魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第百七十四話 きみはじつにばかだな

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 ある日、ミントに呼ばれた俺達はミクモ研究所に向かっていた。


「なんであやつの研究所にいかねばならん?どうせ碌な事にはならないじゃろう?」
「確かにそうだな。話に聞いてる限りはまともな奴ではないのだろう?」


 不機嫌な様子でフランが呟き、ミエルが同意する。2人の言いたい事ももっともだ。ここは説明しておくか。


「俺がある発明を頼んでいてな。それを取りに行くだけだ。何かする訳じゃない」
「だと良いんだがな」


 不安そうなノエルとミエルと対照的にロワとノエルは楽しそうだ。


「どんな発明品があるんでしょうか?暇な時に触らせてくれませんかね?」
「楽しみー!」
「勝手に触るなよ?怪我で済まない可能性があるからな?」
「「はーい」」


 元気だけは良いんだが、分かっているのか分かっていないのか心配だ。こいつらからは目を離さないようにしないとな。
 そうこうしている内にミクモ研究所に到着した。
 俺はノックもせずに研究所の扉を開ける。


「返事を待たなくていいんですか?」
「住居じゃなくて研究所内なら大丈夫だろ。ミントは呼びかけても反応しない事もあるしな」


 そんな訳で全員を連れて研究所内に入る。研究所は出来たばかりという事もあり中はかなり綺麗だ。発明品も棚に丁寧に並べられている。
 前の研究所は所々焦げてて、発明品も床に転がっていたんだがな。これはラミスが片付けたな?


「ミントの奴はどこだ?」


 研究所の中にミントの姿はない。奥にいるんだろうか?
 奥の扉を開けようか悩んでると、扉が開いてミントが出て来た。髪はボサボサで額にはゴーグルが付いている。今まさに発明をしていた所なんだろう。


「よおミント。発明終わりか?」
「ああ、昨日から発明していたんだが、気が付いたら約束の時間になってたんだ」


 目の下の隈はそういう訳か。こいつも夢中になると周りが見えなくなるタイプだったな。


「ラミスは?」
「今日は同窓会で出かけている。だからお茶も出ないぞ」
「お主が淹れれば良いのではないか?」
「お茶なんか淹れたこと無い。水でいいなら出すぞ?」
「いやいい。俺が持ってきたジュースを飲もう」


 俺は瓶ジュースを6本だして栓を抜く。
 そのうちの1本に口を付けながら話を始める。


「頼んでいた物は?」
「エネルギーを充填中だ。もう少しだけ時間が掛かる」
「そうか。じゃあ少し待つか」


 俺の言葉にミントの目がキラリと光る。これは良くない奴だな。


「だったら、作った発明品を試してみないか?」
「良いんですか?」
「ノエル、やってみたい!」
「ダメに決まってるだろうが」
「そうじゃぞ。何が起こるか分かった物ではない」


 俺とフランの言葉にロワとノエルが不満そうな顔をする。


「良いじゃないですか。いくらミントさんでも危険な発明品は使わせないでしょうし」
「その通りだ。危険だと分かっている者は使わせない。時間があるんなら協力してくれないか?」


 ミントがロワの言葉に同意する。まあ、時間があるのは事実だし機構を把握すればどういう挙動をするのかは大体わかる。フランもいるし何とかなるだろう。


「分かった。少しだけ協力しよう」
「助かる。早速だが裏庭に来てくれ」


 ミントに連れられて裏庭に向かう。テニスコート4枚分の大きさで結構の広さがある。


「さて、まずはこいつだ」


 ミントはアイテムボックスから大きな扉を取り出す。建物は無いのに扉だけあるのは何とも奇妙な光景だ。大きさな人が一人通れる位の普通の扉の大きさだ。色は茶色で普通の扉と同じだ。


「なんだこれは?」
「これは『どこにでもドア』。安定したワープをするための発明品だ」
「凄いですね。MP使わなくても良いんですか?」
「このドアにMPを溜められるから、使用者のMPは不要だ」
「移動可能な距離は?」
「王都から魔国まではワープできる」


 なるほど、完成すればかなり有用だな。だが、納得いかない事が一つある。


「名前は別の方が良いんじゃないか?」
「なぜだ?分かりやすくていいだろう?」
「その……色々とマズい気がしてな」
「まあ、この位なら良いのではないか?なんとかなるじゃろ」


 フランの言う通り、似てるだけなら良いか?とりあえず、名前の事は置いておこう。


「効果は分かった。次は設計図を見せてくれ」
「ほらよ」


 ミントから設計図を受け取って確認する。


「待て、これってワープって言うより……」


 俺は言いかけた事を喉の奥まで押し込む。ちょっと、これを言うのは止めておこう。


「で、誰が試すんだ?」
「僕がやります!」
「ダメだ、ミエルがやってくれ」


 手を挙げたロワをバッサリと切り捨てる。ロワはかなりショックだったのか、目を伏せて落ち込む。
 一方、指名されたミエルはというと警戒した様子で俺を見て来た。


「なぜ私なんだ?」
「一番防御力が高いから、何かあっても対応できるだろ?それともロワにやらせるか?」
「本当ですか!」


 ロワが期待を込めた目でミエルを見る。その視線に気づいたミエルが慌てて答える。


「私が試すぞ!」
「そうですか……」


 ロワが再びがっかりする。そんなこんなでミエルがどこにでもドアの前に立つ。


「好きな場所を念じてドアを開けてくぐれば、その場所まで移動できるぞ。試しに庭の端まで移動してくれ」
「分かった」


 ミエルは大きく息を吐いてドアノブに手を掛ける。そして、恐る恐るといった様子でどこにでもドアを開けて中に入る。瞬間、


「うおっ!?」


 ミエルの体が急に加速して宙を舞う。加速したミエルはきりもみ回転しながら庭の端まで吹き飛ぶ。
 着地に失敗し腕や腹を強打しながらミエルは地面を転がる。だが、すぐに起き上がってミントを睨みつけた。


