魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第五十話 俺はこのままタイムアップでもいいんだが?

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─────デバフ系スキル─────
デバフ系スキルとは対象のステータスなどを下げる効果があるスキルである。しかし、バフ系スキルと違い、多人数との戦闘ではMP効率が悪い。そのため、多人数戦よりも少数の強敵との闘いに重宝される。ステータス以外にも気配を薄くしたりすることもデバフ系のスキルになる。──────Maoupediaより抜粋




☆  ☆  ☆  ☆ 




 次の日の朝、銀の閃光の面々は旅立つ準備を整え、王都へ続く道に立っていた。


「銀の閃光の皆さん、今回はありがとうございました」
「いやいや、こちらこそ楽しかったよ」
「そうね、中々刺激的だったわ」
「また一緒に!」
「鍛えような!」


 銀の閃光の面々が笑顔で別れの挨拶を口にする中、一人だけ不機嫌そうな顔の奴がいた。


「ほら、ナップも挨拶しな」
「嫌だ!フランさんの水着姿が見たい!もっと遊びたい!」
「わがまま言わないでよ。今日出発しないと期日までに間に合わないじゃないか」
「お前らだけで行ってこい!俺はこいつ達と王都に向かう!」
「迷惑でしょ!ほら行くよ!」


 ミルに無理やり引っ張られながら森の奥へと消えていくナップ。


「またどこかで!」
「またのー!」
「またあそぼーねー!」
「楽しかったです!またお会いしましょう!」
「またな!」


 手を振りながら銀の閃光を見えなくなるまで見送る。俺は完全に姿が見えなくなると大きく伸びをする。


「んじゃ、最後の勝負を始めるか」
「今回は勝負の内容を聞いておらんかったのう。何をするんじゃ?」
「……一ついいか?」
「なんだ?いきなり改まって?」


 いつにもなく真剣な俺に不信感を見せるミエル。


「ミエルが警戒するのも無理はないし、その警戒心もあっている」
「……なにをする気だ?」
「説明する前に質問する。本気の俺と戦いたくないか?」
「本気のホウリさん?」
「ああ、どうだ?」


 俺の質問に全員が悩む様子を見せる。こんな質問をいきなりされて困惑するのは分かる。だが、重要な質問だから真剣に答えてほしい。


「僕は……戦いたいです」
「私もホウリを叩きのめしたい」
「右に同じじゃ」


 フランとミエルの俺への殺意が尋常じゃない。心当たりは……多すぎるな。
 やる気満々な三人とは対照的にノエルの顔色は優れない。


「ノエルは嫌か?」
「……ホウリお兄ちゃんと戦いたくない」
「そうか」


 ノエルは優しい心を持っている。親しい人と戦うことを嫌うのは当たり前だろう。だが、これからの事を考えると相手が誰であろうと戦えないと危ない。
 俺はノエルの目線に立ち優しく話しかける。


「これから先の旅で俺たちの誰かと戦うかもしれない。誰かに操れたりな。そういう時に戦えないと自分も仲間も危険になるだろ?」
「………………」
「何も殺し合いをしようと言っている訳じゃない。そういう状況に慣れておく必要があるから、練習しておこうと言っているんだ」
「……分かった」
「いい子だ。キツイかもしれないが頑張ろうな」


 決意を固めたノエルの頭を優しく撫でる。そうと決まれば早速勝負を始めよう。


「それじゃ、最後の勝負を発表する。ノエルここ持っててくれ」
「うん」


 アイテムボックスから旗を取りだしてノエル端を持ってもら。そして、逆の端を持って一気に開く。


「最後の勝負は────『一撃試合』だ」


 一撃試合、その名の通り一撃入れたら勝ちというシンプルなルールだ。俺がナップと戦った時のルールと言えばわかるだろうか?


「ルールを説明しよう。制限時間1時間の間に初めに俺に一撃を入れた奴の勝ち。以上」
「シンプルじゃな、細かいルールはあるのか?」
「フランのハンデ以外は無い」
「わしのハンデは何じゃ?」


 俺は初心者用のギブスを取り出してフランに渡す。


「これを着けて戦ってもらう。壊れたら失格」
「なるほど、早く動きすぎるとギブスが壊れる訳か」
「そういう事だ」


 今回は全員の力を最大限に見ておきたい。流石にハンデ無しだとフランに瞬殺されるから、ギブス位のハンデは付けるけど。
 俺の説明に不安を感じたのか、ロワが恐る恐る手を挙げる。


