魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第百六話 見つかったぁ……

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 ノエルが誘拐された後、悪い人たちはホウリお兄ちゃんやフランお姉ちゃんたちが捕まえて、事件は終わった。
 そして次の日のお昼、いつも通りの日常に戻ったノエルは……


「……はぁはぁ」


 お城の中で追いかけられていた。壁の陰に隠れながら追手がいないか確認する。人が全くいない所に逃げてきたし、どうやら追いかけてきてないみたい。
 ノエルが胸を撫でおろしていると、後ろから肩を叩かれた。


「ひゃい!?」
≪ノエルさん?どうしたのですか?≫


 驚いたノエルが後ろを振り向くと、心配そうな顔をしたアルモンドさんがいた。追手じゃない事に安心して心配そうな顔をしているアルモンドさんに笑いかける。


≪ごめんなさい、追われててびっくりしちゃって≫
≪もしかして、昨日の人たちにまだ追われて……≫
≪ううん、昨日の人たちは皆フランお姉ちゃん達が捕まえたんだって≫
≪そうでしたか≫


 アルモンドさんが安心した表情に変わる。


≪そういえば、フランお姉ちゃんに呼ばれてたよね?やっぱり何か言われたの?≫
≪ノエルさんを敵に引き渡そうとしたので、流石にお咎めなしには出来ないと言われまして。3か月間の謹慎処分になりました≫
≪そっか≫


 マカダ君の為だから仕方ないと思うんだけどなぁ。


≪ノエルからフランお姉ちゃんにマカダ君の事を言ったほうがいい?≫


 ノエルの言葉にアルモンドさんが全力で首を振る。


≪いえいえ、息子の事は魔王様も知っておりました≫
≪なのに罰があるの?≫
≪本来であれば死罪になっても可笑しくない所を謹慎処分ですんでいるのです。魔王様には感謝しかありません≫
≪そうなのかな?≫


 ノエルが納得していないのが分かったのか、アルモンドさんが手を口に当てながら笑う。


≪敵に協力をしてもお咎めなしでは他の人たちに示しが付きませんからね。私はこれで良いのです≫
≪アルモンドさんがそう言うなら……≫


 アルモンドさんと楽しく話していると、後ろからとんでもない量の殺気を感じた。
 ノエルが冷や汗を流しながら振り向くと、フードを被った追手がいた。顔は見えないけど、昨日の悪い人達が可愛く見えるほどの殺気をまき散らしながら歩いてくる。


≪に、逃げるよ!≫
≪え!?ノエルさん!?≫


 アルモンドさんの手を引いて通路の中を走る。


≪あの人何者なんですか!?≫
≪詳しい説明は後!今は逃げよう!≫


 逃げながら振り向くと、追手がもの凄い勢いで迫って来た。正直、森で魔物に襲われた時よりも怖い。必ず逃げ切らないと……。


≪でもこのままだと捕まってしまいますよ。どうすれば……≫
≪大丈夫、しっかり捕まっててね≫


 そう言って、ノエルはアルモンドさんをおんぶする。


≪何を……≫
≪いっくよー!≫


 戸惑っているアルモンドさんをおんぶしながら窓に向かって走る。その様子をみたアルモンドさんが顔を青くする。


≪もしかして……≫
≪とりゃー!≫


 窓を蹴破って外に飛び出す。浮遊感を感じながら、ノエル達は地面へと落下していく。4階だから大体の落下時間は……


≪きゃああああ!≫


 後ろにいるアルモンドさんの悲鳴を聞きながら、ノエルはラッカまでの時間を考える。
 ……ここだ!


≪魔装!≫


 魔装でダメージを抑えながら、痛みをセイントヒールで和らげる。これですぐに走れる。
 衝撃で地面にめり込んだ足を引き抜いて上を向いてみる。


≪こ、ここまで来れば追って来れませんよね?≫
≪だと良いんだけどね≫


 ノエルの予想通り、追手はなんのためらいもなくノエルと同じ窓から飛び出した。


≪やっぱりね!≫


 音もなく着地する追手から逃げる為に、ノエルはアルモンドさんをおんぶしながらお城のお庭を走り出す。


≪なんで4階の高さから落ちて平気なんですか!?≫
≪ノエルも分かんない!≫


 魔装を使いながら追手と距離を離そうと試みる。魔装を使えば追手はノエルよりも遅い。けど、走る位置取りとかが上手で思ったように距離を離せない。
 ノエルの魔装も長くは持たない。けど、攻撃するわけにもいかない。というか、極力近付きたくない。
 なんとかして足止めしてどこかに隠れないと。


