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第百八話 敗北者じゃけえ
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魔国に来て2か月、俺は今までの報告書をフランに提出していた。
「……当初よりも7割の削減か。短期間でよくぞここまでやった」
「思ったよりも時間がかからなかったな。お前の方はどうだ?」
「わしもほぼ終わった。後数日はかかるじゃろうがな」
フランが疲れ切った表情で話す。2か月働き詰めは肉体にも精神にもキツイだろう。
「どこか行きたい所はあるか?労いって訳じゃないが、行きたいところに連れてってやるぞ?」
「考えておこう」
書類を渡して執務室から出る。
さて、魔国でやるべき事は終わったし、スイーツでも食いながら情報収集でもするか。
久々の自由時間に心躍らせながら廊下を進む。すると、廊下の角を覗き込んでいる奴がいた。間違いない、弓部隊のエースのペイトだ。
≪ようペイト。どうしたんだ?≫
≪……ホウリか≫
ペイトは俺を一瞥した後に視線を戻す。
俺もペイトと同じように角を覗き込んでみる。そこには親しそうにミエルと話すロワの姿があった。
≪ロワが気になるのか?≫
≪うん≫
即答か。ペイトがロワを好きなのは知っていたが、相当惚れこんでるな。
≪告白しないのか?≫
≪出ていく前には。……そうだ≫
ペイトはロワへの視線を俺に向け直す。
≪ホウリ、1つお願いがあるんだけど≫
≪なんだ?≫
≪私をスターダストに入れて欲しい≫
予想していた通りの言葉だった。ペイトの目を見るに本気なんだろう。
≪お前が本気という事は分かってる≫
≪じゃあ……≫
≪だがダメだ≫
俺の言葉に鋭いペイトの目が更に鋭くなる。
≪なんでダメなの?あの女がいるから?ロワが理由だから?≫
≪もっとシンプルな理由だ≫
≪何よ?≫
≪お前が弱いからだ≫
瞬間、ペイトが物凄い形相で俺に掴みかかって来る。俺を壁に叩きつけられながらペイトは叫ぶ。
≪私が弱いだと!?弓部隊エースのこの私がか!?≫
≪ロワに勝てない時点で力不足だ。弓だと厳しいかもしれないが、それを差し引いてもお前は弱い≫
≪取り消しなさい……今の言葉!≫
ペイトの俺を締め上げる力が強くなる。しょうがないな。
俺はペイトの目の前で手を打ち付ける。そして、大きな音でペイトが怯んだ隙に手を外して、捻り上げて床に組み伏せる。
≪……くっ、離せ!≫
俺の手から逃れようと藻掻く。
こうなると、断っても無理やりついてくるかもしれない。
≪そこまで言うならチャンスをやる≫
≪チャンス?≫
俺を睨みつけながらペイトが言う。仕方ない事だが嫌われてるな。
≪俺と戦って10分以内に一撃でも当てれば加入を認めよう≫
≪そんな事で良いのか?≫
≪ああ、『そんな事』が出来るんなら加入を認める。ただし、負けたら以降、スターダストには入れない.
