魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第百九十二話 に゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ん

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 休日の日の朝、ノエルは庭でフランお姉ちゃんと対面していた。周りにはフランお姉ちゃんが張った結界が張ってあり、いくら暴れても大丈夫だ。


「わしは抵抗せんから思いっきり打ち込んでくるがよい」
「分かったよ!」


 ノエルは拳を構えてMPを体の外に出す。そう、魔装だ。
 そして、出したMPを体の周りに固めていくようなイメージで集める。MPをどれだけ集められるかで魔装の効果が決まる。


「ふぅぅぅぅ……」


 大きく息を吐いて全体にMPを固めていく。
 魔装は固めるMPを多くするほど抑えるのが難しくなっていく。ノエルは使うMPが多いからちゃんと集中しないとね。
 沢山のMPをどんどんと固めていく。すると、体に力が漲ってくるのを感じる。
 MPが崩壊するギリギリまで固めると拳を構えてフランお姉ちゃんを見据える。


「行くよ!」
「来い!」


 力が漲る体でフランお姉ちゃんに殴り掛かる。


「ぜやあああ!」
「ふん!」


 ノエルの拳をフランお姉ちゃんは片手で受け止める。瞬間、ものすごい衝撃が辺りに広がっていく。多分、結界が無かったら家の周りが粉々になっていたと思う。


「やあああああ!」


 思いっきり殴り抜けるとフランお姉ちゃんが後ろに吹き飛んで、そのまま着地する。受け止めた腕からは白い煙が出ていて青い痣が出来ている。
 フランお姉ちゃんはしばらく腕を見つめてると、結界を解いてノエルを向いてニッコリと笑った。


「ノエル、前よりも強くなったのう」
「えへへ、ありがと!」
「いや、まだまだだ」


 声がした方へ視線を向けると家の陰からホウリお兄ちゃんがやってきた。
 ホウリお兄ちゃんの言葉にフランお姉ちゃんは怪訝そうな顔をする。


「急に現れて何を言うんじゃ」
「確かにノエルは強くなったが、フランを倒すにはまだ足りない」
「……うん」


 ホウリお兄ちゃんの言う通り、今のままだとフランお姉ちゃんを倒すことは出来ない。まだまだ強くならないと。


「次は魔装の時間を延ばす練習をしようかな?」
「そうだな。目標は全力の魔装を1時間続けることだ」
「威力も上げないとダメなんだよね?」
「そうだな。フランに多少ダメージを与えられたとは、まだ威力が欲しい所だ」
「分かったよ!ノエル頑張る!」


 ノエルは拳を握ってやる気をアピールする。それを見たホウリお兄ちゃんは満足そうに笑う。


「その調子だ。そういえば、今日は友達と待ち合わせしてるんだろ?そろそろ出かけないといけないんじゃないか?」
「あ!」


 時計を見ると、待ち合わせの時間まで10分の時間を指していた。


「やばいよ!遅れちゃう!」
「待たせちゃ悪いだろ。早く行ってやれ」
「うん!行ってきます!」
「行ってらっしゃいじゃ」
「いってらっしゃい」


 ホウリお兄ちゃんとフランお姉ちゃんに見送られながらノエルは家を飛び出す。
 待ち合わせ場所は中央広場の時計台前だったはず。時計台までは走れば10分、時間的にはギリギリだ。


「急げー!」


 待ち行く人を避けながらノエルは時計塔まで走る。魔装を使えばもっと早く行けるだろうけど、早すぎると危ないし普通に行こう。


「はぁ……はぁ……」


 久しく魔装無しで走ってなかったからか、少し全力疾走しただけで息が切れる。走り込みも練習に入れた方が良いかな?
 そんな事を考えながら時計台まで全力疾走する。
 時計台が見えてくると、その下にコアコちゃん、サルミちゃん、マカダ君がいるのが見えた。時間は……良かった、間に合ったみたい。


「おーい!」


 手を振りながら声を掛けると、皆もノエルに気付いたのか手を振り返してくれた。
 なんとか時計台までたどり着くと、呼吸を整える。


「ぜぇ……ぜぇ……、お、お待たせ……」
「時間ギリギリね、ノエル」
「で、でも間に合ったよね?」
「うん、時間ピッタリだよ」
『ひどい顔だぜ。水でも飲むか?』
『ありがと、家からずっと全力疾走していたから喉乾いちゃって』


 マカダ君から水を受け取って一気に飲む。火照った体に冷たい水がしみ込んでいく。


「ぷはっ」
「で、今日は何するの?」
「ふっふっふ、オカルトクラブの活動をするよ」
「え?でもオカルトクラブはまだ……」
「練習だよ。いざ活動を始めたときのね」
「具体的に何をするのよ」
「今日はこの子を探します」


 ノエルは子猫が写った写真を取り出す。茶色体で耳の先が白くなっている可愛い子だ。


「この猫がなんなのよ」
「この子を今日は探します。名前はモカちゃん」


 ノエルは笑顔でそう告げた。すると、皆が顔を見合わせる。


『その猫を探すのか?』
『うん!』
「オカルトクラブの一環として?」
「うん!」
「皆解散するわよ」
「ちょっと待って!」


 帰ろうとするサルミちゃんの腕にしがみつく。


「ちょっとだけで良いから!探すの手伝ってよ!」
「嫌よ!なんで貴重な休日に猫なんて探さないといけないのよ!」
「この猫ちゃんを今日中に探せれば、パンプ君の手術まで一歩近づくの!そうなればオカルトクラブの創設に一歩近づくでしょ!」
「どういう事よ」


