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第百二十八話 自爆するしかねぇ!
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「やはり時代は家庭的な者がモテるでござる」
ホウリ特製のクッキーを齧りながらリンタロウが呟く。こやつはまだ懲りておらんのか。というか、もはや取り繕うともせぬな。
「今度は家庭的な男か。お主は色々な事を考え付くのう?」
「いつもどうすればモテるかを考えているでござるからな」
「少し前のナップみたいだな」
「拙者みたいな者が他にもいるのでござるか?」
リンタロウが仲間を見つけたと思ったのか笑顔で喜ぶ。
「その者とは気が合いそうでござるな」
「ホウリの活躍で彼女が出来たがな」
「チクショー!」
リンタロウが叫びながらテーブルに伏せる。前の世界からこのような扱いか。なんだか不憫に思えて来たのう。
「家庭的な男と言っていたが、具体的には何をするつもりだ?」
「そうでござるな、料理とか掃除とか裁縫とかでござるか?」
「私たちに聞かないでくれ」
「リンタロウさんはそういうの得意なんですか?」
「やったこと無いでござる」
「そんな事じゃと思ったわい」
こんな奴に1週間も付き合わないといけないのか。中々に疲れるのう。
「して、これからどうするんじゃ?」
「もうモテる事は諦めた方が良いのではないか?」
「モテたとしても1週間で帰ってしまう訳ですしね」
「そう考えてみればそうでござるな?」
リンタロウがロワの言葉に納得したように頷く。
「そうと決まればこの世界を観光してみたいでござるな。何か観光に良い所はないでござるか?」
「別の世界の者の観光?どこを案内すればいいのだ?」
「街の様子を見せるだけでも観光になるのでは?」
「そういえば、ノエルと一緒に街を一緒に歩いたよね?楽しかった?」
「あの時は心に傷を負っていたでござるからな。カレー屋と教会以外は覚えていないでござる」
「ならば街の案内をするでよいか?」
「うむ、よろしくでござる!」
こうして、リンタロウと共にわしらは街に繰り出すのであった。
☆ ☆ ☆ ☆
「おお、これが異世界の街でござるか」
街の様子を見たリンタロウが感嘆の声を上げる。
「ラノベで見たような街でござるな。中世ヨーロッパの街並みという奴でござるな」
わしらには見慣れた光景じゃが、異世界から来た倫太郎にはかなり珍しいのじゃろう。しきりに周りを見渡しておる。
「あ!あそこに獣の耳が生えた者がいるでござる!」
「あれは魔族の中の獣人族じゃな」
「獣人!やはり獣人はロマンでござるな!という事は、もしかしてエルフもこの世界にいたりするのでござるか?」
「勿論いますよ」
「やっぱりでござるか!どこに行けば会えるのでござるか!?」
「希少な種族じゃからな。簡単には会えぬぞ?」
「む、それは残念でござるな……」
リンタロウは少し残念そうに顔を伏せたが、すぐに明るい表情に戻った。
「こうして街に出てみると、やはり新鮮でござるな。拙者がいた世界には無かったものが多いでござる」
「気になる建物はありますか?」
「武器屋がいいでござる!RPGでおなじみの施設、心躍るでござる!」
「確かに転移者がテンション上がりそうな施設じゃな」
リンタロウの願いで武器屋に入る。武器屋に入るのは久しぶりじゃな。オダリム以来か?……そう言えば、武器屋にはいい思い出はないのう。
「どうしたフラン?」
「体調でも悪いんですか?」
「体調ではなく心が痛いわい」
「何かあったのか?」
「ちょっとのう」
わしの心中を察したのか、ロワとミエルはそれ以上聞いてくる事は無かった。
そんなわしらのやり取りを聞いておらんかったリンタロウは意気揚々と武器屋の中に入る。