それでいいならチャンスをやるがどうだ?≫
≪分かった。それでいい≫
≪スターダストを全員連れてくるから、戦場に先に行っててくれ≫
解放されたペイトが鋭い視線のまま廊下を歩いていく。ペイトが見えなくなったのを確認して、角の向こうにいたロワとミエルに声を掛ける。
「ようロワ、ミエル。今暇か?」
「僕は暇ですよ」
「私も特訓の時間までは時間があるな。何か企んでるのか?」
「ミエルはもう少し俺を信じてくれても良いと思うけどな?」
さっきのペイトとのやり取りをロワとミエルに伝える。
「へえ、ペイトさんってスターダストに入りたいんですね。ペイトさんならう条件で入れてもいいのでは?」
「こう言っちゃなんだが、ペイトは実力が不足している。そういう奴が入っても足手まといにしかならない」
「そんな事無いと思いますけどね?」
「神級スキルと神の使い、世界最強の魔王に俺。普通の奴がここに並べると思うか?」
「まあ、それはその……」
「ロワ、ホウリがそう判断したのであれば従おう。こいつの性格は悪いが、判断能力は信用できる」
「誉めるか貶すかどっちかにしろ」
「性格の悪さは世界一だ」
「やっぱ誉めも混ぜてくれない?」
2人に話を付けて、その後にフランとノエルとも話す。
さて、久々に戦うとするか。
☆ ☆ ☆ ☆
数分後、俺は戦場の真ん中で戦闘の準備を進めていた。
周りにはスターダストのメンバーだけでなく、兵士たちも数多く見学している。別に秘密にしている訳じゃないが、それにしても多すぎないか?兵士のほとんどがいるじゃねえか。
そんな兵士たちの中にペイトはいた。兵士の皆はペイトが心配なのか、しきりに話しかけている。
≪相手はホウリだ。ペイト、大丈夫か?≫
≪ええ、1分でケリを付けてくるわ≫
≪油断するなよ。相手はあのホウリだ。何をしてくるか分からないぞ≫
≪大丈夫よ。サクッと勝ってくるわ≫
≪でも、相手はあのホウリだぜ?魔物を召喚しても可笑しくない≫
≪フィールドに何か仕掛けられているかもよ?≫
≪もしかしたら、あいつはホウリじゃなくて、ホウリに化けた誰かかもしれないぜ?≫
あいつらの俺に対する評価どうなってるんだ?
心配そうな仲間たちにペイトは自信満々に話す。
≪いくらホウリでもそんな事しないでしょ≫
≪本当か?何かポケットの中に仕込まれていないか?≫
≪そんな訳……何これ?≫
冗談交じりにペイトはポケットをまさぐると、小さな球を取り出した。
不思議そうに球を眺めている、1人の兵士が目を丸くして球を奪う。
≪これ小型爆弾じゃねえか!≫
≪え?そんなのいつ仕込んだのよ?≫
≪分からねえが、ホウリなら一瞬で仕込んでいても可笑しくねえ!≫
ちっ、バレたか。試合開始と同時に起爆してゲームセットを狙ったんだがな。
≪ホウリはこういう奴だ。絶対に油断するなよ≫
≪……分かってるわよ≫
ペイトが両頬をペチンと叩いて気合を入れる。
≪よし!行ってきます!≫
≪行ってこい!≫
≪必ず勝ってきなさいよ!≫
≪ありがとうみんな!≫
右手を上にあげて皆からの声援に答えるペイト。
そして、定位置に着くと弓と矢筒をアイテムボックスから取り出して装備する。
戦う準備が出来たペイトは呆れた様子で俺に話しかけてきた。
≪あなた、いつもあんな手を使っているの?≫
≪まあな。スターダストの面々と戦う時もこんな感じだ≫
≪自信満々にいう事じゃないでしょ。まあ、小細工する奴の実力なんて大したことないわ。この勝負私の勝ちよ≫
そこまで言うと、ペイト大きく深呼吸して目を鋭くした。戦闘スイッチが入ったみたいだ。
俺も手に手甲を付けて新月を腰に差す。これで俺も戦闘準備完了だ。
フランに合図に軽く手を振って合図をする。すると、フランは戦場に入って俺たちの間に立つ。
