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第二百十五話 これは友達の話なんだけど
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王都のとある所にその小屋はある。いや、小屋と言えない程に小さく、教会にある懺悔室がそのまま外にあると言った方が正確だろう。
中は机と椅子だけのシンプルな内装で、天井のライトで最低限度の高原が確保されている。窓は無く壁は完全防音の為、スキルを使っても外から中の様子を見ることは出来ない。完全に秘匿性に特化している小屋だ。
さて、なんで俺がこんな小屋を作ったのか。それは、この街の人達からの悩みを聞くためだ。悩みを聞いて色んな人との親交を深めつつ、情報も手に入る。かなり効率も良いし、定期的にこのお悩み相談室を開いている訳だ。
看板とか出してないのは、大々的に宣伝すると人が来すぎて収拾がつかなくなるからだ。分かる人が少しだけくればいい。立地さえ選べば多すぎず少なすぎずといった感じで人が来るしな。
そういう訳で、この日5人目の相談者が出ていくのを見ながら、俺は水を一口飲む。
「結構いい時間だな。あと3人くらいで終わりにするか」
水を仕舞うと、扉がコンコンとノックされる。返事しても聞こえないから、パチンコ玉を扉に弾くことで返事を返す。すると、扉が開き見知った懐かしい顔が入ってきた。
「こんにちは~」
「ディーヌじゃねえか」
恐る恐る入ってきたのは、オダリムの街で宿屋を経営しているディーヌだった。オダリムでは色々と世話になった人物だが、なんで王都にいるんだ?
俺の聞きたいことを察したのか、ディーヌがいたずらっぽく笑う。
「お父さんに働きづめだったから旅行にでも行って来いって言われたの」
「王都にはいつ着いたんだ?」
「ついさっき。ビックリさせようと思って、先にホウリ君の家に行ったんだ。そしたら、ここでお悩み相談室やってるって言うから来ちゃった」
「そうだったのか」
相談室に入る前にはそんな情報は無かったから、入った後に王都に到着したのか。
「冗談抜きで驚いたな」
「ふふ、良かった」
「用はそれだけか?」
「せっかく来たんだし、相談もしちゃおうかな」
額の汗をハンカチで拭いながら、ディーヌが体面に座る。かなり急いできたのか、よく見ると凄い汗だ。どれだけ驚かせたかったんだ。
「相談ってなんだ?」
「どんな相談でも良いの?」
「明日の献立や経営の方針、どうでもいいことから専門的なことまで何でもいいぞ」
「恋の相談でも?」
ディーヌの言葉に俺は何も言えなくなる。あんな別れ方してるんだ。気軽に「はい」って言えるか。
「成功するかは置いておいて、相談は受け付けるぞ」
「そんなに身構えなくてもいいよ。相手はホウリ君じゃないから」
「それはありがたいな」
身構えていた体から力を抜く。俺の事は吹っ切れたみたいだな。
「好きな奴が出来たのか?」
「うん」
俺の質問に頬を赤らめるディーヌ。冗談って訳じゃなさそうだな。
さながら昼下がりのカフェの様な穏やかな雰囲気になるのを感じ、俺は話を続ける。
「どういう奴なんだ?」
「宿のお客さんだったんだけど、私にも話してくれる優しい人なの」
「出会いは?」
「宿で食事を提供した時に……ってなに言わせるのよ!」
「ははは、悪い悪い」
「もう……」
頬を膨らませて怒ってくるディーヌ。俺は笑いながら謝る。
「で、そいつと仲良くなりたいって訳か?」
「うん」
恥ずかしそうに頷くディーヌ。
確かディーヌにはファンクラブは解体したが、男どもは抜け駆けしないようにけん制しあっている筈だ。オダリムの奴がそれを知らない筈がない。つまり、そいつはオダリムに来たばかりって事だ。
そいつがディーヌの事を知ったら距離を置くだろうな。男どもから報復されるだろう。となると、何とか手を打たないとな。
オダリムに直接なにか出来るわけじゃないからな。どうしたもんか。
