魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第百三十八話 話は聞かせてもらった!人類は滅亡する!

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 衝撃の真実を知ってしまった私たちは、一度検察所に戻る事にした。いくらフランさんがいるとしても2人だと王都を守る事はできない。今は人手が必要だ。
 馬車を止めて憲兵所へと急ぐ。移動している最中にも私は考えを進める。


『フランさん、さっきの人達にマーキングはしましたか?』
『全員にマーキングしてある。顔写真も撮ってあるぞ』


 そう言ってフランさんは写真を取り出す。さっきまで教会にいた人たちがくっきりと映っている。
 随分と用意周到だ。これさえあれば探すのに役立ちそうだ。


『いつ撮ったんですか?』
『お主が絶望して膝を付いておる時じゃ』
『その節はすみませんでした』


 私が絶望している間にもフランさんは自分が出来ることをやっていたんだ。自分の弱さが嫌になって来る。だからこそ、今は落ち込まずに自分の出来る事をやろう。
 私は王都の地図を広げながら奴らが狙っている場所を考えてみる。と、その前に考えなくちゃいけない事がある。


『フランさん、敵の目的は何だったんでしょうか?』
『さあのう、邪教を信仰する奴らの事の考えなど分からん。大方、自分たちの影響を知らしめたいとかじゃないのか?』


 フランさんの言う事も分かる。自分たちの神を認めさせたいが為に大規模な事件を起こす、そう言う事件は過去にもあった。
 となると、事件が起こるのは人が多かったり、王都の象徴的な場所で起こる可能性が高いかも?
 私が考えを進めていると、馬車が憲兵所の前で止まった。私とフランさんは憲兵所に入って検察室に向かって走る。途中で何人かにぶつかりながらも私たちは検察室に向かう。


「大変です!」
 

 検察室のドアを開けると、夜も遅いと言うのに皆さんが集まっていた。
 眠そうに座っていたスイトさんが私を見て機嫌悪そうに口を開いた。


「遅いぞラビュ。どれだけ待たせるんだ」
「あれ?なんで皆さん居るんですか?」
「お前がリューレの調査をするから待ってろって言ったんだろうが」


 そういえば、いざとなったら全員で乗り込めるように皆さんには待っててもらったんだった。衝撃の真実のショックですっかり忘れていた。


「で、何か掴めたのか?」
「成果が出なかったら皆に特上寿司を奢るって豪語してたけど大丈夫?」
「……そんな事言いましたっけ?」


 記憶を掘り起こしてみる。たしか、自分を追い込みたいからってとんでもない約束をしようと思たんだっけ。
 うう、なんであんな事言っちゃんたんだろう……。


「その様子を見るに何も掴めなかったみたいだな?」
「じゃ、俺達は別の捜査に行くか」
「待たんかい。わしらの報告がまだじゃ」


 フランさんが呆れたように前に出てくる。


「お前は誰だ?」
「わしはフラン・アロス。ホウリと同じパーティーでラビの協力者じゃ」
「ホウリ以外に協力を求めたのか?」


 ビタルさんの私への視線が鋭くなっていく。こんな極秘情報をホウリさん以外の一般人に漏らしたことに対してかなりご立腹みたいだ。
 思わず目を反らした私の代わりに、フランさんが説明を始める。


「時間が無いから端的に言うぞ?爆破、魔物の放出、上水道への毒物混入、これらが明後日の正午に同時に起こる」
「……は?」


 スイトさんが訳が分からないという様子で首を傾げる。


「詳しく説明しろ」


 一方でビタルさんはただ事ではない事であると直感したのか説明を促す。私は見て来た事を出来るだけ正確に話す。
 ビタルさんは黙って私の話を聞く。全て話し終わると、ビタルさんはそのまま立ち上がる。


「このまま対策会議を開く。今から言う奴は会議室に集まってくれ。俺は憲兵に至急対応事件として人員を集める。フランは付いてきて欲しい」
「分かった」


 スイトさんは私やビタルさんを含めた何人かを呼ぶと、そのままフランさんと一緒に検察室から出ていった。


「お、おい……どういう事なんだよ?」
「王都で大きな事件が同時に起きるって事です。とにかく、今は会議室に行きましょう」


 いまだによく分かっていない様子のスイトさんを連れて会議室に向かう。
 状況的にはかなり切羽詰まっている。正直、会議を挟まないで捜査に行きたい所だけど、方針を決めないで動くのは余計に時間がかかる可能性がある。我慢して会議室に向かおう。
 会議室に向かった私たちはそのまま大人しく席に着く。


「はぁ、今抱えてる事件どうするかな……」
「何をしているんですか?」
「食い逃げの事件だ」
「……失礼ですけど、かなりしょぼい事件じゃないですか?」
「数が問題なんだよ」
「数?」
「分かってるだけで被害件数は3000回を超える。しかも、捜査の結果してると1日ごとに20件は増えていってる」
「3000!?」


 よくも捕まらずに3000回も食い逃げ出来たものだ。確かに重要な事件だ。ビタルさんが頭を抱えるのも無理はないだろう。
 私たちが雑談していると、徐々に会議室に人が増えて来た。それに伴って会議室の雰囲気も重くなっていく。
 雑談できる雰囲気ではなくなってきて、私たちは黙って会議が始まるのを待つことにした。
 待つ事数分、ビタルさんがフランさんを連れて会議率に入って来た。フランさんが空いている席に着くと、ビタルさんがホワイトボードの前に立つ。


