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第二百話 熊を1頭伏せてターンエンド!
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次の日、わしは待ち合わせの場所へと向かう。格好は悩んだが、白のワンピースにした。水辺で遊ぶにはこういう服装が良いじゃろう。虫とかはスキルでどうとでもなるし、これでよいじゃろう。
待ち合わせ場所である、噴水広場に向かうと、長袖シャツと長ズボンに身を包んだヌカレが立っていた。待ち合わせ時間の30分前なんじゃがな。真面目な奴じゃ。
ヌカレはサングラスで軽く変装しておる。あやつも人気の俳優じゃし、気を付けんとファンに見つかるんじゃろうな。
わしは軽く手を上げてヌカレに声を掛ける。
「おーい、待たせたのう」
「おまっ!?バカッ!」
ヌカレがわしの口を塞いできて、焦ったように周りを見渡す。
「もがもが?」
「周りの奴にバレたらどうするんだ!?」
「あー、そうじゃったのう」
「そうだったじゃねえよ。ちょっと考えれば……なんで口塞いでるのに喋れてるんだ?」
「わしに不可能は無い、と言ったじゃろ?」
ヌカレから抜け出し、逆に後ろに回り込み口を塞ぐ。
「もご!?」
「わしの後ろを取るなんて1憶年早いんじゃないか?」
「もごもご!?」
「へっへっへ、大人しくするんじゃな。その代わり、今からいい所に連れてってあげよう」
「ぷはっ!人さらいのセリフじゃねえか!」
無理やりわしの手を振り払い、睨みつけてくる。おふざけはこのくらいにしておくか。
「何考えてんだ!周りの奴に気付かれたらどうするんだ!」
「その心配はない」
「あ?どういう事だ?」
「周りを見てみい」
周りを見渡すと、他の人たちはわしらを気にしている様子はなかった。その様子を見てヌカレが目を丸くする。
「これはどういう事だ?」
「わしのスキルで周りから認識されにくくしておるんじゃ」
「そんなスキルが使えるのか?お前何者なんだよ」
「ただの最強じゃ。気にするな」
「気にするに決まってるだろ。だが、そのスキルは欲しいな」
「1秒につき、100MPじゃ。お安いじゃろ?」
「1人で賄える量じゃねえな?」
雑談もそこそこに、わしは時間を確認する。
「良い時間じゃな。そろそろ行くとするか」
「そうだな。で、山にいくんだったな。この辺りだと森林区域があったから、そこで代用するのか?」
「いや、ここからワープして山に行く」
「ワープ?」
わしはワープクリスタルを取り出してヌカレに見せる。
「これで世界のどこでもワープが出来るぞ」
「ワープって法律で禁止されている筈じゃないのか?」
「ホウリに許可を取らせたから問題ない。このまま行くぞ」
「は?今か?」
「勿論じゃ。全は急げと言うじゃろ?」
「おい待て!」
「待たん!」
わしはヌカレの手を取ってワープクリスタルにMPを流し込む。ワープクリスタルが放つ光が目を開けられないくらいに強くなっていき、わしらを包み込んだのじゃった。
☆ ☆ ☆ ☆
光が弱くなり目が開けると、わしらは河原の傍に立っておった。周りには木が密集しており、鳥や獣の鳴き声がしており、少し肌寒くなっておる。耳もキーンとしておるし、標高が高い所であることは間違いない。
「どうやら無事にワープ出来たみたいじゃな」
「こ、これがワープか」
「なんじゃ?ワープは初めてか?」
「普通はワープする機会はないだろ」
「言われてみればそうじゃな?」
遠慮なくワープしておったから感覚がマヒしておったわい。
「細かいことは気にするでない。今は山を楽しむ事が大切じゃ」
「それもそうだな。それで何をするんだ?」
「山と言えばバーベキューじゃろ」
「昼飯には早くないか?」
「何を言っておる。食材を用意する時間がいるじゃろ?」
「食材用意してないのか?」
「当たり前じゃろ?」
現地の食材を食べる、これ以上の贅沢があるじゃろうか。山も堪能できるし一石二鳥じゃ。
「そういう訳じゃから、食材は今から狩るぞ」
「狩るってどうするんだ?」
「気配を隠して獣を奇襲すればよい。武器も揃えてあるから自分の使いたい武器を言ってくれ」
「待て待て、武器なんて学校で触って以来だぞ?獣を倒すなんて出来る訳が無い」
「そうなのか?」