「あの……僕らにハンデは?」
「ない。スキルでもエンチャントでも好きに使え」
「こう言っては何ですが、大丈夫ですか?3対1になりますよ?」


 確かに端から見たら不安があるルールかもしれない。だが、


「大丈夫だ」
「でも……」
「俺を信じろ。それに……」
「それに?」
「その認識だと負けるぞ?」
「?、どういうことです?」


 言葉の意味が分からないのか、首を捻ったまま考え込むロワ。
 ロワ程では無いにせよミエルやノエルも不安そうな顔をしてる。そんな3人にフランが呆れたように話す。


「こいつが何の策も無くこんな勝負を持ちかける訳がなかろう。昨日のナップとの闘いを思い出せ。確実に何かを企んどる筈じゃ」
「それもそうだな。こいつは負け戦をする奴じゃない」
「そうですよね、戦う手段を用意している筈です」
「信用があるようで何より」


 確かに色々と手段は用意してある。このルールにした理由もそこにある。それだけではないが。


「そういう事だから、心配はいらない。分かったら水着に着替えて砂浜に集合な」
「水着?鎧とかでなくていいのか?」
「鎧つけて俺に一撃当てる自信があるならいいぞ?」
「……水着でいい」
「それでいい。10分後に砂浜集合、必要なものがあれば事前に言うように」
「「「「はーい」」」」



☆  ☆  ☆  ☆ 



 10分後、水着に着替えた皆はそれぞれの武器を手に取って俺の周りに集合した。ロワは弓、フランは杖、ノエルはナイフ、そしてミエルは……。


「あれ?ミエルさん大剣じゃないんですか?」


 ミエルが握っているのは大剣ではなくレイピアだった。日の光で刃が輝いているレイピアを眺めながらミエルが答える。


「ホウリに大剣みたいな重い武器が当たるわけないからな。私が扱いなれている武器で一番軽いのがこのレイピアって訳だ」
「あ、なるほど」


 どんな混戦でも大剣なんて振りが大きい攻撃は当たらない。そういう分析が出来るのはミエルの強みだな。
 俺はアイテムボックスからケーキ型のタイマーを取り出してセットする。


「このタイマーが鳴ったら勝負は終わり。それまでに俺に一撃当てた奴が勝ちだ」
「ほう、なるほどな」
「ちなみに、タイマーを破壊しても時間が延びる訳じゃないからな?俺がちゃんと計ってるからな?」
「ちっ!」


 フランが顔の影を濃くしながら舌打ちをする。フランの考えている事なんてお見通しだ。というか、俺に思考が似てきている気がする。
 俺はタイマーが壊れないように砂浜の外に置く。そして、コインを取り出し指の上に乗せる。


「このコインを上に弾いて砂浜に落ちたら勝負スタートだ」
「オーケーじゃ」
「分かりました」
「うん!」
「了解」


 全員の了承が取れたのを確認し俺はコインを天高く弾く。キラキラと日の光を反射させながらコインは落下していく。全員が緊張感に包まれながらコインの行方を見守る。そして、コインは砂浜の上に落ちた瞬間、


(ドガーン!)


 全員の足元が爆発した。言うまでもないことだが、俺が事前に仕込んでおいたものだ。コインが落ちた瞬間にスイッチを入れて起動、ミエルと戦った時と同じだ。
 徐々に爆発の煙が晴れていくと、4人の影が見えてきた。ミエルとフランは当然無傷だったが、ロワとノエルは無傷とはいかなかったのか、所々に傷が出来ている。対象毎に火薬の量を調整したから死にはしないだろうがダメージは少なくない筈だ。


「……また爆薬か。芸の無い奴だ」


 ミエルが忌々し気に吐き捨てる。ミエルには不評だが、火薬は手軽に破壊力がある攻撃が出来る。取り扱いが多少難しいが、気を付けてさえいればこんなに便利な攻撃手段はない。


