魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第五十一話 興味ないね

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────魔道具────
魔道具とは動力がMPの機械である。動力がMPであるため自身からMPを補給できるものもある。魔道具の種類としてコンロやランプといった生活に使われているものや、魔法を発射できる武器など様々な種類がある。──────Maoupediaより抜粋




☆  ☆  ☆  ☆ 





 5回目の勝負の後、俺たちは海で泳いだり、砂で城を作ったり、MPで動くモーターボートで海に乗り出したりと普通に海を満喫した。6戦目を企画しようとも思ったが競ってばかりで皆疲れているだろうし、普通に遊ぶことにした。
 そして、疲れるまで遊んだ俺達はホテルで眠り、次の日の朝には身支度をして旅立つ準備をしていた。


「全員準備はいいか?」
「私は大丈夫だ」
「わしも良いぞ」
「僕も準備出来ました」
「ノエルもー」


 全員準備が済んだな。そろそろ出発しよう。全員のホテルの入口に向かうと、そこにはタキシード姿のホテルのオーナーが立っていた。オーナーは俺達を見つけると恭しく礼をする。


「スターダストの皆さま、お待ちしておりました」
「オーナーさん?どうしたんですか?」
「皆様にお礼を申し上げたくてここでお待ちしておりました」


 そう言うと、オーナーは再度頭を下げる。


「この度はクラーケンを討伐していただき誠にありがとうございます」
「倒したのは伝説の戦士ですよ。俺たちは報告しただけですよ」


 今はロワのトリシューラの事を知られたくない。ここは伝説の戦士が倒したということで話を通そう。


「ご報告いただいただけでもありがたいです。それに、クラーケンのドロップ品も分けていただけましたし、本当に感謝しております」
「お客さんがいない間は利益がでなかったでしょうし、寄付と思っていただけたら」
「お心遣い、感謝いたします。次回ご利用の際は最上級のおもてなしをさせていただきますね」
「わかりました。また来ます」


 オーナーは顔を上げるとニコリと微笑む。俺らはオーナーに見送られながらホテルを後にしたのだった。



☆  ☆  ☆  ☆ 




「はぁ……もっと遊んでおきたかったのう」
「また来年にでも来ましょう」
「今はそれよりも発明品だ」


 俺たちは発明品を受け取るために森の中を進んでいた。


「そういえば発明品の完成を待っておったんじゃっけか」
「忘れるな」
「そうですよ!僕たちのパワーアップアイテムが完成してるんですよ!もっとテンション上げましょうよ!」
「ロワはもう少し落ち着け」


 興奮ぎみのロワを何とかなだめつつ俺たちは森の中を進む。そんな中、ミエルは思い出したように話す。


「そういえば、発明品とは聞いていたが、具体的にはどんな発明品なんだ?」」
「それは実際に見てからのお楽しみだ」
「お前がそう言うと嫌な予感しかない」
「大丈夫だ、今回は期待してもらっていい」


 今回ばかりは何かを企んでいることは無い。何せこいつらの戦闘力の上昇は目的の達成に直結する。そんな時に騙したりはしない。
 そんな事を話していると行きにも見た木造の小屋が見えてきた。そばにある看板には『ミクモ研究所』と書いてある。


「俺が発明品を受け取ってくるぁら、お前らはここで待っていてくれ」
「わしも行きたいのだがダメか?」
「ノエルも行きたーい」


 俺が研究所に向かおうとするとフランとノエルが後ろからついてきた。


「発明家の研究所じゃろ?面白そうな発明の1つや2つあるじゃろ」


 何か勘違いしているみたいだが、まあいいか。


「僕とミエルさんはこの先の広場で待ってますね」
「分かった」


 ロワとミエルが森の奥へ進む。俺たちは研究所の扉の前に立ち、ドアをノックする。


(コンコン)
「はーい!」


 女性の声がしたと思うとバタバタという走ってきた音が聞こえ扉が開く。


「すみません、まだお金の工面は出来ていないて────って依頼人さん?」


 扉から現れたのは眼鏡をかけたおとなしそうな女性だった。この人の名前はラミス、発明家の助手らしい。一度ここに来た時にも挨拶をした。その時に分かったことだが、この人は発明家とは違い常識が通じる優秀な人物だ。