「武器なんて冒険者じゃないと使わないだろうが」
「確かに?」
周りが戦闘出来る奴ばかりであったから、ヌカレも戦闘が出来ると思っていたわい。
「少しでも使えんのか?」
「強いて言えば剣とかか?だが、触るのも10年ぶりくらいだぞ?」
「ならば仕方あるまい。肉はわしが確保するから、お主は川で魚でも釣っておれ」
「待て、これは俺がお前に慣れる事が目的だろ?別行動していいのか?」
「そういえばそうじゃったな。じゃが、狩るのは魔物ではないとはいえ危険じゃぞ?」
「2人で魚釣るか?」
「ジッとしておるのは性に合わん。熊のように手づかみであれば良いぞ」
「そんな事できる奴の方が珍しいだろうが」
ヌカレが頭をボリボリと搔きむしる。このままじゃと、別々で行動する事になる。どうしたものか。
「あ、そうじゃ」
「何か思いついたのか?」
「お主に防御力のバフを与えるから、わしについてこい」
「は?どういう意味だ?」
「そのままの意味じゃ」
わしはヌカレの防御力を3000程上げる。すると、ヌカレの体が淡い青い光を纏った。
青く輝く体を見てヌカレが目を丸くする。
「俺の体に何をした!?」
「ステータスを見てみい」
「……な!?」
ステータスを確認したヌカレの目がさらに見開かれる。
「なんだこの防御力!?」
「わしが少し盛った。この山が吹き飛ぼうとも無傷で生還出来る筈じゃ」
「ちょっとってなんだよ」
「それさえあれば3時間は安全な筈じゃ。これでわしに付いてこれるじゃろ?」
「だが……」
「ああもう!うだうだ言わずについてこんかい!さもなければ置いて帰るぞ!」
「分かったよ」
「ならば、ほれ」
わしはヌカレに弓を手渡す。
「なんだこれ?」
「ただついてくるだけでは退屈じゃろ?お主も少しくらいは狩りを体験してみい」
「だが……」
「何事も体験じゃ。演技に幅が出てくるかもしれんぞ?」
「分かったよ」
「そうと決まれば出発じゃな」
ヌカレの手を引いて森の中に入る。
迷わずに森の中を進むと、後ろからヌカレが心配そうに言う。
「なあ、方向とか分かって進んでいるのか?」
「勿論じゃ。なにか気になるのか?」
「森の中って迷いやすいだろ?コンパスとか地図も無しに進んで大丈夫かよ?」
「スキルで位置は常に把握しておるから安心せい。なんなら獲物の位置も分かるから、探し回ったりする事も無いぞ」
「高性能のバフに広範囲の探索。フランって本当に何者なんだよ」
「詳しくは省くが、ただの最強じゃよ」
「省いた部分をぜひ教えて欲しいんだがな」
「しっ、獲物が見えたぞ」
わしは奥に潜んでいる鹿を指さす。
わしとヌカレは草むらに隠れて鹿を見据える。
「あの鹿はわしらに気付いておらん。弓で狙うなら今じゃ」
「なあ、弓ってどう使うんだ?」
ヌカレの言葉にズッコケそうになるのをギリギリで踏みとどまる。弓を渡したときに何も言われんかったから、少しは使えると思ったが、使い方すら分からんかったのか。
わしは弓の弦を弾いているヌカレの後ろに回る。そして、ヌカレの手を包み込んで手順を説明する。
「まずは矢を弓にセットするんじゃ」
「お、おう……」
ヌカレは驚いた表情になったが、抵抗する様子もなく言われたとおりにする。
「出来たら弓を引いて狙いを付けるんじゃ。矢は落ちながら飛ぶから、落ちる分を計算して狙いを付けるんじゃ」
「分かった」
ヌカレが狙いを付けて矢を放つ。矢は力なく飛んで行ったが、鹿の尻に命中した。
「当たった!」
「まだじゃ!あれでは仕留めきれておらん!」
鹿は何が反射的に森の奥へと駆け出して行った。
わしは弓をもう一本取り出すと、鹿が向かった方向へと引き絞る。その様子をみたヌカレが叫ぶ。
「もう影に隠れた!そこから狙うのは無理だ!」
「普通はそうじゃな。じゃが、わしは最強じゃぞ?黙って見ておれ」
ニヤリと笑って透視を使って鹿の姿を補足する。そして木や岩を気にせずに、鹿に向かって真っすぐと狙いを付ける、
「くらえ!」
わしは矢にMPを込めて放つ。矢は光りながら木や岩を貫通し、鹿の脳を完全に粉砕した。
「わしに遮蔽物は関係ない。覚えておくんじゃな」
「覚えておく脳が粉砕されたがな……うっぷ」
鹿の死体を見て、ヌカレが顔を青くする。そういえば、狩りをした事が無いのであれば死体も見慣れていないのか。ちと配慮に欠けたかのう?
