魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第百三十話 ふいんき (なぜか変換できない)

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 柔らかな日差しが窓から差し込み、私の顔に降り注ぐ。目を覚ました私はベッドから降りると大きく伸びをする。
 体が少し重い。昨日の疲れがまだ残っているみたいだ。
 昨日は皆の頼み事を聞いて右に左に大移動をしていたからな。疲れが残るのも無理はないだろう。
 まだ寝ていたい気持ちをグッと堪えて着替えをする。
 そういえば、ホウリがいない今、誰が朝食を用意するのだろうか。私が作れればいいが、ホウリがいない時に料理を作る事は禁止されている。


「どうしたものか」


 ホウリ以外に料理が出来る者はいない筈だ。何かすぐに食べられるものはあったか?
 頭の中で家にある食べ物を思い浮かべながら私は着替えを終わらせる。


「最悪、外に食べに行かないといけないかもな」


 考えながら扉を開けると、何やら香ばしい香りが鼻孔をくすぐった。
 この香りはパンか?どうやらリビングから漂ってきているみたいだが。
 不思議い思いながらリビングに入ると、テーブルに美味しそうなパンを並べているロワがいた。


「あ、ミエルさん、おはようございます」
「お、おはよう」


 ロワは私に気が付くと笑顔で挨拶してきた。私は挨拶を返して、再びテーブルに視線を向ける。
 テーブルにはフランスパンや食パン、塩パンと言った様々なパンが並べられている。瓶には手作りと思われるバターやジャムが数種類並べられている。どれもとても美味しそうだ。


「これ全部ロワが作ったのか?」
「そうですよ。作るの久しぶりですので、お口に会うかはわかりませんが」


 そういえば、ロワはパン屋でバイトしていたのだったな。てっきり客寄せパンダとばかり思ってたが、作る側だったか。なんだか意外だ。


「おはよー」
「おはようでござる。気持ちのいい朝でござるな」
「おはようじゃ。なんだかいい匂いがするのう?」


 私が席に座ると、フランとノエルとリンタロウがリビングに入って来た。ノエルは眠そうに目をこすっていたが、テーブルに並んだパンの山を見ると目を見開いた。


「わあ!美味しそうなパンがいっぱいだ!」
「全てロワが作ったのか?」
「はい」
「なるほどな」


 テーブルに目を向けたフランが何やら意味ありげに頷く。きっと私と同じような事を考えているのだろう。
 皆が席に座り手を合わせる。


「「「「「いただきまーす!」」」」」


 皆がパンに手を付ける。
 ノエルはさっそく食パンにバターとイチの実のジャムをたっぷりと付けてかぶりつく。


「うーん、おいしー!」
「中々イケるでござるな」
「ロワ、お主やるのう」
「ありがとうございます」


 ロワは微笑みながらフランスパンを口に入れる。
 私も塩パンを食べてみるが、確かに美味しい。悔しいが私よりも料理の腕は上だろう。


「それで、今日はどこに行くのでござるか?」
「私とロワは騎士団に行く。そろそろ復職しないとな」
「お、いいでござるな」
「連れて行かないぞ?」
「なぜでござるか!?」


 リンタロウが目をひん剥いて私を見てくる。そんなリンタロウを私とフランはじっとりとした目で見る。


「なぜも何もあるかい。ミエルとロワは仕事しに行くんじゃ。冷やかしに行かせるわけにはいかんじゃろ」
「絶対に邪魔になるしな」
「そんな殺生な……」


 リンタロウが嗚咽を漏らしながら涙を袖で拭く。だが、よく見ると涙が出ていないウソ泣きだという事が分かる。どれだけ行きたいんだ。
 仮に本気で泣いていたとしても連れて行く事は無い。貴重なロワとの2人っきりのお出かけだ。何人たりとも邪魔させない。


「いつ出発します?」


 時計を確認すると、いつも私が出かけている時間が迫っていた。


「そろそろいい時間だな」
「では行きましょうか」


 私たちが席を立つとリンタロウが羨ましそうに視線を向けて来た。あんなの無視だ無視。
 私がリンタロウを無視して玄関に向かおうとしたが、ロワが中々来ない。不思議に思ってロワを見てみると、申し訳なさそうにリンタロウに見ていた。
 不味い、ロワの事だから申し訳なさから「一緒にいきませんか?」というに決まっている。ロワはそんな男だ。
 あー、もう口の形が「い」の形になってる。これはもう無理だ。
 私が諦めようとしたその時、鈍い音がしたと思ったらリンタロウが白目を向いて倒れた。


「あれ?リンタロウさんどうしたんですか?」
「まだ寝たりないんじゃろ。わしらが見ておくからお主らは行ってこい」
「分かりました」


 フランがロワに見えないようにウインクをしてくる。どうやら、フランがリンタロウを殴って気絶させたらしい。


「そろそろ行くぞ」
「そうですね。それでは行ってきます」
「いってらっしゃーい」
「行ってらっしゃいじゃ」


 私は心の中でフランに最大級の感謝をしながら、家を出発したのだった。


☆   ☆   ☆   ☆


 今日は以前から話していた、ロワを騎士団に連れていく日だ。あくまでも今日は仕事内容の説明とか、騎士団の雰囲気とかの確認をしにいく。入団するかは十分に考えてから決めるようにとホウリに言われたようだ。
 確かにロワは考える前に行動する節がある。きっちりと考える必要はあるだろう。


「ここを曲がれば騎士団の本部がある」
「結構近いんですね」
「助かる事にホウリが騎士団に近い所を選んでくれたみたいでな」
「これも皆で頑張った結果ですね」


 そうこうしている内に騎士団の本部が見えてきた。
 騎士団の建物は2階建てでかなりの面積を誇っている。この辺りの建物では一番大きい建物だろう。
 正面の玄関に掲げられている騎士団のエンブレムを見上げてロワが感嘆の声を漏らす。