俺は紙とペンを取り出してそいつへの手紙を書く。そして封筒をしてディーヌに渡す。
「ほい」
「なにこれ?」
「そいつへの手紙だ。ディーヌは読むなよ?」
「うん」
ディーヌは素直に頷くと、手紙をアイテムボックスに仕舞った。こういう風に素直に言うことを聞いてくる奴があんまりいないから、なんだかとても嬉しく思う。
ディーヌの3割でも良いから、周りの奴らも素直になってくれればな。
「次にディーヌに対するアドバイスだな」
「お願いします」
「男の心を掴みたいなら胃袋から掴んだ方が良い。手料理でも作ればいいんじゃないか?」
「宿でもう出してるよ。宿の料理は私の仕事なんだし」
「そうだったのか?」
「分かってて言ってるよね?」
☆ ☆ ☆ ☆
「ありがとうございました」
相談が終わって、ディーヌが丁寧にお辞儀をする。時間にして約10分くらいか。
「王都にはいつまでいるんだ?」
「1週間後には発つつもりだよ」
「そうか。暇なら家にでも遊びに来てくれ。飯くらいならご馳走する」
「ありがと。機会があるならお邪魔するね」
バイバイ、と手を振りディーヌが相談所から出ていく。俺も手を振って見送り、息を大きく吐く。
まさか、いきなりディーヌがやってくるとは、流石に驚いたな。今は幸せみたいだし、苦労した甲斐があったってものだ。
ディーヌの表情を思い出し嬉しく思っていると、再びドアがノックされた。
俺はさっきと同じようにパチンコ玉で返事をする。すると、扉が開き再び見知った顔の相談者がやってきた。
『よう、マカダ』
『こんにちは、ホウリさん』
マカダは軽くお辞儀をすると俺の対面に座った。
『久しぶり……って訳でもないな』
『そうですね。この前はありがとうございました』
魔国に居た時にマカダには交換留学の件で相談を受けた。王都に来た後にもサポートしたりアドバイスしたりしてたから、久しぶりって感じじゃないな。
『で、マカダの相談って何なんだ?勉強で分からない事でもあるのか?』
俺の質問にマカダが首を振る。
『じゃあ何なんだ?』
『強くなりたいんだ』
『強くなりたい?』
今までそういう相談は聞いたことがない。詳しく聞くか。
『戦闘力を上げたいって事か?』
『はい』
マカダが真っすぐ見つめてきて頷く。冗談じゃないみたいだな。
『別に良いが、なんで強くなりたいんだ?』
『……言わないとダメですか?』
『目標を知らないとアドバイスのしようがないからな』
『……ノエルの隣に立ちたいからです』
蚊の鳴くような小さな声で、マカダが呟く。ノエルの為か。大体、予想通りだな。
『お前、ノエルの事が好きだもんな』
『はい』
『素直に認めるんだな?』
『ホウリさんに隠し事は意味ないでしょう?』
『確かにな』
なんだ?今日の相談者は素直な奴が多いな?楽で話が早いから助かるからいいけど。
『で、大好きなノエルの為に強くなりたいんだったな。強くならなくても、ノエルの隣には立てるんじゃないか?』
『王都に居た時、俺はノエルに助けられた事があるじゃないですか』
『ああ』
『ノエルが戦う姿を見て俺は心惹かれました。そして同時に思ったんです、今の俺がノエルに好きだと伝えても良いのかって』
マカダが苦しそうに言葉を紡ぐ。確かにノエルは戦闘も勉強も見た目も良い。普通の奴が好きになって劣等感を持つのも無理はない。
俺は言葉を挟まず、マカダの言葉を聞く。
『ノエルは優しい奴です。好きだと伝えたら無下にはしないと思います。けど、お情けで付き合っても俺は苦しいんです』
『そうか』
子供の頃から圧倒的な才能を見せつけられ、同時に惹かれる。届かない物を見続けなくちゃいけないのは、かなり苦しいだろう。
『だから、ノエルと同じように強くなってノエルの隣に立てるようになってから告白したいんだ』
『なるほどな』
ここで俺が「そこまでしなくても良いんじゃないか」って言うのは簡単だ。けど、それだとマカダは一生劣等感を抱えていかないといけない。
