魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第百十五話 そこまでだ、残念だったな

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よし、出来た」


 最後の部品をはめ込み、発明品が完成する。


「こんな発明品があったとはな。世の中には天才がいるもんだな」
「そうだな」


 完成した発明品を客室に持っていく。
 客室にいる5人はコーヒーを飲みながら楽しくお喋りしていた。長時間席を外していたが、退屈してないみたいだな。


「それでね、ミントったら誕生日プレゼントをくれたの。でもね、私の誕生日は次の日だったの」
「あっはっは!それは間抜けじゃな!」
「渡す時になんて言ったと思う?」
「誕生日おめでとうか?」
「お前の誕生日くらい覚えているって言ったのよ」
「あはははは、覚えてないのに変なの!」
「そこまでだ」


 ミントが背後からラミスの口を塞ぐ。


「君達、今聞いた事は忘れたまえ」
「今聞いたこと?偽物の部品をつかまされた事か?」
「発明が上手くいかなくて迷走してた事じゃろ」
「……ラミス、どこまで話した?」
「さあ?忘れちゃった」
「お前は忘れるな」


 ミントはあきらめた様子で、テーブルの上に発明品を置く。


「これが発明品ですか?」
「思ったよりも小さいな」


 発明品はTHEロボットみたいな見た目をしていた。四角で出来ている頭と胴体に細長い足。手にはマジックハンドのような爪が付いていて物を挟めるようになっている。
 顔には赤い複眼があり、口の所に薄い隙間が空いている。大きさは30㎝位で意外と小さい。


「こんなオモチャが話し始めるのか?なんとも奇怪じゃな」
「ロボットが話す位は普通だろ。野菜が話す訳じゃないんだし」
「野菜が話してたまるか」


 俺の言葉を冗談だと思って笑い飛ばすフラン。ちなみに、本当に野菜が喋った事はある。俺は野菜と話をしてしばらく野菜が食べにくくなった。


「じゃ、電源を入れるぞ」


 ロボットの背後にあるスイッチを入れる。すると、ロボットの目が赤く光って腕を動かし始めた。


「動きましたよ!」
「どうなるの?」
「様子を見てみましょう」


 ロボットは腕や足をしばらく動かした後、俺達を見上げた。


【……ここはどこ?】


 ロボットの口から女性の声が聞こえてくる。コアの中に入っていたのは女性だったか。


「凄いですよ!ロボットが自分で話してます!」
【ロボット?】


 ロワの言葉を聞いたロボットは自分の腕や足に視線を向けると、そのまま動かなくなった。


「動かなくなっちゃったよ?」
「調整を誤ったか?少し見てみよう」


 ミントがロボットを取ろうと手を伸ばす。
 すると、ロボットは機敏な動きでミントの手を逃れた。


【何するのよ!】
「壊れた訳ではないのか?ならばなぜ動かなかった?」
「いきなりロボットになって固まらん奴はおらんじゃろ」
「言われてみればそうね」


 ロボットは自分の状況を認識すると、膝をついて倒れた。


【どういう事?私ロボットになってるの?】
「機械蜘蛛のコアを今のロボットの体に移植した」
【え?なんでロボットになっているの?】
「すぐに用意できるからだがそれしかなかったからだ」
【……そう】


 ロボットが膝をついた状態から器用に立ち上がる。


【……機械として生きて行く事は覚悟していたわ。それよりも何でスパイダーの体じゃないかを聞きたいわね?】
「スパイダー?俺達が壊した機械蜘蛛か?」
【それよ。……よく見れば、あんた達って私が戦っていた奴らじゃない?】
「そうですね。僕たちは機械蜘蛛……スパイダーと戦いました」
【あら、イケメン君もいるじゃない?】


 ロボットがロワにすり寄って来る。


【ねえ?お姉さんと良い事しない?】
「良い事ってなんですか?」
【そりゃあ、ねえ?】
「意味深な言葉の途中で申し訳ないが、今の自分の体がどうなっているか分かっているか?」
【体?……あ】


 ロボットが改めて自分の体を見て、再び膝をつく。


【こんな体でどうやって男漁りすればいいのよ……】
「……もしかして、執拗にロワを狙っていた理由って?」
【イケメンがいたら追いかけるでしょ?】


 ロボットの言葉を聞いて体から力が抜けていくのを感じる。真面目に考察して損しだ気分だ。
 とりあえず、こいつからは情報を聞いておきたい。餌でもぶら下げてみるか。


「場合によっては、新しい体を用意しても良いぞ?」
【ほんと!?】


 ロボットがもの凄いスピードで俺へ迫って来る。こんなスピードが出る設計はしてない筈だがな?


