」
「は、はい!」
全員が腰を落としボールの衝撃に備える。
「まずはロワ、貴様からじゃ!」
飛び上がったフランは振り上げたボールへ叩き付ける。ボールは弾丸のような速度で進み、ロワへと襲い掛かる。
「くぅ……、うわぁ!」
ボールを受けたロワだったが、勢いに耐え切れず円の外へと吹き飛ばされた。
「(ピピー!)ロワ、アウト」
「ロワ!」
ミエルが焦りながらも吹き飛ばされたロワの元へと駆け出す。
「ノエル!すぐに治療を!」
「わかった!」
「ロワ!しっかりしろ!」
ノエルが治療している中、ロワを膝枕しながら必死に呼びかけるミエル。
「う、うーん?」
「ロワ、私が分かるか?」
「ミエルさん?あれ、僕は何を?」
ロワは体を起こして辺りを見渡す。そんなロワをミエルは勢いよく抱きしめる。
「よかった……、本当に良かった……」
「ああ、そうか。僕は負けたんですね」
「その通りだ。脱落者はパラソルの下で観戦な」
「分かりました。ミエルさん、ノエルちゃん、後は頼みましたよ」
「任せろ」
「ノエルも頑張る!」
二人に後を託したロワは足早にこちらへ向かってくる。そして、クーラーボックスからジュースを取り出すと一気に呷り小さく息を吐く。
「負けちゃいました」
「フランを甘く見すぎたな。大方、『遠くに飛ばせば勝ち確定』とでも思ってたんだろ?」
「うっ……、で、でも油断が無かったとしてもフランさんに勝てるんですか?」
「勝てる。方法も複数ある」
「どんな方法ですか?」
「見てれば分かる」
ロワと話している間にミエルとノエルはこそこそと話をしている。おそらく、フランの突破方法が分かったんだろう。
「ふっふっふ、何をしようと無駄じゃ。お主らにわしを倒すことは出来ん」
「本当にそうか?」
「なんじゃと?」
ミエルの言葉にフランの眉がピクリと動く。
「一番防御力が高い私を倒さず勝利宣言とは気が早いな。もしかして、私に勝てない事が分かっているから勝利宣言で気を紛らわせているのか?」
「落ち着け、こんな安い挑発に乗ってはならぬ……」
フランは息を荒くしながらも冷静さを保とうとしている。
「まさか、最強の魔王様がか弱いノエルを狙い撃ちするなんていう情けないことしないな?」
「…………」
「私と勝負しろ」
「やってやろうじゃねえかよ、この野郎!」
フランは顔を真っ赤にしながら野球の素振りの動作を繰り返す。
「半端ない所を見せてやるわい!ホウリ、始めろ!」
「了解。ちなみに、ロワの陣地にボールを落としたら失格だから気をつけろ。それじゃ、スタート(ピー!)」
ホイッスルを吹き鳴らし再度円の中へボールを中に入れる。
「はぁ!」
ミエルは頭上に落ちてきたボールを空高くへと打ち上げ、即座にレシーブの構えを取る。
そして、先ほどと同じように轟音と共にフランが飛び上がる。
「勝負じゃ、ミエル!」
「来い、フラン!」
瞬間、ミエルの体から虹色のオーラがあふれ出した。
「あれは?」
「ミエルの『プロテクションガード』と『ヘビーウェイト』だな。ダメージを無効化しつつ体重を増やして踏ん張るつもりだろう」
「いくらミエルさんでも耐えられるんですか?」
「見てれば分かる」
ミエルはフランから放たれた弾丸波並の速度のボールを受け止める。
「う、うおぉぉぉぉ!」
額に汗を浮かべながらフランのボールを受け止めるミエル。見ているこちらにも絶対に止めるという気迫を感じる。だが、やはり勢いには耐え切れず後ろへと吹き飛ばされ、ボールはフランよりも高く打ちあがる。
「はっはっは!やはり、わしになど無理だったようじゃな!」
「それはどうかな?ノエル!」
「オッケー、『魔装』!」
ミエルの掛け声と共に金色のオーラを纏ったノエルがボールの高さまで飛び上がる。