だが、ノエルは神の使いっていうチートスキルがあるし、そもそも全体的な素質がずば抜けている。寝る間を惜しんで努力したとしても、ノエルと同じ領域まで到達するのは無理だ。
だから、俺が書けるべき言葉は───
『じゃあ、ノエルに無いものを身に着けないとな』
『は?』
俺の言葉にマカダが首をかしげる。
『なんでそんな話になるんですか?』
『お前の本来の目的はノエルと付き合えるくらいの人間になりたい、だろ?』
『はい』
『だったら強くなるだけじゃ足りない』
『じゃあ、どうすれば……』
『言っただろ?ノエルに無い物を身につけろ』
俺は再びマカダに同じ言葉を投げる。だが、マカダは意味が分からないのか首を傾げっぱなしだ。
『どういう意味です?』
『付き合うって事は同じ能力があるって事じゃない。足りない事を補いあうって事なんだよ』
『補いあう……』
『そうだ』
『でも、ノエルに足りない事って?』
『それはお前自身が考えろ。マカダから見てノエルは完璧か?欠けているところは無いか?』
俺の問いかけにマカダが顎に手を当てて考える。
『そう言われると、完璧ではないですね。思い込みで暴走するし、騙されやすいし、考えが突飛すぎてついていけない時があるし』
『だろ?』
俺も概ね同じ意見だ。ノエルは能力は高いが、少々抜けているところがある。どうしたものか。
『ノエルにだってかけているところがあるんだ。そこを補っていけるのが、付き合うってことじゃないか?』
『……そうですね』
俺の説明に納得したのか、マカダは素直に頷く。本当に話が早くて助かる。
『じゃあ、俺自身が強くなる必要はないんですね』
『そうは言ってないぞ?』
『え?』
『神の使いの恋人だぞ?魔国に居た時みたいな目にあう可能性があるに決まってるだろ?最低でも世界で5本の指に入るくらいの強さにはなってもらうからな?』
『……冗談ですよね?』
顔を引きつらせているマカダに俺は満面の笑みで答える。
『強くなりたいって事なら協力してやる。だが、文字通り死ぬ気でやらせるからな?覚悟しろよ?』
『は、はい』
『特訓は明日からだな。家で待ってろよ』
『はい、ありがとうございます……』
律儀にお辞儀をしてマカダは相談室から出ていく。
子供の時から恋愛の悩みか。最近の小学生はませてるな。微笑ましいともいえるか。
休憩がてら持ってきたチョコを口に放り込み味わうように咀嚼する。
次で最後だ。ここまで恋愛系の相談が続いているから、次も恋愛系だったりしてな。
そう考えていると、扉がノックされた。いつも通りパチンコ玉で返事をすると、扉が勢いよく開いた。
「コレトさんの機嫌が悪いんだ!相談に乗ってくれ!」
「帰れ」
飛び込んできたナップにパチンコ玉を打ち込む。
その後、雑にナップの話を聞き、ナップに相談室の撤収を手伝わせた。
中は机と椅子だけのシンプルな内装で、天井のライトで最低限度の高原が確保されている。窓は無く壁は完全防音の為、スキルを使っても外から中の様子を見ることは出来ない。完全に秘匿性に特化している小屋だ。
さて、なんで俺がこんな小屋を作ったのか。それは、この街の人達からの悩みを聞くためだ。悩みを聞いて色んな人との親交を深めつつ、情報も手に入る。かなり効率も良いし、定期的にこのお悩み相談室を開いている訳だ。
看板とか出してないのは、大々的に宣伝すると人が来すぎて収拾がつかなくなるからだ。分かる人が少しだけくればいい。立地さえ選べば多すぎず少なすぎずといった感じで人が来るしな。
そういう訳で、この日5人目の相談者が出ていくのを見ながら、俺は水を一口飲む。
「結構いい時間だな。あと3人くらいで終わりにするか」
水を仕舞うと、扉がコンコンとノックされる。返事しても聞こえないから、パチンコ玉を扉に弾くことで返事を返す。すると、扉が開き見知った懐かしい顔が入ってきた。
「こんにちは~」
「ディーヌじゃねえか」
恐る恐る入ってきたのは、オダリムの街で宿屋を経営しているディーヌだった。オダリムでは色々と世話になった人物だが、なんで王都にいるんだ?
