魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第四十話 海に行くとキラ〇ジャンプしたくなるよね

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───ケイワイビーチ───
ダメル領内にあるビーチ。海は透き通っており、砂浜は綺麗なため観光地として人気がある。人気の観光地ということもあり、レストランや水着屋、ホテルなどが一通りそろっており、手ぶらでも十分楽しめるようになっている。一番の人気アクティビティはダイビングであり、魚や亀などとたわむれることが出来る。────Maoupediaより抜粋





☆   ☆   ☆   ☆






「ほらノエル、ホウリが作ったクッキーじゃぞ~」
「……ふん!」


 次の日の朝、宿の食堂へ入るとフランがそっぽを向いているノエルの機嫌を取ろうとしていた。
 ロワとミエルは離れた席から二人を見ていた。ロワは俺に気付くと大きく手を振り手招きをする。二人の席に着きながら訪ねる。


「悪い遅くなった。ところで、何があった?」
「えっと、昨日ビスケさんとフランさんが勝負していた時にノエルちゃんが起きちゃいまして」
「それで、あの勝負を見たノエルが真っ赤な顔で『お姉ちゃんのバカ!』と言って部屋を飛び出してな。それ以来あの調子だ」
「なるほどな」



 自分の写真を嬉々として晒しているのを見たら嫌いにもなるな。とりあえず、自業自得なフランは置いておくか。


「とりあえず、話が出来ないからあいつらの席に行くぞ」


 ロワとミエルを連れてフランとノエルの席へと移る。


「おう、帰ったぞ」
「ホウリ!」


 フランは俺を見た瞬間、花が咲いたような笑顔に変わる。そして、案の定フランから念話が届く。


『ホウリ!助けてくれ!ノエルが話を聞いてくれないんじゃ!』
『ロワとミエルから事情は聞いた』
『それでは……』
『断る』
『ホウリ!?』


 昨日のは明らかにやりすぎだ。少し反省してもらおう。
 フランの悲痛な叫びを無視してテーブルに地図を広げる。


「これからの予定を話す前にダメルでの成果を話しておく。まずは金だが、憲兵から5億G振り込まれている事を確認した」
「5億G……、なんだか途方もない金額ですね」
「大会までにすべて使い切るけどな」
「5億Gを使い切るのか」


 現状、足りないことは無いが余裕があるわけでもない。使うときに適切に使わないとな。


「次に憲兵長に協力を取り付けた。これが一番大きい」
「確かこれで大会までは逮捕されることはないんですよね?」
「ああ、そこは安心してほしい」


 代わりに別の危険が出来ているが王都に着くまでは黙っておこう。


「最後に一つ」
「まだあるのか?」
「これはおまけなんだが」


 懐からギルドカードを取り出してテーブルに置く。


「これは……、ダメル領主のスタンプか!?」
「昨日、領主とギャンブルして勝ち取ってきた。朝までかかるとは思わなかったが」
「それでこんな遅くになったんじゃな」


 フランが何とか立ち直り話に参加してくる。


「これらがこの街で勝ち取ったものだ」
「中々の収穫だな。次の目的地は王都だったか?」
「そのつもりだったが、その前に寄るところが出来た」
「寄るところ?」


 地図のダメル領にある森の中に印を付ける。


「ここにとある発明家がいる。ある魔道具を作ってもらう」
「ある魔道具?」
「全員のパワーアップアイテムだ」
「パワーアップ!」


 ロワが目を輝かせて叫ぶ。対照的にミエルは疑わしい目で見てくる。


「発明家?信用できるのか?」
「確かに信用できる証拠は見せられない。だから、今は俺とその発明家を信用してくれとしか言えない」
「……分かった。貴様は信用できないが発明家は信用しよう」
「パーティーメンバーより会ったこともない奴を信用するっておかしくないか?」
「妥当じゃろ」


