魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第百四十一話 スタンド攻撃を受けているぞ!

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 リューレから情報を得て急いで王都中に散らばっている憲兵へ連絡を飛ばした。
 私たちはリューレの情報を元に王都の地図に被害個所をマークしていく。フランさんは会議室のソファーで仮眠している。フランさんは今後のカギになる存在だし今は休んでおいてもらおうという考えだ。


「……ほぼ王都全体か」
「これだけの範囲を憲兵だけでカバーするのは無理だな」


 マークは王都全域に渡って付いている。爆薬や毒に関しては見つけやすいが、魔物に関しては見つけても処理するまでに時間がかかる。
 リューレが把握できていない分もあるだろうし、あと1日では到底どうにもならないだろう。それに、最大の問題がある。


召喚士サモナーをどうするか。それが最大の問題だ」


 召喚士サモナーは魔物を召喚できる特殊な役職だ。戦闘では召喚した魔物を操って戦うけど、上手く操れないと自分も攻撃されちゃう難しい役職でもある。
 王都中にいる魔物を何とか出来ても、召喚士サモナーで魔物を召喚されたら人々が襲われてしまう。
 ここで必要になって来るのは、どれだけ多くの人員を広い範囲に配置出来るか。配置の人数が少ないとそこを突かれてしまう。


「フランさん曰く、王都の半分は守れるみたいです」
「となると、残りの半分を俺達で守らないといけないのか」
「それでも人員的には足りていない」


 王都は人国の中でも一番大きな街だ。半分とは言え、守り切るには相当な人員が必要だ。


「騎士団に要請を出しますか?」
「それでも足りていない。せめて戦闘が出来る奴らがいればな……」
「……いない事も無いぞ」


 私たちが悩んでいると後ろからフランさんの声が聞こえた。
 振り向いてみると、眠そうに目を擦りながら欠伸をしているフランさんがいた。


「寝ていなくて良いんですか?」
「少しは休めた。今日一日は持つじゃろう。それより、今は魔物をどうするかじゃろ?」
「何か案があるのか?」
「冒険者に依頼すればよい。冒険者には腕利きの奴もいるし名案じゃろ?」
「うーん、そうできれば良いんですけどね……」


 冒険者に依頼する、簡単に戦力が揃えられるかもしれないけど、色んな人が自由に活動していてまとまりがない印象だ。
 強くても街を壊したり、間違えて人を攻撃するかもしれない。そういう人たちに任せてもいいのだろうか?


「俺は反対だぜ?何せ多すぎて管理が行き届かねえ。騒ぎに乗じて変な事をする奴がいるかもしれないしな」
「私もどちらかと言うと反対です。何かあった時に責任の所在が曖昧になってしまいます」


 スイトさんの言葉に私は賛同する。
 私たちの言葉を聞いたビタルさんは腕を組んで考え始める。


「二人の言う事も分かる。しかし、フランの案の代わりも思いつかないな」
「騎士団のように信用があり、人員も揃っている。そんな都合のいい組織があるのかのう?」


 フランさんの言葉に私は押し黙る。そんな都合のいい組織がある訳がない。それを知っていての問いかけだろう。フランさんって結構いじわるなんだなぁ。
 フランさんの言葉を聞いたビタルさんがゆっくりと目を開ける。


「……フラン、知ってる限りで今動ける腕利きの冒険者をリストアップしてくれ」
「そう言われると思って用意してあるぞ」
「……確認する」


 フランさんが得意げに書類をビタルさんに差し出す。ビタルさんは呆れながら書類を受け取った。
 ビタルさんはパラパラと書類と捲りながら眉を顰める。


「見たことある名前が多いな?」
「闘技大会に参加した者は全員入れておる。それに加え、A級パーティーと腕の立つ個人の冒険者もリストアップしている」
「私にも見せてください」


 ビタルさんの後ろからリストを覗き込む。


「雑誌とかで良く見る人ばかりですね」
「有名人ばっかだな」
「名が知れていると下手な事は出来んじゃろ?」
「全員実力は申し分ない。社会的に縛りがあると言うのも悪くないな」
「そうと決まれば、明日の朝に皆に声をかけてくるわい」


 そう言うと、フランさんはもう一度ソファーで眠り始めた。
 気持ちよさそうに寝ている。なんだか私も眠くなってきた。


「ふわあああ……」
「ラビュも寝ておけ」
「そんな。皆さんが頑張っているのに私だけ寝ていられませんよ」
「重要な時に倒れられる方が困る。少しで良いから休んで来い」
「そうだ、寝てこいラビュ」
「そう言う事ならお言葉に甘えますけど、私はラビです」


 お二人に言われた通り私は仮眠室に向かう。
 不安な気持ちを抱きながら私は眠りに付いたのだった。


☆   ☆   ☆   ☆


 早朝、私とスイトさんは街に異常が無いか見回りをすることにした。少し寝たおかげで頭がスッキリした。これなら頑張れそうだ。
 気合を入れ直した私は歩きながら写真にあった人や不審な物が無いか注意深く観察する。


「見たところ異常はありませんね?」
「だが、確実に犯人や魔物がいる。油断はするな」
「分かりました」


 いつもと同じように活気がある街並み。朝の市場には果物を手に取ってる女性や呼び込みを掛ける八百屋の店主。パン屋さんからは小麦粉が焼ける香ばしい香りが漂ってきており、食欲を刺激される。
 いつも通りの変わらぬ光景。この景色が壊れてしまうかもしれないと思うと自然と体に力が入る。


