魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第百二十九話 猫探しの依頼って本当にあるの?

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 特訓が終了してから皆と合流する。そして、わしらは自宅に戻っていた。


「それで、魔法は使えるようになったのか?」


 ミエルの言葉にリンタロウが悲しそうに首を振る。


「MPの扱い方は分かって来たでござるが、魔法はさっぱり使えないでござる」
「本来は何を使えるかが分かって練習するものじゃ。何が使えるかも分からんのに使える訳ないじゃろ」
「フラン殿は拙者が魔法を使えないと知っていたのでござるか?」
「使えるかは分からぬが、使えるようになるまで上達するとは思えんかった」
「魔法を使うのは難しいからな」
「うー、すぐに使うのは無理そうでござるな」


 リンタロウはストローを噛みながら渋い表情をする。ワクワクしていた所に水を差すのは悪いと思ったんじゃがな。


「でも、MPの練習はしておいて損は無いですよ」
「お主はMPの総量はかなり多かった。練習すればかなり強くなるであろうよ」
「まあ、拙者は才能の塊でござるからな。当然でござる」
「調子に乗るんじゃない。そんなんだからロワに勝てないのだ」


 調子に乗ったリンタロウをミエルが睨みつける。
 じゃが、リンタロウはミエルに睨まれても嬉しそうじゃ。可愛ければ何でもいいのではないか?


「して、これからどうする?」
「もうお昼ですし、お昼ご飯でも食べませんか?」
「それもそうじゃな。ホウリ、今日の昼飯は……」


 そこまで言って、わしはホウリがいない事を思い出す。ホウリは1週間留守にしておるであったな。


「今日の昼飯はどうするかのう?」
「よければ私が……」
「ノエル、お外で食べたい!」
「僕も賛成です!せっかくリンタロウさんがこの世界に来たんですし、美味しい物を食べて欲しいです!」


 ミエルの言葉を遮るようにロワとノエルが叫ぶ。二人の額からは冷や汗が滲んでおる。よっぽどミエルの料理が怖いみたいじゃな。わしも同じ気持ちじゃ。


「そうと決まれば少し休んだら行くぞ。この辺りに美味い定食屋が───」
「ごめんくださーい!」


 ミエルに有無を言わせずに決めようとした所で、玄関からインターホンと共に誰かの声が聞こえて来た。


「誰ですかね?」
「ちょっと見てくるわい」


 わしは皆をリビングに残して、玄関に向かう。


「はーい、どちら様じゃー」


 わしは玄関の扉を開けて訪問者を確かめる。


「お主は……」
「フランちゃん、こんにちは」


 そこには、いつも行ってる八百屋の店長がそこにいた。首にはタオルが巻かれていて、腰には八百屋のエプロンが巻かれている。恰好を見るに八百屋の店番中なのかのう?


「何か用か?」
「ホウリ君いるかい?ちょっと用事があってね?」
「あー、ホウリ関連か」


 ホウリは人脈つくりの為に、色々な人物と関りを持っている。ある時には悩み相談や、経営のアドバイスをすることもあるらしい。


「ホウリならば今はおらん。1週間は戻らぬ予定じゃ」
「そっかー、弱ったな……」
「何かあったのか?」


 困った顔の店長にわしは尋ねる。
 店長は額の汗をタオルで拭いながら話始めた。


「実は、うちの飼い猫がいなくなってしまってね。ホウリ君に見つけるのを手伝ってほしいと思ったんだ」
「それは大変じゃな」


 わしの言葉に店長が何か言いたげな表情で見てくる。


「……とりあえず、中に入るか?」
「そうさせてもらうかな」


 店長をリビングまで案内すると、皆が少し驚いた表情になる。


「おじちゃんどうしたの?」
「実は飼い猫のペロがいなくなってね」
「えー!あの猫ちゃんいなくなっちゃったの!?」


 ノエルはいなくなった猫に心当たりがあるのか、目を見開いて驚いた。
 わしは店長を席に座らせると、対面に座って話を聞く体制になる。


「猫がいなくなったと言ったのう?詳しい話を聞かせてくれんか?」
「実は──」



 飼い猫のペロいなくなったのは朝からお昼に掛けて。お昼ご飯の時間になってもいつもの場所にいないため、迷子になったのではないかと考えたみたいじゃ。


「そう言う事であれば、少し待ってみても良いのではないか?少し遅れているだけかもしれないぞ?」
「そうかもしれないけど心配で……」


 店長は目を伏せる。心配なのは分かるが、猫一匹探すのもかなりの手間がかかる。ここは安請け合いは出来んじゃろう。
 わしがそう思っていると、横からリンタロウが口を挟んできた。