 畜生、日頃の行いが行いだから反論できねぇ。


「……話を続ける。魔道具が出来るまでは数日かかる見込みだ。その間森の中で過ごすのは嫌だろ?」
「何か考えがあるんですか?」
「ああ、完成を待つ間、ここに行く」


 街と森を結ぶ線を延長させ、とある場所に印を付ける。


「ここはケイワイビーチか」
「その通り」


 ケイワイビーチとはきれいな海と砂浜があるビーチで、ダイビングや魚釣りなど幅広いレジャーを楽しむことが出来る。最近は暖かくなってきたし最高の息抜きとなるだろう。


「いいですね。僕、海に行ったことがないんですよ」
「ノエルも海行ってみたーい!」


 ロワとノエルは乗り気なようだ。だが、ミエルとフランの表情は冴えない。


「そういうことは早く言って欲しかったのう」
「全くだ、直前に言うなど考えられんぞ」
「そこは申し訳ないと思っている」


 二人の反応が予想外だったのかロワは不思議そうな表情をする。


「あれ?お二人は海は嫌いなんですか?」
「いや、そうではなくな……、最近はホウリに釣られて食べ過ぎてしまっているし……」
「水着とかも見ておきたいし……」


 口ごもる二人をロワは不思議そうに見つめる。


「ロワ、そういうところだぞ?」
「へ?」


 何もわかっていないのがロワの表情から伺える。ロワにははデリカシーとか色々な事を教える必要があるな。


「水着はビーチで買ってもらう。異論はあるか?」


 誰も異論を唱えない事を確認し俺は大きく頷く。


「よし、それじゃ行くぞー」
「「「「おー」」」」



☆   ☆   ☆   ☆




 空と海の青が地平線の先まで続き、柔らかい潮風が頬を撫でる。太陽が砂浜と海をきらびやかに照らしており、さながら自然の宝石箱のようだ。
 波の音を聞きながら、俺とロワはパラソルの下で女性陣を待っていた。


「人、いませんね」


 隣のロワの口からつぶやきが漏れる。


「そうだな」


 相槌を打ちながら誰もいない砂浜を見渡たす。
 俺たちはケエワイビーチに来てみたが、観光客の姿は1つもなかった。近くの店で事情を聴いてみると海に強力な魔物が出たため遊泳禁止とのこと。
 海で泳げないから観光客はいない。観光客がいないからレジャーの店やレストランも開いていない。魅力が半減どころか9割減っている気がする。


「水着屋さんとコテージ屋さんが開いているのはラッキーでしたね」
「そうだな。開いてなかったら何も出来なかったからな」


 水着はビーチで買うと言っておきながら買えなかったら女性陣の機嫌が悪化していたに違いない。本当に開いていて助かった。
 ロワがジュースの瓶を握りしめながら何気なしに話す。


「皆さん、遅いですね」
「女性の買い物は時間がかかるものだ」


 とはいえ、もうすぐあいつらが水着を選び始めて1時間になる。そろそろ来てもおかしくないが……。


「おーい!」


 そう思っていると遠くからフランが手を振りながら走って来ているのが見えた。
 赤の生地にフリルが付いている水着を付けていて白いフードを羽織っている。


「すまぬ、待たせたのう」
「俺らは別にいい。それより良い水着は選べたのか?」
「勿論!どうじゃ?似合っておるか?」

 
 フランはよく見てほしいのかクルクルと回って見せる


「よく似合っていると思いますよ」
「中々似合っているぞ。赤の水着の鮮やかさとパーカーの白がフランの可愛さを引き立てている」
「お主って言いにくい事を普通に言ってくるんじゃな」
「嫌か?」
「嫌ではないが、少し恥ずかしいわい……」


 少し顔を赤らめながら背ける。ストレートに言い過ぎたか。


「ところで、ノエルとミエルは?」
「ああ、ノエルが『お姉ちゃんと一緒が良い』と言ってな……」
「一緒に来るわけだな」
「なぜじゃノエル……わし何か悪い事でもしたか?」
「それに気が付かない内はノエルに謝っても無駄だな」


 あからさまに落ち込んでいるな。だからと言って何をするわけでもないが。
 表情が沈んでいるフランの後ろでノエルが満面の笑みで手を振って走って来た。ミエルはTシャツで上半身を隠しながらノエルの後ろに隠れている。


「みんなお待たせー」
「うぅ……」


 ノエルの水着は上下青のセパレートで子供らしく可愛らしい装いとなっている。


「似合っているぞ、ノエル」
「ええ、とても可愛いですよ」
「えへへ」
「だが後ろの奴はなんだ?」
「うぅ……見るなぁ……」


 ミエルはTシャツで体を隠しながらノエルの後ろに隠れる。
 

「海に来て水着を見せるのが恥ずかしいってどうなんだ?」
「し、仕方ないだろ。人前でこういう格好をしたことがないんだ」
「それは残念です。ミエルさんの水着姿、見たかったんですが……」