「おおー、ここが異世界の武器屋でござるか」
壁に掛かっている剣や盾を見ながら、リンタロウがテンション高く言う。
リンタロウは壁に掛かっている物を珍しそうに指さす。
「これは何でござるか?」
「これは杖ですね。魔法を効率良く使うための道具です」
「魔法!この世界には魔法があるのでござるか!拙者にも使えるでござるか!?」
「素質があれば使える。じゃが、素質が無ければどうあがいても使えん」
「拙者には素質はあるでござるか?」
「どうでしょうか。フランさんは素質とかって分からないんですか?」
ロワの質問にわしは腕を組む。この質問は来ると思ったのじゃが、どうしたものかのう。
「フランさん?」
「実は先にリンタロウの鑑定は済ませておる」
「鑑定?」
聞きなれぬ言葉を聞いたリンタロウが首を傾げる。そう言えば、こやつはこの世界の常識についてあまり知らぬのじゃったな。
「簡単に言えば、お主の情報を見ようとした訳じゃ」
「そんな便利なスキルがあるのでござるな」
「結果は?」
「見れんかった」
「は?」
わしの言葉にミエルが目を丸くする。
「そんな顔するな。わしの方が驚いておるんじゃ」
「フランお姉ちゃんでも見られない物ってあるんだ」
「うーん?どういうことでござるか?」
リンタロウだけが何が起こっているか理解できておらんようじゃ。
「こういうのも何じゃが、わしはほぼすべてのスキルを使え、効果も最高水準じゃ」
「ホウリ曰く、全世界が束になって掛かっても倒せないらしい」
「……そんなフラン殿を鳳梨殿は倒そうとしているのでござるか?」
「まあのう。しかし、今問題なのはそこではない」
「そんなフランさんでもステータスが見られないという事は、この世界の誰も見られないのでは?」
ノエルの話によると、リンタロウは自分でも教会でもステータスが見られないらしい。わしでも見られないとなると、ステータスがあるのかさえも怪しくなってくる。
「つまり、拙者が魔法を使えるのかは分からないと?」
「そうなるのう」
「ステータスを見る以外に魔法が使えるか調べる方法は?」
「無い事もない」
わしはアイテムボックスから指示飴を取り出す。これを舐めれば味で魔法の適性があるかが大雑把に分かるという優れものじゃ。
「これを舐めて味がしたらお主も魔法が使える」
「便利な道具でござるな。では早速」
リンタロウはわしから受け取った指示飴を口に放り込む。
「リンタロウお兄ちゃん、どう?」
「……味がするような、しないような?」
「どっちなんだ」
「使えないならば味はしない筈ですし、何かしらは使えるのでは?」
「実際に使ってみた方がいいんじゃない?」
「それもそうじゃな。付いてこい、お試し用の広場で使えるか試そう。杖はこれを使うんじゃ」
「分かったでござる」
「わしはリンタロウと共に広場に行っておく。お主らは隙に武器屋を見て回るがよい」
「分かりました。」
皆と別れたわしはリンタロウと共にお試し用の広場に移動する。わしが使っておる杖をリンタロウに渡す。
杖を受け取ったリンタロウは自信満々に腕を回す。
「ふっふっふ、拙者のオンステージでござる」
「MPを込めて遠くの的に放つんじゃ。そうすれば魔法が出る」
「よし来た!行くでござるよ!」
わしらが見守っている中で、リンタロウは杖を的に向けて叫ぶ。
「くらえ!メラ〇ーマ!」
リンタロウが叫ぶと同時に杖から巨大な火炎が巻き起こる!─────という事も無く、広場にリンタロウの声がむなしく響いた。周りの客からの視線が痛い程に注がれている。
わしがなんて言っていいのか分からずに黙っていると、リンタロウは振り向かずにわしらに話かけてきた。
「……一つ聞いていいでござるか?」
「なんじゃ?」
「MPってどうやって込めるんでござるか?」
「あー、そういえばそうだったのう」
MPの込め方も知らんで魔法が使える訳ないのう。完全に失念してたわい。
