魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第百五十五話 嘘である

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 ロワが遠征から戻って来た次の日、俺はロワの部屋で駄弁っていた。


「その途中で光の柱が突然出て来たんですよ」
「詳しい場所は?」
「王都からダメルに向かう街道があるじゃないですか?その途中で見える森で見ました」
「地図で言うとどこだ?」
「えーっと、ここですね」


 フランが原因であると悟られない為に、知らないという体で話を聞く。フランとノエルにも釘を刺していたし、絶対に隠し通さないとな。
 地図の上に光の柱を見つけた場所を指差させる。大まかな位置は当たっているな。


「調査はしたのか?」
「しました。ですが、何も見つからなかったんです。どう思いますか?」
「実際に見ていないから何とも言えないな」


 嘘だ。ばっちり目撃していた。


「誰がやったんでしょうね?」
「今の話だけだと見当もつかないな」


 嘘だ。フランがやったって知ってる。


「詳しい調査なら騎士団がやるだろ。俺も少しは調べておこう」
「ありがとうございます」


 ロワから話を聞き終わった俺は地図を仕舞う。ロワはベッドに横になると、眠そうに話す。


「そう言えば、明日はノエルちゃんの受験と面接でしたっけ?」
「そうだな」
「大丈夫そうですか?」
「普段通りなら問題ないだろ」


 絶対に合格できるとは言えないが、合格率9割は硬いだろう。


「問題があるとすれば面接だな」
「面接?ノエルちゃんって面接が苦手でしたっけ?」
「そんなこと無い。だが、面接自体がちょっと特殊でな」
「何かあるんですか?」
「悪いが詳しくは言えない。明日の夕飯にでも話してやるよ」
「分かりました」


☆   ☆   ☆   ☆


 ノエルの試験当日、俺はスーツに身を包んでリビングで新聞を読んでいた。


「待たせたのう」
「お待たせー」


 新聞から顔を上げると、着替え終わったフランとノエルが入って来た。
 フランはパンツスタイルのスーツで、ノエルは黒のワンピースと言った落ち着いた格好をしている。


「行くか」
「そうじゃな」


 新聞を仕舞って玄関に向かう。


「忘れ物はないか?」
「昨日の内に確認したから大丈夫!」
「ならいい」
「それじゃ、出発じゃ!」
「おー!」


 楽しそうに拳を突き出すノエルとフラン。緊張感が全くないが、緊張しすぎているよりは良いだろう。


☆   ☆   ☆   ☆


 家から十数分歩き、受験会場である白竜学園までたどり着いた。
 門の向こうには本校舎と体育館が見える。どちらも普通の学園よりも2倍は大きいだろう。


「おー、ここがノエルが通う学園か」
「この辺りだと一番大きな学園だ。設備も充実している」


 ノエルの反応を見てみると、無言で目をキラキラさせてた。早く入りたくて仕方ない、そういう気持ちなんだろう。


「試験はわしらだけか?」
「そうだな。他の入学希望者はもう終わっている。サンド関係のゴタゴタでそれどころじゃなかったからな」
「寂しい気もするが、仕方ないのう」
「ねぇねぇ、早く行こ?」


 ノエルがスーツの裾を引っ張って来る。いつまでも入口にいても仕方ないし、さっそく中に入るか。
 門をくぐり校内に入る。すると、『ノエル・カタラーナ様 受験会場』という看板と受験会場までの地図が書いている。


「まずは空き教室に行けばいいみたいだな」
「意外と複雑な作りじゃのう」
「古い校舎を無理やり建て替えた結果みたいだ。慣れれば大したことない」
「伝統がある学校なのか?」
「来年で創立200年だ」
「なんじゃ、その程度かい」
「フラン基準で考えるなよ?」


 500年生きている魔王は置いといて、地図を頼りに空き教室に向かおう。
 校舎に足を踏み入れると今日が休みと言う事もあるが、生徒や先生の気配が少ない。しかし、窓から見える校庭には部活動をしている生徒や監督の先生の姿が見える。


「3つの部活が余裕をもって部活をしておる。かなり大きな校庭じゃな」
「校庭だけじゃない。プールも大きいし、体育館も通常の2倍は広い」
「大きすぎて持て余しそうじゃな」


 廊下を進んでいる間にもノエルはしきりに周りを見渡している。気になる物が多すぎて仕方ないと言った様子だ。仕方ないかもしれないが、もう少し落ち着いて欲しい。
 そんなこんなで指定された空き教室にたどり着いた。引き戸になっている扉には試験会場と達筆な字で書かれている。


「ここに入ればいいのかのう?」
「みたいだな」


 引き戸を開けると、教室の真ん中に椅子と机があった。黒板には『9時から試験開始』と書かれている。


「俺達は一旦、待つことになりそうだな」
「ノエルは座って待っていればいいの?」
「そうだな。俺達は試験が終わった頃に来るから、頑張ってくれ」
「……わしはこっそり残って良いか?」
「良い訳ないだろ。さっさと行くぞ」


 本当に残りそうなフランを引きずって教室から出る。
 扉を閉めて、フランを引きずったまま廊下を進む。図書館の前までたどり着くとフランを開放した。


「お前な、本当にいい加減にしろよ?ロワに続いてノエルにも迷惑をかけるつもりか?」
「そう言うつもりは無い。ただ、ノエルが心配なだけじゃ」
「過保護もいい加減にしろ。やり過ぎると、また嫌われるぞ?」
「むう、それは困る。よし、ノエルにも気付かれないように見守るとしよう」
「そう言う事じゃねえよ」