≪これより、ホウリとペイトの試合を始める。ホウリにダメージを与えられればペイトの勝利、ダメージを受けずに10分経過し、タイマーが鳴った場合はホウリの勝利。ペイトが勝った場合はスターダストへ加入、負けた場合は今後スターダストへ加入する権利をはく奪する。この試合の結果は魔王の権限により聖戦と同じ扱いとあする。両者、異論はないか≫
≪ないわ≫
≪ない≫
俺たちの合意を確認すると、フランは戦場から出ていく。
≪合意を確認したため、これより試合を開始する。両者、構え!≫
ペイトが矢筒から矢を取り出して弓に番える。対して俺は、構えずにペイトを見据えている。
≪それでは試合開始ぃぃぃぃ!≫
フランの合図と共にペイトが俺に矢を放つ。俺は手甲で矢を弾いてペイトとの距離を詰める。
ペイトは何本も俺に矢を放つが、俺は全てかわすか弾くかして無力化する。
≪だったら……≫
ペイトは矢筒から矢を取り出し、さっきと同じように放つ。……甘いなぁ。
俺は手甲で受けずにパチンコを矢に向かって弾く。すると、パチンコと矢が当たった瞬間に矢が爆発し、辺りに黒い煙が漂った。
ロワも使っていた爆弾矢だ。手甲で受けるか、至近距離でかわしていたらダメージを受けていただろう。
俺はそのまま煙の中に突っ込み、ペイトとの距離を詰める。
≪な!?≫
煙の外からペイトの驚愕する声が聞こえる。だが、すぐに持ち直して矢を放ってくる気配を感じた。流石エース、切り替えが早い。
俺は煙の中で矢をかわしながら、距離を詰める速度を速める。
≪もう!なんなのよ!≫
煙の中から現れた俺を見て。ペイトが忌々しそうにする。
ペイトとの距離はおよそ10m、もう少しでペイトを射程内に抑えることが出来る。
≪くっ!≫
ペイトは矢を放つが、俺は全て回避するか弾き無効化する。
そのままペイトとの距離を詰めて、新月の射程に入る。俺は腰の新月を抜いてそのまま……
≪はあ!≫
背後から迫っていた矢を叩き落とした。
ペイトは弓専用のスキルである『ディメンション』を使って、回避された矢を俺の背後に出現させた。俺はそれを読んで、全部叩き落した訳だ。
俺は矢を叩き落とした太刀筋のまま、ペイトの腹に新月を叩き込む。
≪ぐはっ!≫
並みの弓使いならこのまま手も足も出ないだろうが、ペイトは新月を腹に受けながら後ろに飛び、俺と距離を取った。それにより、新月の射程からは外れてしまった。
≪本当にやりにくい相手ね≫
腹を抑えながらもまだ戦意を喪失していない表情のペイト。
≪まだ手はあるわよ≫
そう言うと、ペイトは弓に矢を3本番えて放つ。すると、それぞれの矢は先端から避けていき、5本に分裂した。ラガルトの奴が使っていたクラウドショットだ。
そして、それぞれの矢の前と俺の周りに黒い穴が出現した。
≪これが私の全力よ!≫
計15本の矢が四方八方から放たれる。これだったら、避けにくくなるし準備の隙も少ない。手放しに誉めてもいい位の秀逸な攻撃だ。
俺はそう思いながら前に1歩、右に2歩進む。瞬間、黒い穴から一斉に矢が放たれた。
しかし、矢は全て俺に紙一重で当たらず通り過ぎていく。ディメンションは優秀なスキルだが、射線が分かりやすいという弱点がある。
そのため、穴が出現した瞬間に矢が通らない位置を割り出す事も出来る。もう少し矢を増やせたら話は変わって来るが、流石に15本は少ない。
動かずに全て避けられたことが信じられないのか、目を見開くペイト。しかし、すぐに気を取り直して、矢筒へと手を伸ばす。だが、
≪な!?≫
矢筒の中に矢は入って無かった。
矢筒の中にはたっぷりの矢が入っていた。こんなに早くに無くなる筈がない。そう思ったのか、ペイトは背負っている矢筒に視線を向ける。
≪よそ見してていいのか?≫
その隙に雷装を使って一気に距離を詰める。
≪しま───≫
俺はペイトの腕を取ると廊下の時と同じように捻り上げる。そのまま弓を落とすと、ペイトを組み伏せて手を縄で縛る。
念の為、足も縛ったところで俺はペイトから離れる。