「使えもしない魔法の名前を高らかに叫ぶ。拙者、完全に痛い奴じゃないでござるか?」
「そうじゃな。というか、この世界の魔法の名前はメラ〇ーマではない」
「ドラ〇エではなくF〇であったか?メラ〇ーマではなくメ〇オでござったか?」
「もう名前はよい。そんな事よりもMPじゃ」
「そうでござったな。どうすればいいのでござるか?」
「両手を前に出すがよい」
「こうでござるか?」
差し出されたリンタロウの両手を握る。すると、リンタロウはびっくりした表情になった。そして、涙を流し始めたかと思うと、袖で涙をぬぐい始めた。
「うう……、遂に拙者も可愛い女の子に手を握られるようになったでござるか……」
「そんな事で泣くではない」
「ぐすっ……、拙者にも春が来たでござる」
「いい加減にせんと舌を引っこ抜くぞ?」
「すみません、黙ります」
わしの殺気を受けたリンタロウは涙を引っこめて真顔になった。どんな人生しとるんじゃこいつは。
「して、何をするのでござるか?」
「お主のMPの流れをわざと乱す。それでMPを感じるんじゃ。MPの流れを掴んだら、それをコントロールする練習をするんじゃ」
「なるほど」
「では行くぞ」
わしとリンタロウのMPを統合して流れを均一化する。ある程度MPを均一化すると、MPの流れをわざと乱してMPの流れを感じやすくさせる。
MPを乱した瞬間、リンタロウの目が大きく開かれた。
「おお!これがMPでござるか!拙者にも分かったでござる!」
「それを杖に纏い、変換して放ったものが魔法と呼ばれる技術じゃ」
「まずはMPを操る練習からという事でござるか?」
「そう言う事じゃ。その杖はMPを纏いやすいから練習にピッタリじゃな」
「具体的にはどうすればいいのでござるか?」
「感覚は人によって異なるからのう。わしの感覚を教えて下手な癖が付いたらダメになるわい」
「むう、そう言う事ならば仕方がないでござるな。自力で頑張るでござる」
そう言うと、リンタロウは杖を両手で握りしめてMPを込めようと力を入れる。すると、みるみる内に杖にMPが込められていく。
腐ってもホウリの同級生じゃ、MPの扱いが抜群に上手い。
MPはかなりの速度で杖に込められていく。
「うおおおおお!」
リンタロウにもMPを込めている事が分かってるのか、叫びながらニヤリと笑う。
「まだまだでござる!うおおおおおおおお!」
杖に数値にして1000以上のMPが込められる。これ程の力があったとは予想外じゃ。
1500を超えてもなお、MPは杖に込められていく。
「うおおおおおお!」
「そう言えば言い忘れておったが……」
MPを必死に込めているリンタロウに向かってわしは話す。
「大量にMPを込めると爆発するぞ?」
「はあああああああ!……は?」
わしの言葉にリンタロウが気を抜いてしまう。瞬間、杖からMPが一気に噴き出して、とてつもない爆発が巻き起こる。爆発は辺り一帯を巻き込み、半径100mにクレーターが───出来る筈じゃったが、なぜか周りはおろかリンタロウ本人でさえ無傷じゃった。
リンタロウは訳が分からない様子で杖を見つめておる。
「な、何が起こったのでござるか?」
「あふれ出したMPをわしが遠くに転送した。そうしないとこの辺りが更地になってしまうのでな」
「な、なんで爆発することを言わなかったのでござるか?」
「手痛い失敗をした方が、以後気を付けるじゃろ?」
「か、かなりのスパルタでござるな……」
「多少の爆発ならばそのまま受けて貰おうと思ったが、周囲を巻き込むとなれば話は別じゃ。あのままだと周りの人間も巻き込んだ事を自覚せよ」
「わ、分かったでござる。MPを使う時は気を付けるでござるよ」
「分かればいい。いざとなったらわしが何とかするから今は好きに練習せよ」
「了解でござる」
