魔王から学ぶ魔王の倒し方

唯野bitter

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第百九十五話 ぺっ、あまちゃんが

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 家までの帰り道、ノエルは気持ちよく膨らんだお腹をさする。


「お腹いっぱい。なんだか眠くなってきちゃった」


 ノエルは眠くなって目を擦る。


「悪いがもう少しだけ頑張ってくれ」
「んー?何かするの?」
「あのゴミクズに話がある。その為にはノエルの力が必要だ」
「分かった……」


 とっても眠たいけど、ホウリお兄ちゃんのお願いだったら聞いてあげたい。お昼寝はお願いが終わってからにしよう。
 頑張ってお家までたどり付くと、ホウリお兄ちゃんの部屋まで行く。
 ホウリお兄ちゃんの部屋はいつも通り家具が少ない。ベッドとタンスくらいだ。けど、床に大きく魔法陣が書かれているのが他と違うところだ。


「いつもみたいに魔法陣に入ってくれ」
「はーい」


 ホウリお兄ちゃんと手を繋ぎながら魔法陣の中に入って、魔法陣にMPを込めていく。
 この魔法陣は神様と通話するための物で、かなり複雑みたい。通話するときのMPもとっても多くて、ノエルかフランお姉ちゃんがいないと使えない。しかも、通話する時にMPの流れを調整する必要があるんだけど、難しくてフランお姉ちゃんかホウリお兄ちゃんがいないと使えない。
 つまり、フランお姉ちゃんかホウリお兄ちゃんとノエルがいないと、神様とは話せないって事だ。
 MPを込めていくと、魔法陣の輝きが増していく。輝きが最高潮に達した瞬間、頭の中にノイズ音が響く。


(ザザザッ───ザザッ──ザッ─プルルルルルルル、プルルルルルルル、プルルルルルル)


 いつものようにコール音が鳴る。コール音が何回か鳴った後、ガチャリという音と共に聞きなれた声が響く。


『やあホウリ君。どうかした?』
「不味いことになった」
『ホウリ君がそんなに焦ってるなんて珍しいね?』
「もう一人の神が行動を起こした」
『……へぇ?』


 いつも軽い神様の雰囲気が変わる。重苦しくて息苦しい、けどなんだか神々しい。そんな雰囲気が辺りに満ちる。眠気なんて一気に吹き飛んじゃった。


「やる気になったな?話を続けるぞ?」
『お願いしようかな?』
「さっきノエルととある工場を潰した。そこには機械があった」
『なんの機械だい?』
「周りの信仰のエネルギーを別の神に移す機械だ」
『……ふぅん?』


 神様の雰囲気が更に重くなる。間違いない、神様はとても怒っている。


『そんな機械を作るんだったら神の力は絶対に必要だね』
「だろうな。俺も天界で信仰に関する仕組みを把握してなかったら、何の機械かすら分からなかった」
『ホウリ君を天界に上げたのは正解だったね。効果範囲はどのくらいだったの?』
「半径300mだな」
『思ったよりも狭いね?』
「しかも、かなりのMPを消費する。現時点では使い物にならないな」
『少しでも信仰を盗られるのは我慢ならないね?機械はどうしたの?』
「ノエルが木っ端みじんに壊した。人間だけじゃ復元も無理だ」
『ナイス!』


 少しだけ雰囲気が軽くなる。ちょっとだけ機嫌が良くなったみたい。


「で、ここで聞きたい事がある」
『なんだい?』
「ノエルの事だ?」
「え?ノエル?」


 呼ばれると思ってなくてビックリするノエル。何かしたっけ?