≪ちょっとノエルさん早すぎ!≫
≪これぐらいしないと追いつかれちゃうんだからしょうがないよ!≫


 庭にある花の生垣を飛び越えながらどうするか考える。すると、花の生垣にある、とあるものが目に留まった。


≪これだ!≫


 ノエルはとあるもの……キビシの花の実を取る。キビシの実は綺麗な正四面体をしていて結構硬い。
 ノエルの手にあるキビシの実を見たアルモンドさんは首を傾げた。


≪何に使うんですか?≫
≪ふっふっふ、こう使うんだよ!≫


 ノエルが後ろに向かってキビシの実を投げる。キビシの実は地面に落ちると尖った所を上に向けた。


≪実を踏んだら痛いでしょ?これで少しでも足止め出来たら……≫
≪なるほど≫


 様子を見る為に後ろから迫って来る追手へ視線を向ける。
 すると、実と実の間を上手く踏んで速度を緩めずに迫って来ていた。足止めにすらなってないよ!
 あきらめずに複製でキビシの実を増やして地面に撒くけど、やっぱり効果が無い。このままだと魔装が切れて追いつかれちゃう。


≪どどどどうするんですか!このままだと捕まっちゃいますよ!≫
≪むー、こうなったらさっきと逆の事をするしかない!≫
≪逆?それってどういう……≫


 アルモンドさんの言葉を聞いてる余裕もなく、ノエルはお城の壁に向かって走り出す。
 ノエルが何をやるか察したのか、アルモンドさんの顔が再び青くなる。


≪まさか……≫
≪さっきよりしっかり捕まっててね!≫


 助走をつけて腰を足を深く曲げる。そして、MPを足に集中させると、そのまま空に向かってジャンプする。


≪きゃあああああ!!≫


 またアルモンドさんの悲鳴を聞きながらお城の屋根に着地する。衝撃で屋根が少し壊れちゃったけど、いいよね。


≪こ、この建物5回建てだよ!?なんて無茶するの!?≫
≪だってあのままだと、追いつかれちゃうんだもん≫
≪それはそうだけど……≫


 魔装が切れたノエルはおんぶしていたアルモンドさんを傾斜が付いた屋根に降ろす。


≪けど、流石にここまで来たら大丈夫だよね?≫


 ノエルが胸を撫でおろしていると、アルモンドさんが顔を引きつらせながらノエルの後ろを指さしていた。


≪どうしたの?≫
≪ノエルさん……あ、あれ……≫
≪どれ?≫


 ノエルが後ろを向くと、そこには屋根に這い上がって来る追手の姿があった。


≪嘘……でしょ?≫
≪どどどうするんですか!≫
≪逃げる!≫


 魔装が切れたノエルはアルモンドさんの手を引いて屋根の上を走る。傾斜が付いているし魔装も切れちゃったから、さっきよりも早く走れない。それに比べて、追手は地面とあまり変わらない速さでノエル達に迫って来た。


≪ノエルさん!≫
≪大丈夫!こっち!≫


 ノエルは走るのを止めて、屋根を触ってあるものを探す。


≪確かこの辺りに……≫
≪ノエルさん、何を探しているんですか?≫
≪この辺りに出口が……あった!≫


 屋根の目立たない所に手が入る程の隙間を見つける。隙間に手を入れて持ち上げると、人が1人入るくらいの大きさの通路が下に伸びていた。梯子があるからここから下に行ける。


≪アルモンドさん、早く行って!≫
≪は、はい!≫


 アルモンドさんが梯子を掴み、通路を降りていく。ノエルも梯子を使って通路に入った後、出口を閉めて、内側から鍵を掛ける。外側から鍵を開ける事は出来ないし、これで逃げ切ったと言ってもいいんじゃないかな?
 ノエルは逃げ切った事に安心して梯子を下りようとする。すると、外側からカチャカチャという音が聞こえてきた。なんの音だろう?まるで何かを開けるような……。あ!そういう事か!
 ノエルは梯子を3段飛ばしで降りる。ほとんど落下しているような感じだけど、セイントヒールがあれば全く痛くない。フランお姉ちゃんに見られたら危険だからやめるように言われちゃうと思うけど。
 爆速で梯子を下り切ると、屋根裏にある窓が無く薄暗い物置きだった。埃っぽくて最近は誰も使っていないのが分かる。物置には箱とか布が掛けられている荷物がいっぱいある。
 物置きの中心ではランプで明かりを確保したアルモンドさんがノエルを待っていた。


≪どうなりましたか?≫
≪鍵を掛けたよ。外からは鍵を開けられないからこれで逃げ切った──≫
≪そうなんですね、これで追われることも……≫
≪───と思ったんだけど、どういう訳か外から鍵を開けようとしているみたい≫
≪へ?外から鍵は開けられないんですよね?≫
≪方法は分からないけど、このままだとすぐに来ちゃう≫
≪だったらすぐに逃げないと!≫


 屋根裏から逃げようとするアルモンドさんをノエルは手で制する。


≪どうしたんですか!?早くしないと!?≫
≪このまま逃げても追いつかれちゃう。だったら……≫


 ノエルは出口を開けると、物置にある布をめくる。


≪出口を開けてこの布の中に隠れる。そしたら、追手はノエルたちが出ていったと思って屋根裏から出ていく。追手が遠くに行ったらここから逃げて別の所に隠れる≫
≪なるほど!その手がありましたか≫
≪そうと決まったら早速隠れよう。早く早く≫