「大丈夫か?」
「あまり大丈夫じゃないな。早くその死体をどこかにやってくれ」
「分かった」
スキルで簡単に出来るし血抜きは後でやるか。鹿の死体をアイテムボックスに仕舞う。
「これで肉は確保できたな」
「肉ばかりだと味気ないし、キノコとか山菜を採っていかないか?」
「明暗じゃな。毒があるかはわしが鑑定で調べてやろう」
「そうと決まればさっきの河原に……」
「戻るのは少し待った方がいい」
わしはヌカレを後ろにかばいながら一点を睨みつける。
「どうした?」
「強力な魔物が来る。防御力を上げたから問題ないと思うが、念のため隠れておれ」
わしの言葉にヌカレは色々と察して近くの木に隠れる。
ヌカレが隠れ終わったと同時に気をなぎ倒しながらそいつは現れた。
「ぶもおおおお!」
「ハイ・ミノタウロスか。強敵じゃな」
真っ白く強固な肉体に牛の頭。その巨体は3mくらいあり、手にはヒト一人分くらいの大きさの斧が握られている。
「何だこいつ!?」
「ハイ・ミノタウロス。防御力と攻撃力がかなり高く、街ひとつを簡単に滅ぼすくらい訳ないほどには強敵じゃ。本来は騎士団が出動して倒すべき相手じゃな」
「じゃあさっさと逃げないと!」
「言ったじゃろ?」
わしはニヤリと笑いながらハイ・ミノタウロスに近づく。ハイ・ミノタウロスは斧をわしに向かって振り下ろしてくる。わしは弓を引き絞りハイ・ミノタウロスへと狙いを付け放つ。
「わしは最強じゃとな」
放たれた矢は斧を砕き、そのままハイ・ミノタウロスの胸に風穴を開けた。
ハイ・ミノタウロスはそのまま後ろに倒れ、光の粒となって消え去った。
「ふん、わしの敵ではないな」
ハイ・ミノタウロスがいた所に巨大な肉塊が落ちている。
わしはその肉塊を拾い上げる。
「ハイ・ミノタウロスの肉か。味が良いと聞いておったから食ってみたかったんじゃよな」
「なんだいまの?」
「言ったじゃろ?わしは最強なんじゃよ。あの程度は敵ではない」
「フランの力は騎士団以上って事か?」
「その通りじゃ」
「……頭痛くなってきた」
「もしかして食欲もなくなったか?ならば、この肉はわしがいただくとするか」
「それは食う」
待ち合わせ場所である、噴水広場に向かうと、長袖シャツと長ズボンに身を包んだヌカレが立っていた。待ち合わせ時間の30分前なんじゃがな。真面目な奴じゃ。
ヌカレはサングラスで軽く変装しておる。あやつも人気の俳優じゃし、気を付けんとファンに見つかるんじゃろうな。
わしは軽く手を上げてヌカレに声を掛ける。
「おーい、待たせたのう」
「おまっ!?バカッ!」
ヌカレがわしの口を塞いできて、焦ったように周りを見渡す。
「もがもが?」
「周りの奴にバレたらどうするんだ!?」
「あー、そうじゃったのう」
「そうだったじゃねえよ。ちょっと考えれば……なんで口塞いでるのに喋れてるんだ?」
「わしに不可能は無い、と言ったじゃろ?」
ヌカレから抜け出し、逆に後ろに回り込み口を塞ぐ。
「もご!?」
「わしの後ろを取るなんて1憶年早いんじゃないか?」
「もごもご!?」
「へっへっへ、大人しくするんじゃな。その代わり、今からいい所に連れてってあげよう」
「ぷはっ!人さらいのセリフじゃねえか!」
無理やりわしの手を振り払い、睨みつけてくる。おふざけはこのくらいにしておくか。
「何考えてんだ!周りの奴に気付かれたらどうするんだ!」
「その心配はない」
「あ?どういう事だ?」
「周りを見てみい」
周りを見渡すと、他の人たちはわしらを気にしている様子はなかった。その様子を見てヌカレが目を丸くする。
「これはどういう事だ?」
「わしのスキルで周りから認識されにくくしておるんじゃ」
「そんなスキルが使えるのか?お前何者なんだよ」
「ただの最強じゃ。気にするな」
「気にするに決まってるだろ。だが、そのスキルは欲しいな」
「1秒につき、100MPじゃ。お安いじゃろ?」
「1人で賄える量じゃねえな?」
雑談もそこそこに、わしは時間を確認する。
「良い時間じゃな。そろそろ行くとするか」
「そうだな。で、山にいくんだったな。この辺りだと森林区域があったから、そこで代用するのか?」