 
 サラッとイケメンにしか許されない言葉を言ってのけるロワ。仮に俺が言ったとしたら『変態!』って言われて殴られるな。
 
 
「うっ……、しょ、しょうがないな……」


 ロワの言葉で満更でもない表情でTシャツを脱ぎ始める。


「これは……」
「凄いですね……」


 ミエルは黒い水着で豊満な胸と腰のくびれが強調されている。顔が整っていることもあり下手なグラビアアイドルよりもよく似合っている。このビーチでミエルの写真を数枚撮ればグラビアの写真集が出来上がるだろう。


「ど、どうだ?」
「はい!とてもよく似合っています!」
「そ、そうか……」


 なんだろう、あの二人の空間だけピンク掛かって見える。
 そんなミエルを見たフランは自身の胸に手を当て呟く。


「なに食ったらあんな体型になるんじゃろうな」
「さあな」
「……お主なら何とか出来るか?」
「出来るわけないだろ」


 俺はDえもんか。


「それで海で何をするつもりじゃ?海で泳げないとなると出来ることは限られてくるぞ?」
「それについては俺に考えがある」
「考え?」


 俺はアイテボックスから畳まれた布を取り出す。


「フラン、こっち持ってくれ」
「?、分かった」


 フランに布の端を持ってもらい勢いよく広げる。すると、ある文字が布に書かれていた。


「『第一回、スターダスト浜辺の大熱戦』?なんだこれは?」
「説明しよう!『第一回、スターダスト浜辺の大熱戦』とはスターダストメンバーによる真剣勝負である。5回戦やって最後に一番ポイントが多い奴が優勝となる」
「そうか、今度は何を企んでいる?」
「二言目には俺を疑うの止めてくれない?」
「貴様の今までの行いだ。それで、どうなんだ?」
「何も企んでねぇよ。何もすることがないから提案しただけだ」


 ミエルの俺に対する信頼が絶望すぎる。大会までにある程度は信頼を回復したいな。


「ちなみに、途中棄権も認める。途中棄権したら参加できなくなるから気をつけろ。何か質問はあるか?」
「はい!」


 俺の問いかけにフランが勢いよく手をあげる。


「わしは全力を出してもよいのか?」
「良いわけないだろ。フランは魔装及びスキルの使用を禁止する。それとは別対決毎に個別のハンデも設ける」
「そうか……」


 露骨にがっかりするフラン。寧ろ、何故本気を出せると思ったのか聞きたい。


「優勝したら何かあるんですか?」
「そうだな、特に考えてはいないが……」
「ふっふっふ、わしに良い考えがあるぞ」
「聞かせて貰おうか?」


 嫌な予感しかしねぇ…。


「優勝した奴の願いを皆で叶えるというのはどうじゃ?」


 やっぱり碌な提案じゃなかった。


「ふむ、罰ゲームと賞品を兼ねている訳か。悪くないな」
「僕も良いと思います」
「ノエルもいいよ」


 全員異論は無いみたいだ。今回はあまり口を出したくないし、全員に異論が無いなら俺からは何も言うことは無い。


「分かった、商品はそれにしよう。ノエルは参加でいいか?特別扱いは出来ないぞ?
「うん!大丈夫!」
「分かった、それじゃあ発表しよう。最初の対決は───」


 俺はアイテムボックスからビーチボールを取り出す。

 
「ビーチバレーだ」






☆   ☆   ☆   ☆






「ホウリさん、一ついいですか?」
「なんだ?」
「フランさんが賞品を提案した時にやけに険しい表情になってましたよね?」
「それは私も気になっていた。なぜだ?」
「そうか。お前たちは知らなかったんだな」
「何がです?」
「実はフランにはやりすぎるところがあってな。願いを叶える権利を手に入れたら何を命じてくるかわかったもんじゃない」
「具体的には何があった?」
「フランとオダリムの街にいたとき、弾幕をかわしながらゴブリンの群れと戦うことを強要されたり、女装して舞台に立つことを強要されたり、紐なしバンジージャンプさせられたりした」
「……嘘ですよね?」
「残念ながら全部本当だ。今は俺が抑えているからそういったことはないが……」
「優勝した時に反動が来るかもしれないという事か」
「……なぜ最初に言ってくれなかったんですか?」
「申し訳ないがこの勝負に関しては俺は中立を貫く事にしている。だから敢えて言わなかった」
「くっ、どうにかならないのか?」
「フランを優勝させるな。それしか道は無い」
「フランさんに勝てるんでしょうか……」
「一方的な展開にならないようにハンデは設ける。いいか、お前らだけが頼りだ。絶対に勝て!」
「分かりました!」
「了解した。必ず勝ってみせよう」
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