勝利条件は10分経過だ。ここで爆弾による自爆とかでダメージを受ける可能性を考えると、離れた位置からペイトを見張る方がいいだろう。多分、杞憂に終わると思うが警戒するに越したことはない。
俺の予想通りペイトは脱出しようと藻掻いているが、自爆と言った他の攻撃手段をする気配はない。
ペイトは体をモゾモゾと動かしながら俺を睨みつける。
≪くっ!なんで矢が無くなっていたのよ!あんた何したの!≫
≪悪いが、試合中に自分の手を説明する程お人よしじゃなくてな≫
俺の言葉にペイトが悔しそうに唇を噛む。
何が起こったのか説明しよう。まず、ワイヤー発射装置でこっそり矢筒へ矢を飛ばす。次にMP操作でワイヤーを操作して矢に巻き付ける。最後に矢をこっそり矢筒から抜き取る。これを繰り返して矢筒から矢を地面にこっそりと落とした訳だ。
そんな事も知らないペイトは悔しさでジタバタする。
≪むううう……≫
≪俺と戦ってみてどうだ?≫
≪……あんた以外が相手だったら勝ってたわよ≫
この勝負の負けは認めたみたいだが、ある意味では負けを認めきれてないみたいだ。負けん気が強いというか、諦めが悪いというか。
≪言っておくが、相手が俺だったから負けた訳じゃないからな?≫
≪どういう意味よ≫
≪ロワとミエルには矢じゃダメージ通らないし、ノエルは魔装で一瞬のうちに距離を詰めてくる。フランは言わずもがなだ≫
≪…………≫
≪お前が入ろうとしているパーティーはそういう奴らの集まりだ。更に言えばペイトがやっている事はロワでも出来る。言い方は悪いがあえて言うと、ペイトはロワの劣化でしかない。パーティーに入れるメリットは無いんだよ≫
≪…………≫
かなりきつい言い方になったが、ペイトの性格からしてハッキリ言わないと分かってくれないだろう。
というか、縛った女性の前でこんな事言うとか、傍から見たらかなり最悪じゃないか?
……この会話は俺とペイトにしか聞こえないからセーフ。
俺の言葉を聞いたペイトは俯きながら答える。
≪……分かった、スターダストに入るのは諦める≫
≪分かってくれればいい≫
ペイトの言葉を聞いた俺は妙な引っ掛かりを感じた。
やけに素直過ぎる。ペイトの言動から考えるにこんなにあっさり引くとは思えない。
俺が考えをまとめていると、セットしていたタイマーが鳴り響く。
≪勝者!ホウリ!≫
フランが勝者を告げると、兵士達から溜息が漏れる。
≪あーあ、勝てなかったか≫
≪ホウリが相手にしては上手くいってた方なんじゃないか?≫
≪そうね、落ち込む結果じゃないわよね。皆で慰めてあげましょ≫
俺は縄を解いてペイトを開放する。すると、ペイトは兵士達の方ではなくスターダストのメンバーの方へと向かっていった。……なるほど、そういう事か。
やって来たペイトに対して、ロワは笑顔で話しかける。
「ペイトさん、お疲れさまでした。負けちゃいましたけど、前よりも強くなってましたよ」
「ロワや、人語で通じる訳ないじゃろ」
「そうでしたね。えーっと≪お疲れ様。とっても良かったよ≫」
笑顔で労いを掛けるロワにペイトは真っすぐ、しっかりとした口調でこう言った。
「ロワ、私と結婚して」
「……当初よりも7割の削減か。短期間でよくぞここまでやった」
「思ったよりも時間がかからなかったな。お前の方はどうだ?」
「わしもほぼ終わった。後数日はかかるじゃろうがな」
フランが疲れ切った表情で話す。2か月働き詰めは肉体にも精神にもキツイだろう。
「どこか行きたい所はあるか?労いって訳じゃないが、行きたいところに連れてってやるぞ?」
「考えておこう」
書類を渡して執務室から出る。
さて、魔国でやるべき事は終わったし、スイーツでも食いながら情報収集でもするか。
久々の自由時間に心躍らせながら廊下を進む。すると、廊下の角を覗き込んでいる奴がいた。間違いない、弓部隊のエースのペイトだ。
≪ようペイト。どうしたんだ?≫
≪……ホウリか≫
ペイトは俺を一瞥した後に視線を戻す。