「いや、ここからワープして山に行く」
「ワープ?」
わしはワープクリスタルを取り出してヌカレに見せる。
「これで世界のどこでもワープが出来るぞ」
「ワープって法律で禁止されている筈じゃないのか?」
「ホウリに許可を取らせたから問題ない。このまま行くぞ」
「は?今か?」
「勿論じゃ。全は急げと言うじゃろ?」
「おい待て!」
「待たん!」
わしはヌカレの手を取ってワープクリスタルにMPを流し込む。ワープクリスタルが放つ光が目を開けられないくらいに強くなっていき、わしらを包み込んだのじゃった。
☆ ☆ ☆ ☆
光が弱くなり目が開けると、わしらは河原の傍に立っておった。周りには木が密集しており、鳥や獣の鳴き声がしており、少し肌寒くなっておる。耳もキーンとしておるし、標高が高い所であることは間違いない。
「どうやら無事にワープ出来たみたいじゃな」
「こ、これがワープか」
「なんじゃ?ワープは初めてか?」
「普通はワープする機会はないだろ」
「言われてみればそうじゃな?」
遠慮なくワープしておったから感覚がマヒしておったわい。
「細かいことは気にするでない。今は山を楽しむ事が大切じゃ」
「それもそうだな。それで何をするんだ?」
「山と言えばバーベキューじゃろ」
「昼飯には早くないか?」
「何を言っておる。食材を用意する時間がいるじゃろ?」
「食材用意してないのか?」
「当たり前じゃろ?」
現地の食材を食べる、これ以上の贅沢があるじゃろうか。山も堪能できるし一石二鳥じゃ。
「そういう訳じゃから、食材は今から狩るぞ」
「狩るってどうするんだ?」
「気配を隠して獣を奇襲すればよい。武器も揃えてあるから自分の使いたい武器を言ってくれ」
「待て待て、武器なんて学校で触って以来だぞ?獣を倒すなんて出来る訳が無い」
「そうなのか?」
「武器なんて冒険者じゃないと使わないだろうが」
「確かに?」
周りが戦闘出来る奴ばかりであったから、ヌカレも戦闘が出来ると思っていたわい。
「少しでも使えんのか?」
「強いて言えば剣とかか?だが、触るのも10年ぶりくらいだぞ?」
「ならば仕方あるまい。肉はわしが確保するから、お主は川で魚でも釣っておれ」
「待て、これは俺がお前に慣れる事が目的だろ?別行動していいのか?」
「そういえばそうじゃったな。じゃが、狩るのは魔物ではないとはいえ危険じゃぞ?」
「2人で魚釣るか?」
「ジッとしておるのは性に合わん。熊のように手づかみであれば良いぞ」
「そんな事できる奴の方が珍しいだろうが」
ヌカレが頭をボリボリと搔きむしる。このままじゃと、別々で行動する事になる。どうしたものか。
「あ、そうじゃ」
「何か思いついたのか?」
「お主に防御力のバフを与えるから、わしについてこい」
「は?どういう意味だ?」
「そのままの意味じゃ」
わしはヌカレの防御力を3000程上げる。すると、ヌカレの体が淡い青い光を纏った。
青く輝く体を見てヌカレが目を丸くする。
「俺の体に何をした!?」
「ステータスを見てみい」
「……な!?」
ステータスを確認したヌカレの目がさらに見開かれる。
「なんだこの防御力!?」
「わしが少し盛った。この山が吹き飛ぼうとも無傷で生還出来る筈じゃ」
「ちょっとってなんだよ」
「それさえあれば3時間は安全な筈じゃ。これでわしに付いてこれるじゃろ?」
「だが……」
「ああもう!うだうだ言わずについてこんかい!さもなければ置いて帰るぞ!」
「分かったよ」
「ならば、ほれ」
わしはヌカレに弓を手渡す。
「なんだこれ?」
「ただついてくるだけでは退屈じゃろ?お主も少しくらいは狩りを体験してみい」
「だが……」
「何事も体験じゃ。演技に幅が出てくるかもしれんぞ?」
「分かったよ」
「そうと決まれば出発じゃな」
ヌカレの手を引いて森の中に入る。
迷わずに森の中を進むと、後ろからヌカレが心配そうに言う。
「なあ、方向とか分かって進んでいるのか?」
「勿論じゃ。なにか気になるのか?」
「森の中って迷いやすいだろ?コンパスとか地図も無しに進んで大丈夫かよ?」
「スキルで位置は常に把握しておるから安心せい。なんなら獲物の位置も分かるから、探し回ったりする事も無いぞ」