「おおー、ここが騎士団ですか。かなり大きいですね」
「この国を色々な物から守ってもいるかるからな。国営の組織で一番大きいだろう」
「早速入りましょうか」
「そうだな」


 ロワを連れて騎士団の中に入る。
 廊下を進んでいると、ロワが珍しそうに周りを見渡していた。


「騎士団がそんなに珍しいか?」
「色々なお城には行きましたけど、こういう所は初めてでして」


 そう言われれば、ロワはこういう施設には来た事が無いな。私にとっては見慣れた光景だが、ロワにとっては新鮮なのか。
 行きなれた廊下を珍しそうに見まわすロワを微笑ましく思いながら、私は誘導を続ける。


「ここが私の部署である『魔物対策部署』だ」


 扉に魔物対策部署と書かれている扉の前で止まる。


「確か、その名の通り強力な魔物を退治する部署でしたっけ?」
「そうだな。詳しくは中で説明しよう」


 扉を開けてロワを中に招き入れる。
 中に入ると、部署の中を飾り付けている皆がいた。いつもある訓練用の的とかは横に除けられている。壁には『おかえりミエル』と『ようこそロワ君』という文字が躍っている。
 訓練もせずに何をやっているんだか……。


「あ、ミエルだ!」
「本当?みんなー、ミエルが帰って来たよー」


 私が入って来た事に気が付いたリンが皆を呼ぶ。すると、皆が私の元へと集まって来た。


「ようミエル!恋人探しはもういいのか?」
「ケット、帰って来た者への第一声がそれか?」
「でも、ケット君は結構心配してたんだよ?悪い奴に騙されてないかってさ」
「おいリン!余計な事を言うなよ!」
「そうだったのか~?今流行りのツンデレって奴かケット?」
「う、うるさい!」


 リンに真実をバラされてケットが顔を赤くする。どうやらリンの言ってる事は本当みたいだ。


「それで、後ろの人は?」
「噂のロワって奴か?」
「そうだな、皆にも紹介しよう」


 私はロワを連れて部屋の中へと入る。
 部署の皆はいつもの通り整列して、私とロワはその前に立つ。


「全員、構え!」
『はっ!』


 私の掛け声で全員が足を開き胸を張る。



「休め!」


 私の掛け声で全員が足を閉じる。どうやら、私がいない間にも訓練は怠っていなかったようだな。


「さて、今日は皆に報告がある。まず、今日から私が騎士団に復帰することになった。またよろしく頼む」


 皆から盛大な拍手が巻き起こる。よかった、皆私を忘れていなかったみたいだ。一年弱だったとはいえ、留守にしてしまったから忘れられてしまったらどうしようかと思った。


「次に騎士団を見学しに私の仲間が来た。ロワ、自己紹介を頼む」
「分かりました」


 ロワが一つ咳ばらいをして前に出る。


「初めまして、僕の名前はロワ・タタンです。ミエルさんと同じパーティー、スターダストに所属しています。今日はよろしくお願いします」


 ロワが頭を下げると皆から拍手が巻き起こる。心なしか、私の時よりも拍手の音が大きい気がする。


「ロワは騎士団の仕事内容を説明した後、騎士団内を見学してもらう。分からない事があったら皆で教えて欲しい」
『はっ!』
「では、解散!」


 私の掛け声を受けた皆が一気にロワに詰め寄る。


「ねえねえ、ロワ君って闘技大会で活躍してたよね。凄くカッコよかったよ」
「スターダストって今最も勢いがあるパーティーだよね?どうやって入ったの?」
「なんで顔に布つけてるんだ?ちょっと取ってみろよ」
「え、えーっと……」


 皆がロワへと殺到し、ロワが困ったように笑う。
 私はロワの布を取ろうとするケットの手を叩いて皆を睨みつける。


「貴様ら、ロワを困らせるな。あと、ロワの布は取るなよ?取ろうとした奴は減給するからな?」


 私の言葉にケットが慌てて手を引っ込める。事前に言っといてよかったな。


「質問は一つずつにしてくれ。ロワが答えにくいだろう」
「じゃ、ロワ君はミエルとどういう関係ですかー?」


 リンが手を挙げながら笑顔で質問する。


「ミエルさんとの関係?同じパーティーの仲間ですよ?」
「そうじゃなくて、その……こっちの事よ」


 そう言うとリンは手でハートの形を作る。ロワはそれを不思議そうな顔で眺める。


「うーん?よく分かりませんけど、パーティーの皆さんで一緒に遊ぶくらいには仲がいいですよ?」
「え?二人っきりでお出かけとかはしないの?」
「そう言えばあまりないですね?」
「うっそー……」


 ロワの言葉にリンが顔を引きつらせる。
 そして、壁際まで行くと私に向かって手招きをした。私はおとなしくリンの元へと向かうと、リンが私に顔を寄せて来た。


「ねえ、ミエルが見つけた人ってロワ君だよね?」
「そ、そんな事は……」
「隠さなくていいわよ。どうせ、皆も後から気が付くわよ」


 リンの言葉に私は無言で頷く。


「これは前途多難ね。ミエルもどうせアタックしてないんでしょ?」
「そんな事は……ないぞ?」


 図星から思わずリンから目をそらしてしまう。そんな私を見たリンは深いため息を吐いた。


「そんな事だと、ロワ君誰かに盗られちゃうわよ?」
「……ラッカからも同じことを言われた」
「やっぱりね」


 改めてロワへと視線を向けると、皆と仲良く話していた。
 こうして、一抹の不安を覚えつつもロワの騎士団見学は幕を開けたのだった。
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