俺もペイトと同じように角を覗き込んでみる。そこには親しそうにミエルと話すロワの姿があった。
≪ロワが気になるのか?≫
≪うん≫
即答か。ペイトがロワを好きなのは知っていたが、相当惚れこんでるな。
≪告白しないのか?≫
≪出ていく前には。……そうだ≫
ペイトはロワへの視線を俺に向け直す。
≪ホウリ、1つお願いがあるんだけど≫
≪なんだ?≫
≪私をスターダストに入れて欲しい≫
予想していた通りの言葉だった。ペイトの目を見るに本気なんだろう。
≪お前が本気という事は分かってる≫
≪じゃあ……≫
≪だがダメだ≫
俺の言葉に鋭いペイトの目が更に鋭くなる。
≪なんでダメなの?あの女がいるから?ロワが理由だから?≫
≪もっとシンプルな理由だ≫
≪何よ?≫
≪お前が弱いからだ≫
瞬間、ペイトが物凄い形相で俺に掴みかかって来る。俺を壁に叩きつけられながらペイトは叫ぶ。
≪私が弱いだと!?弓部隊エースのこの私がか!?≫
≪ロワに勝てない時点で力不足だ。弓だと厳しいかもしれないが、それを差し引いてもお前は弱い≫
≪取り消しなさい……今の言葉!≫
ペイトの俺を締め上げる力が強くなる。しょうがないな。
俺はペイトの目の前で手を打ち付ける。そして、大きな音でペイトが怯んだ隙に手を外して、捻り上げて床に組み伏せる。
≪……くっ、離せ!≫
俺の手から逃れようと藻掻く。
こうなると、断っても無理やりついてくるかもしれない。
≪そこまで言うならチャンスをやる≫
≪チャンス?≫
俺を睨みつけながらペイトが言う。仕方ない事だが嫌われてるな。
≪俺と戦って10分以内に一撃でも当てれば加入を認めよう≫
≪そんな事で良いのか?≫
≪ああ、『そんな事』が出来るんなら加入を認める。ただし、負けたら以降、スターダストには入れない.
それでいいならチャンスをやるがどうだ?≫
≪分かった。それでいい≫
≪スターダストを全員連れてくるから、戦場に先に行っててくれ≫
解放されたペイトが鋭い視線のまま廊下を歩いていく。ペイトが見えなくなったのを確認して、角の向こうにいたロワとミエルに声を掛ける。
「ようロワ、ミエル。今暇か?」
「僕は暇ですよ」
「私も特訓の時間までは時間があるな。何か企んでるのか?」
「ミエルはもう少し俺を信じてくれても良いと思うけどな?」
さっきのペイトとのやり取りをロワとミエルに伝える。
「へえ、ペイトさんってスターダストに入りたいんですね。ペイトさんならう条件で入れてもいいのでは?」
「こう言っちゃなんだが、ペイトは実力が不足している。そういう奴が入っても足手まといにしかならない」
「そんな事無いと思いますけどね?」
「神級スキルと神の使い、世界最強の魔王に俺。普通の奴がここに並べると思うか?」
「まあ、それはその……」
「ロワ、ホウリがそう判断したのであれば従おう。こいつの性格は悪いが、判断能力は信用できる」
「誉めるか貶すかどっちかにしろ」
「性格の悪さは世界一だ」
「やっぱ誉めも混ぜてくれない?」
2人に話を付けて、その後にフランとノエルとも話す。
さて、久々に戦うとするか。
☆ ☆ ☆ ☆
数分後、俺は戦場の真ん中で戦闘の準備を進めていた。
周りにはスターダストのメンバーだけでなく、兵士たちも数多く見学している。別に秘密にしている訳じゃないが、それにしても多すぎないか?兵士のほとんどがいるじゃねえか。
そんな兵士たちの中にペイトはいた。兵士の皆はペイトが心配なのか、しきりに話しかけている。
≪相手はホウリだ。ペイト、大丈夫か?≫
≪ええ、1分でケリを付けてくるわ≫
≪油断するなよ。相手はあのホウリだ。何をしてくるか分からないぞ≫
≪大丈夫よ。サクッと勝ってくるわ≫
≪でも、相手はあのホウリだぜ?魔物を召喚しても可笑しくない≫
≪フィールドに何か仕掛けられているかもよ?≫
≪もしかしたら、あいつはホウリじゃなくて、ホウリに化けた誰かかもしれないぜ?≫
あいつらの俺に対する評価どうなってるんだ?