「一人でも多くの召喚士サモナーを捕まえられれば、それだけ多くの人が助かるかもしれません」
「見た目で判断するのはかなり難しいけどな」


 一応、神殿にいた人達の顔は頭に入れているけど、あれで全員とは思えない。
 召喚士サモナーはかなりレアな職業だから沢山いるとは思えないけど、警戒するに越した事は無い。
 すれ違う人々を睨みつけながら街を歩いていると、隣にいたスイトさんがため息を吐いた。


「目つきが悪すぎるぞ。そんなんじゃ犯人に逃げられるだろうが。もっと肩の力を抜け」
「すみません、つい……」


 私が申し訳なさそうに頭を掻く。確かに気合を入れ過ぎたのかも。
 私がフーとため息を吐くと、低く響くようにお腹が鳴った。そこで、昨日の朝にパンを食べてから何も食べていなかった事を思い出す。
 思わず顔を真っ赤にしてお腹を押さえて隣をみると、スイトさんが大口を開けて笑っていた。


「はっはっは、朝飯でも食うか?」
「……はい」


 食べないといざという時に力が出ないだろう。私たちはカフェに入って食べたい物をそれぞれ頼む。


「私はカツサンドとコーヒーを」
「俺はナポリタン大盛りとオレの実のジュース」


 注文を終えると私は席についてお水を飲んで一息つく。さっきまで籠っていた力が一気に抜けていくようだ。


「なんだか疲れました」
「気を張り過ぎだ。少し休まないと大事な時に力が出ないぞ?」
「そうですね……」

 
 私は思わず机に突っ伏してしまう。少し寝たとはいえ、昨日から動きっぱなしだったし、心身ともに疲れているみたいだ。


「スイトさんは休んだんですか?」
「ラビュを待っている時に仮眠は取った。ビタルの奴もああ見えてちゃんと休んでるんだぜ?」
「はえー、そうだったんですね。私はラビですけど」


 忙しそうに見えていてもキッチリと休んでいる、そういう所が一流かどうかの違いなのかもしれない。


「それにしても、本当に人々を避難させなくていいんですか?」
「その場所に爆薬や魔物がいない事を確認しないと人々を避難出来ないし、避難した奴の中に召喚士サモナーがいないとも限らない」
「確かにそうですね。そういう準備が出来ていない中でテロが起きるって言ったら余計に混乱するだけですしね」


 避難してほしいけど、考え無しにやってしまうと、余計に危険な目に会わせてしまうかもしれない。ままならないものだ。
 そうこうしていると、私たちが頼んだ料理がやってきた。
 私たちの目の前にそれぞれの料理が置かれる。


「「いただきます」」


 それぞれの料理に手を付けようと手を伸ばす。瞬間、


(きゃああああ!)
「行くぞラビュ!」
「え、あちょっと!」


 外から悲鳴が聞こえて来て、スイトさんがすぐさま外に飛び出す。
 私は反応が遅れて目を丸くしたが、ただ事ではない気配を感じ取ってお金を置いてビタルさんの後に続く。
 外には人々が何かから逃げていた。逃げて来た方向へと視線を向けるとこん棒を持ったゴブリンが人々を襲っていた。


「なんで!?明日の正午じゃなかったの!?」
「まずは市民の安全確保が先だ!ラビュは皆を逃がしてくれ!」
「わ、分かりました!」


 そう言うと、スイトさんは魔物の群れに突っ込んでいった。
 私は言われた通り、市民の皆さんの避難に集中する。


「皆さん!こっちです!」


 とりあえず、噴水がある広場があるからそこに避難してもらおう。少なくとも魔物からは守りやすくなるだろう。


「……これを外すことは無いと思いたいな」


 手にはめた腕輪を軽く撫でる。これを外すという事はかなり激しい戦闘になるという事だ。そうならないように祈ろう。


「こっちに逃げてください!」


 私が市民の皆さんを誘導していると、向こうから憲兵の制服を着た人が走って来た。かなり焦っている様子だ。


「すみません!」
「どうしました?」
「この先の広場に爆弾が仕掛けられています!皆さんを別の場所に避難させてください!」
「そうなんですか!?」


 その事実が本当であれば、人を集めるのは危険だ。すぐに別の場所に誘導しないと!
 憲兵の人が焦ったように額の汗を拭う。


「別の避難場所に心当たりはないですか?」
「そうですね……、私はすぐに心当たりはないですが、あなたは無いですか?」
「わ、私ですか?」
「その制服は各班の隊長ですよね?だったら地理に詳しいんじゃないですか?」


 私の言葉に憲兵の人が目を泳がせる。


「あ、えっと……あっちにある建物とか?」
「……そうですか」


 答えを聞いた私はがら空きの憲兵の人のお腹にパンチをする。


「ぐはっ!」


 私は蹲った憲兵の人を押し倒して手を捻り上げる。
 そのまま後ろ手にして、手錠をかける。


「午前7時5分、テロ罪で逮捕します!」
「な、何を急に!?」
「私は各班の隊長の人の顔は覚えています。しかし、あなたは見覚えがありません。恐らく、噴水の広場に集まられると都合が悪かった、違いますか?」
「………………」


 私の言葉に憲兵の人が押し黙る。どうやら正解みたいだ。
 とりあえず一人は確保した。しかし、敵の攻撃は始まったという事実、それだけは紛れもない事実だった。
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