「その機械を見たノエルの様子が可笑しかった。何か知らないか?」
『可笑しいって?』
「必要以上に機械を壊そうとしていた。俺が静止しても壊そうとしてたしな」
「え?何か可笑しいの?」
「今まであれだけ物に執着したことがあったか?」
「そういえば無いかも?」


 他にないくらいに壊さなきゃって思った。あんな気持ちは初めてだ。


「あれが……恋?」
「絶対に違う」


 違うみたい。


「あの機械には人の精神に影響させる効果は無かった。仮にあったとしてもノエルだけに効果がある事に説明がつかない」
『それで、私に理由を聞こうって訳かい?』
「ああ」
『ホウリ君の事だからある程度の目星はついてるんじゃない?』
「まあな」
『聞いてみようかな?』
「神の使い」
『…………』


 ホウリお兄ちゃんの言葉に神様が押し黙る。まるで続きを促しているみたいだ。


「神の使いと神の機械。何かしらの関係があるって考えた方が自然だ」
『ご名答』
「詳しい話を聞こうか?」
『良いよ。別に隠していることじゃないし』


 そう言うと、神様は咳払いして話を始めた。


『まず、神の使いってなんだと思う?』
「名前から察するに神が出来ない事を代わりにする奴か?」
『半分当たりだよ。神の使いって言うのはね、私が下界に降りる為に必要な駒だよ』
「は?」


 ホウリお兄ちゃんが不機嫌そうになる。


「駒ってどういう事だ?」
『私が下界に降りる必要がある場合、莫大なエネルギーがいるんだ。けど、下手したら下界のエネルギーだけじゃ足りない』
「そのために無限のエネルギーを持つ神の使いが必要だったのか」
『そういう事。ちなみに、神の使いのMPは天界から流れているんだ』
「で、なんで信仰を集める機会を神の使いが壊そうとする?」
『それは一つのセーフティプログラムだよ』
「セーフティプログラム?」


 それを聞いたホウリお兄ちゃんの機嫌が更に悪くなる。


「説明しろ」
『別の神やその手先、私に害するものを自動的に攻撃するようにしたんだ』
「やっぱりか」


 予想が当たってホウリお兄ちゃんが頭を抱える。


「なんてものを仕込んでやがる」
『普通なら作動しないプログラムなんだよ?というかさ、普通は静止して止まる物じゃないんだけど?どうなってるか聞きたいのはこっちだよ』
「ノエルが特別なんじゃないか?」
『このプログラムは人間のマイナスの感情を増幅させるんだ。人間である限り、逃れられないと思うんだけど?』
「ノエルはまだ幼いしな。そういう面がかなり少ないんじゃないか?」


 良く分からないけど、ノエル褒められてる?


「ノエルは何とか抗えるが、本来であれば周りも関係なく突っ走りかねない危険な物だ。なんでそんな物を作った?」
『手軽に何とか出来ないかなって思ってね。実験的に搭載した物だけど、案外うまくいくものだね?』
「解除する方法は?」
『今すぐには無理だね』
「そうか」


 ホウリお兄ちゃんが天井をにらみつける。


「人を実験に使っておいてその態度は何だ?」
『うーん?そんな事言われてもね?』
「神に近づくのがどれだけ危険か分かってるだろ!」
『言われてみればそうだね?あっはっはっは、これは一本取られたよ!』
「………………」


 ホウリお兄ちゃんの目から光が消える。それを見たノエルの顔が思わず引きつる。
 この表情は一度だけ見たことがある。魔国でホウリお兄ちゃんのスイーツを食べてしまった時の表情だ何が言いたいかというと……


「ホウリお兄ちゃん、とても怒ってる?」
「これで怒らない奴はいないだろうが」


 無表情で機械的に話すホウリお兄ちゃん。普通に怒るより一段と怖い。魔国の時よりも怖いかも。


「テメェ、いい加減にしろよ?」
『まあ悪かったとは思ってるよ。メンゴ、メンゴ☆』
「そっちが真剣に考えないなら、こっちにも考えがあるぞ?」
『へぇ?どんな考えだい?』