心配そうな仲間たちにペイトは自信満々に話す。
≪いくらホウリでもそんな事しないでしょ≫
≪本当か?何かポケットの中に仕込まれていないか?≫
≪そんな訳……何これ?≫
冗談交じりにペイトはポケットをまさぐると、小さな球を取り出した。
不思議そうに球を眺めている、1人の兵士が目を丸くして球を奪う。
≪これ小型爆弾じゃねえか!≫
≪え?そんなのいつ仕込んだのよ?≫
≪分からねえが、ホウリなら一瞬で仕込んでいても可笑しくねえ!≫
ちっ、バレたか。試合開始と同時に起爆してゲームセットを狙ったんだがな。
≪ホウリはこういう奴だ。絶対に油断するなよ≫
≪……分かってるわよ≫
ペイトが両頬をペチンと叩いて気合を入れる。
≪よし!行ってきます!≫
≪行ってこい!≫
≪必ず勝ってきなさいよ!≫
≪ありがとうみんな!≫
右手を上にあげて皆からの声援に答えるペイト。
そして、定位置に着くと弓と矢筒をアイテムボックスから取り出して装備する。
戦う準備が出来たペイトは呆れた様子で俺に話しかけてきた。
≪あなた、いつもあんな手を使っているの?≫
≪まあな。スターダストの面々と戦う時もこんな感じだ≫
≪自信満々にいう事じゃないでしょ。まあ、小細工する奴の実力なんて大したことないわ。この勝負私の勝ちよ≫
そこまで言うと、ペイト大きく深呼吸して目を鋭くした。戦闘スイッチが入ったみたいだ。
俺も手に手甲を付けて新月を腰に差す。これで俺も戦闘準備完了だ。
フランに合図に軽く手を振って合図をする。すると、フランは戦場に入って俺たちの間に立つ。
≪これより、ホウリとペイトの試合を始める。ホウリにダメージを与えられればペイトの勝利、ダメージを受けずに10分経過し、タイマーが鳴った場合はホウリの勝利。ペイトが勝った場合はスターダストへ加入、負けた場合は今後スターダストへ加入する権利をはく奪する。この試合の結果は魔王の権限により聖戦と同じ扱いとあする。両者、異論はないか≫
≪ないわ≫
≪ない≫
俺たちの合意を確認すると、フランは戦場から出ていく。
≪合意を確認したため、これより試合を開始する。両者、構え!≫
ペイトが矢筒から矢を取り出して弓に番える。対して俺は、構えずにペイトを見据えている。
≪それでは試合開始ぃぃぃぃ!≫
フランの合図と共にペイトが俺に矢を放つ。俺は手甲で矢を弾いてペイトとの距離を詰める。
ペイトは何本も俺に矢を放つが、俺は全てかわすか弾くかして無力化する。
≪だったら……≫
ペイトは矢筒から矢を取り出し、さっきと同じように放つ。……甘いなぁ。
俺は手甲で受けずにパチンコを矢に向かって弾く。すると、パチンコと矢が当たった瞬間に矢が爆発し、辺りに黒い煙が漂った。
ロワも使っていた爆弾矢だ。手甲で受けるか、至近距離でかわしていたらダメージを受けていただろう。
俺はそのまま煙の中に突っ込み、ペイトとの距離を詰める。
≪な!?≫
煙の外からペイトの驚愕する声が聞こえる。だが、すぐに持ち直して矢を放ってくる気配を感じた。流石エース、切り替えが早い。
俺は煙の中で矢をかわしながら、距離を詰める速度を速める。
≪もう!なんなのよ!≫
煙の中から現れた俺を見て。ペイトが忌々しそうにする。
ペイトとの距離はおよそ10m、もう少しでペイトを射程内に抑えることが出来る。
≪くっ!≫
ペイトは矢を放つが、俺は全て回避するか弾き無効化する。
そのままペイトとの距離を詰めて、新月の射程に入る。俺は腰の新月を抜いてそのまま……
≪はあ!≫
背後から迫っていた矢を叩き落とした。
ペイトは弓専用のスキルである『ディメンション』を使って、回避された矢を俺の背後に出現させた。俺はそれを読んで、全部叩き落した訳だ。