「え!?ノエルちゃん魔装使えたんですか?!」
「ノエルは魔力が高いから俺が教えておいた。今は数秒しか持たないが、使いこなせればかなり強くなるだろう」
ノエルが高く飛び上がったのを見て、フランに焦りの色が見える。
「これが狙いか!」
「その通りだ。確かにフランは地上であれば一瞬で距離を詰められるだろう。だが、落下中に関しては私たちと変わらない!」
「くぅ……」
フランが悔しそうに刃を食いしばっているのを見て、ミエルは力強く叫ぶ。
「やってしまえ、ノエル!」
「フランお姉ちゃん、覚悟!」
ノエルが浮いたボールを円の外へと力いっぱい叩き付ける。そして、なすすべ無くフランの陣地へとボールが落ちていった。
「(ピピー!)フラン、アウト!」
「やったー!」
着地したノエルはまっすぐにミエルの元へと向かい、嬉しそうにハイタッチをする。
「いえーい!やったね、ミエルお姉ちゃん」
「そうだな。そして第一回戦、勝利おめでとう」
「え?まだ、ミエルお姉ちゃん負けてないよね?」
「いや、これを見てくれ」
ノエルは示された方向を見てみると、ミエルが吹き飛ばされた後が円の外へと続いていた。
「私は自分の陣地から出てしまった。反則負けだ」
ノエルは理解できていないのか首を傾げている。そんなノエルとミエルの元へと全員が集まる。
「ふむ、まさかあんな手を使ってくるとはのう。悔しいが完敗じゃ」
「まあ、どのみちフランは失格だったけどな。なあ、フラン?」
「ななな、何のことか分からんのう?」
あからさまに同様するフラン。
「『ラプラス』で演算してボールをアタックしていたんだろ?遠くからでも性格に狙えたのはそのスキルのおかげだ」
フランは滝のような汗を流しながら俺の話を聞いている。
「よく分かりましたね?僕は全く分からなかったですけど」
「そいつの態度とかで分かるもんだ。後は鎌をかけたりな」
俺は全員の方向へ改めて向き直り宣言する。
「そういうことだ。俺の目を盗んで不正しようと思うなよ?」
「は、はい、気を付けます」
ロワが敬礼の姿勢を取る。
「しかし、分かっていたなら言ってくれれば良かったのではないか?」
「その場合、フランとは決着付けられなかったがいいのか?」
「それもそうだな。賞品があるとはいえ、これは遊びの一貫なのだから、楽しいのが最優先だな」
「そういうこと。じゃあ、次の競技を発表する」
俺はアイテムボックスから小さな赤色の旗を取り出して砂浜へと突き刺す。
「第二回戦は『ビーチフラッグ』だ」
長年、スキルとそれを持つ人の性格に因果関係があるのではないかという研究がされている。例を上げると、『挑発』スキルを持っていると相手の逆鱗に触れやすくなるといった感じである。研究が進むにつれ、因果関係は明らかになっていったが、スキルを持つからその性格なのか、その性格だらスキルを持っているかは定かではない。また、個人差があるため特定のスキルを持っているから確実にその性格であるという事は断定できない。─────Maoupediaより抜粋
☆ ☆ ☆ ☆
砂浜に半径5m程の円を描いて、きっちり3等分になるように線を引く。
「ルールは単純だ。自分の陣地にボールが落ちたら脱落、最後まで残っていた奴が勝ち。自分の陣地から出る、ボールに2回連続で触ると脱落。以上だ」
「確かに分かりやすくていいが、一ついいか?」
「なんだ?」
「なぜ陣地が3つだけなんだ?」
「説明しよう。ノエル、ロワ、ミエルはこっちに来てくれ」
3人を呼び寄せ陣地内にそれぞれ立たせる。すると、何かを察したミエルが顔を引きつらせる。
「もしかしてだが……
「ああ、フランの陣地は円の外すべてだ」
