魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第百十四話 結婚したのか俺以外の奴と

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「ただいまー!」


 家の扉を勢いよく開けるノエル。その後ろから俺達も続々と家に入る。


「いやー、お城も良いですが、やっぱり自分の家が一番ですね」
「ここももうすぐ引き払うけどな」
「家探しは後にしたいのう。わしもゆっくりしたいわい」
「私も同意見だ」
 

 皆がリビングでリラックスし始める。俺はお茶を淹れて皆の前に置く。


「ゆっくりするものいいが、明日には行動するからそのつもりでいてくれ」
「あれ?何かありましたっけ?」
「この魔剣共の事だ」


 俺はブランと機械蜘蛛の部品をテーブルに置く。


「そういえばそんな物もありましたね」
「重要な事を忘れるな」
「そういえば、ホウリはその部品を肌身離さず持っていたな。重要な物であればアイテムボックスに仕舞った方が良いのではないか?」
「そうしたいところだが、アイテムボックスに仕舞えないんだ」
「何ででしょうね?」
「さあな。それを調べに行くんだ」
「どこに調べに行くの?」
「政府の研究機関に決まっとるじゃろ」


 皿の上の羊羹を摘まみながらフランが言う。
 俺は首を振りながら答える。


「持っていくのは別の所だ」
「どこだ?」
「ミントの研究所だ」
「は?あんな遠い所に行くのか?」
「裁判の功績で王都直属の研究所になったんだと。今は王都に研究所がある」
「ミントさんにはあった事ありませんね。どんな方なんですか?」
「一言で言えば研究バカだ。研究以外は奥さんに一任している」
「そういえば、そんな奴じゃったな」


 一度あった事があるフランが頷く。そういえば、フランとノエルはあった事あったな。


「へー、結構変わった人なんですね」
「何かに特化した奴ってうのはどこの世界にもいるもんだ」
「ホウリの世界にも?」
「似たような奴がいる」


 俺の頭の中にボサボサの銀髪の女の子が浮かんでくる。俺の胃を痛めてくる奴の一人だ。


「で、なんで家よりも魔剣から先なんじゃ?」
「この部品……恐らく機械蜘蛛のコアだが、ここに魂が使われていて意識があるとすると、魔剣の謎が分かるかもしれない」
「そうか!このコアに聞けば魔剣の事も、最初の人の事も分かるかもしれない!」
「他の魔剣の場所も分かるかもしれませんね!」


 俺の話を聞いたロワとミエルが興奮する。
 始まりの人に関しては存在したこと以外は全くの謎らしい。そのため、様々な文献を元に研究が進められているらしい。


「始まりの人ですか。確かホウリさんの世界の人たちでしたっけ?」
「そうだな。元の世界で素性は洗ったから名前は全員わかるぞ」


 500人が同時期に姿を消した神隠し事件。俺が全力で調べ上げたにも関わらず、事件の手がかりすらなかった事件だ。そのおかげで、被害者の素性は大体分かっている。
 まさか、異世界に飛ばされているとは思わなかったがな。


「僕も始まりの人に付いては気になりますね」
「じゃが、始まりの人に付いてはみっちゃんに聞いた方が早いのではないか?連れてきた本人じゃろ?」
「なんかムカつくから却下」
「お主は本当にみっちゃんが嫌いなんじゃな」


 フランが呆れた様子になる。
 俺に新月を押し付けた時点であの野郎の評価は地に落ちている。その後の言動でも評価を落とし続け、今の評価はマントル辺りにある。


「そう言う事でコアの研究は急務だ。明日にでもミントの研究所に向かうぞ」
「だが、魂関連の情報はこの世界にはない。優秀な奴にコアを持って行ったとしても研究が進むとは思えんぞ?」
「問題ない」


 俺は大き目の紙を取り出してテーブルに広げる。
 そこにはある発明品の設計図が書かれていた。


「これは?」
「小さな人のように見えるな?」
「コアの魂と会話できるロボットだ。これで会話できるだろう」
「一応聞いておくが、なぜこんな設計図があるんじゃ?」
「元の世界に似たような物があったんだよ。それをコアに合うように少し改良したのがこれだ」


 死んだ娘と少しだけ話したい、そんな願いから出来たロボットだった。悪い奴に悪用されそうになったのを何とかして、最後に1分だけ話せたんだったな。
 あれから結構経つが、あの人は元気かな?


「お主は本当に便利じゃな?」
「これがあれば最初の人の事が分かるんだな?」
「今から行きませんか?僕気になって仕方ないですよ」
「えー、ノエル疲れたー」
「アポを取る必要があるから今日は無理だ。今日は休め」
「はーい……」


 ロワが残念そうに口をとがらせる。
 そんな訳で、俺たちは研究所に行く事になったのだった。


☆   ☆   ☆   ☆


 俺たちの拠点から歩いて移動する事1時間、王都の中心から離れたところに研究所はあった。発明にはかなりの音が出るから、周りに家がない所を選んだらしい。
 前に見た研究所よりもかなり大きく、綺麗になっている。だが、看板だけは結構年期が入っており、ミクモ研究所と書かれている。この看板だけは前の研究所から持ってきたんだろう。


「かなり雰囲気変わったのう?」
「新築だからな。どうせすぐに爆発で汚れていくがからレアな光景だぜ?」
「看板にはミクモ研究所って書かれてますけど、ミントさんの名字ですか?」
「ミントの親父さんの名前だ。名前だけでも残したいんだと」
「親思いなんだな」
「そうだな」