そう言うと、リンタロウは再び杖にMPを込め始める。そこから1時間、わしとリンタロウはみっちりとMPを扱う練習をするのじゃった。
ホウリ特製のクッキーを齧りながらリンタロウが呟く。こやつはまだ懲りておらんのか。というか、もはや取り繕うともせぬな。
「今度は家庭的な男か。お主は色々な事を考え付くのう?」
「いつもどうすればモテるかを考えているでござるからな」
「少し前のナップみたいだな」
「拙者みたいな者が他にもいるのでござるか?」
リンタロウが仲間を見つけたと思ったのか笑顔で喜ぶ。
「その者とは気が合いそうでござるな」
「ホウリの活躍で彼女が出来たがな」
「チクショー!」
リンタロウが叫びながらテーブルに伏せる。前の世界からこのような扱いか。なんだか不憫に思えて来たのう。
「家庭的な男と言っていたが、具体的には何をするつもりだ?」
「そうでござるな、料理とか掃除とか裁縫とかでござるか?」
「私たちに聞かないでくれ」
「リンタロウさんはそういうの得意なんですか?」
「やったこと無いでござる」
「そんな事じゃと思ったわい」
こんな奴に1週間も付き合わないといけないのか。中々に疲れるのう。
「して、これからどうするんじゃ?」
「もうモテる事は諦めた方が良いのではないか?」
「モテたとしても1週間で帰ってしまう訳ですしね」
「そう考えてみればそうでござるな?」
リンタロウがロワの言葉に納得したように頷く。
「そうと決まればこの世界を観光してみたいでござるな。何か観光に良い所はないでござるか?」
「別の世界の者の観光?どこを案内すればいいのだ?」
「街の様子を見せるだけでも観光になるのでは?」
「そういえば、ノエルと一緒に街を一緒に歩いたよね?楽しかった?」
「あの時は心に傷を負っていたでござるからな。カレー屋と教会以外は覚えていないでござる」
「ならば街の案内をするでよいか?」
「うむ、よろしくでござる!」
こうして、リンタロウと共にわしらは街に繰り出すのであった。
☆ ☆ ☆ ☆
「おお、これが異世界の街でござるか」
街の様子を見たリンタロウが感嘆の声を上げる。
「ラノベで見たような街でござるな。中世ヨーロッパの街並みという奴でござるな」
わしらには見慣れた光景じゃが、異世界から来た倫太郎にはかなり珍しいのじゃろう。しきりに周りを見渡しておる。
「あ!あそこに獣の耳が生えた者がいるでござる!」
「あれは魔族の中の獣人族じゃな」
「獣人!やはり獣人はロマンでござるな!という事は、もしかしてエルフもこの世界にいたりするのでござるか?」
「勿論いますよ」
「やっぱりでござるか!どこに行けば会えるのでござるか!?」
「希少な種族じゃからな。簡単には会えぬぞ?」
「む、それは残念でござるな……」
リンタロウは少し残念そうに顔を伏せたが、すぐに明るい表情に戻った。
「こうして街に出てみると、やはり新鮮でござるな。拙者がいた世界には無かったものが多いでござる」
「気になる建物はありますか?」
「武器屋がいいでござる!RPGでおなじみの施設、心躍るでござる!」
「確かに転移者がテンション上がりそうな施設じゃな」
リンタロウの願いで武器屋に入る。武器屋に入るのは久しぶりじゃな。オダリム以来か?……そう言えば、武器屋にはいい思い出はないのう。
「どうしたフラン?」
「体調でも悪いんですか?」
「体調ではなく心が痛いわい」
「何かあったのか?」
「ちょっとのう」
わしの心中を察したのか、ロワとミエルはそれ以上聞いてくる事は無かった。
そんなわしらのやり取りを聞いておらんかったリンタロウは意気揚々と武器屋の中に入る。
「おおー、ここが異世界の武器屋でござるか」
壁に掛かっている剣や盾を見ながら、リンタロウがテンション高く言う。
リンタロウは壁に掛かっている物を珍しそうに指さす。
「これは何でござるか?」