「やはりか」
ミエルが顔色を青くしながら頭を抱える。一方、当事者のフランはというと気にせずストレッチをしていた。
「妥当なところじゃな」
「少し軽めな気もするが、制限が多すぎても楽しくないしな」
「わかっておるではないか」
フランと会話をしながらも残りの3人の様子を観察する。
ミエルは険しい表情で腕の筋肉をほぐしている。どうやら、俺とフランの会話から一筋縄でいかない事を悟ったようだ。
ロワは微笑んだまま足を延ばしている。おそらく、警戒していたフランが簡単にたおせそうで安心しているんだろう。
ノエルはいつもと同じように笑顔で手首を曲げている。確実に俺とフランの会話を聞いていない。
全員の表情を確認した後、全員のステータスを改めて思い出す。
ノエル・カタラーナ ♀ 職業 なし
LV 9 経験値 12/290
HP 65/65
MP ∞/∞
攻撃力 9
魔法力 6899
防御力 19
魔防御 300
敏捷性 11
武器 鉄のナイフ
盾 無し
防具 無し
アクセサリー 無し
スキル セイントヒール 神の使い 魔装
ミエルは戦闘面だと一番未熟だが無限のMPと高い魔力、セイントヒールによる回復能力が優秀だ。フランを除けば世界一の治癒師だろう。
ロワ・タタン ♂ 職業 弓使い
LV18 経験値 83/950
HP 200/200
MP 5120/5120
攻撃力 72
魔法力 35
防御力 25
魔防御 12
敏捷性 42
武器 ポイントアロー
盾 無し
防具 鋼の鎧
アクセサリー 無し
スキル 狙い撃ち ピンショット 弓神 スネッグアロー アンミッスル ファストアップ 複製(矢) エンチャント(矢) MP増強
ロワは破壊力は無いが、エンチャントの矢による多様な攻撃や高い精密性が武器だ。戦闘経験は少ないが伸びしろはパーティーメンバーの中で一番だ。
ミエル・クラン ♀ 職業 騎士
LV30 経験値 2654/3650
HP 6200/6200
MP 8600/8600
攻撃力 102
魔法力 19
防御力 1506
魔防御 1506
敏捷性 13
武器 竜の大剣
盾 白銀の盾
防具 白銀の鎧
アクセサリー 無し
スキル 挑発 ヘビーウェイト 盾神 鉄壁 スラッシュ ダブルアップ プロフェクションガード MP増強
───ヘビーウェイト───
自身の体重を2倍にする
消費MP 20
───盾神───
色々と便利な盾のスキルが詰まった凄いスキル
消費MP なし
───鉄壁───
防御力と魔法防御を上げる
消費MP 防御1につき3
───ダブルアップ───
自身に受けた攻撃力、魔法力の倍の攻撃力を付与する
消費MP 2000
───プロフェクションガード───
受けたダメージを無効にする
消費MP 5000
───スラッシュ───
斬撃を飛ばす
消費MP 30
ミエルのステータスは防御面と攻撃力が高い代わりに敏捷性と魔力が低い。スキルに関しては防御だけに特化しているように見えて攻撃のも優秀だ。
防御が高い分一撃が強くないとダメージが通らないが、高すぎるとダメージ無効のスキルと倍返しのスキルにより手痛い反撃がある。遠距離攻撃も出来るし目立った隙が無い優秀な騎士だ。
フランのステータスに関しましては……、公開しても絶望するだけだし止めとこう。言える事としては全員のステータスを足しても高い能力とユニーク以外のスキルがある事ぐらいか。
正直、ハンデがあるとはいえフランは強い。全員が協力しないとフランが勝つだろうが、はたして。
「準備は良いな。それじゃ、ビーチバレー始め!(ピーッ!)」
ホイッスルを吹き鳴らしボールを円の中へ投げ入れる。ボールは空中を漂った後、ノエルの頭上へと落ちていく。