俺の聞きたいことを察したのか、ディーヌがいたずらっぽく笑う。
「お父さんに働きづめだったから旅行にでも行って来いって言われたの」
「王都にはいつ着いたんだ?」
「ついさっき。ビックリさせようと思って、先にホウリ君の家に行ったんだ。そしたら、ここでお悩み相談室やってるって言うから来ちゃった」
「そうだったのか」
相談室に入る前にはそんな情報は無かったから、入った後に王都に到着したのか。
「冗談抜きで驚いたな」
「ふふ、良かった」
「用はそれだけか?」
「せっかく来たんだし、相談もしちゃおうかな」
額の汗をハンカチで拭いながら、ディーヌが体面に座る。かなり急いできたのか、よく見ると凄い汗だ。どれだけ驚かせたかったんだ。
「相談ってなんだ?」
「どんな相談でも良いの?」
「明日の献立や経営の方針、どうでもいいことから専門的なことまで何でもいいぞ」
「恋の相談でも?」
ディーヌの言葉に俺は何も言えなくなる。あんな別れ方してるんだ。気軽に「はい」って言えるか。
「成功するかは置いておいて、相談は受け付けるぞ」
「そんなに身構えなくてもいいよ。相手はホウリ君じゃないから」
「それはありがたいな」
身構えていた体から力を抜く。俺の事は吹っ切れたみたいだな。
「好きな奴が出来たのか?」
「うん」
俺の質問に頬を赤らめるディーヌ。冗談って訳じゃなさそうだな。
さながら昼下がりのカフェの様な穏やかな雰囲気になるのを感じ、俺は話を続ける。
「どういう奴なんだ?」
「宿のお客さんだったんだけど、私にも話してくれる優しい人なの」
「出会いは?」
「宿で食事を提供した時に……ってなに言わせるのよ!」
「ははは、悪い悪い」
「もう……」
頬を膨らませて怒ってくるディーヌ。俺は笑いながら謝る。
「で、そいつと仲良くなりたいって訳か?」
「うん」
恥ずかしそうに頷くディーヌ。
確かディーヌにはファンクラブは解体したが、男どもは抜け駆けしないようにけん制しあっている筈だ。オダリムの奴がそれを知らない筈がない。つまり、そいつはオダリムに来たばかりって事だ。
そいつがディーヌの事を知ったら距離を置くだろうな。男どもから報復されるだろう。となると、何とか手を打たないとな。
オダリムに直接なにか出来るわけじゃないからな。どうしたもんか。
俺は紙とペンを取り出してそいつへの手紙を書く。そして封筒をしてディーヌに渡す。
「ほい」
「なにこれ?」
「そいつへの手紙だ。ディーヌは読むなよ?」
「うん」
ディーヌは素直に頷くと、手紙をアイテムボックスに仕舞った。こういう風に素直に言うことを聞いてくる奴があんまりいないから、なんだかとても嬉しく思う。
ディーヌの3割でも良いから、周りの奴らも素直になってくれればな。
「次にディーヌに対するアドバイスだな」
「お願いします」
「男の心を掴みたいなら胃袋から掴んだ方が良い。手料理でも作ればいいんじゃないか?」
「宿でもう出してるよ。宿の料理は私の仕事なんだし」
「そうだったのか?」
「分かってて言ってるよね?」
☆ ☆ ☆ ☆
「ありがとうございました」
相談が終わって、ディーヌが丁寧にお辞儀をする。時間にして約10分くらいか。
「王都にはいつまでいるんだ?」
「1週間後には発つつもりだよ」
「そうか。暇なら家にでも遊びに来てくれ。飯くらいならご馳走する」
「ありがと。機会があるならお邪魔するね」
バイバイ、と手を振りディーヌが相談所から出ていく。俺も手を振って見送り、息を大きく吐く。
まさか、いきなりディーヌがやってくるとは、流石に驚いたな。今は幸せみたいだし、苦労した甲斐があったってものだ。
ディーヌの表情を思い出し嬉しく思っていると、再びドアがノックされた。
俺はさっきと同じようにパチンコ玉で返事をする。すると、扉が開き再び見知った顔の相談者がやってきた。
『よう、マカダ』
『こんにちは、ホウリさん』
マカダは軽くお辞儀をすると俺の対面に座った。
『久しぶり……って訳でもないな』
『そうですね。この前はありがとうございました』
魔国に居た時にマカダには交換留学の件で相談を受けた。王都に来た後にもサポートしたりアドバイスしたりしてたから、久しぶりって感じじゃないな。
『で、マカダの相談って何なんだ?勉強で分からない事でもあるのか?』
俺の質問にマカダが首を振る。
『じゃあ何なんだ?』
『強くなりたいんだ』
『強くなりたい?』
今までそういう相談は聞いたことがない。詳しく聞くか。
『戦闘力を上げたいって事か?』
『はい』
マカダが真っすぐ見つめてきて頷く。冗談じゃないみたいだな。