「うう……痛たたたた」
「分かってはいましたが、かなり痛いですね」


 ノエルの体が緑色に光り、傷が治っていく。ロワは上にヒールシュートを打ち、弾道を曲げて胸で受けて回復する。全員ほぼ無傷か。想定内だな。


「さて、覚悟はできているだろうな?ホウ……リ?」


 煙が晴れ、視界がクリアになっていくと俺の姿が消えていた。


「どこだ!出てこい!」
「ホウリさん?え?」


 全員が辺りを見渡し俺の姿を探す。だが、俺の姿はどこにもない。


「くそっ、一体どこに────」
「ここだ」


 ミエルの後ろから現れた俺はミエルの腹に掌底を打ち付ける。
 だが、その様子を見ていたフランが鼻で笑う。


「はっ、ミエルほどの防御力を持つものにホウリの掌底が効く訳が……」
「……うぐぅ」
「……ミエル?」


 崩れ落ちるミエルを見たフランが目を丸くする。


「何かのスキルか!?」
「よそ見している暇があるのか?」


 フランの視線がミエルに向いている間に背後に回り込み腕を取る。そして足を払い倒れこんだフランを抑え込む。


「……なぜミエルに攻撃が通った?」


 腕力だけで関節技を封じながら、フランは聞いてくる。


「『鎧通し』、硬い鎧の上でも攻撃を通す技だ」


 この世界での防御力とは皮膚の表面に硬い鎧があるみたいな感じだ。つまり、防御の高い奴は表面に鎧を纏っているような感じだが内面は普通の人間と変わらない。鎧通しは振動で内部に攻撃を加える技術だから、実質防御無視のスキルだな。体制によっては使えないが。


「……なるほどな。じゃが、わしに鎧通しが通用するかな?」
「お前気付いてないのか?」
「?、何がじゃ?」
「ギブスが壊れたら失格って言っただろ?もちろん、
「!?」


 俺の言葉を聞いたフランが力で無理やり関節技を外しにかかる。俺はあえて手を離しフランと距離を取る。


「くっ!」


 フランは急いで上体を起こす。俺はすかさずあるアイテムを投げつけると、フランは反射的に持っていた杖でそれを叩き割る。すると、


「げほっ!ごほっ!」


 赤い粉末がフランの顔の辺りに漂う。フランは思いっきり粉末を吸い込み咳き込む。


「ごほっ、何じゃこれ!」
「唐辛子の粉末入りの煙玉だ。そして、そこ!」


 後頭部から何かの気配を感じ、しゃがみながら後ろに方向を変える。頭の上から何か───矢が通過していく。飛んできた方向に視線を向けると弓を構えているロワがいた。


「くっ!まだです!」


 ロワは矢筒から矢を取り出し、俺に向けて矢を放とうとする。俺はロワに向かって砂を蹴り出し視界を覆う。


「うわぁ!」


 思わず明後日の方向に矢を打ち出してしまうロワ。勿論、俺には当たらない。砂での目隠しが無くなり、ロワがこちらを視認できるようになると、再び矢を放とうと矢をセットしようとする。だが、


「へ?」


 弓の弦が切れていて矢を番えられない。驚いているロワに俺は懐からあるものを取り出して見せる。


「それは……ナイフ?」
「ああ、投げナイフだ。砂で目隠しをしていた時にこいつで弦を切っておいた」
「ホウリさんって新月以外の武器を使えないはずでは?」
「ダメージを与えられないだけで物の破壊は可能だ」


 視界が効かなくてもこれぐらいは出来る。これでロワは当分機能停止、あとは────


「こい!ノエル!」
「やあ!」

 
 後ろからナイフを突き刺してこようとするノエル。俺はノエルのナイフをかわして蹴り飛ばし、両手平を握る。いわゆる、手四つの形だ。


「うー、魔装!」


 ノエルが魔装をして力を強化する。このままだと確実にノエルの握力でダメージを受けるだろう。だが、


「あれ?体から力が?」


 ノエルの体から力が抜けたように膝が曲がる。合気道の手を握った相手の力を抜く技術だ。


「覚えておけ、世界には手を握るだけで力を抜けさせる技術がある。不用意に相手に手を握らせるな」
「きゃあ!」


 ノエルの魔装が切れた合間を狙って手を離し、ノエルの腹に後ろ蹴りを叩きこむ。数メートル吹っ飛んだノエルは呻きながらもなんとか起き上がる。


「うう……」
「はぁ、はぁ……」
「貴様ぁ!」
「卑怯じゃぞ!」


 フランとミエルが俺に非難の目を向けてくる。珍しいことに、ノエルとロワも俺に非難の目を向けてくる。
 そんな中、俺はまずミエルに新月を向ける。


「まずミエル。自分の防御力を過信しすぎだ。ダメージを通す技術やスキルは珍しいものじゃない。ダメージを受けた後の行動も遅い」
「へ?」


 俺が何言っているのか分からないのか、目を丸くするミエル。俺は次にフランに新月を向ける。


「次にフラン、状況判断が遅い。自分はダメージを受けないかもしれないが、ギブスのような守るものがそばにある場合は慎重になれ。それがノエルだと考えてみろ、何回か死んでるぞ?」