 声から神様にかなり余裕があるのが分かる。神様相手に何かできるとは思えないけど、ホウリお兄ちゃんだし何とかしそう。


「お前、俺を天界に上げたのは正解だったって言ったな?」
『そうだね』
「※☆♂→イH。その世界を調べてみろ」


 ホウリお兄ちゃんが良く分からない言葉を発する。多分、神様が使っている言葉なんだと思う。


『ん?良く分からないけど?』
「早く調べたらどうだ?手遅れになる前にな」
(カタカタ)『……ん?これどういう事!?』


 神様の声から一気に余裕がなくなる。


『天界から力の流入が行われていない!?これじゃ世界が育たないんだけど!?』
「天界に言った時に仕込んでおいた」
『ああもう!』(カタカタ)


 神様が何かを操作する音がする。


『これで元通り!』
「本当にそうかな?」
『え?……あー!生物作成の為の仕組みが滅茶苦茶に!?』
「戻すのにどれだけ掛かるだろうな?」
『くっ……すぐに戻して世界を元通りにしないと……』
「もしかして、その世界だけしか仕込んでないと思うのか?」
『……いくつ仕込んだの?』
「さあな。無数にある世界を細かくチェックしないとな。早くしないと手遅れになる世界もあるんじゃないか?」
『くぅぅぅぅぅ』


 神様が悔しそうな声を出す。なんだか短時間で感情が動きまくってる。見てるだけなら楽しい。


「本当は俺を定期的に天界に上げてもらうための仕込みだったんだがな。役に立って良かったよ」
『……神様を脅すなんてね』
「俺は別に良いんだぜ?世界がいくつ無くなろうと関係ないしな」
『むぅぅ……』
「選んでもらおうか、ノエルのセーフティプログラムを解除するか、いくつかの世界が壊れるのを見るか」


 ホウリお兄ちゃんの言葉に神様が完全に黙りこくる。


「どうした?迷ってる時間があるのか?」
『……分かった、今回は私の負けだよ。のえるんのセーフティプログラムを解除できるように頑張るよ』
「どのくらい掛かる?」
『3年くらいかな?』
「他の仕事もあるだろうし、妥当なところか」
『ホウリ君はどのくらいの頻度でこっちに来たいの?』
「行く時は俺から連絡する。それまで待ってろ」
『分かったよ』


 神様がため息を吐く。神様VSホウリお兄ちゃんはホウリお兄ちゃんの勝ちみたいだ。


『はぁ、敵の神も結構な戦力を蓄えてるみたいだね』
「いや、そうとも言い切れないぜ?」


 ホウリお兄ちゃんが不敵に笑う。


「どういう事?王都も悪い神様の仲間が襲撃したんでしょ?だったら仲間もいっぱいいるんじゃない?」
「さっきの建物にいた人数が少なかっただろ?」
「そう言われてみると?」


 倒したのは6人くらいだった。工場の広さにしては少ないような?


「あれだけ重要な機械だ。100人以上の警備がいても可笑しくない」
『なるほどね。敵にはそこまでの人員を割けないって事だね?』
「そういう事だ。廃工場を利用している点や武器が粗末な点も、敵の余裕がない証拠だ」
『物資も人員も足りていないんだ。だったら、無視してもいいかな?』
「油断はしないけどな。手負いの敵は何してくるか分からない」
『それもそうだね。良いかい?言うまでもないと思うけど……』
「神には極力関わるな、だろ?」
『そういう事。じゃ、何かあったら連絡してね』
「おう」


 その言葉を最後に神様の声は聞こえなくなった。


「……面倒な事になったな」
「話が分からなかったんだけど、どういう事?」
「ノエルが覚えることは1つ。今日みたいな破壊衝動が起こったら我慢しろ。どうしてもという時は俺に連絡しろ」
「はーい」


 MPを止めて大きく伸びをする。なんだか、また眠くなってきちゃった。


「眠いか?」
「うん」
「だったら、少し眠れ。しばらくしたら起こしてやる」
「はーい……」


 ノエルはあくびをしながら自分の部屋に戻る。今日は疲れちゃったな~。
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