俺は矢を叩き落とした太刀筋のまま、ペイトの腹に新月を叩き込む。
≪ぐはっ!≫
並みの弓使いならこのまま手も足も出ないだろうが、ペイトは新月を腹に受けながら後ろに飛び、俺と距離を取った。それにより、新月の射程からは外れてしまった。
≪本当にやりにくい相手ね≫
腹を抑えながらもまだ戦意を喪失していない表情のペイト。
≪まだ手はあるわよ≫
そう言うと、ペイトは弓に矢を3本番えて放つ。すると、それぞれの矢は先端から避けていき、5本に分裂した。ラガルトの奴が使っていたクラウドショットだ。
そして、それぞれの矢の前と俺の周りに黒い穴が出現した。
≪これが私の全力よ!≫
計15本の矢が四方八方から放たれる。これだったら、避けにくくなるし準備の隙も少ない。手放しに誉めてもいい位の秀逸な攻撃だ。
俺はそう思いながら前に1歩、右に2歩進む。瞬間、黒い穴から一斉に矢が放たれた。
しかし、矢は全て俺に紙一重で当たらず通り過ぎていく。ディメンションは優秀なスキルだが、射線が分かりやすいという弱点がある。
そのため、穴が出現した瞬間に矢が通らない位置を割り出す事も出来る。もう少し矢を増やせたら話は変わって来るが、流石に15本は少ない。
動かずに全て避けられたことが信じられないのか、目を見開くペイト。しかし、すぐに気を取り直して、矢筒へと手を伸ばす。だが、
≪な!?≫
矢筒の中に矢は入って無かった。
矢筒の中にはたっぷりの矢が入っていた。こんなに早くに無くなる筈がない。そう思ったのか、ペイトは背負っている矢筒に視線を向ける。
≪よそ見してていいのか?≫
その隙に雷装を使って一気に距離を詰める。
≪しま───≫
俺はペイトの腕を取ると廊下の時と同じように捻り上げる。そのまま弓を落とすと、ペイトを組み伏せて手を縄で縛る。
念の為、足も縛ったところで俺はペイトから離れる。
勝利条件は10分経過だ。ここで爆弾による自爆とかでダメージを受ける可能性を考えると、離れた位置からペイトを見張る方がいいだろう。多分、杞憂に終わると思うが警戒するに越したことはない。
俺の予想通りペイトは脱出しようと藻掻いているが、自爆と言った他の攻撃手段をする気配はない。
ペイトは体をモゾモゾと動かしながら俺を睨みつける。
≪くっ!なんで矢が無くなっていたのよ!あんた何したの!≫
≪悪いが、試合中に自分の手を説明する程お人よしじゃなくてな≫
俺の言葉にペイトが悔しそうに唇を噛む。
何が起こったのか説明しよう。まず、ワイヤー発射装置でこっそり矢筒へ矢を飛ばす。次にMP操作でワイヤーを操作して矢に巻き付ける。最後に矢をこっそり矢筒から抜き取る。これを繰り返して矢筒から矢を地面にこっそりと落とした訳だ。
そんな事も知らないペイトは悔しさでジタバタする。
≪むううう……≫
≪俺と戦ってみてどうだ?≫
≪……あんた以外が相手だったら勝ってたわよ≫
この勝負の負けは認めたみたいだが、ある意味では負けを認めきれてないみたいだ。負けん気が強いというか、諦めが悪いというか。
≪言っておくが、相手が俺だったから負けた訳じゃないからな?≫
≪どういう意味よ≫
≪ロワとミエルには矢じゃダメージ通らないし、ノエルは魔装で一瞬のうちに距離を詰めてくる。フランは言わずもがなだ≫
≪…………≫
≪お前が入ろうとしているパーティーはそういう奴らの集まりだ。更に言えばペイトがやっている事はロワでも出来る。言い方は悪いがあえて言うと、ペイトはロワの劣化でしかない。パーティーに入れるメリットは無いんだよ≫
≪…………≫
かなりきつい言い方になったが、ペイトの性格からしてハッキリ言わないと分かってくれないだろう。