 次にロワに新月を向ける。


「次にロワ、不測の事態に弱すぎる。砂が飛んできただけで狙いをブレさせるな。あと、思い込みはするな。相手の情報を把握するなら正確に」


 最後にノエルに新月を向ける。


「最後にノエル、自分が出来る事を把握しろ。ステータスを魔装で上げられるとはいえ、一時的に過ぎない。魔装が終わったら普通の子供になることは肝に銘じておけ」


 全員の指摘が終わり、俺は新月を砂浜に突き刺して全員を睨む。


「お前ら手を抜いてんじゃねぇぞ?もっと本気でこい」
「で、でもホウリさんが不意打ちしてきたからで……」
「は?お前気が付いてないのか?」
「な、なにがですか?」


 弦を張り直したロワの言葉に俺はわざと怒り気味に返す。


「弦を切った後、俺が追撃に行ったら?」
「……あ」
「掌底を喰らわせた後に首を締め落とされて気絶させられたら?関節を決められた時に何も言わずギブスを破壊されていたら?蹴り飛ばされた後に新月を投げられて追撃されたら?」


 俺の言葉に誰も言葉を発することはなかった。全員気が付いたんだろう、俺がその気になれば全員戦闘不能になっていたことに。


「戦闘に卑怯は無い。命を落とせば終わりだ。卑怯という前に現状を何とかしろ」
「うう……」


 黙り込んでいる皆に新月を向ける。


「全員さっさと構えろ。次は容赦しないぞ」


 新月を向けられた全員の表情は暗い。無理もない、全員の欠点を身をもって指摘されたんだ。すぐに戦える訳が──────


「喰らえホウリ!」


 暗い顔をしていたフランがいきなり殴りかかってくる。俺は拳を受け流し、勢いを利用してフランを投げ飛ばす。


「フランさん!」
「フランお姉ちゃん!」

 
 投げ飛ばされたフランを見て、ロワとノエルが思わず声を上げる。そして、3人が投げ飛ばされたフランの元へと向かう。


「大丈夫か!」
「……この程度ダメージにもならんわい。そんなことより、今はホウリの事じゃ」


 全員の心配をよそにフランは立ち上がり杖を構える。


「奴の言うことはもっともじゃ。それも一朝一夕で直せるものでもない」
「じゃあ……」
「じゃがこうも思うんじゃ」


 フランは三人を見てハッキリと話す。


「それはそれとして、ホウリの奴がむかつくからぶん殴りたい」
「「「………………」」」


 フランの言葉を聞いた皆は無言で武器を構えなおす。


「……私たちは間違っていた。一度の失敗でへこたれてはいけないな」
「うん、ノエルも頑張る!」
「はい、皆で力を合わせて──────」
「「「「ホウリ(お兄ちゃん)(さん)をぶん殴る!!」」」」
「なんでそこで一致団結するんだよ!」


 ロワから放たれた矢を紙一重で右に回避する。そこにノエルとミエルの斬撃が飛んでくる。新月で受け流そうとする。
 くっ、斬撃が多すぎて捌ききれねぇ!


「一気にチームワークがよくなりやがって!個人戦だって分かってるのか!」
「分かっているさ」
「ですが、最悪負けてでも」
「貴様をぶっ飛ばしたい!」


 こいつらマジか!勝ちを捨ててでも俺を殴りたいのか!というか、ミエルとフランはともかく、なんでロワとノエルまで殴りかかってくるんだ!あれか、日ごろの行いって奴か!
 最終戦であることを考慮し、お互いの邪魔しあうと思っていたからこれは予想外だった。勝負が始まる前にロワに『3対1って考えたら負ける』って偉そうに言っていたのになんてザマだ。
 

「はあ!」
「やあ!」


 魔装したノエルとフランの攻撃をかわしながら反撃の隙を伺う。こうして、最終勝負は俺の想定外の進行していくのだった。



────55分後────



「くらえ!」
「ぐわぁ!」


 勝負中に掘った落とし穴にはまるロワにパチンコ玉で追撃する。


「はぁはぁ、流石ホウリさん。もうすぐ1時間経つのに僕たちの攻撃を避け続けています」
「隙を見せると追撃してくるしのう」
「強いというか小賢しいな」
「なんでノエル達の攻撃が一発も当たらないの……?」
「場数が違うんだよ、場数が」


 フランの攻撃はいなして他の奴らの攻撃の牽制にしたり、ロワのエンチャントは砂場に刺さる前に破壊したりして凌ぐ。


「残り1分、このままだと勝者無しで終わってしまいます」
「総攻撃を仕掛けるぞ。誰か動きを止められないか?」
「ノエルに任せて!」


 ノエルが元気よく手を挙げる。意外だな、ノエルが率先して手を挙げるなんて。何か考えがあるのか?
 なんにせよ、油断はしない。残り1分耐えきって見せる!