「前に頼んでいた発明品を受け取りに来ました」
「出来てますよ。奥へどうぞ」


 ラミスに促されるまま俺達は研究所の奥へと入る。


「ほぉ、これは中々……」


 研究所へと入ったフランは感嘆の声を上げる。研究所の中には発明品に使う部品や、作りかけの発明品などが乱雑に置いてある。ノエルがその中の一つを指さしラミスに尋ねる。


「お姉さん、あれは何?」
「あれは……なんだろうね?」
「お主は分からんのか?」
「あの人の説明難しくてよく分からないの」


 ラミスが困ったように笑う。確かにあいつなら回りくどい説明をしそうだ。
 ラミスは机の上に散らばった部品を片付けて椅子を持ってくる。


「今お茶を淹れてきますね」
「ああ、お構いなく」


 ラミスが奥に引っ込むと、ノエルとフランがソワソワと周りを見渡す。


「言っておくが触るなよ?」
「……ダメ?」
「当たり前だ」


 下手に触って壊したり怪我をしたら目も当てられない。特に好奇心が強いこいつらは絶対に発明品を触ろうとするだろう。


「む?これは……」
「自然に触ろうとするな」


 むき出しの基盤を触ろうと触ろうとしたフランの手を掴んで止める。


「何これ?」
「ノエルも触ろうとするな」


 怪しげに発光している発明品を触ろうとするノエル。その手を掴んで妨害する。
 

「「「………………」」」


 俺とフラン、ノエルは睨み合いを続ける。


「……これはなんじゃろうな!」
「これ何かな!」
「させるか!」


 二人との攻防が始まろうとしたその時、奥から白衣の男がやってきた。ぼさぼさで伸び切った髪、だらしなく着崩した服、ズレた眼鏡、だらしない研究者の見本みたいな奴だ。
 そいつは俺たちを見ると呆れたように話す。


「君は何をしているのかね?」
「この二人が発明品に触ろうとしているのを止めていた」
「そこの二人は?」
「俺のパーティーメンバーだ」
「フラン・アロスじゃ」
「ノエル・アロスでーす」
「そうか」


 さほど興味がないのか、男は椅子に座って煙草を吸い始める。


「なんじゃこいつ?」
「初対面でその言い方はやめろ」
「別にいい」


 男はそれだけ言うとまた煙草を吸い始める。しびれを切らしたフランが男の話を促す。


「……それだけか?」
「それ以外に何を言うんだ?」
「名前とか職業とか色々と言うことがあるじゃろ?」
「ミント、発明家をしている」


 ミントが再び煙草を吸い始める。
 そんなミントを見たフランが助けを求めるように視線を向ける。


「こいつの名前はミント。注文が3ヵ月待ちになる程の人気な発明家だ」
「こいつに発明を頼んだのか?」
「ああ、ミントじゃないと技術的に不可能な発明品だったからな」
「3ヵ月待ちなんじゃろ?よく5日で受けてくれたな」
「簡単だ、買収しただけだ」
「買収?」
「そうだ、私はその話をしにきたんだ」


 ミントが灰皿に煙草を押し付けて話し始める。


「発明品は作っておいた。後払いの分を支払ってもらおう」
「分かってるよ」


 俺は懐から紙を数束取り出してミントに手渡す。ミントはパラパラとめくると満足そうにアイテムボックスに紙束を仕舞う。


「取引成立だ。後くれぐれも────」
「ラミスさんには内緒なんだよな?分かってるって」
「それならいい」


 アイテムボックスに紙束を仕舞った瞬間、奥からラミスが飲み物をもって現れた。


「お待たせしました。コーヒーでよかったですか?えーっと……」
「フランじゃ、コーヒーでよい。この子はノエル」
「よろしくおねがいします」
「よろしくね、ノエルちゃんはココアでいい?」
「うん!ありがとうございます」
「お礼が言えて偉いね」


 にこやかな表情でノエルの前にココアを置く。そして、ミントに気が付くとラミスが目を剥いて驚く。


「ミント!?発明室にいたんじゃないの!?」
「いや……その……たまにはクライアントに合わないといけないと思って?」
「なんで疑問形なの」


 ごまかすように煙草を吸い始めるミント。そんなミントを何かを探るような目で見つめるラミス。


「ミント、何か隠してない?」
「……隠してない」
「ほんとぉ?」


 顔を背けるミントの顔を覗き込むラミス。


「ミント、こっち見て?」
「………………断る」
「ミント?」


 ラミスがミントを見る目が更に鋭くなる。そんな二人の様子を見たフランから念話が届いた。


『状況が分からん。説明してもらえるか?』
『ミントは見ての通り発明にしか興味が無い奴だ。金なんて興味ないほどな』
『それの何がいけない?』
『興味なさ過ぎて研究所が破産寸前なんだよ』