 今にもノエルの元へ向かいそうなフランを抑える。


「とにかく、試験中はノエルの元に行くな。行ったらノエルの保護者の枠をミエルに変えるからな?」
「それは嫌じゃ!」
「だったら大人しくしてろ」
「う、うむ」


 フランがやっと首を縦に振る。ノエルが心配なのは分かるが、度が過ぎていないだろうか。


「試験はいつ終わる?」
「国語、算数、世学、社会でそれぞれ1時間ずつだ。13時には終わるだろうよ」


 世学とは、日本で言う理科と似たような教科だ。異なるのは理科的な知識に魔法の知識も加わっているという所だ。後は、魔物の知識も問われる。
 ノエルには実践で教えている知識も多いから、学校の受験程度は難なくこなすだろう。


「終わるまで何をする?」
「学校の中を見て回るか。どこか行きたい所はあるか?」
「ならば校庭に行って部活を見たい」
「了解。今の時間ならサッカー部が練習しているから、そこでいいか?」
「うむ」


 こうして、俺達は時間を潰すために校庭に向かった。


☆   ☆   ☆   ☆


 校庭にはサッカー部が真面目に練習をしていた。まだ肌寒いが、スポーツするにはいい気温だ。


「良いのう、若さのパワーがあふれ出しておるわい」
「500歳超えの老人には眩しかったか?」
「ほざけ、わしのパワーには束になっても勝てん」
「像とアリを比べるな」


 ここの学園はスポーツが強いという話は聞いた事が無い。しかし、こうしてみると筋が良い奴もチラホラいる。練習方法次第で化けるかもしれない。
 遠くから練習の様子を見ていると、監督の先生がと目が合った。すると、監督の先生がこちらにやって来た。


「よう、お疲れさん」
「どうした?何故ここに?」
「前に保護している女の子がいるって言っただろ?ここの学園に入る為に試験を受けに来たんだ」
「試験を受けに来る子ってホウリの所の子だったんだな」


 納得したように監督が頷く。


「今は練習中か?」
「そうですね。今は……」
「監督、そいつら誰?」


 監督の後ろからユニフォームを着た子が顔を出した。


「この人達は、新入生の保護者の人だよ」
「そうなの?こんなアホみたいな奴が保護者?」
「あ゛?」
「フラン、ステイ」


 フランが切れそうになるのを俺が必死に止める。このままだと殴りかねない。
 すると、ユニフォームを着た子がサッカーボールを差し出してきた。


「なあ、お前サッカー出来るか?」
「おい、失礼だぞ」


 監督がその子をたしなめようとしたが、俺は気にせずサッカーボールを手に取る。そして受け取ったボールでリフティングを始める。
 まずはモモでボールをリフティングし、つま先で蹴って頭の上にボールを乗せる。ボールを背面を転がして踵でボールを蹴り上げる。


「おお……」


 子供は何も話さずにリフティングを見ている。
 その後もいくつかの技を披露して、子供にサッカーボールを返す。子供は放心状態でボールを受け取る。


「すげー!師匠って呼んでいい?」
「いいぜ」


 俺は得意気にサムズアップを返す。すると、子供が監督と俺を見比べ始める。
 

「どうした?」
「監督とどっちが凄い?」
「勿論、監督の方が凄いぞ」
「ホウリ?」


 監督が血の気の引いた表情で見てくる。俺はそんな監督に満面の笑みを返す。


「で、そこの女は何が出来るの?」
「あ゛あ゛?」
「ステイ、ステイ」


 殺気立っているフランを必死で止める。このままだと子供を八つ裂きにしかねない。


「こら!初対面の人に失礼だろ!」
「えー、何も出来ないの?役立たずなの?」
「あ゛あ゛あ゛?」
「ステイ、ステイ、ステイ」


 何とか宥めているが、フランの限界が近い。最悪の場合、この場所を離れないといけないかもしれない。
 フランが鼻息を荒くしていると、運動場の向こうから何かが飛んでくるのが見えた。あれは、サッカーボール?このままだと多分、子供の後頭部目掛けてボールは飛んでくる。
 だが、子供はボールが飛んでいる事に気が付いていない。このままだと、直撃して怪我をするかもれない。
 俺がそう思っていると、隣から一陣の風が吹いた。


「危ない!」
「え?」


 遠くからの声で異変に気が付く子供。しかし、その時は既にボールは目前に迫っていた。
 誰もがボールが直撃する、そう思った瞬間、子供の目の前に人影が現れた。


「とりゃあ!」


 その人影……フランは2mくらい飛ぶと、ハイキックの要領でボールを蹴り飛ばす。
 蹴られたボールは弧を描くように飛んでいき、そのままゴールに吸い込まれていった。皆は呆気に取られていたが、徐々に拍手が巻き起こっていった。
 助けられた子供も目を輝かせてフランを見ている。


「す、すげえええ!神だ!」
「神?わしもみっちゃんと同格になったのか?」
「そんな訳ないだろうが」


 そうこうしている内に部員が次々とこちらに走って来た。俺とフランはあっという間に部員に囲まれる。


「神!サッカー教えてくれ!」
「師匠もすげえよ。コーチやってくれよ!」


 言葉と部員の波に埋もれながらフランは困った顔をする。
 こうして、軽い気持ちでの部活動見学はかなり長引いたのだった。
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