というか、縛った女性の前でこんな事言うとか、傍から見たらかなり最悪じゃないか?
……この会話は俺とペイトにしか聞こえないからセーフ。
俺の言葉を聞いたペイトは俯きながら答える。
≪……分かった、スターダストに入るのは諦める≫
≪分かってくれればいい≫
ペイトの言葉を聞いた俺は妙な引っ掛かりを感じた。
やけに素直過ぎる。ペイトの言動から考えるにこんなにあっさり引くとは思えない。
俺が考えをまとめていると、セットしていたタイマーが鳴り響く。
≪勝者!ホウリ!≫
フランが勝者を告げると、兵士達から溜息が漏れる。
≪あーあ、勝てなかったか≫
≪ホウリが相手にしては上手くいってた方なんじゃないか?≫
≪そうね、落ち込む結果じゃないわよね。皆で慰めてあげましょ≫
俺は縄を解いてペイトを開放する。すると、ペイトは兵士達の方ではなくスターダストのメンバーの方へと向かっていった。……なるほど、そういう事か。
やって来たペイトに対して、ロワは笑顔で話しかける。
「ペイトさん、お疲れさまでした。負けちゃいましたけど、前よりも強くなってましたよ」
「ロワや、人語で通じる訳ないじゃろ」
「そうでしたね。えーっと≪お疲れ様。とっても良かったよ≫」
笑顔で労いを掛けるロワにペイトは真っすぐ、しっかりとした口調でこう言った。
「ロワ、私と結婚して」
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逓信ギルドの運搬人になったのは、危険な迷宮には入りたく無いから。面倒と危険を避けてすんなり仕事を終わらせたいのに、時にギルド支部長に命じられ行きたくも無い魔獣狩りの運搬人として駆り出される。
割とチートな身体能力を持ちながら、戦闘能力はからっきしで過剰な期待はされたく無い。こんな殺伐とした異世界生活なんかとっとと終わらせて眠るように死にたいと願う、そんな<不死身の歩荷>のお話。
※種族名とか用語は前作と共通にしてますが、別の世界の物語です。世界観も若干違います。
※「歩荷」とは一般的にいう「ポーター」のことですが、長距離運送も兼任しています。
※作者が設定厨なので、時々本筋に関係ない解説回が入ります。
※第16回ファンタジー小説大賞にエントリーしてみました。
僕だけ入れちゃうステータス欄 ~追放された凄腕バッファーは、たまたま出会った新人冒険者たちと真の最強パーティーを作り上げる~
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(スライム、もふもふ出てきます。女の子に囲まれるけどメインヒロインは一人です。「ざまぁ」もしっかりあります)
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シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。
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すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。
〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟
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※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。
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