【何すればいいの!?なんでもするわよ!?】
「まずはあんたの事が知りたい」
【あら?私に興味があるの?ごめんなさいね、私はイケメン以外に興味がないの】
「分解されたいみたいだな?」
【よく見ればあなたもいい男ね?連絡先を教えて欲しいわ】
「そういうの良いからさっさと話してくれ」


 あからさまに媚びて来やがった。なんだか、話してて疲れる奴だな。
 ロボットは艶のある声で自己紹介を始めた。


【私の名前は『林 美紀』。開発部の所長をしているわ】
「名前から察するに、みっちゃんに最初に連れてこられた日本人か」
【そう言えばここはどこかしら?私は洞窟にいたわよね?】
「ここは王都……異世界の中心になっている街じゃな」
【私がブランを封印して何年経ったの?】
「1000年位だな」
【結構経ってるわね。そうなると、ひろし君もいない訳か】
「ひろし?誰だそれは?」
【私たちをまとめるリーダーよ】


 初めの人達のリーダーか。確か、元の世界では大企業の社長だったか。
 汚職の容疑を掛けられた後に失踪していたが、異世界に来ていたのか。ゲロ野郎から聞いている限りだと、この世界に来てからも苦労したって聞いている。


「最初の人のお話は神様から色々と聞いています。色々と苦労していたみたいですね」
【そりゃそうよ。食べるものから住む所まで自分たちで用意しないといけないのよ?暮らしが安定するまで結構かかったわね】
「安定したからこそ、魔剣の研究が出来た訳か」
【……そうね】


 林の言葉が少し詰まる。魔剣の話はしたくないみたいだな。


【そういえば、ブランはどこ?ここに私がいるって事は、ブランも持ってきてるんでしょ?】
「ここにいるぞ」


 俺はテーブルの上にブランを置く。
 林はブランに近付くと、しゃがみ込んで柄に手を置いた。


【……ブランと話せないかしら?】
「分かった」


 俺はブランを鞘から抜いて、テーブルに置く。


〈ご主人!やっと、私の出番ですか!〉
【……ブラン、私よ。分かる?】


 林が優しい声でブランに話しかける。
 ブランは少し黙った後、恐る恐る話し始めた。


〈ママ?〉
【そうよ、ママよ】
〈なんで、ヘンテコな姿になってるんだ?〉
【それには触れないでちょうだい。……無事でよかったわ】


 安心したのか、林が仰向けに倒れ込む。
 こいつもしかして……。


【1000年間、誰にも見つけられなかったのね】
「俺たちが見つけたけどな。ところで一つ聞いていいか?」
【何かしら?】
「もしかして、ブランはお前の息子の魂を使っているのか?」
【そうよ】
「な!?自分の息子の魂を魔剣にじゃと!?何考えておるんじゃ!?」


 フランの叫びに林が薄く笑う。


【どんな姿でも生きていて欲しい。そういう願いもあるのよ】
「ですが、ブランさんが可哀そうですよ」
〈うーん、俺は魔剣になった時の記憶しかないからな。ママがいなければ俺様がいないって事なら感謝してるぜ〉
「そうなんですか……」
【ねえ、私から一つ頼みがあるんだけど、いいかしら?】
「なんだ?」
【魔剣を壊す事になっても、ブランだけは見逃して欲しいの】
「自分が死ぬ事になってもか?」
【そうよ】


 林が俺をまっすぐ見つめてくる。言葉から分かる、こいつは本気だ。
 俺は林をまっすぐ見つめ返しながら答える。


「それは俺が決める事じゃない」
【そんな……】
「が、俺たちに協力してくれるのなら、出来る限りの事はしよう。それが最大限の譲歩だ」
【わかったわ。私に出来る事があれば何でも言ってちょうだい】
「交渉成立だな」