「猫探しくらい引き受けても良いのでは?」
「確かに、困っている人を見捨てるのはなんだか気が引けますね」
「猫ちゃんが可哀そうだよ。皆で探してあげよ?」


 リンタロウの言葉にロワとノエルが同意する。うーむ、これは無下に断る訳にもいかなくなったわい。
 一応、ミエルの方へも視線を向けてみるが、諦めた表情で首を縦に振っていた。決まりじゃな。


「分かった、わしらも探してみよう。猫の写真はあるか?」
「ありがとう!これがペロの写真だよ!」


 受け取った写真には白い毛の可愛らしい子猫が映っていた。額には黒でハートマークの模様がある。これなら見間違いはなさそうじゃな。


「見つけたら八百屋に連れていく。お主は店に戻っておれ」
「助かるよ」


 店長は何度も頭を下げつつ、家を出ていった。


「さて、これからどうするかのう?」
「フランさんだったらすぐに見つけられそうですけどね?」
「確かに普通に探すよりは早く探せるが、多少の時間がかかるじゃろう」
「だったら皆で探した方がいいですかね?」
「そうじゃな」
「そう決まれば、すぐに出発しないと───」


 ミエルが立ち上がろうとした瞬間、またもインターホンが鳴った。


「店長さんですかね?」
「忘れものかな?」
「少し出てこよう」


 再度玄関まで行き、扉を開けて来訪者を確認する。


「どちらさまじゃー。む?」
「あの、ホウリさんいますか?」
「私達、困ってるんです……」
「俺も相談したい事があって……」


 玄関にいたのは女子が二人……とその後ろに男が、その後ろにも中年のおばさんが、と言う風に大量の人達が家の前に並んでおった。


「ちょ、ちょっと待て。これはどういう事じゃ?なんでこんな大人数が家に詰めかけておるんじゃ?」
「あのー、ホウリさんは……」


 そこまで聞いて、わしは何となく察しがついた。こやつらはホウリに助けられた事がある奴らじゃ。ホウリがいれば、わざわざ家に来なくてもホウリ自身が話を聞きにいったのじゃろう。じゃが、今ホウリはいない。それによって、ホウリが解決するはずだった悩み事が家まで押し寄せてきたという事か。


「フラン、どうした?何やら騒がしいが……」


 不審に思ったミエルが玄関まで来て、目の前の光景に絶句する。


「……なんだこれは?」
「全員ホウリに頼み事があるみたいじゃ」
「いくらなんでも多すぎないか!?話を聞くだけでも日が暮れるぞ!?」
「とりあえず、ホウリがいない事は告げておこう。重要度が高く至急対応が必要な物はわしらでなんとかするんじゃ」
「分かった。とりあえず全員呼んでこよう」


 こうして、残った者の話をわしらは聞くことにした。


☆   ☆   ☆   ☆


「ふー、疲れましたー」
「依頼、多かったねー」
「まさか、拙者も駆り出されるとは思っても無かったでござるよ……」


 ロワとノエル、リンタロウがリビングの机に突っ伏す。
 あの後、わしらは残った奴の話を聞き、出来そうな物だけをやっていった。外を見ると、真っ暗で、街灯によって道が照らされておる。


「猫探しに家の修理、壷を割った犯人を捜して欲しいっていうのもありましたね」
「あの量をホウリは一人で解決しているのか……」
「どうやってあの量の依頼を解決しているのか、鳳梨殿の七不思議のひとつでござるな」
「帰ってきたら聞いてみるか」


 そこまで言うと、誰かのお腹がグーとなった。その音で昼飯を食っていなかった事をわしは思い出した。


「今度こそご飯じゃな。何か食べたいものはあるか?」
「ハンバァァァァァグ!」
「僕は麺類が食べたいです!」
「拙者はご飯ものが良いでござる」
「ならばファミレスじゃな。さっさと行くぞ」
「はーい!」


 皆がテーブルから立ち上がって玄関へと向かう。


「フラン、ちょっといいか?」


 わしも玄関に向かおうとしたところで、ミエルに呼び止められた。


「なんじゃ?」
「一つ気になったんだが、猫探しはともかく、他の依頼はホウリがいないと言って全部断ってもよかったのではないか?」
「わしも最初はそう思ったのじゃがな。じゃが、考えてもみい。あの者達はホウリが苦労して積み上げた人脈ともいえるじゃろ?」
「そうか。そういう見方も出来るのか」


 ホウリが積み上げた物をわしらが台無しにする事は出来ん。可能な限りわしらも協力するべきじゃろう。


「そう考えると、ホウリは働き過ぎじゃないか?」
「そう思うのであればホウリに少し優しくしたらどうじゃ?」
「……考えておこう」


 これだけして「考えておく」か。少しはミエルとホウリの関係も良くなるといいのう。


「さて、お喋りはここまでじゃ。皆が待っておるぞ」
「そうだな」


 こうしてわしらの激動の1日は幕を閉じたのじゃった。
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