 俺の説明にフランが首を傾げる。


『3ヵ月待ちに成る程人気なんじゃろ?なぜ破産する?』
『金の管理が適当すぎるんだよ。部品を買うときなんか値段も見ずにいい物を買おうとするから予算オーバーになりがちらしい。だからお金のことはラミスさんが管理している』
『それは苦労しておるのう』
『しかも理由はそれだけじゃない』
『まだあるのか』


 フランが呆れたように言う。


『最大の理由は、面白そうな依頼はどれだけ安くても受けてしまう所だ』
『それはラミスにとって頭が痛い話じゃな』
『今回もラミスさんがお金にならない依頼を受けたんじゃないか疑っているって訳だ』
『もしかして、さっきお主が渡しておったのも?』
『地球にあるものをこの世界仕様にカスタマイズした設計図だ』


 この研究所に来た時に前金として数枚の設計図を渡し、残りは後払いとして渡すという契約(ラミスには内緒)を交わした。ミントの奴、即答で受けてたな。
 俺が説明をしている間にもラミスの尋問は続いている。


「ミント?本当に何も隠してない?」
「……隠してない」


 ラミスの目が肉食獣のようにキラリと光る。ダメだ、これ以上尋問されるとミントが何を言うか分かったものじゃない。助け舟を出そう。


「ラミスさん、少しいいですか?」
「なんですか!?」


 鋭い目を俺に向けてくるラミス。俺は怯まず顔に笑顔で話を続ける。


「すみません、俺がどうしても早くほしいと無理を言ってしまって」
「本当ですか?また安い料金で契約していませんか?」
「本当ですよ、料金は今払いますね」


 俺は金貨が詰まった袋を取り出してラミスに渡す。ラミスは疑いながらも袋の中を確認する。


「……え!?本当にこれだけの料金を!?」
「ええ、通常の5倍の料金をお支払いします」
「でもお金でミントが動くとは思わないけど?他に何も貰ってないの?」
「勿論、珍しい設計図を渡しましたよ。ですが、お金も稼いでますし大目に見てくれませんか?」
「……はぁ、仕方ないわね」


 ラミスがため息を吐く。そして、ミントに向き直る子供に言い聞かせるように話す。


「何度も言ってるけど、契約するときは私に話を通してよね」
「善処しよう」
「善処じゃなくて絶対しなさい!」
「あ、ああ……」


 何とかなったようだ。良かった良かった。
 落ち着いたところで発明品に話に戻そう。


「分かっていただけましたら、発明品を持ってきてもらっていいですか?」
「そうでしたね、ごめんなさい。今持ってきますね」


 そう言うと、ラミスは奥へ発明品を取りに行った。ラミスの姿が見えなくなるとミントは大きく息を吐く。


「ホウリ、助かった」
「気にするな。下手したら発明品を受け取れない可能性があったからやっただけだ」
「それでも助かった。あいつが怒るとかなり怖いんだ」
「ミントがもう少しちゃんとすればいい話だろうが」


 ごまかすように煙草を吸うミント。何か言われるとすぐこれだ。
 意味もなく駄弁っていると、奥から発明品を持ったラミスが戻ってきた。


「はい、こちらが依頼を受けていた発明品です。お確かめください」
「ありがとうございます」


 俺は一つ一つ発明品を確かめる。俺のは……問題ないな。ロワのも……問題なし。
 一つ一つを丁寧に調べ問題が無いことを確認し袋に詰める。その様子をフランとノエルが興味深そうに見てくる。


「これが発明品か」
「何に使うの?」
「使い方は後で説明する」


 この発明品は本当に重要だ。これが有ると無いとでは勝率が違ってくる。
 

「……全て問題ないな」
「じゃあこれでいいな?俺は研究所に戻るから」


 そう言うとミントは研究所の奥へと引っ込んでいった。


「あっ!ミント!……もう、相変わらず研究にしか興味ないんだから」
「ラミスさんも大変ですね」
「そうね。でも楽しいことも多いわよ?」


 ラミスは大変そうにしながらも楽しそうに笑う。ミントとラミスは信頼しあっているみたいだな。


「さてと、そろそろ行くか」
「そうじゃな」


 俺たちは発明品を持って研究所の入口に向かう。そんな俺達をラミスは笑顔で送り出す。


「ご利用ありがとうございました。また来てくださいね」
「はい、また来ます」


 そうして俺たちはロワとミエルが待っている広場へと向かうのであった。
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