 雑談もそこそこに研究所の扉を叩く。


「はーい」


 声がして10秒後、扉が開いてラミスが出てきた。


「いらっしゃいませ、ホウリさん」
「お久しぶりです。ご結婚おめでとうございます」
「ありがとうございます。主人が待ってますので、中にお入りください」
「失礼します」


 研究所の中に入り客室に案内される。
 そこにはいつも通り乱れた服装でタバコを吹かしているミントの姿があった。ミントは俺たちに気が付くと軽く手を挙げた。


「よお」
「久しぶりだな。結婚おめでとう」
「お前のおかげでな。ん?見ない顔もいるな?」
「初めまして、僕はロワ・タタンです」
「私はミエル・クランだ」
「俺はミンティ・カモミル。皆からはミントと呼ばれてる」


 ミントは軽く頭を下げる。
 前までは名乗られても名前を言うだけだったのに、軽くとはいえ頭を下げるなんてな。人は変わるもんなんだな。
 俺たちが席に着くと、ラミスがコーヒー(ノエルにはココア)を出した。そして、ミントの姿を見ると、血相を変えた。


「こら!お客さんの前でくらい身だしなみは整えなさい!」
「ホウリの前で位いいだろ?」
「俺は構いませんよ」
「ホウリもこう言ってるじゃねえか」
「相手が言っているとはいえ、少しは気を付けなさい!」


 ラミスがミントの白衣を直したり、髪の毛を整えたりする。
 ミントは少し眉をひそめたが、嫌ではないのかされるがままになっている。
 髪の毛と服が整えられたところで、ラミスが満足そうに頷く。


「これで大丈夫ね」
「一応礼を言っておこう」
「もういいか?」
「すまない、今日の要件を聞こうか?」
「こいつを組み立てて欲しい」


 俺は昨日の設計図をテーブルに広げる。


「これは?」
「魔剣の設計図だ」
「は?」


 言葉の意味が理解できないのか、ミントが間の抜けた声を出す。
 俺は今までのいきさつを話す。ミントは俺の話を聞きながら設計図に目を通す。


「……なるほど、この発明品で最初の人と話せるという訳か。コアは?」
「ここに」


 コアを設計図の上に乗せる。
 ミントはコアを手に取ると興味深そうに眺める。


「これに魂が入っているのか。どういう原理なんだ?」
「それは本人に聞いてくれ」
「それもそうだな。今すぐとりかかろう」
「どれくらいかかる?」
「そうだな……」


 ミントは設計図を眺めながら青に手を当てて考える。


「3日はかかるな。どこかのなんでも出来る天才がいれば今日中に出来るんだが、そんなに都合よく居る訳ないよなー」


 設計図から視線を外し、俺をチラチラと見てくるミント。割と急いでいるし手伝ってもいいな。


「分かった、急いでいるし俺も手伝おう」
「助かる。工房に案内しよう。他の皆はコーヒーでも飲んでゆっくりしてくれ」


 ミントはコアと設計図を持ってリビングを出る。
 俺もミントの後をついていって工房に向かった。


☆   ☆   ☆   ☆


「行ってしまったのう」


 2人を見送り、出されたコーヒーを啜る。


「前に飲んだ時よりも美味いのう」
「王都に研究所を移してから色んな人が来るようになりまして。身分の高い人も来るようになったので豆をいいのに変えたんですよ」
「なるほどのう」


 わしとラミスが話しておると、ロワがせわしなく辺りを見渡しているのに気が付く。


「ロワ、あまり人の家を見渡すでない。失礼じゃぞ」
「すみません。有名な発明家と聞いていたので、色んな発明品が置いてあると思って……」
「前に行った所にはいっぱいあったよね?」
「あの研究所は狭かったので、倉庫を客室として利用していたんです」
「そうじゃったか」
「ここは住居も兼ねているのか?」
「そうですね。リビングや寝室もあります」


 結構な広さじゃと思ったが、住居も兼ねておるのか。そういう物件もあるんじゃな。


「実はわしらも拠点になる家を探しておってのう。この辺りは住んでいてどうじゃ?」
「周りに他の家が無いから音とかは気にしなくていいけど、買い物とかは不便かな。基本は週に1回買い物に行く事が多いかも」
「確かに買い物は不便だな」
「そういう所を選んだからね」


 やはり王都の中心がよいか?多少不便でも静かな方がよいか?迷いどころじゃな。


「ところで、つかぬ事を聞いていいか?」
「なに?」
「ミントと結婚した切っ掛けは何だ?」
「それはわしも気になるのう。あの朴念仁が自分から結婚を切り出すとは思えん。ラミスが切り出したのか?」


 わしらの言葉にラミスが苦笑いしながら話始める。


「実はね、ミントがプロポーズしてくれたの」
「あのミントがか?」


 発明しか頭に無いような奴が自分からプロポーズするとは意外じゃな。


「どんな風にプロポーズされたんですか?」
「ある日、指輪が入った箱がベッドの横にあって。『これなに?』って聞いたらぶっきらぼうに『結婚してくれ』って言われて。あの時のミント可愛かったな~」


 そう言いながら、ラミスが着けている指輪を愛しそうに撫でる。本当にプロポーズが嬉しかったんじゃな。


「式は挙げるのか?」
「今は仕事が多いから出来ないけど、落ち着いたら挙げるつもりよ。皆も招待するからね」
「楽しみにしておるぞ」


 わしらは美味いコーヒーを飲みながらラミスの惚気話を聞くのじゃった。
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