「高性能のバフに広範囲の探索。フランって本当に何者なんだよ」
「詳しくは省くが、ただの最強じゃよ」
「省いた部分をぜひ教えて欲しいんだがな」
「しっ、獲物が見えたぞ」
わしは奥に潜んでいる鹿を指さす。
わしとヌカレは草むらに隠れて鹿を見据える。
「あの鹿はわしらに気付いておらん。弓で狙うなら今じゃ」
「なあ、弓ってどう使うんだ?」
ヌカレの言葉にズッコケそうになるのをギリギリで踏みとどまる。弓を渡したときに何も言われんかったから、少しは使えると思ったが、使い方すら分からんかったのか。
わしは弓の弦を弾いているヌカレの後ろに回る。そして、ヌカレの手を包み込んで手順を説明する。
「まずは矢を弓にセットするんじゃ」
「お、おう……」
ヌカレは驚いた表情になったが、抵抗する様子もなく言われたとおりにする。
「出来たら弓を引いて狙いを付けるんじゃ。矢は落ちながら飛ぶから、落ちる分を計算して狙いを付けるんじゃ」
「分かった」
ヌカレが狙いを付けて矢を放つ。矢は力なく飛んで行ったが、鹿の尻に命中した。
「当たった!」
「まだじゃ!あれでは仕留めきれておらん!」
鹿は何が反射的に森の奥へと駆け出して行った。
わしは弓をもう一本取り出すと、鹿が向かった方向へと引き絞る。その様子をみたヌカレが叫ぶ。
「もう影に隠れた!そこから狙うのは無理だ!」
「普通はそうじゃな。じゃが、わしは最強じゃぞ?黙って見ておれ」
ニヤリと笑って透視を使って鹿の姿を補足する。そして木や岩を気にせずに、鹿に向かって真っすぐと狙いを付ける、
「くらえ!」
わしは矢にMPを込めて放つ。矢は光りながら木や岩を貫通し、鹿の脳を完全に粉砕した。
「わしに遮蔽物は関係ない。覚えておくんじゃな」
「覚えておく脳が粉砕されたがな……うっぷ」
鹿の死体を見て、ヌカレが顔を青くする。そういえば、狩りをした事が無いのであれば死体も見慣れていないのか。ちと配慮に欠けたかのう?
「大丈夫か?」
「あまり大丈夫じゃないな。早くその死体をどこかにやってくれ」
「分かった」
スキルで簡単に出来るし血抜きは後でやるか。鹿の死体をアイテムボックスに仕舞う。
「これで肉は確保できたな」
「肉ばかりだと味気ないし、キノコとか山菜を採っていかないか?」
「明暗じゃな。毒があるかはわしが鑑定で調べてやろう」
「そうと決まればさっきの河原に……」
「戻るのは少し待った方がいい」
わしはヌカレを後ろにかばいながら一点を睨みつける。
「どうした?」
「強力な魔物が来る。防御力を上げたから問題ないと思うが、念のため隠れておれ」
わしの言葉にヌカレは色々と察して近くの木に隠れる。
ヌカレが隠れ終わったと同時に気をなぎ倒しながらそいつは現れた。
「ぶもおおおお!」
「ハイ・ミノタウロスか。強敵じゃな」
真っ白く強固な肉体に牛の頭。その巨体は3mくらいあり、手にはヒト一人分くらいの大きさの斧が握られている。
「何だこいつ!?」
「ハイ・ミノタウロス。防御力と攻撃力がかなり高く、街ひとつを簡単に滅ぼすくらい訳ないほどには強敵じゃ。本来は騎士団が出動して倒すべき相手じゃな」
「じゃあさっさと逃げないと!」
「言ったじゃろ?」
わしはニヤリと笑いながらハイ・ミノタウロスに近づく。ハイ・ミノタウロスは斧をわしに向かって振り下ろしてくる。わしは弓を引き絞りハイ・ミノタウロスへと狙いを付け放つ。
「わしは最強じゃとな」
放たれた矢は斧を砕き、そのままハイ・ミノタウロスの胸に風穴を開けた。
ハイ・ミノタウロスはそのまま後ろに倒れ、光の粒となって消え去った。
「ふん、わしの敵ではないな」
ハイ・ミノタウロスがいた所に巨大な肉塊が落ちている。
わしはその肉塊を拾い上げる。
「ハイ・ミノタウロスの肉か。味が良いと聞いておったから食ってみたかったんじゃよな」
「なんだいまの?」
「言ったじゃろ?わしは最強なんじゃよ。あの程度は敵ではない」
「フランの力は騎士団以上って事か?」
「その通りじゃ」
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