「ノエルちゃん、こっち!」
「わかった!ていっ!」
ノエルは言われるがままロワへとトスを上げる。ロワは手を引いてアタックの姿勢をとり、顔に笑みを受かべる。
「よし、行きますよ!」
「……!?、ロワ!待て!」
意図を察したミエルがロワを止めようとする。だが、
「せいやっ!」
ミエルの制止も届かず、ロワはボールを遠くへと打ち上げた。
「よし、これで僕たちの勝ちです」
価値を確信したロワは仁王立ちでボールの行方を追う。確かに普通の奴が相手ならば勝負は決まっただろう。だが、ロワは忘れていた。相手が最強の魔王ということを。
「甘いわっ!」
瞬間、遠くで轟音が鳴り響き、一つ影がボールへ向かって飛ぶ。
「フランさん!?嘘でしょ!?」
余裕だったロワの表情が一転して狼狽した物へ変わる。
「すぐに来るぞ!レシーブの体制をとれ!」
ミエルの一言で惚けていたロワはとっさにレシーブの体制を取る。
「ロワ!もっと腰を落とせ!ボースの威力に負けるぞ!」
「は、はい!」
全員が腰を落としボールの衝撃に備える。
「まずはロワ、貴様からじゃ!」
飛び上がったフランは振り上げたボールへ叩き付ける。ボールは弾丸のような速度で進み、ロワへと襲い掛かる。
「くぅ……、うわぁ!」
ボールを受けたロワだったが、勢いに耐え切れず円の外へと吹き飛ばされた。
「(ピピー!)ロワ、アウト」
「ロワ!」
ミエルが焦りながらも吹き飛ばされたロワの元へと駆け出す。
「ノエル!すぐに治療を!」
「わかった!」
「ロワ!しっかりしろ!」
ノエルが治療している中、ロワを膝枕しながら必死に呼びかけるミエル。
「う、うーん?」
「ロワ、私が分かるか?」
「ミエルさん?あれ、僕は何を?」
ロワは体を起こして辺りを見渡す。そんなロワをミエルは勢いよく抱きしめる。
「よかった……、本当に良かった……」
「ああ、そうか。僕は負けたんですね」
「その通りだ。脱落者はパラソルの下で観戦な」
「分かりました。ミエルさん、ノエルちゃん、後は頼みましたよ」
「任せろ」
「ノエルも頑張る!」
二人に後を託したロワは足早にこちらへ向かってくる。そして、クーラーボックスからジュースを取り出すと一気に呷り小さく息を吐く。
「負けちゃいました」
「フランを甘く見すぎたな。大方、『遠くに飛ばせば勝ち確定』とでも思ってたんだろ?」
「うっ……、で、でも油断が無かったとしてもフランさんに勝てるんですか?」
「勝てる。方法も複数ある」
「どんな方法ですか?」
「見てれば分かる」
ロワと話している間にミエルとノエルはこそこそと話をしている。おそらく、フランの突破方法が分かったんだろう。
「ふっふっふ、何をしようと無駄じゃ。お主らにわしを倒すことは出来ん」
「本当にそうか?」
「なんじゃと?」
ミエルの言葉にフランの眉がピクリと動く。
「一番防御力が高い私を倒さず勝利宣言とは気が早いな。もしかして、私に勝てない事が分かっているから勝利宣言で気を紛らわせているのか?」
「落ち着け、こんな安い挑発に乗ってはならぬ……」
フランは息を荒くしながらも冷静さを保とうとしている。
「まさか、最強の魔王様がか弱いノエルを狙い撃ちするなんていう情けないことしないな?」
「…………」
「私と勝負しろ」
「やってやろうじゃねえかよ、この野郎!」
フランは顔を真っ赤にしながら野球の素振りの動作を繰り返す。
「半端ない所を見せてやるわい!ホウリ、始めろ!」
「了解。ちなみに、ロワの陣地にボールを落としたら失格だから気をつけろ。それじゃ、スタート(ピー!)」
ホイッスルを吹き鳴らし再度円の中へボールを中に入れる。
「はぁ!」