『別に良いが、なんで強くなりたいんだ?』
『……言わないとダメですか?』
『目標を知らないとアドバイスのしようがないからな』
『……ノエルの隣に立ちたいからです』
蚊の鳴くような小さな声で、マカダが呟く。ノエルの為か。大体、予想通りだな。
『お前、ノエルの事が好きだもんな』
『はい』
『素直に認めるんだな?』
『ホウリさんに隠し事は意味ないでしょう?』
『確かにな』
なんだ?今日の相談者は素直な奴が多いな?楽で話が早いから助かるからいいけど。
『で、大好きなノエルの為に強くなりたいんだったな。強くならなくても、ノエルの隣には立てるんじゃないか?』
『王都に居た時、俺はノエルに助けられた事があるじゃないですか』
『ああ』
『ノエルが戦う姿を見て俺は心惹かれました。そして同時に思ったんです、今の俺がノエルに好きだと伝えても良いのかって』
マカダが苦しそうに言葉を紡ぐ。確かにノエルは戦闘も勉強も見た目も良い。普通の奴が好きになって劣等感を持つのも無理はない。
俺は言葉を挟まず、マカダの言葉を聞く。
『ノエルは優しい奴です。好きだと伝えたら無下にはしないと思います。けど、お情けで付き合っても俺は苦しいんです』
『そうか』
子供の頃から圧倒的な才能を見せつけられ、同時に惹かれる。届かない物を見続けなくちゃいけないのは、かなり苦しいだろう。
『だから、ノエルと同じように強くなってノエルの隣に立てるようになってから告白したいんだ』
『なるほどな』
ここで俺が「そこまでしなくても良いんじゃないか」って言うのは簡単だ。けど、それだとマカダは一生劣等感を抱えていかないといけない。
だが、ノエルは神の使いっていうチートスキルがあるし、そもそも全体的な素質がずば抜けている。寝る間を惜しんで努力したとしても、ノエルと同じ領域まで到達するのは無理だ。
だから、俺が書けるべき言葉は───
『じゃあ、ノエルに無いものを身に着けないとな』
『は?』
俺の言葉にマカダが首をかしげる。
『なんでそんな話になるんですか?』
『お前の本来の目的はノエルと付き合えるくらいの人間になりたい、だろ?』
『はい』
『だったら強くなるだけじゃ足りない』
『じゃあ、どうすれば……』
『言っただろ?ノエルに無い物を身につけろ』
俺は再びマカダに同じ言葉を投げる。だが、マカダは意味が分からないのか首を傾げっぱなしだ。
『どういう意味です?』
『付き合うって事は同じ能力があるって事じゃない。足りない事を補いあうって事なんだよ』
『補いあう……』
『そうだ』
『でも、ノエルに足りない事って?』
『それはお前自身が考えろ。マカダから見てノエルは完璧か?欠けているところは無いか?』
俺の問いかけにマカダが顎に手を当てて考える。
『そう言われると、完璧ではないですね。思い込みで暴走するし、騙されやすいし、考えが突飛すぎてついていけない時があるし』
『だろ?』
俺も概ね同じ意見だ。ノエルは能力は高いが、少々抜けているところがある。どうしたものか。
『ノエルにだってかけているところがあるんだ。そこを補っていけるのが、付き合うってことじゃないか?』
『……そうですね』
俺の説明に納得したのか、マカダは素直に頷く。本当に話が早くて助かる。
『じゃあ、俺自身が強くなる必要はないんですね』
『そうは言ってないぞ?』
『え?』
『神の使いの恋人だぞ?魔国に居た時みたいな目にあう可能性があるに決まってるだろ?最低でも世界で5本の指に入るくらいの強さにはなってもらうからな?』
『……冗談ですよね?』
顔を引きつらせているマカダに俺は満面の笑みで答える。
『強くなりたいって事なら協力してやる。だが、文字通り死ぬ気でやらせるからな?覚悟しろよ?』
『は、はい』
『特訓は明日からだな。家で待ってろよ』
『はい、ありがとうございます……』
律儀にお辞儀をしてマカダは相談室から出ていく。
子供の時から恋愛の悩みか。最近の小学生はませてるな。微笑ましいともいえるか。
休憩がてら持ってきたチョコを口に放り込み味わうように咀嚼する。
次で最後だ。ここまで恋愛系の相談が続いているから、次も恋愛系だったりしてな。
そう考えていると、扉がノックされた。いつも通りパチンコ玉で返事をすると、扉が勢いよく開いた。
「コレトさんの機嫌が悪いんだ!相談に乗ってくれ!」
「帰れ」
飛び込んできたナップにパチンコ玉を打ち込む。
その後、雑にナップの話を聞き、ナップに相談室の撤収を手伝わせた。
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