「これは杖ですね。魔法を効率良く使うための道具です」
「魔法!この世界には魔法があるのでござるか!拙者にも使えるでござるか!?」
「素質があれば使える。じゃが、素質が無ければどうあがいても使えん」
「拙者には素質はあるでござるか?」
「どうでしょうか。フランさんは素質とかって分からないんですか?」
ロワの質問にわしは腕を組む。この質問は来ると思ったのじゃが、どうしたものかのう。
「フランさん?」
「実は先にリンタロウの鑑定は済ませておる」
「鑑定?」
聞きなれぬ言葉を聞いたリンタロウが首を傾げる。そう言えば、こやつはこの世界の常識についてあまり知らぬのじゃったな。
「簡単に言えば、お主の情報を見ようとした訳じゃ」
「そんな便利なスキルがあるのでござるな」
「結果は?」
「見れんかった」
「は?」
わしの言葉にミエルが目を丸くする。
「そんな顔するな。わしの方が驚いておるんじゃ」
「フランお姉ちゃんでも見られない物ってあるんだ」
「うーん?どういうことでござるか?」
リンタロウだけが何が起こっているか理解できておらんようじゃ。
「こういうのも何じゃが、わしはほぼすべてのスキルを使え、効果も最高水準じゃ」
「ホウリ曰く、全世界が束になって掛かっても倒せないらしい」
「……そんなフラン殿を鳳梨殿は倒そうとしているのでござるか?」
「まあのう。しかし、今問題なのはそこではない」
「そんなフランさんでもステータスが見られないという事は、この世界の誰も見られないのでは?」
ノエルの話によると、リンタロウは自分でも教会でもステータスが見られないらしい。わしでも見られないとなると、ステータスがあるのかさえも怪しくなってくる。
「つまり、拙者が魔法を使えるのかは分からないと?」
「そうなるのう」
「ステータスを見る以外に魔法が使えるか調べる方法は?」
「無い事もない」
わしはアイテムボックスから指示飴を取り出す。これを舐めれば味で魔法の適性があるかが大雑把に分かるという優れものじゃ。
「これを舐めて味がしたらお主も魔法が使える」
「便利な道具でござるな。では早速」
リンタロウはわしから受け取った指示飴を口に放り込む。
「リンタロウお兄ちゃん、どう?」
「……味がするような、しないような?」
「どっちなんだ」
「使えないならば味はしない筈ですし、何かしらは使えるのでは?」
「実際に使ってみた方がいいんじゃない?」
「それもそうじゃな。付いてこい、お試し用の広場で使えるか試そう。杖はこれを使うんじゃ」
「分かったでござる」
「わしはリンタロウと共に広場に行っておく。お主らは隙に武器屋を見て回るがよい」
「分かりました。」
皆と別れたわしはリンタロウと共にお試し用の広場に移動する。わしが使っておる杖をリンタロウに渡す。
杖を受け取ったリンタロウは自信満々に腕を回す。
「ふっふっふ、拙者のオンステージでござる」
「MPを込めて遠くの的に放つんじゃ。そうすれば魔法が出る」
「よし来た!行くでござるよ!」
わしらが見守っている中で、リンタロウは杖を的に向けて叫ぶ。
「くらえ!メラ〇ーマ!」
リンタロウが叫ぶと同時に杖から巨大な火炎が巻き起こる!─────という事も無く、広場にリンタロウの声がむなしく響いた。周りの客からの視線が痛い程に注がれている。
わしがなんて言っていいのか分からずに黙っていると、リンタロウは振り向かずにわしらに話かけてきた。
「……一つ聞いていいでござるか?」
「なんじゃ?」
「MPってどうやって込めるんでござるか?」
「あー、そういえばそうだったのう」
MPの込め方も知らんで魔法が使える訳ないのう。完全に失念してたわい。
「使えもしない魔法の名前を高らかに叫ぶ。拙者、完全に痛い奴じゃないでござるか?」
「そうじゃな。というか、この世界の魔法の名前はメラ〇ーマではない」