 俺が差し出した手を林が2本の爪で握って来る。これで、始めの人たちの情報が得られるな。


【で?私は何をすればいいの?】
「1つ教えて欲しい事がある」
【何?】
「あんたらに魔剣の技術を教えた奴は誰だ?」


 俺の質問に林が黙りこくる。どうやらかなり答えにくいみたいだな。


【なんでそんな事を聞きたいの?】
「魂を加工する技術は地球でも一般的じゃない。数十年の間で0から実用化出来るものでもない。つまり、誰かが教えないと1000年前に魔剣なんて出来ない筈だ」
「まさか神か?」


 ミエルの言葉に林の体がビクッとする。どうやら図星みたいだな。


「俺の予想だと、別の神からの技術提供だ。じゃないと説明がつかない」
「そうなのか?」
「俺が知る限り、魂は世界を構成する重要要素の一つだ。あのゴミクズが魂を加工する技術を簡単に教えると思えない。となれば、別の世界に干渉できる奴が犯人だ」
「それらの要素が満たせるのが、神様とは別の神様って事?」
「そう言う事だ。林の態度を見るに口止めされているんだろう」
【ノーコメントで】


 ほとんどバレているにも関わらずノーコメント。言ったらペナルティがあるのか?


「事情は大体わかった。この件に関しては明確に答えなくていい。反応からこっちで勝手に判断する」
【あなた、他の人とは違うわね?魂の事についても詳しいみたいだし。良かったら名前を教えてくれない?】
「キムラ・ホウリ。あんたらと同じ地球人だ」
【へえ、私達以外にも地球人が来てたのね。聞いた限りだと神様とも知り合いなのかしら?】
「不本意ながらそうだ」
【中々の大物ね】


 さて、別の神がこの世界に干渉していたとなると、何か目的がある筈だ。
 目的は恐らく祈りの力、魔剣の技術を教えるメリットは……。


「とりあえず、ゴミムシに相談するか」
【キムラ君は神様と話せるの?】
「フランの力を借りれば話せる」
【だったらさ、ひろし君の魂が今どうなっているか聞いてくれない?】
「そんな事聞いてどうするのだ?」
【死んだら魂がどこかに行くっていうのは知ってるの。転生はまだかなって気になっているだけよ】
「それぐらいならいいぜ。何か伝える事はあるか?」
【そうね……私がひろし君を好きだったって伝えてくれるかしら?】
「何で死んだ今になって伝えるんじゃ?」
【ちょっとした嫌がらせかしら?】


 ロボットの顔がいたずらっぽく笑った気がした。ひろしっていう人も色々と苦労してるんだな。


「可能だったら伝えておくよ」
「もう行くのか?」


 席を立った俺にミントが質問する。


「聞きたいことは聞けたしな」
「そうか、こいつはどうする?」
【ちょっと!放しなさいよ!】


 ミントは林を持ち上げて聞いてくる。


「ミントの方で預かってもいいぜ。解析したいだろ?」
「話が早くて助かる」
【ちょっと!何する気よ!】
「コアの技術を解析する。あんたの口からきければ良いんだが、そうもいかないみたいだしな」
【私に乱暴する気!?薄い本みたいに!?】
「薄い本とは何だ?」
【ちょっと、誰か助けて!いやー!】


 ミントは林を引き連れて、工房へと戻る。ミントの断末魔を聞きながら、俺はテーブルに置いてあるブランを手に取った。


〈ママは大丈夫なのか?〉
「ミントも無茶はしない筈だ。少なくとも死にはしないだろうよ」
「お主はハヤシと一緒でなくて大丈夫か?記憶はなくともお主の母親なんじゃろ?」
〈……ママが無事だと分かっただけで大丈夫だ。たまに会えればそれでいい〉
「本音は?」
〈ここにいたら俺様も被害を受けちまう〉
「賢明な判断だ」


 それにしても、面倒な事になったな。さて、どうするか。
 頭を痛めながら、俺は研究所を後にしたのだった。
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