ミエルは頭上に落ちてきたボールを空高くへと打ち上げ、即座にレシーブの構えを取る。
そして、先ほどと同じように轟音と共にフランが飛び上がる。
「勝負じゃ、ミエル!」
「来い、フラン!」
瞬間、ミエルの体から虹色のオーラがあふれ出した。
「あれは?」
「ミエルの『プロテクションガード』と『ヘビーウェイト』だな。ダメージを無効化しつつ体重を増やして踏ん張るつもりだろう」
「いくらミエルさんでも耐えられるんですか?」
「見てれば分かる」
ミエルはフランから放たれた弾丸波並の速度のボールを受け止める。
「う、うおぉぉぉぉ!」
額に汗を浮かべながらフランのボールを受け止めるミエル。見ているこちらにも絶対に止めるという気迫を感じる。だが、やはり勢いには耐え切れず後ろへと吹き飛ばされ、ボールはフランよりも高く打ちあがる。
「はっはっは!やはり、わしになど無理だったようじゃな!」
「それはどうかな?ノエル!」
「オッケー、『魔装』!」
ミエルの掛け声と共に金色のオーラを纏ったノエルがボールの高さまで飛び上がる。
「え!?ノエルちゃん魔装使えたんですか?!」
「ノエルは魔力が高いから俺が教えておいた。今は数秒しか持たないが、使いこなせればかなり強くなるだろう」
ノエルが高く飛び上がったのを見て、フランに焦りの色が見える。
「これが狙いか!」
「その通りだ。確かにフランは地上であれば一瞬で距離を詰められるだろう。だが、落下中に関しては私たちと変わらない!」
「くぅ……」
フランが悔しそうに刃を食いしばっているのを見て、ミエルは力強く叫ぶ。
「やってしまえ、ノエル!」
「フランお姉ちゃん、覚悟!」
ノエルが浮いたボールを円の外へと力いっぱい叩き付ける。そして、なすすべ無くフランの陣地へとボールが落ちていった。
「(ピピー!)フラン、アウト!」
「やったー!」
着地したノエルはまっすぐにミエルの元へと向かい、嬉しそうにハイタッチをする。
「いえーい!やったね、ミエルお姉ちゃん」
「そうだな。そして第一回戦、勝利おめでとう」
「え?まだ、ミエルお姉ちゃん負けてないよね?」
「いや、これを見てくれ」
ノエルは示された方向を見てみると、ミエルが吹き飛ばされた後が円の外へと続いていた。
「私は自分の陣地から出てしまった。反則負けだ」
ノエルは理解できていないのか首を傾げている。そんなノエルとミエルの元へと全員が集まる。
「ふむ、まさかあんな手を使ってくるとはのう。悔しいが完敗じゃ」
「まあ、どのみちフランは失格だったけどな。なあ、フラン?」
「ななな、何のことか分からんのう?」
あからさまに同様するフラン。
「『ラプラス』で演算してボールをアタックしていたんだろ?遠くからでも性格に狙えたのはそのスキルのおかげだ」
フランは滝のような汗を流しながら俺の話を聞いている。
「よく分かりましたね?僕は全く分からなかったですけど」
「そいつの態度とかで分かるもんだ。後は鎌をかけたりな」
俺は全員の方向へ改めて向き直り宣言する。
「そういうことだ。俺の目を盗んで不正しようと思うなよ?」
「は、はい、気を付けます」
ロワが敬礼の姿勢を取る。
「しかし、分かっていたなら言ってくれれば良かったのではないか?」
「その場合、フランとは決着付けられなかったがいいのか?」
「それもそうだな。賞品があるとはいえ、これは遊びの一貫なのだから、楽しいのが最優先だな」
「そういうこと。じゃあ、次の競技を発表する」
俺はアイテムボックスから小さな赤色の旗を取り出して砂浜へと突き刺す。
「第二回戦は『ビーチフラッグ』だ」
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