「行くよ!お兄ちゃん!」
「こい!ノエル!」


 ノエルがナイフで俺を突き刺そうとするが、動きが単純すぎる。俺は普通にかわそうとする。だが、


「えい!」


 ノエルがナイフを俺の顔に放る。
 何か考えてるか分からないが、ナイフは弾いておくか。俺はナイフを弾くと右手をノエルが手を握ってきた。


「勝負!」


 手四つか、さっきやられたのを忘れている筈がない。何か企んでるみたいだし、両手を握られるのは不味いな。俺は左手をノエルに握らせないようにしながら出方を見る。すると、


「な!?力が!?」


 俺の力が抜けていくのを感じる。スキルじゃない、合気道の技術だ!ノエルの奴、どこまで天才なんだ!


「しめた!突撃!」
「おう!」
「はい!」


 ミエルとフランが走ってきて、ロワが矢を放つ。
 力が入るようにするには時間がかかる。その間に攻撃が避けきれない。このままだとマズイ。くそっ、ここまでか!


「────って言うと思ったか!」


 俺は逆に全身の力を抜き切る。


「うわぁ!」


 背中から砂浜に倒れた俺はノエルの手を取って蹴るように後ろに投げ飛ばす。そして、向かってきたノエルとミエルに唐辛子の玉を放りパチンコ玉で割る。


「うお!」
「なんじゃ!」
「危ない!」


 二人の動きが止まったことにより、ロワの放った矢が二人に向かう。ロワは慌てて矢の軌道を変え、二人に矢が当たらないようにする。
 そうして、全員の猛攻を耐えきった後、ケーキ型のタイマーがビーチに鳴り響いた。


(ジリリリリリリリリ)


「よっしゃ!耐えきってやったぞ!」


 俺は天に拳を突き上げ喜びを表現する。


「そうかそれは良かったな」
「ちっ、耐えきりおったか」


 水魔法で顔を洗い流したフランが忌々し気に舌打ちをする。
 残りの三人はというと、落ち着いた様子で悔しそうな表情をしていた。さっきの殺気にも似た雰囲気は存在していない。


「まさか四人でも攻めきれんとはな。お主が強いのかわしらが弱いのか」
「おれは弱点を突くような戦い方をするし、長く一緒にいると攻撃のタイミングとかも分かるからな。強い弱いじゃない。そんなことより……」


 俺はフランを思いっきりにらみつける。


「スキル使うなって言ったよな?」
「え?フランさんスキル使ってたんですか?」
「ああ、精神系のスキルだ。悲壮感や脱力感を闘志に変えやがった」
「なるほど、だからフランの言葉を聞いた瞬間に闘志が湧いてきたのか」


 二人は納得したようにうなずく。フランはよく分からないのか首を傾げている。
 フランとミエルに『ぶん殴る』って言われてもなんとも思わない。だが、ロワとノエルに言われたときはスキルの性だと分かっていても少し心にきた。


「お前は三人に謝っとけよ」
「あのまま戦意喪失されて勝負にならんよりもよいじゃろ」
「よくねぇよ。精神操作はされた方は結構ショックだからな?」
「まあまあ、フランさんのおかげで戦えたんですし今回は不問にしましょう」
「私も心にもない事を言ってしまったが、フランのおかげで戦えたんだ。感謝している」
「ぜってぇ本心だろ」


 二人は気にしていないみたいだが、ノエルはどうなんだろうか?


「ノエルはどうだ?怒ってもいいんだぞ?」
「よくわかんないけど、楽しかったからいいよ?」


 ノエルの言葉を聞いたフランが勝ち誇ったようにこちらを見てくる。


「ああもう!分かったよ!不問にするよ!」
「それでよいのじゃ。して、どうするんじゃ?勝負がついておらんぞ?」
「それは……後でじゃんけんでもしよう」
「適当じゃのう」
「それはともかく、第5回戦、勝者『なし』!」 
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