 もうそろそろ追手が来る筈。早くしないと隠れる所を見られちゃう。
 物置の隅にある目立たない所の布の中に、ノエルたちは隠れる。ノエル達が布の中に隠れた瞬間、梯子から追手が降りてきた。
 布に空いていた穴から追手の様子を伺って、布から出る機会を計る。
 だけど、ノエルの考えとは裏腹に追手は真っすぐノエルたちの方向へと向かってきた。そして、布を取り払うと、ノエルの腕と足をで縛り付けて脇に抱えた。
 あまりの手際に、ノエルは抵抗できずに捕まってしまう。


≪ノエルさん!≫


 ノエルが捕まったのを見たアルモンドさんは、追手にしがみ付きながら涙ながらにノエルを取り戻そうとする。


≪ノエルさんを返して!2回もノエルさんを奪われたら、私は……私は…………≫
≪……アルモンド、俺だよ≫
≪へ?≫


 聞き覚えのある声を聴いて、アルモンドさんが手の力を緩める。すると、追手……ホウリお兄ちゃんはフードを取って正体を現した。


≪え?ホウリさん?なんで?≫
≪ノエルが俺のスイーツを無断で食いやがってな。逃げたから追いかけた訳だ≫
≪あの殺気は?≫
≪楽しみにしてたスイーツを無断で食われたんだぞ?あのくらいは殺気が漏れるだろ?≫
≪それはどうかな……?≫


 ホウリお兄ちゃんの答えに笑いながら首を傾げるアルモンドさん。


≪その恰好は?≫
≪昨日、ノエルを攫った時の組織とは別の組織に潜入してた。で、壊滅させた後に戻ってきたらノエルが俺のスイーツを食ってた訳だ≫
≪ホウリお兄ちゃんのだって分からなかったんだもん!≫
≪フィルムに名前が書いてあった筈だが?でかでかと、赤色の文字で≫
≪えーっと……≫


 どうしよう、ホウリお兄ちゃんをごまかせる気がしない。
 この状況をどうにかしようと考えているとアルモンドさんが優しく頭を撫でてきた。


≪ノエルさん、なんでホウリさんが怒っているか分かる?≫
≪……勝手にスイーツを食べたから?≫
≪それもあると思う。けどね、一番はノエルちゃんが謝らなかったからじゃない?≫
≪…………≫


 ノエルの頭を撫でながらアルモンドさんは続ける。


≪悪い事をしたらごめんなさいをする。それをしなかったからホウリさんは怒って追いかけてきたんじゃないかな?≫
≪……そうかも≫


 ノエルは顔を上げてホウリお兄ちゃんを見る。ホウリお兄ちゃんは怒った表情のまま、首を軽く縦に振る。


≪俺は非を認めて反省する奴にはそれ相応の態度で接する。だが、悪い事をして謝るどころか逃げる奴には厳しく接する。ノエルはどっちだ?≫
≪……ごめんなさい≫


 ノエルはこの日初めてホウリお兄ちゃんに謝る。すると、ホウリお兄ちゃんは満足そうに頷いた。そして、ホウリお兄ちゃんの殺気がどんどんとしぼんでいく。


≪少し遅いがそれでいい。次からは逃げずに謝るんだぞ≫
≪はーい……≫
≪この話はこれでおしまいだ。次のやらかしの話に移るぞ≫
≪次のやらかし?≫



 ホウリお兄ちゃんの殺気がどんどんと大きくなっていった。
 震える体を抑えながら、なんとか言葉を出す。


≪ま、まだなにかあるの?≫
≪あるに決まってんだろ。俺から逃げるときに何したか言ってみろ≫
≪何をしたか?≫


 首を傾げるノエルの代わりにアルモンドさんが指を折りながら答える。


≪えーっと、窓を破壊して庭に飛び降りて、生垣にある花の実を庭にばらまいて、屋根を壊したね≫
≪その前にも煙幕の為に小麦粉を撒いたり、足止めの為に彫像を倒したりしたな?どれだけ城に迷惑かけたと思ってるんだ?≫
≪……あ≫


 ホウリお兄ちゃんから逃げるのに必死でそこまで考えが回らなかった。


≪ご、ごめんなさい……≫
≪こればっかりは謝って済む問題じゃねえな?城ごと迷惑をかけてるんだから、それ相応の罰を受けて貰う。覚悟しとけよ?≫
≪い、いやだー!≫


 今まで受けた罰を思い返して、ホウリお兄ちゃんから逃げようともがく。だけど、ホウリお兄ちゃんにがっちり抱えられて逃がられない。


≪アルモンドさん!助けて!≫
≪悪い事をしたら罰を受けないとダメなんだよ?しっかり反省してきなさい≫
≪のおおおおお!≫


 頼りのアルモンドさんの言葉にノエルは絶望する。
 ホウリお兄ちゃんは物置から出てノエルを抱えたまま廊下を歩く。


≪まずは百マス計算50枚からだ。全部終わるまで部屋から出られると思うなよ?≫
≪いやー!≫


 手を振るアルモンドさんに見送られながらノエルはホウリお兄ちゃんに連行されるのだった。
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