「ミント!これはどういう事だ!」
「どういうって、ワープだが?」
「ああいうのはワープとは言わん!発射というんだ!」
「目的地に着けば同じだろう?」
「同じな訳あるか!私以外なら死んでいたからな!?」
「そうか、改良の余地があるな」
「改良しても、長距離の移動は危ないと思いますよ?」


 ロワが顔を引きつらせる。多分、自分が使わなくて良かったって思ってるんだろう。
 まだミントに文句を言いたげなミエルだったが、今度は俺を睨みつけて来た。


「ホウリ、貴様も分かっていただろう?」
「まあな」
「貴様!」
「しょうがねえだろ、目的の為なんだからよ」
「くっ……」


 ミエルは悔しそうに顔を歪ませていたが、顔を背ける。分かってくれたようで何よりだ。


「それで、他に発明品はあるか?」
「あるぞ。これだ」


 そういって、ミントが発明品を取り出す。それは竹とんぼの下に吸盤がついたような見た目をした発明品だった。


「……これって良いのか?」
「微妙に違うし良いのではないか?これは紫じゃし」


 フランの言う通りこの発明品はアレとは違い紫色をしている。


「ちなみにこれの名前は?」
「ヘリトンボだ」


 中々ギリギリだな。


「こいつの効果は?空を飛ぶのか?」
「こんな小さなもので飛べるわけないだろう?これは小型の盾だ。腕に付けてMPを流せば展開する」
「設計図をよこせ」


 ミントから設計図を奪い取り確認する。なるほどな。


「ロワ、やってみるか?」
「ぼ、僕がですか?」


 どこにでもドアの惨状を見て、積極的に試そうとは思わないか。
 不安そうなロワを見てノエルが心配そうにする。そんなノエルにロワは笑顔を作って答える。


「大丈夫、僕に任せておいて」


 そう言ってロワはヘリトンボを腕に付けてMPを流す。すると、ヘリトンボの羽が伸びて回り始め、青く丸い盾となった。


「おお、これなら盾として使えそうです。しかも軽くて持ち運びもしやすいです」
「問題はどこまで攻撃を耐えられるのかだな」
「ちょっと試してみますか」


 そう言ってロワが矢を放つ。そして、矢の挙動を操作して自身に向ける。


「やあ!」


 向かってきた矢をヘリトンボで全て弾き飛ばす。


「おお、結構使い勝手がいいですね。矢を撃つ時も邪魔になりにくいです」
「これは成功か?」


 ミントがそう言った瞬間、ヘリトンボからミシミシと言った異音が鳴った。
 その音に気が付いたロワだったが、異音はどんどんと大きくなっていく。


「これって大丈夫……」


 ロワが話した瞬間、ヘリトンボが爆発して羽がバラバラに飛び散った。
 バラバラになった羽は全てロワに向かって飛んでくる。


「うわ!」


 飛んできた羽がロワに直撃すると思った瞬間、全ての羽が停止し重力に従い落下した。


「あ、危ないですよ!なんで爆破するんですか!」
「連続使用に耐えられなかったな。これも改善点だな」


 そう言ってミントはメモを取る。


「はあ、目的の為とはいえ危険すぎませんか?」
「対処できたからいいだろ。で、まだ発明品はあるのか?」
「もう無いな」
「だったら例の奴よこせ。もうエネルギーの充填は終わってるだろ」
「そうだな」


 ミントはメモを仕舞って研究所へと戻る。


「そういえば、今回の発明品とは何なんじゃ?皆は知っておるようじゃが」
「今話すよりも実物見て説明した方が良いだろ」
「それもそうか」


 そんなこんなで待っているとミントが巨大なケース状の発明品を持ってきた。


「これが約束のものだ」
「ありがとよ」


 ケースは棺桶くらいで人が一人入れる位の大きさだ。上の方がスライドするように開くようになっている。
 フランは発明品を見つめながら首を捻る。


「なんじゃこれ?」
「簡単に言えば冷凍庫だな」
「冷凍庫?そんなの家にもあるじゃろ?」
「あれだと小さすぎるし冷やす力が弱い。これなら-100度まで冷やせる」
「そんなに冷やして何をするつもりじゃ?」
「そんなの決まってるだろ」


 俺はニコリと笑いながら答える。


「これを使って、滅茶苦茶美味いシャーベットを作るんだよ!」
「……はあ?」
「これから暑くなっていくだろ?これを使えば滅茶苦茶美味いシャーベットが作れるんだよ!」
「そんな物の為にあんな危険な実験に付き合ったのか?」
「そうだが?」
「……おぬしはそう言う奴じゃったな」


 フランは何か言いたそうだったが、呆れた顔をしただけで何も言わなかった。
 こうして、俺は超高性能冷凍庫を手に入れたのだった。
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