 ノエルはホウリお兄ちゃんのおつかいの事を皆に説明する。
 ホウリお兄ちゃんのおつかいリストの中に子猫の捜索が入っていた。報酬は100万Gと安かったけど、皆で出来るおつかいだから皆でやろうと思ったわけだ。


「だからさ、皆で探そうよ。良いでしょ?」
「わ、私は探すよ。私がオカルトクラブを作ろうって言ったんだし」
『俺も手伝う。やる事ないしな』
「ありがと!あとは……」


 コアコちゃんとアルモンド君と一緒にサルミちゃんを見つめる。
 ノエル達に見つめられたサルミちゃんはしばらく目を閉じて歯を食いしばる。


「……あああもう!分かったわよ!私も手伝うわよ!」
「わーい、ありがとサルミちゃん」
「その代わり、日が沈むまでには帰るわよ。門限厳しいんだから」
「大丈夫、夕方までには終わると思うから」


 人が多ければ早く見つかるかもしれない。皆とも遊べるし一石二鳥だ。


『探すとして何か当てはあるのか?』
『この子は臆病みたいで、遠くには行かないみたい。だから、ここら辺にいると思うよ』
「他に何かないの?」
「その子の好きな香水があるよ」


 ノエルは香水が入った瓶を取り出す。


「嗅いでいいかしら?」
「良いよ」


 サルミちゃんが香水を少し出して匂いを嗅ぐ。


「柑橘系のさわやかな香りね」
「マタタビも入ってるみたいだよ」
「だから猫ちゃんが好きなんだね」
「皆でちょっとずつ持っておこうか」


 持ってきた小瓶に香水を分けて皆に持たせる。


「よーし、それじゃ皆で探そう!」
「おおー!」
『ノエル、その前にちょっと良いか?』
『え?』


 アルモンド君に連れられて、路地裏に行く。


『どうしたの?』
『一つ聞きたいことがあるんだが、もしかしてあの二人には神の使いの事を言ってないのか?』
『どうしてそう思ったの?』
『この前のフロランとの闘いで魔装を使ってなかっただろ?あれを見て隠してるのかって思ってな』
『鋭いね』


 あれだけで察したんだ。アルモンドって頭いいね。


『アルモンド君の言う通り、神の使いの事は言ってないよ』
『意外だな。ノエルならすぐに言うと思ったんだが』
『神の使いって知ってるだけでも危険なんだって。2人を危険な目に合わせたくないんだ』
『そうだったのか』
『だからさ』


 ノエルはアルモンド君の耳に口を近づけて囁く。


『これは2人の秘密ね』
『!?、お、おう……』


 ノエルが口に指を当ててシーッてするとアルモンド君の顔が赤くなった。もしかして熱中症かな?


『アルモンド君大丈夫?お水飲む?』
『あ、ああ。……って、それノエルが口を付けた奴じゃないか!』
『そうだけど?』
『や、やっぱりいらない』


 そう言うと、アルモンド君は2人のもとへと戻っていった。お話は終わりかな?ノエルも戻ろっと。
 ノエルも戻ると、サルミちゃんが相変わらず不機嫌そうに立っていた。


「私たちを残して、2人で何を話してたのかしら?」
「えへへ、内緒。さあ、皆でにゃんこ探し頑張ろう!」
「それなんだけどさ」


 コアコちゃんが指をさした方向へ視線を向ける。すると、全身茶色で耳の先が白くなっているにゃんこが顔を洗っていた。
 ノエルは持ってきた写真を見る。そこには全身茶色で耳の先が白くなっているにゃんこがいた。


「モカちゃんとそっくりだね」
「いや、そっくりというよりも……」
「同じ、だよね?」
「確かに同じだね」


 なるほど、なるほど、つまりは……。


「かくほー!」


 ノエルはにモカちゃんに向かって飛びつく。
 すると、モカちゃんはノエルを躱して向こうへと走り去っていった。


「まてー!」


 ノエルもモカちゃんを追いかける。だけど、モカちゃんも早くて追いつくことが出来ない。距離を離されないようにするだけで精一杯だ。


「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」
「ノエルちゃん!」
『いきなり走るな!』


 3人もノエルの後を追ってくる。


「は、はやいよー」
「これくらい早くないと追いつけないよ!」
「猫に足の速さで勝とうとしているのが非常識なのよ!スキル無しで獣に人間が勝てるわけ無いでしょ!」


 サルミちゃんの言う通り、モカちゃんに追いつく気配はない。しかも、障害物もスムーズに突破している。追いつくのは難しいかもしれない。


「もう!どうすればいいの!」
「あの香水を付けて怖がらせないようにゆっくり近づけば良かったんじゃない?」
「……あ、言われてみればそうだね」
「あんたね……」
『気付いてなかったのか……』


 ノエルの言葉に皆がため息を吐く。皆は気付いていたんだ。


「……なんか、ごめんね」
「起きたことはしょうがないよ。今はモカちゃんを追いかけよう」


 お喋りもそこそこにモカちゃんを追いかける。すると、モカちゃんは人気のない路地裏を進んでいく。
 右に左に曲がっていくと、ボロボロの廃工場にたどり着いた。


「あれ?ここどこ?」
「さあ?」
「そんな事よりもモカちゃんは何処に……」
『あそこだ!』


 アルモンド君が指さす方向へ視線を向けると、モカちゃんが廃工場の中に入っていくのが見えた。


「ああ!モカちゃんが!」
「追いかけるわよ!」
『俺達だけで工場に入るのは危ないんじゃないか?』
『そんな事言ってる場合じゃないよ!』


 アルモンド君を引っ張ってノエル達は廃工場の中へと入っていったのだった。
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