「これから緊急会議を始める。先ほど、検察官であるラビ・プレンが王都内で同時多発テロが起きるという情報を掴んだ。詳しく説明すると……」


 ビタルさんが私から聞いた内容を簡潔に伝えながホワイトボードに記載する。私が説明していた時よりも分かりやすい。


「……という訳だ。ラビ、不足している部分はあるか?」
「無いです」
「了解だ。次に今後の方針についてだが、爆弾や魔物、毒の捜索が優先になる」
「ですが、範囲は王都全域なのでしょう?いくら人員を投入しても王都全域を操作するのは難しいのでは?」
「だから、実行犯の足跡を追う。教会にいた奴らの顔と身元は割れている」


 そう言うと、ビタルさんはフランさんが複製したであろう写真を皆さんに配る。
 ビタルさんはホワイトボードに写真を張ると詳しい身元を書いていく。


「こいつらの足跡を追って怪しい場所の調査を行う」
「捜査の人員は?」
「緊急事態だ。憲兵の半数を投入する」
「半数も?」


 憲兵の半数となるとかなりの人数だ。恐らく、過去最大級の人数になるだろう。それだけ本気という事か。


「次に細かい調査範囲や役割の分担を行う。まずは操作1班は……」


 ビタルさんが次々と班ごとの役割を割り振っていく。
 ほとんど全員の振り分けが終わり、いよいよ私達の番になる。


「……次に検察組」
「はい」
「本来であれば検察は捜査を行わない。しかし、今は緊急事態だ。捜査に参加してもらうぞ」
「具体的には何を?」
「リューレを確保してくれ」
「……へ?」
「聞こえなかったか?リューレを確保してくれ」
「可笑しいですね、私の耳には今まで手も足も出なかったリューレを捕まえてこいと聞こえましたよ?」
「そう言っている」
「出来る訳ないですよね!?」


 今まで捕まえられなかった人を急に捕まえてこいだなんて無茶なんだ。


「無理でも無茶でもやるしかないんだよ」
「そんな事言っても……」
「いいか?こんなに大規模な計画がバレてないのはリューレの貴族パワーによるものだ。つまり、リューレから情報を吐かせられれば大幅に操作が進展する可能性がある」
「それはそうかもしれないですけど……」
「お前の予想だとリューレは証拠を残してしまうから魔国に逃走するんだよな?だったら今なら捕まえられるだろ?」
「あくまで予想ですからね!?」
「だったら証拠を見つけてから確保しにいけ。緊急時なら逮捕状無しで逮捕出来るだろ」
「ビタルさんって結構な無茶苦茶を言ってきますよね……」


 普段は常識人みたいな顔をしているけど、ここぞという時にはかなりの無茶を言ってくる。本人曰く、その人を信頼しているからこそらしいが、あまり納得はしていない。
 とはいえ、今は常識的な方法で解決できる段階にない。ここはやるしかないだろう。


「分かりましたよ。私たちはリューレの確保の準備をします」
「それでいい。で、最後だが……」


 最後?私たちが最後だと思っていたけど、他に誰かいたかな?


「フラン・アロス。お前は検察と一緒にリューレ確保に向かってくれ」
「了解じゃ」


 ビタルさんの言葉に会議室中が騒めき出す。当たり前だ、いくら協力者といってもホウリさん以外の人にこんな重要な捜査を任せるのは普通じゃない。
 騒めく捜査員たちに、ビタルさんは冷静に説明する。


「フラン・アロスが捜査に参加するのに異論がある者がいるみたいだな。しかし、今は少しでも人でが欲しい。しかも、フラン・アロスは戦闘面でも高い能力を持っている。リューレと戦闘になるようなことがあった時にフラン・アロスの力は絶対に必要になるだろう。以上がフラン・アロスに協力を要請する理由だ」


 ビタルさんは説明を終えると、会議室中に視線を向ける。まだ、話し声がは聞こえるが大方の人は黙ったビタルさんの方を向いている。
 それを見たビタルさんは軽く頷くと、会議室中に響き渡るような大声で叫ぶ。


「これからの捜査に王都の命運がかかっている!全員、気を引き締めて捜査するように!」
「はい!」


 捜査員が続々と会議室から出ていく。私も一刻も早く捜査をしようと会議室を出ようと急ぐ。
 すると、服の袖を掴んでくる人物がいた。いったい誰なのかを確かめる為に振り向くと、スイトさんが私の袖を引っ張っていた。


「どうしたんですか?早くしないと時間が……」
「落ち着け、今はどこに捜査に行けばいいのかも分かってないんだぞ?まずは捜査の目途を立ててからだ」
「そ、そうですね……」


 スイトさんの落ち着いた様子に私は席に座り直す。流石はスイトさんだ。私とは落ち着きようが違う。
 作戦を立てようと王都の地図を広げていると、フランさんもやって来た。


「む?どうしたんじゃ?」
「今から捜査の方針を決めようかと思いまして」
「お前がフランか。よろしくな」
「うむ、よろしくの。で、捜査の方針を決めておるのか?」
「そうだな」
「じゃが、それでは時間が足りぬのではないか?」
「そうだが、闇雲に捜査しても進展しないだろ?」
「……ああ、そう言えば伝えるのを忘れておったわい」
「何をですか?」
「リューレに関する証人がいる場所じゃ」
「な!?」


 フランさんの言葉に私は目を丸くする。隣のスイトさんも驚いて目を丸くしている。


「どういう事ですか!?」
「ホウリの指示書に証人がおる場所が書かれておったのじゃ。本当に後が無い時にだけお主らに伝えるように言われておる」
「そんな重要な事も書かれていたんですか!?」


 色々と言いたい事はあるけど、今はそんな時間も惜しい。


「どこに証拠があるんだ?」
「この近くの酒場じゃ。今から行けば会えるのではないか?」
「すぐに行くぞ!」
「はい!」


 こうして私たちは捜査へと向かったのだった。
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