「ドラ〇エではなくF〇であったか?メラ〇ーマではなくメ〇オでござったか?」
「もう名前はよい。そんな事よりもMPじゃ」
「そうでござったな。どうすればいいのでござるか?」
「両手を前に出すがよい」
「こうでござるか?」
差し出されたリンタロウの両手を握る。すると、リンタロウはびっくりした表情になった。そして、涙を流し始めたかと思うと、袖で涙をぬぐい始めた。
「うう……、遂に拙者も可愛い女の子に手を握られるようになったでござるか……」
「そんな事で泣くではない」
「ぐすっ……、拙者にも春が来たでござる」
「いい加減にせんと舌を引っこ抜くぞ?」
「すみません、黙ります」
わしの殺気を受けたリンタロウは涙を引っこめて真顔になった。どんな人生しとるんじゃこいつは。
「して、何をするのでござるか?」
「お主のMPの流れをわざと乱す。それでMPを感じるんじゃ。MPの流れを掴んだら、それをコントロールする練習をするんじゃ」
「なるほど」
「では行くぞ」
わしとリンタロウのMPを統合して流れを均一化する。ある程度MPを均一化すると、MPの流れをわざと乱してMPの流れを感じやすくさせる。
MPを乱した瞬間、リンタロウの目が大きく開かれた。
「おお!これがMPでござるか!拙者にも分かったでござる!」
「それを杖に纏い、変換して放ったものが魔法と呼ばれる技術じゃ」
「まずはMPを操る練習からという事でござるか?」
「そう言う事じゃ。その杖はMPを纏いやすいから練習にピッタリじゃな」
「具体的にはどうすればいいのでござるか?」
「感覚は人によって異なるからのう。わしの感覚を教えて下手な癖が付いたらダメになるわい」
「むう、そう言う事ならば仕方がないでござるな。自力で頑張るでござる」
そう言うと、リンタロウは杖を両手で握りしめてMPを込めようと力を入れる。すると、みるみる内に杖にMPが込められていく。
腐ってもホウリの同級生じゃ、MPの扱いが抜群に上手い。
MPはかなりの速度で杖に込められていく。
「うおおおおお!」
リンタロウにもMPを込めている事が分かってるのか、叫びながらニヤリと笑う。
「まだまだでござる!うおおおおおおおお!」
杖に数値にして1000以上のMPが込められる。これ程の力があったとは予想外じゃ。
1500を超えてもなお、MPは杖に込められていく。
「うおおおおおお!」
「そう言えば言い忘れておったが……」
MPを必死に込めているリンタロウに向かってわしは話す。
「大量にMPを込めると爆発するぞ?」
「はあああああああ!……は?」
わしの言葉にリンタロウが気を抜いてしまう。瞬間、杖からMPが一気に噴き出して、とてつもない爆発が巻き起こる。爆発は辺り一帯を巻き込み、半径100mにクレーターが───出来る筈じゃったが、なぜか周りはおろかリンタロウ本人でさえ無傷じゃった。
リンタロウは訳が分からない様子で杖を見つめておる。
「な、何が起こったのでござるか?」
「あふれ出したMPをわしが遠くに転送した。そうしないとこの辺りが更地になってしまうのでな」
「な、なんで爆発することを言わなかったのでござるか?」
「手痛い失敗をした方が、以後気を付けるじゃろ?」
「か、かなりのスパルタでござるな……」
「多少の爆発ならばそのまま受けて貰おうと思ったが、周囲を巻き込むとなれば話は別じゃ。あのままだと周りの人間も巻き込んだ事を自覚せよ」
「わ、分かったでござる。MPを使う時は気を付けるでござるよ」
「分かればいい。いざとなったらわしが何とかするから今は好きに練習せよ」
「了解でござる」
そう言うと、リンタロウは再び杖にMPを込め始める。そこから1時間、わしとリンタロウはみっちりとMPを扱う練習をするのじゃった。
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